2019.9.4
全国山村振興連盟事務局
2019年8月の農林水産行政の概要は、以下の通りでした。
- 2019年8月の農林水産行政
1 豚コレラの拡大止まらず、地域限定ワクチンの検討も(8月)
昨年9月9日に岐阜県下で発生した豚コレラは収束に向かう様子を見せず、8月31日には愛知県下の養豚場で39例目が発生。豚コレラは養豚場で4県(岐阜・愛知・三重・福井)、野生イノシシで7県(養豚場発生県に加え長野・富山・石川)に広がっている。
農水省はこれまでワクチン接種について消極的だったものの、感染経路の9割近くは野生イノシシによるという調査結果もあり、養豚業者からはワクチン接種が要望されている。こうした状況を受けて、農水省は発生県と隣接県13県について、地域限定ワクチンの使用につき意向調査を開始した。
2 食料自給率が1ポイント下がって37%(8月6日)
我が国の2018年の食料自給率(カロリーベース)は、1ポイント下がって過去最低の37%(37.33%)となった。なお、これまでの最低は米が大不作となった1993年の37.37%だった。
食料自給率が下がった原因としては、①小麦が主産地・北海道の日照不足により不作だったこと、②大豆・飼料作物が北海道・北陸・東北地方の天候不順により不作だったこと等が挙げられている。③牛肉・乳製品の輸入も増加した。
一方、生産額ベースの食料自給率は、前年と同じ66%だった。
3 香港と南米に農相が2度の海外出張(8月15-17日、21-28日)
吉川貴盛農相は、8月16日、「香港フードエキスポ2019」に出張し、「ジャパン・パビリオン」の開幕式に出席したほか、関係者と会談した。香港フードエキスポは、アジア最大の食品見本市であり、20か国・地域から1500企業・団体が出展する。「ジャパン・パビリオン」は、日本貿易振興機構(JETRO)が主催しており、香港情勢の悪化から参加を取りやめた企業もあったものの、92社が出展した。
また、吉川農相は、8月23日にチリのプエルト・バラスで行われた「APEC食料安全保障担当大臣会合」に出席。22か国・地域の大臣らが出席し、テーマは「統合されたスマートで持続可能なフードシステムに向けて」だった。
続いて農相は、ブラジルのサンパウロを訪問し、「日伯農業食料対話」に臨んだ。
4 日米貿易交渉が大枠合意、9月下旬首脳会談での署名をめざす(8月23日)
8月21日から23日、ワシントンで行われた日米貿易交渉の閣僚級協議は、予定を1日延期して交渉した結果、大枠合意(方向性の共有)に達したと発表した。その後、8月25日、フランス・ビアリッツで行われたG7に際しての日米首脳会談でも大枠合意を確認し、9月下旬に行われる首脳会談の際に署名することに意欲を示している。
大枠合意の内容としては、①農産物についてはTPPの合意内容の範囲内とみられる(牛肉関税38.5%→9%、豚肉関税1kg482円→50円等、乳製品の対米輸入枠は設けない)一方で、②米国がこだわっている自動車関税(2.5%)の撤廃については継続協議となった。
このほか、日本側のセーフガード(緊急的な関税引上げ)発動基準を緩和すること、米側が日本産牛肉に無税枠(3000トン)を設けることが合意されたと報じられている。
5 令和2年度農林水産概算要求を決定(8月30日)
農林水産省は、8月30日、令和2年度予算の概算要求を決定し、財務省に提出した。
概算要求の総額は、2兆7307億円(対前年度18%増)とシーリング枠一杯の要求となっている。
内容としては、①輸出促進対策(248億円、前年度の4倍)、②スマート農業総合促進対策(51億円、前年度の10倍)に特に重点が置かれているほか、法改正のあった③農地中間管理機構の関連予算(201億円、対前年度18%増)、④豚コレラ等の撲滅・予防に関する消費安全対策交付金(50億円、前年度の2.5倍)などが目を引く。
一方で、地域政策にも目配りし、①中山間地農業ルネッサンス事業(510億円、対前年度16%の増)、②鳥獣被害防止・ジビエ利活用対策(122億円、対前年度18%の増)なども増額要求となっている。
組織定員要求については、「農林水産物・食品輸出促進本部」(仮称)などを要求した。
6 その他の事項
- 2018年の新規就農者は、1万9290人となり、対前年7%減で、5年ぶりに2万人割れとなった。(8月9日発表)
- トウモロコシ等の害虫ツマジロクサヨトウが国内で初めて発生。鹿児島・佐賀・大分県等11県で確認。米国から275万トンのトウモロコシを前倒しで輸入し、保管経費等につき農水省が助成することとなった。
- 食品・農産物輸出の1~6月合計額は、4486億円(対前年同期比2.9%増)となり、伸びが鈍化(8月9日)。年内に1兆円目標を達成するには10.3%以上の伸びが必要。