全国山村振興連盟メールマガジンNO178
2022.6.3
全国山村振興連盟事務局
○令和4年度実務研修会を開催
本日(6月3日)、令和4年度の全国山村振興連盟実務研修会を開催し、全国の市町村、都道府県、支部の実務担当者49名の出席をいただきました。
研修会では、関係各省の課長補佐を講師として、行政の情勢を実務的な観点からお話しいただき、有意義でした。
ご多忙の中、講師をしていただいた各省の担当者と、参加いただいた出席者の方々に感謝を申し上げます。
- 2022年 5月の農林水産政策の動向について
2022年 5月の農林水産政策の主な動向は、以下のとおりでした。
1 金子農相がタイ・シンガポールに出張
5月4日から5月8日、金子原二郎農相はタイ及びシンガポールに出張した。タイでは、シーオン農業・協同組合大臣、シンガポールでは、コー持続可能性・環境担当上級国務大臣とそれぞれ会談を行い、持続可能な食料システムの構築に向けて協力していくことを確認した。
昨年の日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10か国による農相会合では、 環境負荷低減などの推進に各国の気候条件に合わせた取組みが必要だとする 共同声明を採択しており、今回の会談はこれを踏まえて、今後両国間で連携し技術開発などで協力することを確認した。
またバンコクとシンガポールにおいて、官民の関係者が一体となって農林水産物食品の輸出に取り組む事業者を現地で支援する体制を立ち上げた。
2 G 7農相会合に武部副大臣が出席
5月13日・14日に日米欧など先進7か国地域( G 7)はドイツ・シュツットガルトにおいて農相会合を開催し、日本からは武部新農林水産副大臣が出席した。 ロシアのウクライナ侵攻による食料・農業分野への影響を踏まえ、3月の オンラインによる臨時農相会合に続き、世界の食料安全保障を中心に、肥料など生産資材の価格高騰についても議論した。会議では共同声明を採択し、ウクライナの危機の長期化を受け、世界の食料安全保障をめぐる課題を改めて共有した。ロシアやそれに同調するベラルーシは肥料原料の輸出国であり、原料価格の高騰など生産資材についても議論した。ウクライナ政府からも閣僚級が参加した。環境負荷の低減と食料安定供給の両立も議題となった。
武部副大臣は農相会合に先だって、5月11日にはポーランドを訪問し、ウクライナ政府から要請のあった食料品の支援物資をウクライナ大使に引き渡した。また農相会合後の16日にはモロッコを訪れ、肥料原料のリン酸アンモニウムの安定確保を働きかけた。
3 食料安全保障を政策の柱として位置づけ
5月30日、参議院予算委員会において岸田総理から「農林水産業・地域の活力創造本部」及び食料安全保障の強化に向けた体制に関して、「ぜひこの組織を改組する形で、今後食料安全保障の強化についてもしっかりと検討し、政府一体となって取り組んでいきたい」との発言があった。
これを受けて、「農林水産業・地域の活力創造本部」を改組し食料安全保障の強化に向けて取り組むこととし、事務局である内閣官房と農林水産省が調整を進めている。
また5月31日、政府は経済財政諮問会議を開き、今後の予算編成や政策の指針となる「骨太方針」の原案を示した。政権の重要課題として①外交安全保障の強化、②経済安全保障の強化と並ぶ形で、③エネルギー安全保障・食料安全保障の強化を掲げ、食料安全保障に関しては肥料高騰への対策や食料の安定供給に向けた総合対策の検討を進めるとした。
更に同日、政府は「新しい資本主義」の実行計画を示した。エネルギー・食料を含めた経済安全保障の強化が根幹であるとして、デジタル田園都市国家構想の推進の中で、食料安全保障の確立や足腰の強い農業を構築することなどを位置付けた。
4 農地・輸出関連で3法案が成立
5月20日、「農業経営基盤強化促進法」の改正法案及び「農山漁村活性化法」の改正法案が参議院本会議で可決・成立した。前者においては、農地一筆ごとに将来の利用者を特定した目標地図を含む「地域計画」を市町村が策定することを柱としている。農山漁村活性化法の改正においては、地域計画の策定過程で保全管理に区分けした農地について、放牧などの粗放管理や林地化を促すものとした。
また5月19日、「農林水産物・食品輸出促進法」の改正案が衆議院本会議で可決・成立した。改正法では、品目団体として生産・管理・輸出までの事業者を束ねた法人を国が認定し、民間金融機関からの資金借入等について支援する。また日本酒など有機酒類の日本農林規格(JAS)制定を可能にする日本農林規格法等の改正も同時に成立した。
翌5月20日に農林水産物・食品の輸出関係閣僚会議を開催し、改正法に盛り込まれた支援策を早急に実施するため「輸出拡大実行戦略」の改定が取りまとめられた。その中では、新品種に対して知的財産権を専門家が管理・保護する機関の設立などが盛り込まれている。
5 明治用水頭首工で漏水事故が発生
5月15日、愛知県豊田市に矢作川から取水する明治用水頭首工で漏水が見つかり、5月16日東海農政局が施設川底の穴に砕石を投入したものの、17日には漏水範囲は拡大。取水口から矢作川の水が汲み取れなくなり、上水・工業用水・農業用水の取水量が大幅に減少した。
明治用水頭首工から農業用水を取水している水田は4730ヘクタール。このうち水稲作付面積の4割程度を占めるコシヒカリは 田植えが終了しているものの、 「あいちのかおり」などの田植えはこれからという段階であった。またイチジク、ハウス栽培の柿など園芸作物についても影響が懸念されている。
工業用水については5月19日に段階的に供給を再開。農業用水についても 5月25日から一部で試験的に通水を行い水を利用できるようになったものの、全面再開には至らなかった。
6 食料・農業・農村白書、林業白書を閣議決定
5月27日、政府は「令和3年度食料・農業・農村白書」を閣議決定した。特集は「変化(シフト)する我が国の農業構造」とし、2020年農林業センサス等を踏まえ、これまでの日本の農業構造の中長期的な変化をテーマに、品目別・地域別も含めて分析した。
またトピックスとしては、①新型コロナウイルス感染症による影響が継続、② 「みどりの食料システム戦略」に基づく取組みが本格始動、③農林水産物・食品の輸出額が1兆円を突破、などの項目を取り上げた。
本文は4章構成であり、第3章として「農村の振興」を掲げて、①田園回帰の動向、②中山間地域等の特性を生かした農業経営の推進、③鳥獣被害とジビエ等について記述した。
5月31日、令和3年度の「森林・林業白書」及び「食育白書」が閣議決定された。森林・林業白書では、令和3年の木材不足価格高騰への対応とともに、グリーン成長の鍵を握る木材の需要拡大と林業・木材産業の競争力強化について記述した。
木材自給率は10年連続で上昇し、2020年の木材自給率は前年比4ポイント上昇し41.8%となった。40%台に回復したのは48年ぶりである。その理由として、①人工林資源や技術革新を通じた国産材活用の拡大、②脱炭素の取組み強化に伴うバイオマス発電燃料の需要増加が影響したとしている。
7 その他
(1)岩手県のエミューで鳥インフルエンザが発生
5月12日、農林水産省と岩手県は、大型の鳥エミューを飼養する岩手県一関市の施設で高病原性鳥インフルエンザの感染が確認されたと発表した。国内ではこれまでで最も遅い時期の発生となった。渡り鳥の季節が終わる5月の大型連休までが流行期とされてきたが、本年は国内にいる野鳥での発生が続き、北海道のハシブトガラスなどで感染が相次いでいた。農林水産省は、カラスなどによる感染拡大との関係があるとみて、渡り鳥の季節以外も感染が広がる可能性があるとして、引き続きの警戒を呼びかけた。
(2)漁獲量は過去最低の417万3000トン
5月27日、農林水産省は2021年の漁業・養殖業生産統計を発表した。総生産量は前年比1.4%減の417万3000トンと1956年の調査開始以来最低を記録した。このうち海面漁業はサバ・カツオ類が増加したものの、サンマ・スルメイカ・タコ類が過去最低を更新し0.7%減の319万1400トン、海面養殖業は4.0%減の93万900トン、内水面漁業・養殖業はウナギの収穫量の増加により0.3%増の5万967トンだった。