庵逧典章 兵庫県佐用町長
1.佐用町の概要
兵庫県の西、岡山県と県境を接しています。4町で合併をして307?、合併時の人口は2万1千人余りありましたが、この12年ではや4千人くらい減ってしまいました。人口減少の激しい町です。森林面積は80%以上ありますが、町の一角には世界最高性能を誇る大型放射光施設Spring?8やX線自由電子レーザーSACLA等が集積する「播磨科学公園都市」があります。口径2mの公開望遠鏡として世界最大を誇る「西はりま天文台」のある公園があり、また、夏には10万人くらいの人が訪れる150万本が咲き誇るひまわり畑があります。
2.平成21年台風9号災害
合併から4年経過した平成21年8月、 台風9号による豪雨災害が佐用町及び近隣の町を襲いました。この災害は全国的にも注目されましたが、死者18名、行方不明2名の大部分が避難する途中に水路にはまるという非常に悲惨な状況でした。防災計画の中で避難の在り方等について非常に大きな問題提起がなされました。垂直避難、避難所に避難するのが避難ではなく、状況によっては家の中で2階に上がるのも避難であり、山から離れた部屋に避難するのも避難だと、そういう風に国の防災計画自体もこの災害の教訓の中から変更されるきっかけを作った災害でした。
3.災害に強い森づくり
豪雨により倒木して流出し川を塞いで災害を大きくするということを如何に防ぐか、これは21年の災害以前から山林を産業としての活用だけではなく、環境面、防災面からも間伐をし災害に強い山林を育てていくとう取組みはしてきました。しかし、そうした中で大きな災害が発生し、改めて個人の山林所有者だけでは到底管理はできない、公的な管理が必要である、これは兵庫県においても以前から公的管理に取組んできました。私もあえて森林組合長を引き受けて行政と一体となって山林の管理にあたっています。
林野庁において、間伐に対する補助制度が作られていますが、戦後の昭和20年の終わりから30年代に植栽された木はもう50年、60年の成木になっています。間伐をしてもこれから根をしっかり張って災害に強い木にしていくにはこれから大きな負担もかかります。災害後の治山治水対策においても、スリットのある堰堤を整備するというような対処療法的な対策は次々と実施していただいていますが、木が災害の要因となるのを防ぐには木を伐採して活用して若返らせるということが重要と思います。木材価格が国際価格になってしまって、関税なしで自由に入ってくる、木材価格が上がっていくことはなかなか期待できないと思います。木材価格が1㎡1万円前後では、高性能の機械を入れ、作業の効率化を図っても、作業の費用を賄うのがやっとです。特にバイオ燃料とかに出荷していますが、1トン6千円とかでは補助金なしでは事業は成り立ちません。森林組合を経営していく中で、若い人も雇用して事業を拡大していきたいと取組んでいますが、公共の造林補助金が増えなくて事業が止まってしまうという状況になっています。50年、60年の木になると直径が30㎝、1トンくらいになります。急な斜面に1トンの木が沢山並んでいれば、自然に下にずり落ちていく現象があり、山肌に亀裂が入っている、そこに大量の雨が降って大きな崩壊に繋がるということを現場で感じています。木材価格が上がらないのであれば、採算がまあまあ採れるくらいに補助金を継続して増やしていただきたいと思います。特に危険な箇所、急峻な箇所、下に民家のあるような箇所では間伐だけではなく、皆伐も対象となる事業にしていただきたい。
4.木製架台のメガソーラ施設の建設
町と民間の共同出資の有限責任事業組合で5メガの太陽光発電施設を建設し、管理・運営を行っています。林野庁の補助金をいただき、架台に1万4千本くらいの檜の角材を使用しました。木材の架台であれば20年間の買取期間で、20年間終了後処理するに際しても燃料として活用できます。
5.学校等の跡地活用
学校・保育園の統合を進めていますが、その跡地を、ドローンスクール、日本語学校(100人規模)、サービス付高齢者住宅等に活用するなど、民間の活力を取り入れた取組が大事だと思っています。
6.新たな農業事業への挑戦
中学校の跡地に次世代農業モデルプラント「佐用まなび舎農園」(6,800㎡)を建設しました。これも太陽光発電と同じ有限責任事業組合が建設、運営に当たっています。メーカーが開発したファインバブル等最新技術を活用して品質の良いトマトの栽培を行って1年経過しました。こうした事業も決して簡単なものではありません。軌道に乗るまでには少なくとも2年、3年の経験を積んで取り組んいかなければなりません。この事業にも地方創生の交付金等を活用していますが、事業が軌道に乗るための支援をしていただければ有難いと思います。