全国山村振興連盟メールマガジンNO247
2023.11.2
全国山村振興連盟事務局
○2023年10月の農林水産行政
2023年10月の農林水産行政の主な動向は以下の通りでした。
1 ロシアが日本産水産物を輸入制限、日本からの食品輸出が減少
10月16日、ロシア検疫当局は、日本産水産物の輸入を同日から制限すると発表した。東京電力福島第1原発のALPS処理水の海洋放出を受けたものであり、予防措置として中国の一時制限措置に参加すると説明している。
2022年の日本からロシアへの水産物輸出額は2億8000万円で水産物輸出総額の0.1%程度。内訳はマグロが1億2000万円で最も多く、次いでカキが4000万円、スケトウダラが3000万円などとなっている。
ロシア検疫当局は今年9月下旬、中国側と定例の作業部会を開催した際に、「水産物の放射能汚染のリスクがありうることを考慮し、中国による日本産水産物の制限に加わる可能性を検討している」と発表。日本の外務省は10月10日、日ロ両政府による省庁間対話をオンライン形式で実施し、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの検査方法などについて説明していた。
10月6日、農林水産省が公表した輸出実績によると、8月の農林水産物・食品の輸出額は前年比8%減の1034億円と2ヶ月連続で減少した。懸案となっている 中国向けの水産物は、禁輸措置が本格化した影響で、8月は 対前年 66%減の36億円と激減した。また 農林水産物・食品全体も4割近く減少した。中国や米国向けの輸出が多い日本酒についても、33%減の27億円と落ち込んでいる。
2 ASEAN +3農相会合に宮下農相が出席
10月6日、日本・中国・韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN )加盟国 10カ国は、農林水産大臣会合をマレーシアの首都クアラルンプールで開催した。日中 韓+ASEAN 農相会合は、農林分野での協力を進めるため 年1回会合を開いている。この農相会合では、農業の環境負荷軽減と生産性向上の両立に向けた協力を強化するための計画を採択した。
日本からは 宮下一郎農相が参加し、食料安全保障の確保に向けた米の備蓄や食料自給の情報共有において引き続き支援していくこと、東京電力福島第一原子力発電の処理水の海洋放出を巡る水産物の安全性について訴えた。また宮下 農相はマレーシア、シンガポール、カンボジア、フィリピンの農林大臣らや ASEAN事務局の事務総長と相次いで会談。10月4日には現地の小売店及び日本食レストランにおいてPR イベントも行った。
3 米の収穫量 1.1%減で適正生産量を達成
10月13日、農林水産省は2023年産の主食用米の予想収穫量(9月25日現在) を発表し、前年実績比 1.1%減の662万4000 トンとなると発表した。全国の作況指数は100で、平年並みとなった。その中で記録的高温に見舞われた北陸など一部産地は振るわず、新潟県はやや不良の95となった。主食用米からの作付転換が着実に進み、適正生産量(669万トン)の達成につながった。転作は飼料用米の13万 4000ヘクタールが大きかったものの、過去最大だった22年産からは 8000ヘクタール減少した。
10月19日、農林水産省は食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開催し、需給見通しとして、2024年産米(主食用米)の適正生産量を23年産と同じ 669万トンに設定した。実現すれば25年6月末の民間在庫量は176万トンとなり、需給均衡の目安とされる180万トンをやや下回る見通しとなっている。
4 食料安定供給・農林水産業基盤強化に向けた緊急対応パッケージを決定
10月13日、政府は第5回食料安定供給・農林水産業基盤強化本部を開き、「食料安定供給・農林水産業基盤強化に向けた緊急対応パッケージ」を決定した。このパッケージでは、①農林水産物・食品の輸出について、輸出促進に向けて品目ごとに生産から販売までの事業者を束ねた品目団体の認定数を増やすこと、海外の規制に対応した産地の形成などを支援すること、②農林水産業のグリーン化について、「みどりの食料システム戦略」を加速化すること、堆肥・下水汚泥・ 飼料など国内資源を活用すること、③スマート農業の振興については、JA など農業経営を支援するサービス事業体による機械導入の支援を行うこと、次期通常国会に向けて スマート農業の進行の法制化のに取り組んでいくこと、④ 食料安全保障の強化については、水田の畑地化による小麦など生産などの生産拡大、農産物の適正な価格形成に向けた施策を進めることなどを盛り込んだ。
5 不測時の食料安全保障検討会で新法につき説明
10月12日、農林水産省は「不測時における食料安全保障に関する検討会」を 開催し、食料有事の際に生産・輸入などを事業者に促すための新法について考え方を示した。
- 生活や経済に影響するおそれが発覚した段階で生産や輸入の促進などを国が要請し、これに沿った計画の作成を事業者に求め、必要に応じて変更を指示する手順とした。
- 生産資材も供給対策の対象とする。飼料では生産拡大や買い占めなどを防ぐための出荷調整・輸入の拡大を要請・指示できるようにする。農業者に対しては、飼料用米などの増産を求める。また食肉の保管など計画出荷を進めるための対応を取る。飼料や種子・種苗などで出荷調整などを要請・指示できるようにする。
- 従わない事業者への罰則も設ける。立ち入り検査を拒んだり計画の作成届出を怠ったりした場合には罰金などを措置する。計画変更の指示に従わないときは、やむを得ない場合を除き公表する。指示を行う場合には 措置に見合った支援を行う、などとしている。
6 WTOで輸出規制乱用防止を主張、G7貿易相会合では禁輸撤廃を要求
10月20日、スイスのジュネーブで世界貿易機構 WTO農業交渉の事務レベル会合が開催され、日本からは食料の輸出規制の濫用を防ぐ仕組みづくりを提案 した。WTO では危機的な食料不足時などに輸出制限を認めているものの、基準が明確でないため突然規制が行われることがあり、通報されている事例も少ない。
日本からは正当性のある規制が行われるよう、①生産や需要などの状況が客観的にわかる数値・データを裏付けとするなど条件や手順を明確化すること、② 規制を議題とした話し合いの場を設けること、③WTO事務局が規制を実施する国をリスト化し、加盟国も情報提供することなどを提案した。来年2月の閣僚会議での合意を目指す。
また、10月29日、大阪市と堺市で開催されていたG7(先進7カ国)貿易相会合は、日本産の水産物に対する中国の禁輸措置を対象に、即時撤廃を求める閣僚声明を採択した。
7 その他
7-(1) クマの襲撃・人的被害が過去最多
環境省によると、餌を求めるクマの動きが活発になっており、山間部だけでなく市街地にも出没し、人身被害につながるケースが相次いでいる。今年4月から9月の被害人数は 109 人、件数は105件と、2006年の統計開始以来最多を更新した。すでに2021年・22年両年の年間規模を上回っている。これまで4月から9月は、怪我人数は2020年の86 人、件数は2010年の82件が最多だった。
都道府県別では秋田の28人が最多であり、次いで岩手が27人、京都・島根でも各1人と、北海道から西日本まで各地で被害が相次いでいる。10月にも死者が出るなど深刻な状況が続いており、国や自治体は最大限の警戒を促している。
7-(2) 食品産業発展検討会の環境等配慮PTが初会合
10月6日、農林水産省は「食品産業の持続的な発展に向けた検討会 環境等配慮プロジェクトチーム」の初会合を開催した。同 PTは、食品産業に関する情勢の変化への対応について、食料システムの関係者が参加して議論し、持続可能な食料システムの実現に向けた課題や必要な施策を検討するため設置されたもの。 検討会には「食料安全保障」「環境等配慮」「人口減少」の3 テーマの PTがある。会合では、農林水産省が「食品企業向け人権尊重の取り組みにのための手引き」を作成中であることを説明。また企業等からのヒアリングが行われた。
7-(3) 会計検査院から水田活用直接支払い交付金について改善要求
10月23日、会計検査院は農林水産省に対し、水田活用の直接支払い交付金の改善を要求したと発表した。2020年度・2021年度において収量確認が不十分だった事例などが135億円あったと指摘し、収量確認の厳格化を求めた。
同交付金は2020年度・21年度に沖縄県を除く全国の延べ約20万7900の農業者に総額約2394億円が支払われた。補助金が支払われた農業者のうち、延べ1万747 事業者(国庫負担 100億 9743万円)で収量の確認が十分でなかった。このうち8746事業者では、実績報告書に収量が記載されていなかった。農林水産省は、今年度中に通知の改正に向けた手続きを進めるとしている。
○「関係人口とインパクト」レポートの公開について
全国二地域居住等促進協議会(事務局 国土交通省国土政策局地方振興課)より、会員によるインパクトレポートの公開についての紹介がありました。
【題名】
インパクトレポートの公開について
【団体・事業者名】
株式会社雨風太陽
【内容】
2地域居住等の促進において「関係人口」は欠かすことのできない観点であり、当社としてもその価値の可視化には以前より取り組んでおり、この度ようやく当社で初めてとなるインパクトレポートを公開するに至りました。詳細は当社のコーポレートサイトに仔細を掲載しております。
【関連URL】
◆「関係人口とインパクト」ページ