全国山村振興連盟メールマガジンNO271

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2024.5.2

全国山村振興連盟事務局

 2024年 4月の農林水産行政

2024年4月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした。

 

1 食料・農業・農村基本法改正案が衆議院を通過

4月19日、食料・農業・農村基本法案が衆議院本会議で与党などの賛成多数により可決された。これに先立つ 4月18日、衆議院農林水産委員会において、同法案は、自民・公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決した。この際、維新の修正案を一部反映し、多収品種の導入促進を法案に追記した。与党と維新が共同で修正を提出し、提出 3党の賛成で可決された。

一方立憲民主党は、法律の基本理念に「農業所得の確保」を加えることなどを 求めて修正案を提出。共産党と国民民主党もそれぞれ修正案を提出したが、いずれも否決された。

参議院では4月26日に本会議で審議入りした。連休明けの5月に農林水産委員会で質疑が本格化する見込みとなっている。

また4月25日、食料・農業・農村基本法改正案の関連3法案(食料供給困難 事態対策法案、農地関連法改正案、スマート農業技術の活用促進に向けた法案) が衆議院農林水産委員会で審議入りした。これらの法案は一括で審議され、政府は5月中の衆院通過を目指している。

 

2 サンマ漁獲枠につき国際新ルールを合意

4月15日から18日の4日間、北太平洋漁業委員会(NPFC)の第8回年次会合が大阪府で開催された。同会合では、サンマの資源管理について、資源水準に応じた漁獲可能量(TAC)を算出する漁業管理規則を今年から初導入することに合意した。ただし、直近の資源水準から算出したTACは、前年との変動幅を10%までとすることとなり、2024年は前年から1割減の22.5万トンとなった。

会議は、日本・ 台湾・ 中国・ ロシアなど加盟する9カ国・地域が参加。サンマのTACは昨年の年次会合で23年から24年の2年間を条約水域(公海)上が15万トン、日本とロシアの排他的経済水域(EEZ)内は10万トン以内に抑え、22年までから25%減の計25万トンへ 削減すると合意していた。しかし引き続き資源状況が極めて悪いことから、公海のサンマTAC は13万5000トン、分布域全体の合計を22万5000トンに削減した。

なお、公海のマサバにも初めて漁獲上限が設定され、10万トンに制限することに合意した。内訳は巻き網8万トン、トロール 2万トンとなっている。

 

3 森林・林業白書で花粉と森林について特集

4月12日、農林水産省は森林・林業白書の本文案を示した。森林・林業白書では、特集を「花粉と森林」とし、このほかに5つのトピックスを設定している。

特集「花粉と森林」では、① 森林資源の利用と造成の歴史、②スギ等による花粉症の顕在化と対応、③花粉発生源対策の加速化と課題、④人と森林のより 調和した関係を目指して、として、森林資源造成の歴史や今後の対策などを紹介した。

またトピックスでは、①国民一人一人が森を支える:森林環境税~森林環境税の課税開始と森林環境譲与税の取り組み状況、②合法伐採木材等をさらに広げるクリーンウッド法の改正、③地域一帯で取り組むデジタル林業戦略拠点がスタート、④G7 広島サミットにおいて持続可能な森林経営・木材利用 に言及、⑤令和6年能登半島地震による山地災害等への対応、を取り上げている。

また各章は、第1章 森林の整備・保全、第2章 林業と山村(中山間地域)、3章 木材需給・利用と木材産業、第4章 国有林野の管理経営、第5章 東日本大震災からの復興、によって構成されている。

 

4 クマを指定管理鳥獣に追加

4月16日、伊藤信太郎環境大臣は 閣議後記者会見で、昨年度に過去最多の人的被害をもたらしたクマを「指定管理鳥獣」に追加したと発表した。環境省の専門家検討会が2月、クマを指定する方針案を決定。中央環境審議会への報告を経て、鳥獣保護法の施行規則を改正し指定した。絶滅の危険が高い四国のツキノワグマを除く。都道府県による捕獲や生息状況の調査事業が国の交付金の対象となる。

環境省によると、23年度のクマによる人身被害の件数は、秋田・岩手・福島 など19 都道府県で198件、被害者219 人。うち死亡した人は、北海道・岩手・ 富山・長野で計 6人だった。農林水産省のまとめでは、22年度のクマによる農作物の被害額は4億700万円で、野生鳥獣による被害の3.2%だった。

 

5 食品輸出額 11年ぶりに減少

4月17日、財務省が発表した2023年度の貿易統計速報(通関ベース)によると、日本の食料品輸出額は前年度比 2.9%減の1兆 1257億円だった。前年度に比べマイナスとなったのは、リーマンショックにより落ち込んだ2012年度以来11年ぶり。円安もあって3年連続で1兆円台に乗せた一方で、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出をめぐる中国の水産物輸入規制に伴う対中輸出減少が大きく響いた。

国・地域別に見ると、東南アジア諸国連合(ASEAN)は 1.9%増の2082億円で1位。2位は米国で14.0%増の1892億円。3位は中国で33.6%減の1631億円と6年ぶりのマイナスとなった。欧州連合(EU)は 9.6%増の592億円だった。

一方、食料品の輸入額は2.9%減の9兆3618億円と、新型コロナウイルス禍で 世界経済が停滞した20年度以来3年ぶりのマイナスとなった。

 

6 その他

(1)1環境直接支払いの創設を農相が表明

4月3日の衆議院農林水産委員会で坂本哲志農相は、環境負荷低減に取り組む 農業者を支援する新たな直接支払い制度について、2027年度を目標に導入すると表明した。「みどりの食料システム法」に基づき認定を受けて有機農業などを行う農業者に対し、取組面積に応じて支払いを行う方向だという。従来の「環境保全型農業直接支払い交付金」は見直し、「みどりの食料システム法に」基づく 仕組みに27年度にも移行する方針。

 

(2) 改正漁港法が施行し、「海業」を後押し

4月1日、改正漁港漁場整備法が施行された。漁港施設等活用事業の創設を柱とし、「海業」の取り組みを後押しする。漁港施設等活用事業では、農林水産大臣が策定した基本方針に基づき、地方公共団体など漁港管理者が地域水産業の実態を踏まえて事業内容・区域などを決めた漁港施設の活用推進計画を定める。 これに基づき、民間企業・漁協などの事業者が事業計画を申請し認定されると、 漁港施設の長期貸付け、漁港区域内の水域公共空き地の長期専用(いずれも30年)、遊漁・漁業体験・体験活動などに必要な施設についての漁港水面施設運営権(みなし物権)の取得など各種の特別措置が受けられる。

 

(3) 坂本農相が能登半島を視察

4月13日、坂本哲志農相は石川県能登半島に赴き、能登半島地震により甚大な被害を受けた白米千枚田を含む農地や漁港などの現場を視察し、その際農業・漁業の関係者から被害状況や対応状況を聴いた。白米千枚田については、田面の亀裂、用水路の崩壊などが多く見られるためMAFF- SATを派遣し、石川県と連携して被害の全容把握を行い、輪島市の白米千枚田愛好会をはじめとする地元の意向を踏まえ、復旧に向けた支援を進めることとしている。本年は400ヘクタールのうち40アール程度しか作付けできない見込みであるが、来年にはすべての棚田で作付けができるようにしたいと農相は語った。

また蛸島漁港を視察した。蛸島漁港については隆起はないものの岸壁が海側に傾斜したり、亀裂が走っているなどの状況となっており、復旧には時間がかかると見られるものの、石川県をはじめとする関係者と連携し、1日も早い生業再建に向けて対応したいと述べた。

 

(4)農水省関連の56基金事業の点検・ 見直し結果を公表

4月22日、デジタル行財政改革会議において、基金の点検・見直しについて結果が報告された。これは昨年12月、岸田総理から基金全体の点検を行うよう指示を受けたことに基づくもの。

農林水産省関係では、所管する56基金事業の点検・見直しを行った結果、新たに目標設定した20事業を含むすべての事業について、定量的な成果目標を設定した。また、当面必要とされる資金を上回る使用見込みのない資金を有するとされた15事業については、使用見込みのない部分について速やかに国庫返納することとなった。

具体的には、野菜価格安定対策事業や収入保険の財源となる基金で新たに終了時期を設けたほか、「地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立基金」については、2024年度中に廃止することとなった。

原則として、すべての基金に終了時期が設けられており、終了時期は基金の設置から10年以内とするか、すでに10年を超える場合は遅くとも26年度末までとされた。一方、「産地パワーアップ事業基金」「畜産・酪農収益力強化総合対策基金」などTPP対策の4基金及び畜産関連の3基金については、TPP合意の受け入れ経緯等も考慮し、終了時期を設定しないこととなった。