平成16年度事業報告

1.山村振興法延長に向けての取り組み

(1)山村振興法延長問題検討委員会における検討

平成15年7月以降、副会長を構成員とする山村振興法延長問題検討委員会において3回にわたり山村振興法の延長問題に関して学識経験者の意見も参考として検討を行い、その結果を自民党山村振興委員会に対する要望活動等に反映させた。

(2)決議及び要請活動

理事会、総会において山村振興法延長を要望事項として決定し、政府、国会議員に対して、要望活動を行った。

① 平成16年5月通常総会と総会終了後の要請活動

山村振興法延長と内容の充実に関する特別決議を行い、関係方面に要望活動を行った。

② 平成16年12月臨時総会と総会終了後の要請活動

山村振興法延長と内容の充実に関する要望書及び認定法人に対する課税の特例措置の継続実施等に関する要望書により関係方面に要望を行った。

③ 平成17年2月理事会前後の要請活動

平成17年2月から3月、特に2月25日の理事会の前後に「山村振興法の延長に向けて」(パンフレット)、「山村振興法の延長と内容の充実に関する要望書」及び「山村振興法延長・改正に関する要望事項」を用いて、各支部及び連盟本部が一丸となって、地元選出国会議員、自民党、公明党、民主党、社民党、共産党の農林水産委員会委員等関係議員に対して要請活動を行った。

(3)自民党山村振興委員会、農林部会への対応

① 第1回委員会(16.11.10)

副会長5名が出席し、髙橋及び吉村副会長が代表して要望を行った。

② 現地調査(17.1.30~31)

熊本県小国町において現地調査が行われた。
熊本県支部、大分県支部の会員、吉村副会長、米田事務局長他が参加した。

③ 第4回委員会(17.2.8)

山村振興法改正大綱が了承された。吉村副会長が出席し、大綱取りまとめに対するお礼を述べるとともに、会員市町村長が今後関係方面に延長実現に向けて一層の働きかけをしていく決意を表明した。

④ 山村振興委員会(第5回)、農林部会等合同会議(17.2.24)

山村振興法改正法案が了承された。この会合に副会長、理事等11人の市町村長が出席した。
(第2回、第3回の委員会については、米田事務局長他事務局が対応した。)

(4)会員等に対する情報提供

① 山村振興速報による情報提供

ア総会、理事会の決定事項の内容をその都度掲載した。
イ「山村振興法の延長に向けて」と題する記事を平成16年10月1日号に掲載した。
ウ自民党山村振興委員会が開催される都度、その内容を掲載した。
エ国会において審議された山村振興法の一部改正する法律案の内容、審議状況を掲載した。

② 文書による各支部を通じての情報提供

ア山村振興法延長問題検討会における論点整理等を各支部に連絡した。
イ節目節目で山村振興法延長をめぐる状況について情報提供した。

(5)山村振興法延長の実現

自民党山村振興委員会(委員長:若林正俊参議院議員)における検討結果等を踏まえて、衆議院農林水産委員会山岡賢次委員長から「山村振興法の一部を改正する法律案」が提案され衆議院農林水産委員会、同本会議、参議院農林水産委員会及び同本会議において全会一致で可決され成立した。

【参考】山村振興法延長の経過及び改正の概要

1.自民党山村振興委員会における取り組み

自民党山村振興委員会(委員長:若林正俊参議院議員)においては、山村振興法の延長に向けて次のような取り組みが行われた。

第1回(16.11.10 ): 連盟からの意見聴取。山村の現状等
第2回(16.12.1) : 山村振興法延長に向けた検討課題
第3回(16.12.21) : 山村振興法改正事項案を説明・了承
現地調査(17.1.30~31): 熊本県小国町での現地調査。6人の国会議員が参加
第4回(17.2.8): 現地調査報告、山村振興法改正大綱説明・了承
第5回(17.2.24 農林部会等との合同会議): 山村振興法改正法案を了承

その後、3月1日の政調政策審議会及び総務会において山村振興法改正法案が了承され、また、与党政策責任者会議において了承された。
なお、自民党税制調査会が平成16年12月15日に取りまとめた「平成17年度税制改正大綱」に認定法人に対する課税の特例措置の2年延長が盛り込まれた。

2.政府における取り組み

国土交通省の国土審議会山村振興対策分科会が2月9日(水)に開催され、山村振興対策継続実施等について関係大臣に意見具申がなされた。

3. 国会における山村振興法の一部を改正する法律案の審議

(1)(衆)農林水産委員会

3月17日(木)の(衆)農林水産委員会において山岡賢次委員長から「山村振興法の一部を改正する法律案」についてその趣旨及び内容が提案され、全会一致で可決された。
その際、島村農林水産大臣から「政府としては、山村地域の社会経済情勢にかんがみ、本法律案について特に異存はないところであり、可決された暁には、関係府省と連携を図りつつ、その適切な運用に努め、山村地域の一層の振興を期してまいる所存である。」旨の発言がなされた。

(2)(衆)本会議

3月17日(木)の衆議院本会議において山岡農林水産委員長から提案が行われ、全会一致で可決された。

(3)(参)農林水産委員会

3月22日(火)の(参)農林水産委員会において山岡賢次衆議院農林水産委員長から「山村振興法の一部を改正する法律案」についてその趣旨及び内容が提案され、全会一致で可決された。

(4)(参)本会議

3月23日(水)の参議院本会議において中川義雄参議院農林水産委員長から委員会において全会一致で可決すべきものとされたとの報告があり、全会一致で可決された。

(5)公布

3月30日の官報に山村振興法の一部を改正する法律が公布された。

4.山村振興法改正の内容

(1)法期限の延長(附則第2項関係)

山村振興法の法期限を10年間(平成27年3月31日まで)延長し、特例措置を継続する。

(2)計画体系の変更(第7条の2、第8条、第9条関係)

地域の創意工夫を生かし、地域の主体的な振興を促進するため、計画体系を変更し、山村振興計画の策定主体を市町村とし、都道府県は新たに山村振興基本方針を定める。

(3)認定法人制度の拡充(第12条関係)

山村における農林産物製造・加工・販売、都市等との交流を促進するため、認定法人の事業範囲を、森林・農用地等の保全事業、農林産物製造・加工・販売事業及び都市等との交流事業とし、認定者を市町村とする。

(注1)現行制度は、農林産物製造・加工・販売事業及び都市等との交流事業については、保全事業と併せ行うものに限定されている。認定者は都道府県となっている。
(注2)認定法人が保全事業等の用に供するために認定計画に従って新たに取得し、又は製作し、若しくは建設した機械及び装置並びに建物及びその附属設備については、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)の定めるところにより、特別償却を行うことができることとなっている。(第13条)

(4)配慮規定の拡充・追加

以下の配慮規定の拡充又は追加を行う。

① 情報の流通の円滑化及び通信体系の充実(拡充)(第18条関係)
情報通信が産業振興のために重要であることを明記するとともに、高度情報通信ネットワーク等の充実を図る規定を明記する。

② 医療の確保(拡充)(第19条関係)
ドクターヘリ等医療機関の協力体制の整備に関する規定を追加する。

③ 都市と山村の交流(新設)(第21条の2関係)
都市と山村との間の交流の促進、教育のための森林の利用の促進等を図る規定を追加する。

④ 鳥獣被害の防止(新設)(第21条の3関係)
生活環境の保全、農林水産業の振興等を図るため、鳥獣被害の防止について適切な配慮をする旨の規定を追加する。

2.政府予算対策

(1)平成17年度予算編成の経過

平成17年度編成は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2004」(平成16年6月4日閣議決定)及び「平成17年度予算編成の基本方針」(平成16年12月3日閣議決定)に基づいて、「一般会計歳出及び一般歳出の水準について、実質的に前年度の水準以下に抑制してきた従来の歳出改革路線を堅持・強化する。」との基本的な方針の下で行われた。
財務省原案は12月20日各省庁に内示され、21日及び22日の復活折衝を経て、12月24日午前の閣議において政府案が決定された。
一般会計の総額は、82兆1,800億円(前年度比0.1%増)、このうち一般歳出47兆 2,800億円(前年度比0.7%減)、国債費18兆4,400億円(前年度比5.0%増)、地方交付税 等16兆889億円(前年度比2.5%減)となっている。
また、同時に公表された平成17年度地方財政対策の概要では、地方財政計画の規模 83兆7,700億円程度(前年度比1.1%減)、地方交付税16兆9,000億円程度(前年度比0.1%増)となっている。。
なお、平成17年度の予算編成の焦点の一つである三位一体の改革については、「基本方針 2004」において、税源移譲は概ね3兆円規模を目指し、その前提として地方6団体に対して国庫補助負担金改革の具体案の取りまとめを要請し、これを踏まえて検討するとされた。地方6団体から8月に「国庫補助負担金等に関する改革案」が総理大臣に提出された。これには、3兆円規模の税源移譲に見合う国庫補助負担金の廃止具体案が盛り込まれている。その後、政府と地方6団体、政府間、政府と与党との間で調整が行われ、11月下旬、平成18年までの改革の全体像に係わる政府・与党協議会の合意が行われた。この合意では、地方向け補助金3兆円の廃止・縮減等、概ね3兆円規模の税源移譲、地方交付税の改革等が盛り込まれた。この合意に基づき、平成17年度予算においては、税源移譲に結びつく改革として1兆1,239億円、地方の裁量度を高める自主性を大幅に拡大する改革(交付金化の改革)として3,430億円、国・地方を通じた行政のスリム化の改革として3,011億円、合計1兆7,681億円の改革が実施されている。

(2)自民党山村振興委員会における取り組み

自民党山村振興委員会においては、16年8月下旬(委員長代理:松岡利勝衆議院議員)の委員会において関係各省庁山村振興関係予算の概算要求の内容を聴取し、政府と党が一体となって予算確保に向けて努力することとされた。
財務省原案内示後の12月21日に委員会(委員長:若林正俊参議院議員)を開催し、内示、復活要求の概要を聴取するとともに、復活要求重点事項として「中山間地域等直接支払交付金」(農林水産省農村振興局)及び「間伐等推進総合対策の円滑化のための予算(森林づくり交付金)」(林野庁)を決定し、関係方面への働きかけを行った。

(3)自由民主党農林水産合同会議及び農政推進協議会における取り組み

12月20日の自由民主党農林水産合同会議において農林水産省関係の内示の概要の 聴取が行われ、引き続いて開催された農政推進協議会(座長:野呂田芳成 総合農政調 査会長)において関係団体からの重点復活事項の要望が行われた。全国山村振興連盟か らは「中山間地域等直接支払交付金」(農林水産省農村振興局)、及び「間伐等推進総合 対策の円滑化のための予算(森林づくり交付金)」(林野庁)の復活を要望した。

(4)全国山村振興連盟の取り組み

全国山村振興連盟としては、平成17年度の予算編成、税制改正に向けて、5月の通常総会、7月の理事会及び12月の臨時総会の際に政策・予算要望事項を決定し、国会及び関係省庁に対して要望活動を行ってきた。
財務省原案内示後においては、事務局において情報の収集、自民党の関係委員会、農政推進協議会等へ出席して情報の収集を行った。

(5)平成17年度山村振興関連関係省庁予算概算の決定

関係省庁の「平成17年度山村振興関連関係省庁予算概算決定額」は別表のとおりである。また、平成17年度地方財政対策の概要が予算の内示に際し総務省自治財政局から公表された。

(6)平成17年度税制改正

平成16年度末で期限の到来する山村振興法に基づく森林、農用地等の保全事業等を行う認定法人に係る特別償却等の特例については、農林産物の製造・加工事業等を単独で行う場合を追加して平成18年度までの2年延長が認められた。なお、本制度の償却率が15%から13%に引き下げられた。
環境税については、自民党税制調査会の平成17年度税制改正大綱の中に検討事項として「京都議定書の平成17年2月発効とそれに伴う我が国の責任を踏まえ、地球温暖化推進大綱の評価、見直しにも考慮を払いつつ、環境と経済の両立を図ることが重要である。このため、あらゆる政策的手法を総合的に検討した結果を受けて、いわゆる環境税については、必要に応じ、あるべき姿について早急に検討する。」と盛り込まれた。

3.山村をめぐる諸問題についての情報の収集、調査、検討

山村をめぐる諸情報を関係省庁をはじめ各方面から収集し整理を行った。
また、町村長副会長及び若干の理事等が出席して「森林・山村対策に関する懇談会」を平成17年2月24日に開催し、「山村に係る地方財政対策について」をテーマとして 総務省自治財政局 務台俊介調整課長から、また、「中山間地域等直接支払制度について」をテーマとして農林水産省農村振興局地域振興課 水間史人中山間地域振興室長から説明を聞き、意見交換を行った。その内容については、冊子「森林・山村対策について(Ⅵ)」 として取りまとめ会員に配布した。

4.山村振興を図るための啓蒙・普及活動の推進

全国山村振興連盟のホームページに全国山村振興連盟の概要、振興山村の状況、山村からの提言、山村へのメッセージ、山村振興施策等について最新の情報を掲載した。
また、「山村振興法の延長に向けて」と題するパンフレットを作成し、関係方面に配布した。

5.「第13回ふるさと山村フォトコンテスト」の実施

農林水産省との共催で「第13回ふるさと山村フォトコンテスト」を実施し、「日本のふるさと美しい山村」をテーマとして、山村における生活、祭事、山村の美しい景観など幅広い分野を対象に、生活感・季節感あふれた山村の姿を伝えるものであって、山村の「魅力」と未来への活力の「いぶき」を感じさせる作品を募集した。
平成16年7月1日から9月30日までの募集期間中に、全国から435名、1,190点の応募があった。
平成16年11月2日(火)審査委員による審査選考が行われ、その中から、農林水産大臣賞、全国山村振興連盟会長賞それぞれ1点をはじめ計27点が入賞作品として選ばれ表彰された。

6.山村振興対策の計画的推進

振興山村における山村振興対策を計画的・効果的に推進するため、国の山村振興対策等の事業を予定している市町村の山村振興担当者、都道府県の山村振興担当者及び連盟支部の担当者を対象として平成16年6月10日、全国町村会館ホールで山村振興実務研修会を開催し、約100名が参加した。
この研修会では、農林水産省農村政策課の担当官から山村振興法の内容及び今後の山村振興の課題等について講演が行われた他、農林水産省地域振興課、林野庁計画課、総務省地域通信振興課、国土交通省地方道・環境課及び環境省廃棄物対策課の担当官から所管の事業について講演が行われた。

7.第30回全国山村振興シンポジウムの開催

群馬県、全国山村振興連盟群馬県支部との共催で第30回全国山村振興シンポジウムを平成16年10月21日、22日の両日、群馬県利根村の「利根村観光会館」において『自立と持続~分権新時代の新たな山村ビジョンの模索~』をテーマに開催した。
シンポジウムには、中條康朗農林水産省農村振興局次長、吉田修自由民主党政務調査会事務副部長、鮫島信行関東農政局次長、飯髙悟農林水産省農村政策課長、新井ゆたか林野庁森林総合利用・山村振興室長、宇都宮信也関東農政局農村振興課長、農林水産省農村政策課、全国町村会経済農林部、都市農山漁村交流活性化機構、地球緑化センターなど多数の来賓、全国各地からの会員等約280名が出席した。
開会式に先立ち、群馬県人口200万人記念映画として1996年に製作された小栗康平監督『眠る男』が上映された。
21日の開会式では、当連盟の髙橋彦芳副会長(長野県栄村長)から主催者挨拶を行い、群馬県後藤 新出納長から歓迎の挨拶が行われ、農林水産省農村振興局中條康朗次長から来賓祝辞が述べられた。
ついで、小栗康平監督から「映画と山の風景」と題した特別講演行われた。この特別講演では、『眠る男』は日本のもっとも平均的な風景である中山間部を舞台として、人々の暮らしのありようと人々が普通に抱える感情や祈りといったことを描こうとしたものであること。山村は都市である必要はない。山村は経済からすれば都市の後景でしかないが、この後景を前景にもってくるよう、これからも様々な知恵と努力が必要であること、などの話がなされた。
パネルディスカッションは、『自立と持続~分権新時代の新たな山村ビジョンの模索~』をテーマに行われた。
高崎経済大学地域政策部教授の西野寿章氏をコーディネーターに、パネリストとしては、川場村長 関清氏、くらぶち草の会代表 佐藤茂氏、(株)尾瀬ドーフ代表取締役 千明市旺氏、下仁田町森林組合 神宮開氏、社会開発研究所長 岩田照丈氏が出席し、これまでの取り組み、それを踏まえた山村地域の自立と持続のあり方等について討議が行われた。
翌22日には、林野庁林業機械化センター、村営しゃくなげの湯(利根産の木材を活用したふれあい・体験研修・直売施設。)天然記念物吹割の滝を視察した。

8.会員等への情報の提供

「山村振興速報」(月2回)を発行し、また、ホームページにより会員市町村、関係方面に対し山村に関する情報を提供した。また、山村振興法延長をめぐる状況等について、会員に対し適宜情報の提供を行った。

9.山村振興全国連絡協議会への助成

各都道府県の山村振興担当課長で組織している山村振興全国連絡協議会に対し、助成を行った。

10.その他

農林水産省農村振興局からの依頼を受けて「振興山村地域の将来像に関する調査」を実施した。この調査では、学識経験者による調査検討委員会を設けて、振興山村市町村、山村地域住民及び山村地域で活動した経験を有する都市住民を対象とした、山村に対する現状認識、山村の将来像についてのアンケート調査等を行った。
また、独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金からの助成を受けて「山村地域住民と野生鳥獣との共生セミナー等」を実施し、「山村地域における野生鳥獣害対策に関する資料」の作成・配布、5箇所におけるセミナーの開催、ホームページによる情報提供等を行った。

11. 各種会議会合等

(省 略)

(別 表)
【平成17年度山村振興関連関係省庁予算概算決定の概要】(省 略)