全国山村振興連盟メールマガジンNO86

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2020.8.7

全国山村振興連盟事務局

  • 2020年7月の農林水産行政

2020年7月の農林水産行政は、以下のとおりでした。

1 7月豪雨災害の農林水産被害1171億円

7月3日以降熊本県、鹿児島県等で記録的な大雨となり、球磨川周辺での氾濫をはじめ広範な地域で河川の氾濫、崖崩れ等の災害が発生した。7月31日現在で判明している農林水産被害額は、40道府県で1171.2億円となっている。河川の決壊による水田への土砂流入のほか、樹園地崩壊、ハウスの倒壊、果実の落下などが生じており、内訳としては農地・農業用施設471.9億円、林野556.1億円、農産物等133.7億円、水産関係9.4億円等となっている。

農林水産省は大臣を本部長とする緊急自然災害対策本部を開いて食品・飲料・ミルクなどを支援物資として配送するとともに、288人の職員をMAFF―SATとして派遣した。また江藤大臣は、7月18日・20日にWEBにより現地関係者40人と意見交換を行い、7月22・23日には熊本県ほか九州各県への現地視察を行った。

7月31日に予備費の支出が閣議決定され、農林水産関係第1弾として122億円が計上された。例えば熊本県のデコポンの改植には、10a当たり最大で208万円が支給される。

 

2 GO TO EATキャンペーン公募開始(7月21日)

政府のGo toキャンペーンは、各事業分野を所管する国土交通省・農水省・経産省の3省に分けて実施することとなり、農水省では7月21日Go to eat キャンペーンを実施するための事業者の公募を開始した。公募期間は8月7日までとし、有識者による審査を経て決定する。

Go to eat キャンペーンは国民が外食を利用する場合に特典や割引が受けられるものであり、外食産業の回復を図り農林水産物の需要の喚起につなげることを目的としている。このキャンペーンに参加することのできる外食業者は、業界が定めた感染防止対策のガイドライン(入口消毒、換気、店内掲示等)を十分に行っているとして登録された業者とされている。

対策の第1は「食事券」であり、補正予算から767億円を計上している。これは都道府県・政令指定都市・特別区の中で食事券を購入すると、購入額の25%増(1万円買えば12500円分)の食事券がもらえ、同じ都道府県等の中で利用できるというもの。1人1日2万円以内とされ、回数制限はない。

第2は「オンライン飲食予約キャンペーン」であり、登録した飲食店にオンラインで予約すると、利用時に昼食の場合は500円・夕食なら700円分のポイントが付与される。このポイントは次回以降その店を利用するときに使えるものであり、ポイントを利用するときにも再びポイントが得られ、回数制限はない。

 

3 人事異動で枝元事務次官へ(8月3日付)

7月31日、農林水産省の8月3日付け人事異動が閣議決定され、末松広行事務次官の後任に枝元真徹(えだもと・まさあき)・官房長、その後任に横山紳・経営局長、その後任に光吉一・総括審議官(国際担当)を充てることとされた。末松次官は就任後2年となり勇退を申し出たものであるが、7月の豪雨被害、新型コロナウイルス対策など懸案が山積している最中であるため、他の局長級幹部は留任となった。

その他の主な幹部の異動は、総括審議官に青山豊久・前研究総務官、総括審議官(国際)に森健・前漁政部長、危機管理・政策立案総括審議官に村井正親・前農村政策部長、林野庁次長に浅川京子・前総括審議官などとなっている。

 

4 骨太方針で「総合的な食料安全保障の確立」を明記(7月17日)

政府は7月17日、「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針)、「規制改革実施計画」「成長戦略実行計画」を閣議決定した。「骨太の方針」では新型コロナウイルス禍を踏まえ、「総合的な食料安全保障の確立」が掲げられた。具体的には、①食料自給率・自給力の向上、②食料安保や農業に対する国民理解の醸成、③中山間地域も含めた国内生産基盤の強化、④加工食品や外食の食材の国産切り替え、 ⑤農林水産物食品の輸出拡大、が掲げられている。

また規制改革実施計画は7月2日の規制改革推進会議からの答申を踏まえたものであり、①農産物検査を受けていない米(未検査米)についても、補助金の交付や表示を一定の条件下で認めること、②JA の自己改革において準組合員の意思を経営に反映させる方法を検討すること、などが掲げられている。

 

5 その他

(1) 林業・木質バイオマス発電の成長産業化研究会

農林水産省と経済産業省は合同で、木質バイオマス発電に関する研究会(座長・久保山裕史森林研究整備機構林業経営・政策研究領域長)を設置した。木質バイオマス発電は、FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)の施行によって急増し、年間600万立方メートルを超え、重要なエネルギー源の1つとなってきた。しかし供給の増大は頭打ちになっており、コスト低減、バイオ燃料の安定供給、森林の持続的利用などが課題となっている。この研究会は、官民連携により、課題解決に向けた方策を検討するためのものである。

 

(2)「夏まふり2020」を開始(7月31日)

農水省は、子供向けの夏のWEB講座「夏まふり2020」を開始した。昨年までは「子ども霞ヶ関デー」として小学生の訪問による学習を行っていたものを本年はWEBによって行う。クイズ、ゲーム等を楽しみながら食や農林水産業について学び、夏休みの自由研究の題材にも使える22のコンテンツを用意した。