コロナ禍だからこそ、地方移住の芽を大切にしたい  實重重実

本年は新型コロナ・ウイルスの蔓延という未曾有の危機に襲われましたが、そうした中で総務省の人口移動報告によりますと、本年4月~7月(4ヶ月)の合計では、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)からの転出者が転入者を上回り、1459人の転出超過になったとのことです。これは2013年に現在の調査方法になってから初めてのことでした。
コロナ禍の中にあってテレワークが定着してきた影響もあり、地方や農山村に住もうという動きが強まってきていることは、注目すべきことです。
コロナ禍は、山村地域にとっても観光人口の激減や飲食店・食品需要の減退などの形で今も深刻な打撃を与え続けていますが、そうした中だからこそ東京一極集中への反省や地方移住への志向といった新しい芽が出てきていることを大切にしていきたいと思います。
ちょうど本年4月から「地域づくり事業協同組合」の制度がスタートしました。これは地域で関係者が協同組合を立ち上げて、そこで人を雇用することのできる制度です。雇用された人は、地域で必要とされる様々な業務に通年的に携わることができます。その活動に要する費用は、人件費を含めて財政支援が受けられます。
この制度は昨年、当連盟の中谷元会長をはじめとする超党派の議員立法により、「人口急減地域における特定地域づくりの推進に関する法律」として成立したものであり、時限法でなく恒久法なので、何年か後に終わりになってしまうような政策ではありません。市町村長に話を伺っていますと、この制度を積極的に活用したいと考えておられる地区も多いので、現在立ち上げ中の地区と今後立ち上げたいと希望している地区を合わせると、全国で数十に上るものとみられます。
都会から移住して来る人達の雇用の受け皿として、あるいは地域起こし協力隊の人が任期を終えた後の雇用先として、この制度を更に活用いただければ幸いです。

また、農林水産省の「山村活性化支援交付金」の活用も可能です。これは山村地域についてだけ特別に措置されている施策であり、年間1000万円(3年間3000万円)を上限として、ソフト事業に定額100%が助成される事業です。
地域でビジネスを起こしていくためには、地域ならではの特産物が必要でしょう。地域にどのような資源(農林水産物・伝統工芸品等)があるかを調査した上で、専門家に相談をしたり指導や研修を受けたりしながら、試作品を作り、マーケティングをし、特産物を開発していくことができます。
雇用者の給与に対してまで国庫助成を受けられる「地域づくり事業協同組合」やソフト事業に100%の助成を受けられる「山村活性化支援交付金」といった特別な支援政策も充実してきましたので、これらを有効に活用して、芽生えつつある地方移住の動きがさらに加速していくように取り組んでいただくことをお願いします。