全国山村振興連盟メールマガジンNO69
2020.4.3
全国山村振興連盟事務局
新型コロナウィルスの感染拡大によって、世界も我が国も緊迫した情勢となっておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。全国山村振興連盟事務局でも、時差出勤及び在宅勤務を組み合わせて勤務しており、ご不便をおかけしていると思いますが、国民を挙げての戦いであると考えられますので、当面の間、ご理解いただくようよろしくお願いいたします。皆様のご健康を祈念しております。
2020年3月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。
〇2020年3月の農林水産行政
1 新型コロナウィルス感染拡大で農林水産物等に影響甚大
世界的に猛威を振るっている新型コロナウィルスの影響は、国内の農林水産物等の需要にも大きな影響を生じている。
最初に影響を受けたのは、2週間の休校による学校給食の停止だった。米、牛乳、パン、めん、果物などの需要が失われ、一部に廃棄も生じた。
国内需要の減退に伴い、牛肉、野菜の一部(ハクサイ、キャベツ)、水産物(ホタテ、マグロ、ノドグロ)、木材などの価格が低下。特に和牛、メロン、マグロ、カニ、ホタルイカ、ウニなど高級食材がレストラン需要の減少により大きな影響を受けている。
また、花については、彼岸・卒業式・送別会・結婚式等の需要期であったため、価格・販売量ともに大幅な低下となった。食品産業では、外食需要が落ち込む一方で、テイクアウトやデリバリー、スーパーの小売は増加した。農業者による農泊や直売も減少している。
2 農水省の新型コロナウィルス対策 -ガイドラインを策定、需要喚起策を実施
3月8日、農林水産省は緊急事態宣言が発出されていた北海道において、新型コロナウィルス現地対策本部を設置した。本部長は、伊東良孝副大臣。現地対策本部は、関係者と意見交換するとともに、感染者が出た場合の対策等について検討を行った。
3月13日、北海道での検討を受けて、農林水産省は全国に横展開する「感染発生時の対応・業務継続に係るガイドライン」を策定・公表した。
ガイドラインの内容は、①予防、②感染者対応、③施設消毒等のほか、④業務継続に重点が置かれている。業務継続については、①農業者等の集団では、グループ内で支援体制を考えておくこと、②事業者においては、感染者が出勤停止になった場合でも優先業務が継続できるよう、人員体制等につきマニュアルを作成しておくこと、等が定められている。
また、落ち込んだ国内需要を喚起するとの観点から、農水省は3月6日、「花いっぱいプロジェクト」、3月17日「国産食材モリモリキャンペーン」という運動を開始した。
影響を受けた農林漁業者等への緊急対策としては、①日本政策金融公庫による無利子・無担保融資、②学校給食停止による費用の支援、③牛乳を乳製品に回した場合の価格差補填等の措置が講じられた。
国民に対しては、食料品は十分な供給量を確保しているので安心して落ち着いた購買行動をするよう呼びかけるとともに、大型補正予算でも思い切った対策を検討しているとしている。
3 食料・農業・農村基本計画を策定(3月31日)
検討が続けられてきた食料・農業・農村基本計画は、3月25日に食料・農業・農村基本政策審議会からの答申を得て、3月31日に閣議決定された。農業の成長産業化に向けた農政改革を継続することとし、①規模や中山間地の条件にかかわらず生産基盤を強化すること、②地域の維持・継承の視点を重視することなどを盛り込んだ。
最大のポイントだった食料自給率目標は、2030年にカロリーベース45%(従来と同じ)、金額ベース75%(2ポイント上げ)とされた。このほか、今回は飼料自給率を反映しない「食料国産率」の目標が設定され、カロリーベース53%(2018年現在46%)、金額ベース79%(同69%)とされた。食料国産率を設定した理由は、畜産における生産拡大の努力が目に見える形で反映されるようにするため。
食料・農産物の輸出目標については、2030年に5兆円(2019年現在9121億円)とされた。また、2025年に2兆円との中間目標も掲げた。
4 知的財産・森林に関する4法案を国会提出(3月3日・6日)
今国会に農林水産省が提出した法案では、アフリカ豚熱対策等を定めた家畜伝染病予防法の改正案が先行したが、3月に残る4法案が閣議決定され、国会提出された。
3月3日に提出されたのは、知的財産権の保護を強化する3法案であり、①家畜改良増殖法の改正案(和牛精液・受精卵等の不正取得等を禁止するもの)、②家畜遺伝資源の不正競争防止法案(精液・受精卵の不正利用に関する刑事罰・差止・損害賠償)、③種苗法の改正案(新品種の海外持ち出し禁止、自己増殖の許諾制)となっている。
続いて3月6日に提出されたのは、森林組合法の改正案であり、森林組合の販売力を強化するため、販売事業について分割や組合新設を認めるものとなっている。
5 その他
- 諫早干拓に関する長崎2次・3次訴訟、開門認めず(3月11日)
長崎県の漁業者が諫早干拓地の開門を求めて起こした訴訟で、長崎地裁は、干拓事業と漁業被害の関係を否定し、開門を認めなかった。漁業者側はこれを不服として、3月24日控訴した。(同時に、国が起こした開門命令無効訴訟が進行中)
- 福島県の12市町村に農水省職員を派遣(3月10日公表)
東日本大震災で被災した福島県下の農地1万7298haに対し、営農再開したのは29%(5038ha)にとどまり復興が遅れているとして、江藤農相は、福島県下12市町村に対して農水省職員を派遣することを決定・公表した。
- 沖縄で血統矛盾の牛が出荷されたことが判明(3月11日)
沖縄県久米島町において、遺伝子検査の結果、11頭の繁殖メス牛について、父牛が異なっており、血統矛盾があったことが判明した。家畜市場に報告されたのは昨年6月だったが、JAおきなわから沖縄県に報告があったのは本年2月14日であり、農水省が把握したのは3月11日となった。
(4) 農福連携等応援コンソーシアムを設立(3月13日)
障碍者を農業で雇用していこうとする農福連携について、官民で国民運動として展開していくことを目的に、コンソーシアムが設立された。事務局は農水省農村交流課。
(5) 農林水産省環境政策の基本方針を作成・公表(3月16日)
農水省は、「環境創造型産業への進化、生産・廃棄・再生利用までのサプライチェーンの構築等」を目的として、基本方針を策定した。今後は補助事業の採択要件などに環境の視点を加味し、「政策のグリーン化」を進めるとしている。