全国山村振興連盟メールマガジンNO134

全国山村振興連盟メールマガジンNO134

2021.7.16

全国山村振興連盟事務局

 

○理事会で令和4年度要望事項を決定

 

2021年 7月 2日に予定しておりました全国山村振興連盟理事会は、新型コロナウイルスの蔓延のため、書面表決とさせていただきました。

7月14日までに 表決書を送付いただいたところですが、その結果すべての議案について可決され、令和2年度事業報告及び決算について了承され、令和4年度山村振興関係予算・施策に関する要望書が決定されました。

理事会で決定された令和4年度に向けての山村振興関係予算・施策に関する要望書につきましては、関係の国会議員、政府関係者等に届けることとしております。

要望書の内容は、「Ⅰ 新型コロナウィルス感染症防止対策と新たな社会の建設」をはじめ、災害対策、環境政策、デジタル化対策などを盛り込んだものとなっており、具体的には以下の要望書をご覧ください。

令和4年度山村振興関連予算・施策に関する要望書

 

山村地域の振興につきましては、日頃から格別の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。

我が国の山村は、日本人としての精神の原点として我が国を支えてきた力の源であり、水資源、エネルギー資源を守り、国土保全、都市住民のいこいの場、若者の教育の場の提供等、多面的・公益的機能の発揮に重要な役割を担ってまいりました。このような国民の共有財産と言うべき山村は、国土の約5割にも及んでおり、そこを人口のわずか3パ-セントの住民が守っております。

昨年来の新型コロナウィルスの感染拡大により全国的に極めて困難な状況が続いておりますが、山村地域におきましても農林水産物の需要の減退、観光業・飲食業の不振など計り知れない打撃を被っております。

山村を取り巻く環境は、近年、人口減少・高齢化の進展、これに伴う集落機能の衰退や自然災害・鳥獣被害の多発等により厳しさを増しており、加えて昨年来のコロナ危機の影響もあって、多くの山村が存続の危機に瀕していると言っても過言ではない状況にあります。

一方で近年の頻発する異常気象災害に対して、山村が果たしている環境保全・災害防止の機能及び二酸化炭素の吸収源としての機能が広く国民に再認識されつつあり、若者の田園回帰志向も強まっています。またコロナ禍に直面する中で、都市への人口集中の弊害が深刻に意識され、人口の地方分散の重要性が改めて認識されたところであります。

こうした中で山村振興法により明確に示されている上記の多面的・公益的機能について更なる充実を図ることが重要であり、課題解決に取り組み、山村の活性化、自立的発展を図っていくことは、地方創生や国土保全につながり、ひいては国民生活全体の発展・安定につながるものと言えます。

国におかれては、以上の認識の下に、山村振興を国の重要課題に据えて、下記の事項の実現を図っていただくよう強く要望致します。

 

Ⅰ 新型コロナウィルス感染防止対策と新たな社会の建設

1.新型コロナウィルスの感染や需要減退によって疲弊した農林水産業、地域の観光業、飲食業をはじめ、打撃を受けた産業や地域社会が早期に経済を回復していけるよう強力な支援措置を講じること。

2.新型コロナウィルスの蔓延防止、感染予防措置を徹底するとともに、山村地域における医療施設及びそのアクセスの確保を含めた医療体制を充実強化し、医療関係者を支援すること。

3.地方自治体が行う新型コロナウィルスのワクチン接種が整然と進むようにするとともに、将来にわたって円滑に実施できるよう体制を整えること。

4.都市の過密状態を解消し、感染症等や自然災害に強い安全な社会を建設していくため、新たな国土のグランドデザインを検討するとともに、東京への一極集中を緩和し人口の都市集中防止・地方への分散の流れを作ること。

5.山村地域におけるテレワークの推進のため、サテライトオフィスの誘致及び必要な通信インフラの整備等を進展させるとともに、オンライン教育、オンライン医療を可能とするため、規制緩和・支援など必要な措置を積極的に講じること。

6.山村地域において遅れている5G・光ファイバー網・ケーブルテレビの整備・更新を推進するための予算を拡充するとともに、キャッシュレス決済、電子申請が一般化するよう更に普及を促進し、そのために必要なシステム・機器等に対し支援を行うこと。

7.山村地域における人手不足を解消し、公共交通・物流を確保するため、自動運転、ドローン、ロボット等革新技術の開発・実証・実用化を加速するとともに、これらが早期に実装されるよう支援措置を講じること。

 

Ⅱ 自然災害の被災地の復旧・復興と防災対策の充実強化

1.近年頻発している大規模な自然災害の被災地、特に東日本大震災及び近年の豪雨・台風等の被災地については、関係省庁連携のもと、被害が生じた山村地域における復旧・復興対策を強力に推進すること。東日本大震災被害地については、原発事故放射性物質の除染等を早急かつ的確に行うとともに、除染に伴う廃棄物の処理にも万全を期すこと。

2.近年、気候変動等により、多発・大規模化している災害により山村地域が大きな痛手を被っていることにかんがみ、防災減災、治山治水、砂防等の国土強靭化対策を強力に推進し、災害に強い地域・森林づくりを行うこと。またそのために、将来を見通した十分な財源を確保するとともに、災害発生時の的確な情報提供システムの整備を図ること。

 

Ⅲ 山村振興対策の総合的・計画的推進

1.山村振興法の基本理念にのっとり、山村振興法の目標を達成するため、関係省庁の一層の連携強化のもと、山村振興対策を総合的かつ計画的に推進すること。

2.「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」に基づき、特定地域づくり事業協同組合の設立を推進するとともに、支援措置を充実強化すること。

3.山村における生活の利便性の飛躍的向上を図る観点から、安全性を厳に確保しつつ、ICT、AIをはじめとする革新技術を積極的に導入するとともに、山村での普及に必要な規制緩和に取り組むこと。

4.山村地域において、再生可能エネルギーの導入を促進すること。特に、木質バイオマ

ス産業化のための施設整備・システム開発を図ること。また、FIT制度を充実し、その取組みを地域経済の発展に寄与させるとともに、再生可能エネルギーの発電比率の向上と、送電・熱利用システムの整備を図ること。一方で、太陽光発電・風力発電等の施設の設置については、優良な農地・林地の乱開発を防ぐように措置するとともに、その撤去費用については、事業者の積立てを義務化すること。

5.新型コロナウィルス感染症対策、農山漁村地域活性化対策、森林・林業振興対策、国土保全に資する事業に関する地方財政措置の充実・強化を図ること。

6.山村地域の活性化に不可欠な辺地対策事業債及び過疎対策事業債の十分な確保を図ること。

 

Ⅳ 多面的・公益的機能の持続的発揮・公共事業の推進

1.森林環境税及び森林環境譲与税による森林整備に際し、市町村に対して必要な助言等の支援を行うこと。また、その実施状況を踏まえ効果を検証しつつ、必要がある場合には、譲与基準等について検討を行うこと。

2.2050年カーボンニュートラル・2030年温室効果ガス46%削減目標の達成に向けて、国連SDGsを踏まえ、森林吸収源対策を強化するとともに、「みどりの食料システム戦略」を着実に実行すること。

3.「棚田地域振興法」に基づき棚田地域振興に関する人材確保等の支援を拡充するとともに、里山林等の美しい景観の価値を見直し、その保存・再生を図ること。

4.山村の果たしている重要な役割や木の文化について、児童生徒を含め国民一般の理解を深めるための教育・啓発・普及対策を充実・強化すること。

5.山村地域における農林業の維持・活性化を図る「中山間地域等直接支払交付金」、「多面的機能支払交付金」、「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」を充実・強化すること。

6.計画的な間伐等の森林施業と森林作業道の開設を直接支援する「森林環境保全直接支援事業」、林道等の路網整備を支援する「森林資源循環利用林道整備事業」等を充実・強化すること。

7.「農山漁村地域整備交付金」を拡充・強化するとともに、山村の存立基盤である森林・林業、経済・雇用を支える上で重要な役割を担っている林野公共事業予算について、大幅な拡充を図ること。

8.景観対策、国土保全に資するため、松くい虫対策、ナラ枯れ対策について適切に行うこと。また、侵入竹の駆除及び竹材等の利用推進を図ること。

 

Ⅴ 農林業の振興・地域社会の活性化

  1. ドローン、無人トラクターなどを用いたスマート農業を普及するに当たっては、平地農村

に偏ることなく、山村地域の特色を活かした農業振興につながるようにすること。

また、ICT等を活用したスマート林業を推進すること。

2.山村地域の農業・林業等基幹産業について、意欲と能力のある担い手の育成に関する対策を拡充強化すること。

3.「山村活性化支援交付金」、農泊や農福連携の推進を含む「農山漁村振興交付金」を拡大するとともに、「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」、担い手への農地の集積・集約化等のための「農地耕作条件改善事業」を充実・強化すること。

4.「中山間地農業ルネッサンス事業」を拡大し、山村地域に対して優先的に予算配分を行うとともに、山村地域を優遇する等、山村地域にとって使い勝手の良い制度とすること。

5.森林、農地等の資源を活用した6次産業化の推進、平場とは異なる山村の条件を生かした園芸等の振興、更には、健康等の新たな分野で森林空間を活用する「森林サービス産業」の創出・推進、関連企業の立地・導入等の対策を充実・強化すること。

6.森林の経営管理の集積・集約化等を推進するため、森林経営管理法に基づく新たな森林経営管理制度を地域の実情に応じて運用できるものとすること。

7.「林業成長産業化総合対策」を拡充し、森林所有者等による計画的な森林施業をはじめ、川上から川下に至る林業、木材産業の総合的な振興対策の充実・強化を図ること。また、急傾斜地における架線集材・ヘリ集材を含め、現場の実情に即した間伐などの森林施業を推進するほか、施業の低コスト化、再造林対策を強化すること。

8.世界の木材需給に留意し、木材価格の安定化を図ること。「木材産業・木造建築活性化対策」や「木材需要の創出・輸出力強化対策」等で進められている建築物等における国産材の活用、CLT等の技術開発・普及、地域材を利用した構造材・内装材・家具・建具等の普及啓発、木質バイオマス利用の促進、効率的な木材サプライチェーンの構築や森林認証材の普及を図るため、予算措置を充実・強化すること。また、木材・木製品の輸出・利用促進への支援を充実・強化すること。

9.特用林産物の振興を図るための予算を確保すること。

  1. 山村の地域資源の保全管理・活用や地域振興と併せて、複数の集落を範囲として地域のコミュニティの維持に資する日常の様々なサービスの提供や地域内外の人の呼び込みを行う農村地域づくり事業体(農村RMO)の形成に係る支援の充実を図り、山村地域に人が住み続けられるための条件整備を行うこと。

 

Ⅵ 山村と都市との共生・対流

1.コロナ危機によって疲弊した観光産業を建て直し、インバウンドの活用を含めグリーン・ツーリズムの一層の普及を行うとともに、地域ぐるみで行う受けいれ体制や交流空間の整備、

NPO法人等の多様な取組主体の育成等を総合的に推進すること。

2.若者の田園回帰志向が強まっている潮流を踏まえ、山村地域への移住者、二地域居住者などの定住を促進するとともに、「地域おこし協力隊」を充実・強化すること。また、都市との連携強化による関係人口の増加の取組み、高齢者の地域活動への参加等を充実・強化すること。

3. 「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき空き家についての対策を講ずるとともに、利用を希望する者とのマッチングや利用者の負担軽減等、有効活用について措置を講ずること。

4.自然資源の保護・保全をするとともに、地域資源を生かした教育、ふるさとに愛着と誇りを育む活動であるジオパーク事業に対する支援を充実・強化すること。

5.山村における国民の幅広いボランティア活動を促進する対策を充実・強化すること。

6.山村留学を含め学びや癒しの機能を有する山村での体験を推進すること。

 

Ⅶ 鳥獣被害防止

1.鳥獣被害防止特別措置法等に基づき、技術普及を含む各種鳥獣被害対策を一層充実・強化し、対策に必要な財源を確保すること。

2.地域ぐるみの総合対策を推進する「鳥獣被害防止総合対策交付金」及び広域的な森林被害等に対応する「シカ等による森林被害緊急対策事業」について継続するとともにメニューを充実・強化すること。また、ICTやドローン等の革新技術を活用し、より効果的な鳥獣被害対策に努めること。

3.鳥獣被害対策実施隊の設置促進、猟友会等の民間団体の参加促進、林業分野・関係省庁との連携を促進するとともに被害の深刻さの度合いによっては、防衛省・自衛隊は関係省庁と連携して、協力の可能性を検討すること。

4.捕獲鳥獣の加工処理施設の設置促進、焼却対策を充実・強化するとともに、ジビエ振興対策を講ずること。

 

Ⅷ 情報通信基盤、道路の整備

1.デジタル庁の創設に伴い、山村地域における5G・光ファイバー網・ケーブルテレビの整備・更新を推進するとともに、携帯電話不通地域の解消等デジタルディバイドの解消を図るための通信体系を充実・強化すること。また、ラジオ難聴取地区を解消するとともに、地域の実情に即した通信システムの設置・管理に対し支援すること。

2.5Gを進める上で老朽化した光ファイバー網を更新することは不可欠であるので、公設民営に限らず公設公営の施設についても、更新に対する助成措置を講ずること。

3.2県以上にまたがる県管理の国道整備を含め計画的に道路の整備促進を図るとともに、市町村道の改良・舗装等、山村地域の道路整備を「コンパクト+ネットワーク」の観点に立って促進すること。また、基幹的な市町村道路の整備の都道府県代行に対する助成措置を講ずること。

4.道路整備のための財源を十分に確保し、特に、地方における道路財源の充実を図ること。

5.防災・観光景観上の観点から無電柱化の推進に当たり、財政措置(過疎債)を講ずること。

 

Ⅸ 生活環境の整備

1.山村地域住民の生活交通を確保するため、地方バス路線維持やデマンドバスの導入・運行対策を充実・強化すること。

2.山村の簡易水道等施設の整備を促進すること。

3.山村地域の実情に応じて汚水処理施設の整備を促進すること。

4.廃棄物処理施設の整備を推進するため、助成措置を講ずること。また、廃棄物処理施設の解体に対しては、適切な措置を講ずること。

5.消防力の充実を図るため、消防庁舎・消防施設等の整備及び改修に対する助成措置を講ずること。

 

Ⅹ 医療・保健・福祉

1.オンライン医療を含め、新型コロナウィルス感染症等に対処する医療施設を早急に整備すること。また、医療・保健・介護・福祉の充実、高齢者の職場・住居の確保は、その地域の高齢者のみならず、都市住民の山村地域への定住に不可欠であるとの観点から、都市部との連携の下に対策を充実・強化すること。

2.山村地域の産科医、小児科医を含めた医師の確保に万全を期すこと。へき地診療所等の運営、医療施設・保健衛生施設の整備、医師及び看護師の養成・確保に対する助成措置を充実・強化すること。

3.無医地区への定期的な巡回診療、保健師の配置、救急医療用のヘリコプターを拡充すること。

4.へき地保育所・高齢者等の社会福祉施設・障碍者施設の整備、職員等の養成・確保に対する支援を充実・強化すること。

5.医師について定員配置等の規制的手法の導入、過疎地域や山村地域への一定期間の勤務義務づけを検討すること。

 

ⅩⅠ 教育・文化

1.オンライン教育の環境を早急に整備するとともに、豊かな自然環境や伝統文化等を有する山村の特性を生かした教育を充実すること。

2.公立学校施設整備、スクールバス等の購入に対する助成措置を充実・強化すること。

3.寄宿舎居住費等へき地児童生徒に対する助成措置を講ずること。

4.山村地域の文化財の保護等に対する助成措置を講ずるとともに遺跡発掘等により山村の自然に触れる体験交流活動に対し支援すること。

5.地域の伝統文化・芸能の体験等を通じた子供の育成に努めること。

6.小中学校の統廃合の推進に当たっては、地域活性化の観点に十分配慮すること。

 

ⅩⅡ 貿易交渉について        

貿易交渉及びその実施に当たっては、山村地域の主要産業である農林業に打撃を与えることのないよう、山村地域の住民が誇りを持って農林業を営み、住民が生活を維持できるよう、万全の対応をとること。

 

ⅩⅢ 山村地域の自主性の確立

1.財源保障機能及び財源調整機能を果たす地方交付税制度を充実・強化し、所要額を確保すること。

2.基準財政需要額の算定に当たっては、山村自治体が人口割合に比べて広い面積を有し、国土保全、地球温暖化防止等に重要な役割を果たしていることを考慮し、面積要素を重視するなど、山村地域の実情に即したものとすること。

3.償却資産に係る固定資産税は、山村地域の市町村の重要な財源であり、現行の課税対象、評価額の最低限度を堅持すること。

4.道州制は絶対に導入しないこと。

 

 

○ 緊急事態宣言下での勤務体制について

7月12日から東京に4度目の緊急事態宣言が発令されましたが、緊急事態宣言下においては、過去と同様に、全国山村振興連盟事務局としても、極力在宅勤務に切り替えることとしたいと考えております。

事務所に電話が通じない場合もあろうかと思いますので、そのような場合には、以下の連絡先に電話又はメールをいただければありがたいと考えており

ます。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

 

事務局長 實重重実  電話080-3604-0437

FAX03-3313-1721

メールアドレス kaijaku@allure-h.jp

事務局次長 千葉善行 電話090-5219-2811

メールアドレス yo89chi@kuh.biglobe.ne.jp