全国山村振興連盟は、平成29年2月17日(金)午前10時30分から千代田区永田町の全国町村会館2階ホールにおいて平成28年度第3回理事会を開催した。
最初に、宮腰光寛 会長から挨拶があり、次いで、理事の吉野正芳 衆議院議員、金子恭之 衆議院議員、石田祝稔 衆議院議員、佐々木隆博 衆議院議員及び谷公一 衆議院議員から挨拶がなされた。
来賓として出席された農林水産省農村振興局 圓山満久 地域振興課長、国土交通省国土政策局 長谷川貴彦 地方振興課長、総務省地域力創造グループ 飯塚秋成 地域振興室長及び林野庁森林整備部 今泉裕治 森林利用課長から挨拶がなされた。
その後議事に移り、竹﨑一成会長代行が議長を務め、「第1号議案 平成29年度事業計画(案)に関する件」、「第2号議案 平成29年度予算(案)に関する件」、「第3号議案 平成30年度以降の普通会費の改定(案)に関する件」、「第4号議案 監事の選任に関する件」及び「第5号議案 役員の選任並びに承認に関する件」について審議が行われた。
理事会の内容は、次の通りとなっている。
【宮腰光寛 会長 (衆議院議員)の挨拶要旨】
皆さん、おはようございます。本日の理事会に振興山村を抱える市町村の役員の方々全国からお集まりをいただきまして本当に有難うございます。また、山村の振興に強い思いでご支援をいただいている国会議員の同志の先生方にも国会開会中にもかかわらずご出席を賜りまして本当に有難うございます。また、農林水産省、林野庁、国土交通省、総務省の幹部の皆さまにもご出席を賜りまして本当に有難うございます。
今、国会においては、山村振興関係を含む予算、税制の審議が進められています。
私ども、全国山村振興連盟に加入する国会議員としましては、一昨年の通常国会で山村振興法を改正させていただきました。昨年の通常国会において森林法の改正も行わせていただきました。昨年秋の臨時国会ではこれも全会一致で鳥獣被害防止特別措置法の改正を行いまして、銃刀法の技能講習に係る規定の適用除外の期間をさらに5年間延長するなど法律の拡充を行いました。
予算につきましては、お蔭様で山村活性化支援交付金の一定の増額、農山漁村振興交付金の増額も勝ち取ることができました。まだまだ不十分だとは思いますが、実績をしっかり挙げつつ、予算のさらなる拡充を図っていかなければいけないと思っています。
税制面では、山村税制特例の2年延長も実現しました。また、長年にわたる大きな課題である森林環境税について年末の税制改正大綱において「30年度の税制改正において結論を得る。」ということになりました。これは皆様方の強力な要請活動の賜物であるというふうに思っています。この税につきましては、市町村の財源とするということになっています。ただ、現在、相当数の都道府県において森林環境税を措置しているわけでありまして、都道府県との調整というのがこれからの大きな課題となってくるというふうに思います。
私どもの団体の特徴は、山村地域の首長さん方と超党派の国会議員が一緒になって山村振興を進めていくところにあり、一致した形で強力に山村振興を進めていくことが可能になっていると思っています。これからも皆様方と力を合わせて山村振興に頑張っていきたいと考えています。
本日は、来年度の事業計画及び予算、並びに6月19日以降の役員の改選等につきましてご議論していただくことになっております。是非しっかりとご議論賜りますようお願い申し上げてご挨拶とさせていただきます。
【吉野正芳 理事(衆議院議員)の挨拶要旨】
今、宮腰会長からお話がありました森林環境税、本当は29年度税制改正大綱で決まるわけでありましたが、根回しが不十分であったために一年遅れてしまいました。でも、都会からお金をいただいて地方に回すというこの再配分の理念をきちんと形に表したものが森林環境税でございます。そして、特に市町村が森林整備の主役になる、市町村に全額、林野庁は一円もポケットに入れません、全額市町村に入れるということでございます。ただ、ハードルがございます。それは知事会です。今まで森林整備を担ってきたのは県である、市町村に本当にできるのか、というのが県としての一番大きな心配であります。自負も県としてはあるわけですが、そうではなくて、現場に住んでいる市町村がその森林整備を担うべきで、そこへの支援という形での森林環境税であります。そういう意味でまだまだハードルは高いです。特に都会の知事の方々を総務省が一生懸命根回ししているところでございます。なかなか理解を得ることもまだ不十分でございます。基本的には都会からいただいて私達が使うとことになっていますので、これからもご支援の程よろしくお願いします。
【金子恭之 理事(衆議院議員)の挨拶要旨】
昨日、自民党の山村振興特別委員会を開かせていただきました。私の地元で昨年無投票で再選された竹﨑会長代行をはじめ3名の副会長にご出席を賜りました。
2年前に超党派で与野党皆で一緒になって充実強化しました山村振興法改正から2年が経ちました。先ほど、宮腰会長からお話しがありましたように、様々な方面で一歩一歩前に進んでいるものだと思っています。
特に今審議中の来年度予算におきましては、山村振興関係予算、関係省庁で様々な取り組みをしております。中山間地域ルネッサンス事業が新たに加わり、あるいは2年前の法改正の時に我々が勝ち取った山村活性化支援交付金も昨年からさらに上積みということでございます。私もその当時から、皆さん方の要望の中で勝ち取った交付金ですので、できるだけ皆さん方に利用していただきたいということでお願いをしたわけでございますが、初年度はなかなかソフト事業というのは現場の皆さん方にとっても厳しい状況の中で国、県からもご指導をいただきながら手を挙げさせていただいたわけででございます。ようやくその有用性というか、他の市町村が取り組んでいる姿を見て、ちょっと我々も乗り遅れるわけにはいかないということで、ばたばたと手が挙がってまいりまして、逆に待機待ちというのも出てきたような状況です。そういう要望が出れば出るほど、昨年から3千万円上乗せになるわけでございますが、しっかりとソフト、ハードを合わせた対応ができていければいいのではないかと思います。
今後とも超党派で理事の皆さんと協力しながら、宮腰会長を先頭に皆さん方とともに頑張ってまいりたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
【石田祝稔 理事(衆議院議員)の挨拶要旨】
私も公明党の政務調査会長の立場でしっかりと皆さんのご要望が実現するよう頑張ってまいりたいと思います。
吉野先生からも森林環境税のお話しがありましたが、私は、県の知事さんが市町村が出来るのかというような失礼なことではいけないのであって、応援するからやろうではないかと言わなければいけない。これは応援してお互いに地元を信頼してしっかりと取り組んでいけるよう皆さんと一緒になって私達も頑張ってまいりますので、よろしくお願い致します。
【佐々木 理事(衆議院議員)の挨拶要旨】
野党という立場もあって、一言お話しさせていただければ、農林漁業についての振興にはわりと皆さん熱心でありますが、私は必要なのは農山漁村の振興だと思います。森林環境税というのはまさにそういった意味の税金であります。村をどう発展させるかということと農林漁業を発展させることは切り離してしまってはいけない、一体のものです。山村振興連盟という村の文字が入っています連盟ですからそういった意味でしっかりと取り組んでいきたいと思います。是非、ご指導をお願い致します。
【谷 理事(衆議院議員)の挨拶要旨】
今、過疎法の改正を国会に提出すべく準備しています。一昨年の国勢調査の人口が昨年秋に確定しましたが、全国で20団体を新たに過疎団体に追加する。また、過疎債の対象事業も市町村立の専修学校、各種学校、中学校などの整備を新たに追加するというような改正で、佐々木先生のご理解も得ながら全党派一致して委員長提案ということで年度末までに成立するようしっかりと頑張っていきたいと思っています。森林環境税はいよいよ正念場ですし、山村と過疎は地域が相当ダブりますし、しっかりと頑張ってまいりたいと思います
【圓山満久 農林水産省地域振興課長 挨拶要旨】
農林水産省の予算関係についてご紹介します。
山村振興に直接使っていただく山村活性化支援交付金については、対前年度比3千万円増の7億8千万円計上しています。現在、94市町村、101地区においてこの交付金を使っていただいています。地域の資源を活用した産品の開発、売り先の確保、体制の整備といったものを進めていただいています。
また、山村振興税制については、2年間の延長が認められています。これについては使用実績を挙げることが非常に重要でして、ご出席の市町村長の皆様におかれては引き続きご配慮をお願いしたいと思います。
また、農山漁村振興交付金、これはハードに使える予算ですが、対前年度20億円増の101億円を計上しています。農泊、いわゆる農村にいろいろと人を呼び込んで宿泊していただく、こういったような対策をこの中で支援してまいりたいと思います。
中山間地域の農業に光を当てるといった点で、中山間地域ルネッサンス事業を創設しています。各種支援事業をはじめとして約400億円の優先枠を設定して中山間地域の取組みを支援するというものです。
鳥獣被害防止対策については、対前年度同額の95億円を計上しています。足りないのではないかという声があるかもしれませんが、28年度の補正予算で9億円を別途計上しています。また、中山間地域所得向上支援事業も28年度の補正予算で計上していますが、この中で被害防止柵といったものができるようになっています。こういったものを少しづつ工夫して予算確保に努めてまいりたいと思っています。
【長谷川貴彦 国土交通省地方振興課長 挨拶要旨】
国土交通省としては、山村振興に向けて、道路などの基本的なインフラ整備、河川事業などによる安全確保、地域交通の関係、住まいの関係といった幅広い分野で取組みを進めさせていただいています。今日配布されている参考資料を後程ご覧いただければ予算関係の数値も示されいます。例えば、柱となります社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金については、それぞれ8,940億円、1兆1,057億円の予算を計上しています。
またこの他、デマンドバス、コミュニティタクシーなどの運行・整備費用、あるいは「小さな拠点」を形成するリフォームの費用等についても予算を計上しています。
また、目新しいものとして、こうした従来からのインフラ整備に加えて、新技術のの活用といったものも山村地域においても進めていきたいと考えています。
一つ目は、大臣直属の組織を省内に設置して、自動運転技術を活用して道の駅から周辺の集落まで自動交通のシステムを活用しようという研究の取組みを進めています。
実証実験といったものを今後進めていく予定にしています。
もう一つは、ドローンの関係で、ドローンを使った買い物支援というようなことも既に社会実験を開始しています。
こうした新技術の活用を含めて引き続き山村振興に向けて取り組んでまいりたいと考えています。
【飯塚秋成 総務省地域力創造グループ地域振興室長 挨拶要旨】
総務省においては、地方公共団体が地方創生に意欲的に取り組んでいただけるよう様々な施策に取り組んでいます。地域の資源と資金を活用して地域に雇用を創出する「ローカル10,000プロジェクト」におきましては、各地に好事例が生まれています。エネルギーの地産地消を進める「分散型エネルギーインフラプロジェクト」も事業化の段階に入りつつあります。
さらに、「地域経済好循環推進プロジェクト」を進める施策として「チャレンジふるさとワーク」に本格的に取り組んでまいります。具体的には、地域で一定期間働きながら田舎暮らしを学ぶ「ふるさとワーキングホリデー」、地域特性を生かしたサテライトオフィスの誘致戦略を作成する「お試しサテライトオフィス」をはじめとする諸施策を展開して地域の人・情報の流れを加速化してまいりたいと思っています。
また、「地域おこし協力隊」については、隊員数、受け入れ自治体数とも着実に増加して、平成28年に活躍した隊員数4,158人になりました。これまでの活動実績を見てみますと、隊員の約7割が20歳代~30歳代、また、4割が女性ということで、若い人の感性、女性の活躍により地域を元気にしている施策となっていると存じます。今後とも、研修の充実、起業支援といったことにより人材が地域に定着して活躍できる環境づくりに努めたいと存じています。振興山村の自治体においても大いに活用していただければと存じます。
29年度の地方財政につきましては、地方が地方創生等の重要課題に取り組みつつ安定的な財政運営を行うことができるよう、地方交付税等の一般財源総額について、28年度を0.4兆円上回る額を確保し、地方交付税の総額16兆3,298億円を含めて62兆803億円を確保しています。
この他、過疎対策事業を充実させるため、前年度比300億円増の4,500億円を地方債計画に計上するとともに、有害鳥獣対策など山村振興対策についても引き続き地方財政措置を講じているところです。
また、ICT関係の施設整備についても、補助事業について所要額を29年度予算案に計上し、引き続き、地方公共団体に対する支援を講じていく予定です。
【今泉裕治 林野庁森林利用課長 挨拶要旨】
山村地域の大きな資源である森林資源を循環利用して、山村地域の振興そして地方創生を図っていくことが林野庁としても重大な使命というふうに思っていまして、林業の成長産業化の実現に向けて施策を推進しているところです。
29年度の予算案においては、森林整備事業、治山事業といった公共事業の他、木材加工流通施設の整備、間伐、路網整備の一体的な実施や、CLTなどの木材の利用促進、施業の集約化の加速化などへの支援に所要の額を確保しています。
特に、次世代林業基盤づくり交付金の中で、収益性の高い経営を実現する林業成長産業化地域をモデル的に選定し、地域が提案する明確なビジョンの下での取り組みを重点的に推進することとしています。
また、先ほどから宮腰会長はじめ役員の先生方から重ねて力強いお言葉をいただいている森林環境税については、昨年の与党税制改正大綱において「市町村が主体となって実施する森林整備等の財源に充てる森林環境税の創設について、具体的な仕組み等について総合的に検討し、平成30年度税制改正において結論を得る。」ことが明記されたところです。林野庁としては、関係の先生方のご指導をいただきながら関係省庁と連携して、また、地域の皆さんのご意見も伺いながら、大綱に示された、市町村が主体となった森林整備の新たな仕組みを具体化していくこと、地方自治体そして幅広い国民の皆様のご理解をいただくことに全力を挙げて取り組んでいきたいと思っています。皆様方のご支援をいただきますようよろしくお願いします。
また、総務省のご協力によりまして、29年度の地方財政計画においても森林吸収源対策等の推進に向けた林地台帳の整備の推進、森林所有者・境界の明確化などの地域の主体的な取り組みに要する経費を計上していただいているところです。29年度は、森林整備等に関して一定の知識を持つ林業技術者、例えば都道府県のOBといった方を想定していますが、市町村に雇用していただき、そして地域の林政に役立っていただくといった取組みを対象に追加していただいています。会員の市町村におかれましても是非積極的に活用していただきたいと思っています。
◎挨拶をいただいた方以外の政府関係の出席者(敬称略)
林野庁森林利用課山村振興・緑化推進室長 木下 仁
農林水産省農村振興局地域振興課課長補佐 三重野信
農林水産省農村振興局地域振興課調整係長 国広博昭
国土交通省国土政策局地方振興課課長補佐 藤澤貴充
林野庁森林利用課山村振興・緑化推進室課長補佐 高畑啓一
林野庁森林利用課森林環境教育推進官 近藤美由紀
【議 事】
竹﨑会長代行の議長のもとに議事が進められた。
○ 第1号議案 平成29年度事業計画(案)に関する件
岸 事務局長が内容の説明を行い、原案通り承認された。
○ 第2号議案 平成29年度予算(案)に関する件
岸事務局長が内容の説明を行い、原案通り承認された。
〇 第3号議案 平成30年度以降の普通会費の改定(案)に関する件
岸事務局長が内容の説明を行い、原案通り承認された。
〇 第4号議案 監事の選任に関する件
長野県小谷村長 松本久志 氏が監事に選任された。
任期は、平成29年4月17日から6月18日まで。
〇 第5号議案 役員の選任並びに承認に関する件
平成29年6月18日をもって役員全員が任期満了となるが、理事会において選任並びに承認が必要となる会長及び監事並びに規約第5条第2項に定める理事(道府県支部長以外の理事)について審議が行われ、山野副会長から次のような提案があり、提案どおり選任並びに承認された。
会長:現 宮腰光寛 会長(衆議院議員)を再任する。
監事:現 辻一幸 監事(山梨県早川町長)及び現 松本久志 監事(長野県小谷村長)を再任する。
国会議員の理事:会長に一任する。
常務理事:現 岸 廣昭 常務理事を再任することを承認する。
平成29年度事業計画は次のとおりとなっている。
平成29年度事業計画
山村は、農地・森林の持つ国土保全・環境保全、地球温暖化防止等の役割がますます重視され、また、都市住民等の憩いの場としての豊かな自然環境への期待が高まっている。一方、山村では、少子化・高齢化の進行、定住人口の減少、鳥獣被害の増大等山村の維持・存立自体が懸念されている。
平成29年度においては、このような情勢を踏まえ、山村振興法、農山漁村活性化法、鳥獣被害防止特措法等に基づく施策並びに新たな山村振興施策の推進について、政府、国会、国民の理解と支援を得るとともに、全国町村会等関係団体との連携を密にし、振興山村市町村の一層の連帯の強化を図るため、以下の事業を実施する。
1.山村振興政策に関する提言及び政府予算対策
山村の持続的発展を図るための山村振興政策が適切に実施され、山村振興対策の総合的推進に必要な予算、地方財政措置が確保されるよう、農林水産省、国土交通省、総務省をはじめ関係各省庁、関係各党と十分連絡を取りつつ、山村振興施策に関する提言を行うとともに政府予算確保運動を行う。
2.山村をめぐる諸問題についての情報の収集、調査、検討
山村振興対策に関する提言、山村市町村に対する情報の提供等を行うため、山村をめぐる諸問題についての懇談会の開催、各種情報の収集及び調査並びに分析・検討を行う。
3.山村振興を図るための啓発・普及活動の推進
山村振興の重要性について広く国民の理解と協力を得るため、関係団体との連携、
ホームページによる情報提供、冊子の発行等を行う。
4.山村振興対策の計画的推進
山村振興対策の計画的推進を図るため、振興山村市町村及び都道府県の山村振興実務担当者並びに支部の担当者を対象に、山村振興計画の作成、山村振興施策推進等に資するための研修会を実施する。
5.会員等への情報の提供
山村振興情報(年間6回)の発行、ホームページ等により、会員、関係方面に対し山村振興に関する情報を提供する。
6.山村振興全国連絡協議会への助成
協議会の運営費の一部を、前年度同様助成する。
7.各種会議会合等
平成29年11月に通常総会、7月、10月及び平成30年2月にそれぞ副会長会議及び理事会を開催する。
また、平成30年1月に支部事務局長会議を開催する。