全国山村振興連盟メールマガジンNO87
2020.8.14
全国山村振興連盟事務局
- ため池工事特別措置法が成立近年豪雨等による被害が頻発し、本年も熊本県をはじめとする全国の広範な地域で河川の決壊・洪水などの被害が生じており、防災・減災・国土強靭化が強く求められています。
- こうした中、全国に約16万か所あるため池のうち、決壊時に人的被害のおそれのある「防災重点農業用ため池」とされたものだけでも6万4千か所があります。豪雨や地震によって決壊した件数は、平成21年から平成30年の10年間だけでも395件にも上っています。
- このような状況を踏まえて昨年7月に、「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」(ため池管理保全法)が施行されましたが、これに加えて本年6月12日 議員立法により「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」(ため池工事特別措置法)が全会一致で可決・成立しました。
- 本年制定された法律は2本目のため池関連法であり、防災工事などを進めるには、地方公共団体の財政やマンパワーに限界があることから、多くの地方公共団体等の要請に基づき立法化されたものです。
- 「ため池管理保全法」と「ため池工事特別措置法」で何が違うのかと言いますと、「ため池管理保全法」は私人が所有する農業用ため池について、届出や管理について規制をするものです。これに対して「ため池工事特措法」は、国・地方公共団体及び私人が所有する防災重点農業用ため池を対象とし、その防災工事等を促進しようとするものです。
- 具体的な違いは、以下の表をご覧ください。
ため池管理保全法 | ため池工事特別措置法 | |
法律の背景 | ○農業用ため池について、権利関係が不明確かつ複雑化するとともに、高齢化などにより管理組織の弱体化が進行し日常の管理が適正に行われないおそれがあることが判明。
⇒立法措置により所有者や管理者などの関係者が果たすべき責務を明らかにすること等により適正な管理保全体制を整備することが必要。 |
○農業用ため池管理保全法の成立後決壊時に、周辺区域に被害を及ぼすおそれのある防災重点農業用ため池が約6万4000ヶ所存在し、防災工事等を進めるには地方公共団体の財政やマンパワーに限界があることが判明。
⇒立法措置により財政的な支援や技術的な援助を実施し計画的・効率的に防災工事等を進めることが必要。 |
法律の対象 | 私人が所有する農業用ため池 | 国、地方公共団体及び私人が所有する防災重点農業用ため池 |
法律の性格 | 規制法
・所有者に対する届出義務、所有者及び管理者に対する農業用ため池の適正管理の努力義務(第4条・第5条) ・特定農業用ため池については、防災工事を施工する際の計画の届出義務(第9条) ・都道府県知事に所有者等に防災工事の施工を命ずる権限及び防災工事が施工されない場合等における代執行権限の付与(第10条・第11条) |
促進法
・国は、防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する基本的な指針を定める。 ・都道府県は基本指針に基づき防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する計画を定めることができる。 ・都道府県は推進計画に基づく防災工事等を実施する者に対し、技術的な指導等に努める。 ・国の防災工事等に対する財政措置、地方財政措置を明確化。 |
法律の期限 | 失効予定のない恒久法 | ある一定の期間で失効する時限立法(10年間) |
・7月29日、国の基本方針に盛り込むべき事項について、超党派の議員により農林水産大臣への要請が行われました。
・要請のポイントは、①工事や技術指導に対する国の財政支援と地方負担の軽減、②防災工事の際に自然環境や生物多様性への配慮、③地震や豪雨への耐性調査の優先度の基準は地域実態に応じて柔軟にすること、④防災工事の技術支援をするサポートセンターの設置の推進、となっています。
なお、この特別措置法の概要及び法律については、以下の資料をご覧ください。
2020080ため池工事特措法概要2020080特措法要綱・法文