第1043号(平成28年12月15日発行)
全国山村振興連盟の平成28年度通常総会は、11月17日(木)午前10時30分から千代田区隼町のグランドアーク半蔵門4階の富士東において、国会議員、政府関係者、友好団体等の来賓多数の出席のもとに連盟会員、支部事務局員など約400名が出席して盛大に行われた。
会場正面には、
〇 山村振興法に基づき、関係省庁連携の下、山村振興対策を総合的かつ計画的に推進すること
〇「山村活性化支援交付金」、「農山漁村振興交付金」等山村地域活性化のための対策の充実・強化を図ること
〇 地方交付税制度を充実・強化し、所要額を確保すること
〇 森林環境税(仮称)の創設等に係る所要の税制措置を講じ、地方税財源の確保・充実を図ることのスローガンが掲げられた。
総会は、最初に佐々木哲男 副会長(秋田県東成瀬村長)が「皆様方には連日お忙しい中、ご出席いただき有難うございます。只今から、平成28年度全国山村振興連盟通常総会を開催致します。さて、山村をめぐる状況は厳しさを増しておりますが、山村には、国土保全、国民生活の安定等の面で重要な役割を果たすことが期待されており、また、地方創生の面でも山村の活性化を図ることが、必要不可欠であります。この総会において、山村振興法に基づいて山村振興関連予算・施策が充実・強化されるよう平成29年度予算の編成に向けて、私どもの意思を結集し、政府並びに国会に対して訴えてまいりたいと存じます。
本総会が所期の目的を達成できますよう、ご参集の皆様の絶大な協力をお願い致します。」と開会の辞を述べた。
次に、宮腰光寛 会長が開会の挨拶を行い、御来賓の農林水産大臣(室本隆司 農村振興局次長 代読)、衆議院議員 金子恭之 先生(自由民主党山村振興特別委員会委員長)、藤原忠彦 全国町村会長(長野県川上村長)からそれぞれ祝辞が述べられた。
続いて、出席された国会議員、政府関係者、友好団体の来賓紹介が行われた。
次に、北海道苫前町の森 利男 町長及び和歌山県紀美野町の寺本光嘉 町長から事例報告が行われた。
なお、報告の内容については、平成29年2月15日号の山村振興情報に掲載します。
竹﨑一成 会長代行(熊本県芦北町長)が議長となって議事に入り、次の議案が審議された。
○ 第1号議案「平成29年度山村振興関連予算・施策に関する要望(案)に関する件」
岸 廣昭 事務局長から説明を行い、原案どおり可決された。
○ 第2号議案「決議(案)」
松島貞治 副会長(長野県泰阜村長)から提案され、原案どおり可決された。
以上で議事を終了した。
尾上武義 副会長(三重県大台町長)が「本日は、熱心にご審議いただき誠に有難うございました。本日決定された我々の要望を実現するため、強力に運動を展開してまいりたいと存じます。」との閉会の辞を述べた。山村の発展を期して、同副会長の発声により「頑張ろう」コールを三唱し、総会を終了した。
総会終了後、可決された要望事項について、連盟の町村長副会長が関係省庁及び国会議員に対し、各支部では地元選出の国会議員等に対しそれぞれ要請活動を行った。
当日の会長挨拶、来賓祝辞、可決された要望書、決議等は以下のとおりとなっている。
【宮腰光寛 会長(衆議院議員) 挨拶】
皆さんお早うございます。全国山村振興連盟の会長を務めております宮腰でございます。
通常総会を開催するに当たり、一言ご挨拶申し上げます。まずは、熊本地震、鳥取県中部地震、阿蘇山の噴火、台風による豪雨災害等により被災された住民の皆様方に対して心からお見舞い申し上げたいと存じます。
本日は、お忙しい中、全国の山村地域から市町村長さん方をはじめ多数の方のご参加をいただき、ありがとうございます。また、金子 自民党山村振興特別委員長はじめ諸先生方には、政務お忙しい中、党派を越えてご出席賜リ、心強く、感謝に堪えません。
さらには、ご来賓として、藤原全国町村会長や友好団体の皆様、政府からは、本日はこの時間、参議院農林水産委員会が開かれているということで政務三役はご出席できないということでありますのでその代理として農林水産省農村振興局の技術トップの室本次長さんをはじめ、農林水産省、林野庁、総務省、国土交通省など関係省庁からもお越しいただき、かくも盛大に通常総会を開催することができました。皆様方に対し重ねて御礼申し上げます。
ご案内のように、山村を取り巻く環境は、依然として厳しい状況が続いております。生活環境の整備水準は依然として都市との格差がみられ、耕作放棄地、鳥獣被害の増大、人口減少や高齢化による集落機能の衰え、いずれをとっても深刻な状況にあります。しかしながら先ほどの開会の辞にありましたとおり、山村は、水資源、エネルギー資源の宝庫であり、豊かな自然を背景として、都市住民に憩いの場を与え、若者の学習の場としても大切な地域であり、大切な国民共通の宝物・財産であります。この山村を全人口のわずか3パーセントの皆様方に守っていただいているわけであります。私どもは、この大切な山村に光を注ぎ、皆様方の生活が成り立つよう、大きな声で国民に訴えかけ、行政や政治にも働きかけていかねばなりません。今日、地方創生が叫ばれておりますが、その肝は、山村の活性化だといっても過言ではないと考えております。
私ども政治に携わるものといたしましては、昨年、議員立法で、山村活性化支援交付金という山村独自の予算制度を作る等、50年振りに山村振興法の大改正を超党派で行わせていただいた次第であります。また、今年の通常国会におきましては、森林法の大改正により、問題となっておりました境界が不明確な森林においても森林整備を円滑に進められるような措置ができたところであります。
また、本年度の第2次補正予算では、中山間地域対策として100億円の中山間地域所得向上支援事業も計上されております。
また、期限の来る鳥獣被害防止特措法の期限延長と内容充実に向けて準備を行っているところですが、これは議員提案の法案でありますが、お蔭様で、今日、参議院農林水産委員会で採決される見込みということになっておりまして、狩猟免許の更新に係る問題についてもなんとか超党派で今国会で改正ができるのではないかと思っております。さらには、空き家問題や耕作放棄地問題を解決するためのネックとなっている憲法上の財産権の問題も議論が始まっているところであります。また、年末の税制改正の検討では、長年の懸案事項であります森林環境税の実現に向けても頑張ってまいりたいというふうに考えております。
来年度に向けていろんな対策を打っていく必要があると思いますが、今回の総会は、そのような来年度に向けての山村活性化に向けての必要な対策を議論いただき、政府等に要請していく大切な場でございます。後ほど説明させますが、要望案には、山村の生活環境の整備、各種インフラ整備、鳥獣被害防止対策の充実、創設された山村活性化支援交付金や計画を実現するためのハード事業等の充実、森林資源の活用のための大幅な予算の拡充、森林環境税の創設などを盛り込んでおります。
また、当連盟副会長の北海道苫前町長さん、和歌山県紀美野町長さんからの事例報告もございます。どうぞ有意義な総会にしていただきたいと存じます。
最後に、ご参集の皆様方のご健勝と全国の山村の振興発展を祈念いたしまして、開会に当たりましてのご挨拶とさせていただきたいと思います。
【山本有二 農林水産大臣 挨拶】
本来であれば、山本 農林水産大臣が出席の上、ご挨拶させていただく予定でございましたが、先ほど宮腰会長からお話しがありましたように、今日、参議院農林水産委員会が開催されております。恐縮でございますが、私の方から大臣挨拶を代読させていただきたいと思っています。
本日、全国山村振興連盟の通常総会が開催されるに当たり、ご挨拶を申し上げます。本日御列席の皆様方には、日頃から、山村振興行政に対するご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、我が国の森林面積の約6割を占める山村は、国土の保全や水源のかん養などの多面的機能を有し、国民の豊かな生活の実現に重要な役割を果たしております。
これまでの皆様のご努力により、山村における生活環境等の整備が進んでまいりましたが、人口減少や高齢化など、山村を取り巻く状況は厳しさを増しており、引き続きその振興に努めていくことが重要と考えております。
こうした中、農林水産省といたしましては、昨年延長されました山村振興法に即し、「山村活性化支援交付金」や「山村振興税制」をはじめとして様々な施策を実施するとともに、関係省庁と連携いたしまして、地域の実情に配慮した政策を推進しているところであります。
また、深刻な影響を及ぼしている鳥獣被害についても、捕獲に加えまして、ジビエ利用等の対策を一層積極的に推進しているところであります。予算面では平成28年度の第二次補正予算では10億円を措置しまして、平成29年度概算要求では前年度比10億円増の110億円を要求しているところであります。農林業者の皆様が安心して業に取り組めるようしっかり対応してまいりたいと考えております。
今後とも、山村の振興に向けて、これら各種施策の充実を図りながら、全力に取り組んでまいりますので、皆様方のより一層のご支援、御協力をお願い申し上げる次第であります。
結びに、全国山村振興連盟のご発展と、皆様のご健勝を祈念いたしまして、ご挨拶といたします。
平成28年11月17日 農林水産大臣 山 本 有 二
代読 農村振興局次長 室 本 隆 司
【衆議院議員 金子恭之 先生 挨拶(自由民主党山村振興特別委員会委員長)】
皆さんお早うございます。只今ご紹介にあずかりました、自由民主党山村振興特別委員長の金子でございます。
働きが足りないのでもう1年やれということで、昨年に続きこの委員長職を務めるにことになりました。引き続きよろしくお願いしたいと思います。
昨年、山村振興法の拡充・延長をさせていただきました。その時の同志であり、超党派で山村を皆で守っていこうではないかと取り組んできた先生方もいらっしゃいますが、その時の取りまとめ役にいたということで、代表してのご挨拶であると思っています。
私の出身は熊本県でございます。今回、熊本地震での大きな災害、その後の豪雨災害と続けざまに災害がありました。全国の山村地域からも暖かいご支援を賜りました。心より御礼申し上げたいと思います。今年は沖縄から北海道まで本当にいろんな災害が発生したわけでありますが、その時も皆で支え合っていくということでありますが、何分、山村地域は社会インフラが未熟であります。その地域に行くのに一本しか道がない。それが崖崩れしてしまって不通になり孤立集落ができてしまうという状況もございます。そういう意味で、山村振興法に基づいてインフラ整備もしっかり進めていかなければいけないというふうに思っております。
今度の改正山村振興法には地域内発的、地域の特色を活かして産業を振興していく、あるいは、介護サービスを含めて地域住民の福祉の向上に努めていく、ということも規定されています。
昨年度から、皆様方からの要望に基づいて、山村活性化支援交付金という、地域の特色ある事業を支援するためのソフト事業が導入されました。初年度の昨年度は7億5千万円、今年度も7億5千万円の予算が計上されました。私の地元、竹﨑会長代行のところ、また、今日お見えの皆様方のところでも手を挙げたところがありますが、残念ながら昨年は様子見のところもあり、あるいは市町村でソフト事業を立ち上げるのは非常に大変だというところもありまして、国や都道府県が協力しながら支援していくということであったわけでありますが、残念ながら昨年度は余してしまったわけであります。最初に手を挙げていただいた皆様方の成果、取組み状況が分かって、今年はかなりの問合せがありました。もう待機待ちの状況でございます。来年度の概算要求では10億円の要求を行っているということですので、山村地域で使い勝手のいい、さらに地域のためになる事業を推進するため、議員皆で一緒に予算獲得に向けて頑張っていきたいと思います。
3バーセントの人が日本国を支えているのだという誇りを持って、我々は皆様方とともに頑張っていくことを御誓い申し上げてご挨拶をさせていただきます。
【藤原忠彦 全国町村会長 挨拶(長野県川上村長)】
町村長の皆さん、連日ご苦労様です。昨日の全国町村長大会においては、お蔭さまで全国森林環境税の早期実現等の大会決議もしていただき有難うございました。
全国山村振興連盟の総会に当たり、一言ご挨拶申し上げます。平成28年度通常総会が関係者多数のご出席のもと、盛大に開催されますことを心からお慶びを申し上げます。
また、皆様方には、日頃より全国町村会の活動に格別なご支援を頂いておりまして、この場をお借りしまして厚くお礼申し上げます。
我が国の山村は、広大な森林と豊かな自然環境を有し、国土の保全、水源のかん養等の多面的機能の持続的な発揮に重要な役割を果たしていますが、過疎化・高齢化の進行、適切な管理が行われない森林の増加、生活環境の整備が依然として低い水準にあるなど、厳しい状況にあります。
このような中、政府は、新たな木材需要の創出と国産材の安定供給体制の構築を柱とし、林業・木材産業の成長産業化を図ることとする新たな「森林・林業基本計画」を本年5月に閣議決定しました。
林業・木材産業の成長産業化を図るためには、山村地域固有の自然を守り、資源を活用して若者の定住を可能とするような多様で魅力ある地域にする必要があります。
そのためには、山村に人が住み続け、林業生産活動等を通じた日常的な森林の整備・管理が一層重要となってまいります。
町村では、林道の開設、間伐や地元産木材の利用拡大、担い手の育成等にこれまでも懸命に取り組んでまいりましたが、これまで以上に森林整備に取り組んでいくためには、安定的・恒久的な財源が不可欠であります。
平成28年度の税制改正大綱において、市町村の森林整備等の財源に充てる「全国森林環境税」の検討が盛り込まれたことを踏まえ、早期導入に向け、全国町村会としても強力に活動を展開してまいりたいと存じます。
また、最近顕著に見られるようになった、都会で生まれ育った若者や子育て世代が農山村へ向かう「田園回帰」の動きを加速させ、都市と農山村が共生する社会を創造するため、皆さまと力を合わせ、努力を重ねていく所存です。
結びに、貴連盟のますますのご発展と、ご参集の皆様方のご活躍を祈念いたしまして、お祝いのご挨拶といたします。
平成29年度山村振興関連予算・施策に関する要望書
山村地域の振興につきましては、日頃から格別の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、近年、山村を取り巻く環境は、道路、情報通信、生活環境等の整備水準が依然として低位な状況にあるほか、耕作放棄地の増大、鳥獣被害の多発に直面する中で、厳しさを増しており、過疎・高齢化の進展により集落機能の衰退が進んでおります。
我が国の山村は、日本人としての精神の原点として我が国を支えてきた力の源であり、水資源、エネルギー資源を守り、国土保全、都市住民へのいこいの場、若者の教育の場の提供等、多面的・公益的機能の発揮に重要な役割を担ってまいりました。このような国民の共有の宝とでも言うべき山村は、国土の約5割にも及んでおり、そこを人口のわずか3パ-セントの住民が守っているものの、その山村が集落機能の崩壊等により存続の危機に瀕していると言っても過言ではない状況にあります。
こうした中で山村振興法により明確に示されている、上記の多面的、公益的機能の一層の充実を更に図ることが重要であり、このため、山村住民の定住と集落維持により、山村の活性化、自立的発展を図っていくことが、一極集中を是正した地方創生の目指すところであり、ひいては、我が国全体の発展につながるものと言えます。
国におかれては、以上の認識の下に、山村振興を国の重要課題に据えて、下記の事項の実現を図っていただくよう強く要望致します。
記
Ⅰ 熊本地震、東日本大震災等の復旧・復興等
1.熊本地震、東日本大震災については、関係省庁連携のもと、被害が生じた山村地域における復旧・復興対策を早急かつ強力に推進すること。特に東日本大震災については、原発事故放射性物質の除染等を早急に行うとともに、放射性物質の影響を大きく受けている特用林産物栽培農家対策に万全を期すこと。
2.近年、気候変動等により、多発、大規模化している災害に対処するため、国土強靭化対策を推進し、災害に強い山村づくりに取り組むこと。また、災害発生時の的確な情報提供システムの整備を図ること。
Ⅱ 山村振興対策の総合的・計画的推進
1.山村振興計画に基づき、関係省庁の一層の連携強化のもと、山村振興対策を総合的かつ計画的に推進すること。
2.山村地域における農林水産業等地域の基幹産業の振興、生活環境の向上等を図るための施設の整備等の取り組みに対する助成措置の充実・強化を図るとともに、自立的な地域活性化を支える人材育成への支援に取り組むこと。
3.山村地域の活性化を図るために不可欠な辺地対策事業債及び過疎対策事業債の十分な確保を図ること。
4.農山漁村地域整備交付金の充実・強化を図るとともに、農山漁村地域活性化対策、森林・林業振興対策に係る地方財政措置の充実・強化を図ること。
Ⅲ 多面的・公益的機能の持続的発揮
1.山村の果たしている重要な役割や木の文化について、児童生徒を含め国民一般の理解を深めるための教育・啓発・普及対策の充実・強化を図ること。
2.森林が二酸化炭素吸収源として大きな役割を担うことを踏まえ、計画的な間伐等の森林施業とこれと一体的となった森林作業道の開設を直接支援する「森林環境保全直接支援事業」の充実・強化を図ること。また、森林所有者等による計画的な森林施業が適切に行われることを確保するため、「森林整備地域活動支援交付金」の充実・強化を図ること。
3.国土保全や生活環境整備を図るため、治山、治水及び砂防対策の充実・強化を図ること。また、水源のかん養、自然環境の保全等国土保全に資する事業を対象とした「国土保全対策」に係る地方財政措置の継続を図ること。
4.景観対策、国土保全に資するため、松くい虫対策、ナラ枯れ対策について適切に行うこと。
5.山村地域に期待される森林吸収源対策、再生可能エネルギー対策を強力に推進するため、地球温暖化対策のための税を活用するとともに、森林環境税(仮称)の創設等に係る所要の税制措置を講じ、地方税財源の確保・充実を図ること。また、森林吸収源対策等の推進に係る地方財政措置の継続を図ること。
6.持続的な林業経営の実現、森林の多面的機能の発揮を図る上で不可欠な地域の森づくりを主体的に先導する人材の育成確保を図ること。
Ⅳ 山村地域の活性化
1.山村地域における農林水産業の維持・活性化を図るため、「中山間地域等直接支払交付金」、「多面的機能支払交付金」の充実・強化及び荒廃農地等の利活用対策の推進のため、「荒廃農地等利活用促進交付金」の確保を図ること。
2.山村地域の活性化と地域コミュニティーの再生を図るための「山村活性化支援交付金」、「農山漁村振興交付金」及び「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」の充実・強化を図り、振興山村に対して優先的に予算配分を行うとともに使い勝手の良い制度とすること。
また、「強い農業づくり交付金」の充実・強化を図ること。
3.振興山村地域における地域資源を活用する製造業及び農林水産物の販売業に使用する機械・施設に係る割増償却制度等については、適用期限を延長すること。
4.山村に存する棚田・里山林等の美しい景観の価値を見直し、その保存・再生を図ること。
5.侵入竹の駆除及び竹材等の利用推進を図ること。
Ⅴ 産業の振興、地域資源の活用
1.山村地域の発展には、地域資源を活用した産業振興と雇用の場の確保が不可欠であり、農林水産業の振興とその6次産業化の推進を図るとともに、森林資源、農地等の土地資源、優れた環境等を活用した新たな農林業、企業立地の対策を充実・強化すること。
2.森林資源を活用した地域振興を図るため、川上から川下に至る一貫した林業、木材産業の振興対策の拡充強化を図るとともに、地域の自主性を尊重しつつ持続的森林経営、木材利用促進を行うための「次世代林業基盤づくり交付金」の充実・強化を図ること。
3.急傾斜地における架線集材・ヘリ集材を含め、現場の実情に即した間伐などの森林施業を推進するほか、施業の低コスト化、再造林対策の強化を図ること。
4.林業・木材産業、農業等山村地域における産業の担い手の育成確保対策の拡充・強化を図ること。
5.木材価格の安定対策の強化を図るとともに、公共建築物、公共土木分野等における国産材活用の推進、CLT等の地域材を活用した鉄骨構造から木骨構造への転換の推進、木質バイオマスの利用の取組みの促進を図るとともに、地域材の安定的効率的供給体制の確立や森林認証材の普及を図るため、「新たな木材需要創出総合プロジェクト」等の充実・強化を図ること。また、住宅部材開発・標準化、木材・木製品の輸出促進等よにり木材の利用促進を支援する制度を充実・強化すること。
6.木質バイオマス産業化を促進するための施設整備、システム開発を図ること。また、農山漁村における再生可能エネルギー導入の促進を図る取組み、発生した電力を適正な価格で買い取るシステムの構築を図る取り組み等の対策の充実・強化、それら取の組みを地域経済の発展に寄与させる仕組みの導入を図るとともに、再生可能エネルギーでの発電比率の向上と、発生した電力の送電システムの整備を図ること。
7.特用林産物の振興を図るため、「特用林産振興総合対策事業」の予算確保を図ること。
8.森林法等の改正により措置された制度等について、適切な森林施業を通じた林業の成長産業化の実現に資するよう運用を図るとともに、予算等の必要な措置を行うこと。
Ⅵ TPPについて
今回のTPP合意は、山村地域の主要産業である農林業に打撃を与える可能性があり、山村地域の住民が誇りを持って農林業を営んでいけるよう十分な配慮を行い、山村地域住民が生活を維持できるよう、万全の対策を講じること。
Ⅶ 鳥獣被害防止
1.鳥獣被害問題については、保護対策に偏ることなく、被害対策とのバランスを図るとともに、被害対策に必要な財源を確保すること。また、地域ぐるみの総合対策を推進する「鳥獣被害防止総合対策交付金」及び広域的な森林被害等に対応する「シカによる森林被害緊急対策事業」について事業継続するとともにメニューの充実・強化を図ること。
2.鳥獣被害防止特別措置法等に基づき、被害軽減の技術普及を行うなど、地域ぐるみの総合対策を推進すること。また、捕獲従事者の負担軽減等のため、同法に規定されている捕獲従事者への猟銃の技能講習免除期限を延長するとともに、鳥獣被害対策実施隊の設置促進や捕獲鳥獣の食肉への利活用促進等のために同法を改正し、鳥獣被害対策の一層の充実・強化を図ること。
3.鳥獣被害対策実施隊の設置促進、猟友会等の民間団体の参加促進、林業分野・関係省庁との連携を促進するとともに被害の深刻さの度合いによっては、防衛省・自衛隊は関係省庁と連携して、協力の可能性を検討すること。
4.捕獲鳥獣の加工処理施設の設置促進、焼却対策の充実・強化を図ること。
5.今後、より効果的な対策の導入について検討するために、ドローン等を活用した鳥獣被害対策について研究開発を進めること。
Ⅷ 山村と都市との共生・対流
1.グリーン・ツーリズムの一層の普及を行うとともに、地域ぐるみで行う受入体制や交流空間の整備及びNPO法人等の多様な取組主体の育成等グリーン・ツーリズムの総合的な推進を図ること。
2.山村における国民の幅広いボランティア活動を促進するための対策の充実・強化を図ること。
3.大学生を含め学校教育・社会教育において自然豊かな山村での体験活動を推進すること。
4.山村地域へのUJIターン者の定住促進、高齢者の地域社会の活動に参加できる機会の確保、都市との連携強化による山村の活性化の取り組みの充実・強化を図ること。
Ⅸ 道路、情報通信基盤の整備
1.山村地域の産業、生活基盤として不可欠な高規格幹線道路、地域高規格道路、一般国道及び都道府県道の整備、特に、二県以上に跨がる県管理の国道整備は、山村の地域振興に大きく寄与しているにもかかわらず、冬期閉鎖期間が長期間に及ぶことにより関係 振興山村の発展を大きく阻害しており、こうした県際道路の整備計画を策定の上、計画的に整備促進を図るとともに市町村道の改良・舗装等、立ち遅れている山村地域の道路整備を促進すること。また、基幹的な幹線市町村道路の整備の都道府県代行に対する助成措置を講ずること。
2.道路整備のための財源を十分に確保し、特に、地方における道路財源の充実を図ること。
3.携帯電話不通地域の解消、インターネットのブロードバンド接続可能地域の拡大、光ファイバー網の整備等デジタルディバイドの解消を図るための高度情報ネットワークその他通信体系の充実・強化を図ること。また、地域の実情に即した通信システムの助成を図るとともに、これら通信網の維持のためのランニングコストの助成を行うこと。
4.ラジオ難聴取地区の解消を図ること。
5.防災上並びに観光景観上の観点から無電柱化の推進に当たり、一定の財政措置(過疎債)を講ずること。
Ⅹ 生活環境の整備
1.山村地域住民の生活交通を確保するため、地方バス路線維持やデマンドバスの導入・運行対策の充実・強化を図ること。
2.山村の簡易水道等施設の整備促進を図ること。
3.山村地域の実情に応じて汚水処理施設の整備促進を図ること。
4.廃棄物処理施設の整備を推進するため、助成措置を講ずること。また、廃棄物処理施設の解体に対しては、適切な措置を講ずること。
5.消防力の充実を図るため、消防庁舎・消防施設等の整備及び改修に対する助成措置を講ずること。
ⅩⅠ 医療・保健・福祉
1.山村地域の産科医、小児科医を含めた医師の確保に万全を期すこと。へき地診療所等の運営、医療施設・保健衛生施設の整備、医師及び看護師の養成・確保に対する助成措置の充実・強化を図ること。
2.無医地区への定期的な巡回診療、保健師の配置、救急医療用のヘリコプターの拡充を図ること。
3.へき地保育所の運営、高齢者等の社会福祉施設整備、社会福祉関係職員等の養成・確保に対する助成措置の充実・強化を図ること。
4.山村における障害者施設の整備について、十分な予算の確保を図ること。
5.医療、保健、介護、福祉の充実、高齢者の職場、住居の確保は、その地域に居住する高齢者のみならず、都市の団塊世代の山村地域への定住に不可欠であり、都市部との連携の下に、このような観点からの充実・強化を図ること。
ⅩⅡ 教育・文化
1.公立学校施設整備、スクールバス等の購入に対する助成措置を講ずること。
2.寄宿舎居住費等へき地児童生徒に対する助成措置を講ずること。
3.山村地域の文化財の保護等に対する助成措置を講ずることと同時に遺跡発掘体験等により山村の自然に触れる体験交流活動に対する支援措置を講ずること。
4.地域の伝統文化・芸能の体験等を通じた子供の育成に努めること。
5.教育環境の整備は、都市部からの若者の定住に不可欠であり、その観点からの充実を図るとともに豊かな自然環境や伝統文化等を有する山村の特性を生かした教育の充実を図ること。
6.小中学校の統廃合の推進に当たっては、地域活性化の観点に十分配慮すること。
ⅩⅢ 山村地域の自主性の確立
1.財源保障機能及び財源調整機能を果たす地方交付税制度の充実・強化を図り、所要額を確保すること。
2.基準財政需要額の算定に当たっては、山村自治体が人口割合に比べて広い面積を有し、国土保全、地球温暖化防止等に重要な役割を果たしていることを考慮し、面積要素を重視するなど、山村地域の実情に即したものとすること。
3.独自の発想に基づく山村振興を助長するため、山村地域の自主性を尊重する助成措置、過疎地における足の確保の為の道路運送法の規制等規制緩和措置等の幅広い導入を図る とともに木材のストックヤードの整備等地方創生のために必要な事業については、既存の予算で対応できないものについては、ハード事業も地方創生交付金の対象とすること。
4.償却資産に係る固定資産税は、山村地域の市町村の重要な財源であり、仮に廃止、縮小されることがあれば山村地域の市町村の財政に多大なる支障を来すことを踏まえ、現行の課税対象、評価額の最低限度を堅持すること。
5.道州制は絶対に導入しないこと。
決 議
近年、山村を取り巻く環境は、道路、情報通信、生活環境等の整備水準が依然として低位な状況にあるほか、耕作放棄地の増大、鳥獣被害の多発に直面する中で、厳しさを増しており、過疎・高齢化の進展により集落機能の衰退が進んでいる。
我が国の山村は、日本人としての精神の原点として我が国を支えてきた力の源であり、水資源、エネルギー資源を守り、国土保全、都市住民へのいこいの場、若者の教育の場の提供等、多面的・公益的機能の発揮に重要な役割を担ってきた。このような国民の共有の宝とでも言うべき山村は、国土の約5割にも及んでおり、そこを人口のわずか3パ-セントの住民が守っているものの、その山村が集落機能の崩壊等により存続の危機に瀕していると言っても過言ではない状況にある。
こうした中で山村振興法により明確に示されている、上記の多面的、公益的機能の一層の充実を更に図ることが重要であり、このため、山村住民の定住と集落維持により、山村の活性化、自立的発展を図っていくことが、一極集中を是正した地方創生の目指すところであり、ひいては、我が国全体の発展につながるものと言える。
国において、以上の認識の下に、山村振興を国の重要課題に据えて、下記の事項の実現を図っていただくよう強く要望する。
記
1.山村振興法の改正を踏まえ、関係省庁の一層の連携強化のもと、山村振興対策を総合的かつ計画的に推進すること。
1.「山村活性化支援交付金」、「農山漁村振興交付金」、「中山間地域等直接支払交付金」等山村地域活性化のための対策の充実・強化を図ること。
1.「次世代林業基盤づくり交付金」の予算を確保するとともに、林業、木材産業振興対策の充実・強化を図ること。
1.鳥獣被害防止対策の充実・強化を図ること。
1.道路、情報通信基盤の整備を計画的に推進すること。
1.生活交通の確保等生活環境の整備を推進すること。
1.保健・医療・福祉対策の充実・強化を図ること。
1.学校施設整備、児童生徒への援助、体験活動推進等施策の充実・強化を図ること。
1.森林環境税(仮称)の創設等地球温暖化対策のための所要の税制措置を講じ、地方税財源の確保・充実を図ること。
1.地方交付税制度の充実・強化を図り、所要額を確保すること。
1.TPPの合意は山村地域の主要産業である農林業に打撃を与える可能性があり、万全の対策を講じること。
1.道州制は絶対に導入しないこと。
以上決議する。
平成28年11月17日
全国山村振興連盟通常総会
◎御出席の国会議員(敬称略)
衆議院議員 | ||||||
逢坂 誠二 | (北海道) | 佐々木 隆博 | (北海道) | 吉野 正芳 | (福島) | |
宮腰 光寛 | (富山) | 宮下 一郎 | (長野) | 松田 直久 | (比例東海) | |
鈴木 克昌 | (比例東海) | 田野瀬 太道 | (奈良) | 石田 祝稔 | (比例四国) | |
小島 敏文 | (比例中国) | 玉木 雄一郎 | (香川) | 金子 恭之 | (熊本) | |
(以上12名) | ||||||
参議院議員 | ||||||
横山 信一 | (比例) | (以上1名) |
◎秘書が出席の国会議員(敬称略)
衆議院議員 | ||||
江渡 聡徳 | 鈴木 俊一 | 金田 勝年 | 村岡 敏英 | |
大畠 章宏 | 梶山 弘志 | 佐田 玄一郎 | 小渕 優子 | |
福田 達夫 | 井野 俊郎 | 宮崎 岳志 | 井上 信治 | |
森 英介 | 中谷 真一 | 長島 忠美 | 木内 均 | |
棚橋 泰文 | 金子 一義 | 三ツ矢 憲生 | 谷 公一 | |
高市 早苗 | 石田 真敏 | 石破 茂 | 細田 博之 | |
竹下 亘 | 加藤 勝信 | 亀井 静香 | 岸 信夫 | |
あべ 俊子 | 山口 俊一 | 中谷 元 | 山本 有二 | |
麻生 太郎 | 岩屋 毅 | 坂本 哲志 | 保岡 興治 | |
森山 裕 | (以上37名) |
参議院議員 | ||||
山本 一太 | 山田 修路 | 山本 順三 | 井原 巧 | |
馬場 成志 | 松村 祥史 | 野村 哲郎 | ||
(以上7名) |
◎政府関係の出席者(敬称略)
農林水産省 | 農村振興局次長 | 室本 隆司 | |
農村振興局地域振興課課長補佐 | 三重野 信 | ||
農村振興局地域振興課調整係長 | 国広 博昭 | ||
林野庁 | 森林整備部森林利用課長 | 赤堀 聡之 | |
森林利用課山村振興・緑化推進室長 | 今泉 裕治 | ||
森林利用課課長補佐 | 高畑 啓一 | ||
森林利用課森林環境教育推進官 | 近藤 美由紀 | ||
国土交通省 | 国土政策局地方振興課長 | 長谷川 貴彦 | |
国土政策局地方振興課課長補佐 | 藤澤 貴充 | ||
総務省 | 自治行政局地域力創造グループ地域振興室長 | 飯塚 秋成 |
◎友好団体の出席者(敬称略)
全国過疎地域自立促進連盟専務理事 田村 政志
全国離島振興協議会事務局次長 二藤 安功