全国山村振興連盟メールマガジンNO292
2024.10.4
全国山村振興連盟事務局
◎2024年9月の農林水産行政の動向について
2024年9月の農林水産行政の主な動向は、 以下の通りでした。
1 自民党総裁選挙で石破茂新総裁を選出、小里康弘氏が農相就任へ
9月27日、自民党総裁選挙が行われ、石破茂氏が新総裁に選出された。石破新総裁は、鳥取1区選出、当選12回の農政通で、防衛相のほか、農相、地方創生相を歴任、直近は、自民党水産総合調査会長を務めていた。1957年生まれの67歳。
10月1日、石破内閣が発足。農林水産大臣には、小里泰弘氏が就任した。小里新農相は、比例九州選出、当選6回で、自民党農林部会長、農林水産大臣政務官、衆議院農林水産委員長、農林水産副大臣を歴任。直近は、内閣総理大臣補佐官(農山漁村地域活性化担当)を務めていた。1958年生まれの66歳。
2 台風10号と能登半島北部で豪雨。広域で被害を発生
8月29日から9月1日、九州・四国の7県をゆっくりと進んだ 台風10号は、西日本を中心に 8月 1か月間の平均雨量を最大 3倍近く上回る記録的な大雨をもたらした。 避難指示対象は 関東と東海を中心に 100万人 近くに上り 北海道を含む 日本の広い範囲で土砂災害や 河川の氾濫 が相次いだ。 死者は8人に上った。
また、9月21日、 石川県能登半島北部で 日本海から伸びる前線の影響によって 猛烈な雨が降り、 線状降水帯が発生した。輪島市では当日午前11時までの3時間に220mm、珠洲市では 当日11時50分までの3時間に149.5mm の観測 史上 最大の降水量を記録し、 県が管理する 19 水系 26河川で氾濫した。死者は、全国で14名に上っている。
坂本哲志農林水産大臣は記者会見で、 被災した自治体において被害状況を把握した上で適切に対応するため、農林水産省の職員 41名を派遣したと説明した。 被害状況については 調査中であるが 畜舎の停電・断水、土砂による水路の閉塞、水稲の冠水などの被害が生じている。
3 G20 農相会合(ブラジル)、G7農相会合(イタリア)に坂本農相が出席
9月12日・13日の2日間、 ブラジルで 20カ国・地域( G 20)農相会合が開催され、日本から坂本哲志 農相が出席した。採択された G 20 農業大臣宣言では、食料安全保障の強化や飢餓撲滅へ農業の持続性を高めていく必要性が確認され、また農業の持続化 へ向けて 技術協力や技術革新の促進などを掲げた。
会合に合わせ 坂本農相は ブラジルのファヴァロ 農業・ 畜産大臣、テイシェイラ農業開発・ 家族農業大臣に面会し、 ブラジルによる穀物の安定供給を提起した。また二国間の覚書を交わし、気候リスク管理、 動物衛生・植物防疫などを含め 協力を具体化するため、 共同作業部会を立ち上げ、少なくとも 年1回開くことで合意した。 牛肉 生産が盛んな アルゼンチンのイラエタ経済省 副大臣(農牧漁業担当)とも会談した。
また、9月27日・ 28日の2日間、イタリアのシラクーサ で先進国 7カ国 (G 7)農相会合が開催され、 日本から 坂本哲志農相が出席した。 採択された共同声明では、食料安全保障の強化に向けて農業や食料供給の持続性を高めていく必要性、農業の気候変動への適用に向けた技術革新、 若者の参画や雇用の促進を掲げるとともに、食料の不当な輸出制限を行わないよう求めた。
議長国 のイタリアはアフリカでの栄養不良の改善を重視し 農業の生産性や収入の向上に向けてアフリカ諸国 と G 7との連携強化を打ち出した。
坂本農相は 会合に合わせて、イタリアのロッロブリーチダ 農業・ 食料主権・森林大臣と会談し、 両国の協力に向け 情報交換するため、 共同作業部会の設置を 検討することで合意した。 また ドイツのエズデミル食料・農業大臣と会談し、 政府間で意見交換する枠組みの立ち上げを目指すことで合意した。 米国のビルサック 農務長官との会談では、米国向けに低い関税で牛肉を輸出できる 枠が近年早期に埋まる傾向にあるため、運用改善を求めた。
4 中国への水産物輸入再開に向けて日中両政府が合意
9月20日、 日中両政府は、中国による日本産水産物の輸入を段階的に再開する調整に入ることにつき合意したと発表した。岸田文雄 首相は国際原子力機関( IAEA)のグロッシ事務局長と電話協議し、 IAEA の枠組みのもとで中国を含む 第3国の役割を拡充して海水や 放出前の処理水の採取を認めることとした。 日中 合意のポイントは、①日本は 処理水の海洋放出を 安全基準などに成功して実施すること、②日本は IAEA の枠組みを受ける処理水に関しての拡充を歓迎すること 、③中国を含む 参加国 による採集 や分析機関の間の比較の実施を確保すること、 ④中国は輸入停止措置の調整に着手し基準に合致した日本産水産物の輸入を着実に回復すること、 などとなっている。
中国政府は、「直ちに輸入を全面再開することを意味しない。中国の要求が完全に満たされるのを前提に、基準に適合する日本産水産物の輸入を徐々に再開する」としている。
5 新米の調達競争が 加熱する一方、 米輸出は過去最高のペース
9月4日、 農林水産省は米需給に関する意見交換会を開催し、米の流通業者の持ち越し在庫が不足しスーパーなどで欠品が発生する中で、令和6年産米を早い時期に調達したい業者の間で競争が激しくなっていることが明らかとなった。
この意見交換会には オンラインを併用し 生産者・ 卸売業者・ 実需者・集荷団体が委員として参加。 卸売業者からは令和5年産米の持ち越し 在庫量は過去最低水準である など、新米の調達を急ぐ 業者が多いことが明らかとなった。このような状況を受けて、米の小売価格は上昇している。
一方 米の輸出は大きく伸び、 2024年1月から7月までの輸出額は64億6200万円と、過去最高だった前年の同期を3割上回るペース となっている。 年間では初の100億円台に達する可能性がある。
円安 や 米国産の高騰による値頃感が追い風 となり、 特に 北米向けが好調で 米国が 44%増の13億1千万円、 カナダが 84%増の 3億2500万円だった。 アジアでは 香港が20%増の17億3100万円、 シンガポールが23%増の7億 5200万円と伸びた。EU向けも 41%増の5億 4600万円と好調だった。
なお、農林水産物・ 食品の輸出全体では 中国向け水産物の輸出の低迷が続き、7月の輸出額は 前年同月比 3%減の1143億円となっている。
第6その他
(1)中山間直接支払の加算を見直し。 集落機能加算の廃止に一部から批判
農林水産省は平成7年度予算要求において、中山間地域等直接支払い交付金につき、次期対策の6期では新たに2つの加算措置の新設を要求している。集落の連携を後押しする「ネットワーク化加算」については、10アール当たり最大1万円、 作業の省力化に向けた「スマート農業加算」は 10 アール当たり最大5000円を交付する。
これに伴い、集落機能加算を廃止し、生活支援は農村型 地域運営組織( 農村RMO)などで対応すると説明した。従来の集落機能加算は、 除雪、見守り、送迎、配食などの生活支援や営農ボランティアなどに活用できる。 これについて 一部の第三者委員などから、「集落機能加算は幅広く活用され 持続的な集落協定作りに寄与してきた」などの批判が提起されている。
(2)農相が 長野県の中山間地農業を視察
9月4日 坂本哲志 農相は、中山間地農業の課題と工夫を確認するため、 長野県の生産現場を視察した。伊那市で有機農業を運営する「ルーラの会」を視察するともに、大規模なりんごの密植栽培に取り組む 同市の白鳥フルーツ農園も訪問した。 また5日には、松川町で有機農業や農福連携の取り組み、6次産業化を実践する農場などを視察した。
(3)農林中金の損失を検証する会合を開催
9月27日、農林水産省は、外国債券の運用で巨額の含み損を抱えた農林中央金庫の資産運用体制を検証する有識者会議の初会合を開いた。ガバナンス(企業統治)にも問題がなかったかを点検し、再発防止につなげる。
農林中金は、欧米などの金利上昇(債券価格は下落)を受けて、債券の含み損が6月末時点で約2兆3000億円に拡大。2025年3月期は1兆5000億円規模の赤字に陥る可能性がある。有価証券による運用が資産全体の46%を占めており、企業向け融資が主体の3メガバンクに比べて、金融市場が急変動した際に影響を受けやすい。
有識者会議には、金融界や農業の専門家のほか、農林中金の奥和登理事長も出席した。
(4) クロマグロ増枠を IATTC で 合意
全米熱帯まぐろ類委員会( IATTC) は、9月2日から6日 第102回年次総会をパナマで 開催し、 太平洋クロマグロの増枠に合意した。 中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)が7月に合意した大型魚と同様に、漁獲枠の1.5倍を採用した。 IATTT 水域で日本船の巻き網操業はないが 、はえ縄漁業のメバチ漁獲 枠は 年間3万2372トンが維持される。
◎ 農業農村情報通信環境整備準備会HPの紹介について
農業農村情報通信環境整備準備会(事務局:農林水産省地域整備課)から、以下のお知らせがありました。
準備会HPには皆様にご活用頂ける情報が掲載されています。
(1)関連法令・施策など https://nn-tsushin.jp/related_laws/
農業農村における情報通信環境整備や、デジタル技術活用、ICT機器の導入などを検討される際の制度や交付金のリンクが掲載されています。整備や機器導入を検討される際に地域の取組にとってより良いものを比較検討して頂けます。
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(2)事例紹介
準備会の個別地区支援の事例をご覧頂くことができます。
掲載事例の中から今回はこちらをご紹介します。
農業から始まる地域づくり
~IoT活用による高単価果物栽培へのチャレンジ~山梨県山梨市
・山梨市の基幹産業は果樹農業であり、儲かる農業への変革が
地域課題の中心となっているそうです。
・しかし2014年の豪雪により地域の多くのビニールハウスが
倒壊し総額170億円を超える被害を受け、高単価のシャイン
マスカット栽培に地域をあげてチャレンジすることになり
ました。
・そこで、市庁舎を含む市内6箇所にLPWAの基地局を設置し、
市自ら広範囲の自営の情報通信網を整備し、シャインマスカッ
トの安定栽培や省力化に取り組んだそうです。
・これにより、20%の省力化や未経験者でもデータの活用に
よる失敗の少ない安定した栽培が可能になったほか、ハウス内
の異常検知アラートにより経済損失を未然に防ぎ、盗難抑止に
もつながるなどの成果をあげているとのことです。
今回の事例はこちらからご確認頂けます。
https://nn-tsushin.jp/usecase/yamanashi/
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(3)ガイドラインのご紹介
『農業農村における情報通信環境整備のガイドラインVer1.02』
令和6年4月版
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/jouhoutsuushin/attach
/pdf/jouhou_tsuushin-52.pdf#page=28
★第3章『計画・設計』の中から一部をピックアップして
ご紹介します。
・3-1 『適用する技術、通信方式、通信ネットワークの検討』
P25~28(図3‐2・3‐3)
こちらでは
・「ネットワーク構成の考え方」
・「有線通信・無線通信の違い」
・「無線通信規格と用途との関係」
についての情報と共に「利用場所と設置が想定される端末によって
有効な通信方式の例」が図表も用いながら分かりやすく解説されて
おります。
地域の課題や設置場所の条件、整備したい内容に照らし合わせなが
らこちらをご覧頂くことで、検討の際の知識を身に着け情報が整理
しやすくなります。
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◎「長野県木曽町地域」が開催するセミナー「脱炭素経営を加速する!企業の最新戦略と実践のヒント」の開催について
「Forest Style ネットワーク」(事務局:林野庁 森林利用課 山村振興・緑化推進室)から、会員からのお知らせとして、以下の連絡がありました。
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森林サービス産業推進地域「長野県木曽町地域」が開催するセミナー
「脱炭素経営を加速する!企業の最新戦略と実践のヒント」参加者募集
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森林サービス産業推進地域「長野県木曽町地域」の事務局である(一社)おんたけウェルネスラボ等では、10月17日(木)に脱炭素経営に関心のある企業様向けの無料セミナーを大阪会場及びオンラインにて開催いたします。
セミナーでは、地域における官民連携の森林空間活用の事例として、おんたけウェルネスラボが進める森林サービス産業の最新の状況についてもご紹介します。
参加費は無料となっておりますので、ぜひご参加をご検討ください!
\詳細・申込はこちら/
https://kisowellness2024.peatix.com
■テーマ:
「脱炭素経営を加速する!企業の最新戦略と実践のヒント」~持続可能な社会を共創する企業の新たな取組のヒントがここに!~
本セミナーでは、脱炭素経営に最前線で取り組むリコージャパン、自治体・企業が共創して再エネや新たな産業の創出を進める長野県木曽町・Tree to Greenらをゲストにお招きし、事例紹介を通じて皆様に脱炭素経営の実践的なヒントを提供します。
■開催概要:
日時:2024年10月17日(木) 14:30〜17:30
<第1部>14:30〜16:30 講演・事例紹介・座談会
<第2部>16:30〜17:30 参加者交流会 ※現地参加のみ
会場: APイノゲート大阪11F(JR大阪駅直上)
参加費:無料
定員:30名(現地参加) オンライン同時開催
主催:(一社)おんたけウェルネスラボ、開田高原ヘルスツーリズム推進協議会
■登壇者:
リコージャパン株式会社 スマートエネルギー事業部 藤田 稔
長野県木曽町副町長 正澤 隆
株式会社Tree to Green Co-Founder シニアマネージャー 小瀬木 隆典
一般社団法人おんたけウェルネスラボ代表理事 田上 仁