全国山村振興連盟メールマガジンNO301

全国山村振興連盟メールマガジンNO301

2024.12.6

全国山村振興連盟事務局
◎ 佐藤英道理事、進藤金日子理事が就任されました
11月7日、全国山村振興連盟の理事として、公明党の衆議院議員 佐藤英道先生にご就任いただきました。佐藤理事は、稲津久前理事の後任となります。
11月14日、同じく理事として、自由民主党の参議院議員 進藤金日子先生にご就任いただきました。進藤理事は、財務大臣政務官の職を離れられたので、理事に復帰していただいたものです。
なお、中谷元顧問は、防衛大臣に就任されたため、顧問を辞任されました。

◎ 自由民主党山村振興特別委員会の概要
11月21日に開催された自由民主党山村振興特別委員会の概要は、以下のとおりでした。

自由民主党山村振興特別委員会(副委員長:田所嘉徳衆議院議員)が11月21日木曜日午前8時15分から自民党本部 101号室において開催された。
全国山村振興連盟からは、金子恭之会長、谷公一副会長、宮下一郎副会長、進藤金日子理事のほか、竹﨑一成会長代行はじめ7名の副会長及び實重常務理事が出席した。
宮崎雅夫事務局長(参議院議員)の司会により議事が進められ、最初に田所嘉徳副委員長、金子恭之当連盟会長の挨拶があった後、議事に入った。

議事(1)山村をめぐる状況について
関係省庁を代表して農林水産省前島明成農村振興局長から挨拶があった後、山本惠太地域振興課長から、「山村をめぐる状況」の資料に基づき説明があった。

議事(2)国土審議会山村振興対策分科会について
農林水産省農村振興局山本惠太地域振興課長から「国土審議会山村振興対策分科会について」の資料に基づき説明があった。

議事(3)全国山村振興連盟からの要望等について
「振興山村自治体からのヒアリング」として、全国山村振興連盟の副会長から、要望等の聴取があった。
竹﨑一成会長代行(熊本県芦北町長)から以下の要請を行った。
「1月、9月と2度にわたる災害に見舞われた能登半島の被災者の皆様にお見舞い申し上げるとともに、能登半島をはじめ全国各地で生じた豪雨等の被災地域について、早期の復旧・復興をお願いする。熊本県も令和2年に豪雨に見舞われ、芦北町も大きな被害を被ったが、おかげさまでようやく9割方の復旧が完成してきた。この場を借りて、厚くお礼申し上げる。
本日の要望の最大の眼目は、間近に期限が迫った山村振興法の延長・改正である。 来年の3月で10年の期限を迎えることとなるが、当連盟としては、2年前から山村振興法改正問題検討会を開催するとともに、山村市町村に対するアンケートや有識者を招いての意見交換会、さらには理事会での議論などを重ねてきた。 その結果がお手元にある特別要望、令和7年度要望書、さらに「山村振興法の改正方向と論点」である。
山村を取り巻く状況は、この10年間でさらに厳しさを増した。頻発する自然災害に加え、この10年間にはコロナ禍が生じ、さらには昨今の物価高によって、山村は苦しんでいる。交通・医療・教育といった全般にわたって、都市部との格差が更に拡大してきた。こうした中、山村活性化支援交付金や森林環境譲与税の導入を始めとして、都市(まち)の木造化推進法、特定地域づくり事業協同組合など新たな施策が展開され、効果を上げている。
今後は山村も世代交代していく時期となっており、地域おこし協力隊や二地域居住をはじめとして、さらなる移住政策の充実や、交通・医療・教育といった生活万端にわたる政策の充実が必要となっている。先生方のお力により、山村振興法を延長・改正していただき、全国の1/2の面積を占める山村が果たしている公益的・多面的機能が、将来にわたって国民に円滑に提供され、また山村地域が持続的に発展していくことができるよう、政策を強化していただくことを願い申し上げる。
なお、103万円の壁の問題が協議されているが、総務省から地方自治体に対して、反対するように働きかけがあったというような事実はない。しかし、実現すれば地方税収入が減少し、地方財政に大きな影響を与えることは事実であり、それに対する補填などの措置がなされなければ賛成する訳にはいかないということを申し上げておきたい。」

今井俊郎副会長(岐阜県東白川村長)から、以下の要請を行った。
「全国国保診療施設協議会の開設委員会委員も務めているが、そこでの議論から、医療や介護の地域格差の是正について申し上げたい。全国山村振興連盟の要望事項にも医療・保健・福祉の分野において掲げている。人口減少や医療資源、特に医師や看護師、ケアマネージャーなど人的資源の都市偏在が顕著となってきており、山村地域としては危機意識を持っている。東白川村でも28年勤務した医師の定年退職による後任医師が見つかっていないのが現状である。「すべての人がいつでもどこでも必要な医療が受けられる」という国民皆保険制度の責務において、いわば「命の格差」とも言える地域格差の是正について、いくつかの要望を申し上げる。
第1に、医師について、過疎地域や山村地域への一定期間の勤務義務を検討していただきたい。第2に、無医地区への定期的な巡回診療や保健師の配置、救急用のヘリコプターへの支援の強化をお願いしたい。東白川村では災害や救急に備えて、3カ所のヘリコプターが着陸できる離着陸場を整備しているが、この整備のための財源的な助成も検討いただきたい。第3に、オンライン診療など 遠隔技術や先端技術の活用によって地域医療を支援する体制の整備を図っていただきたい。
全国山村振興連盟の要望書から引用すると、「医療人材の偏在や高度急性期医療の提供体制は「命の格差」とも言うべき状況にあるので、あらゆる可能性を用いて格差の是正を図ること」ということであり、切にお願いしたい。」

河野忠康副会長(愛媛県万高原町町長)から以下の要請を行った。
「中山間地の山村の人口減少・少子高齢化が言われているが、そこに住む人々は皆、意気軒昂であり誰も不遇な立場にあると思っていない。「限界集落」などという無責任な表現があるが、皆、誇り高く、地域の発展と家族の幸せを願い懸命に生きている。地方の飛躍なくして均衡ある日本の発展は望めない。そこで私どもの町の基幹産業の農林業について意見を述べたい。
農業については、第1に、米作農家の苦労はご案内の通りであり、米の生産者から「自分で作るより買った方が安い」との悲嘆の声まで聞かれたが、今年は米不足が言われ、いくつかの要因があったようだが、系統の買い取り価格が飛躍的に上がった。農家にとっては朗報であるし、後に続く若手の担い手にとっても大いなる励みになる。是非一過性に終わらぬよう、国の御努力をお願いしたい。また今後の見通しをお示しいただきたい。
第2に、大阪市場でトマト・ピーマンが高い評価を得ている。広域化を図る動きがあるようだが、小さな産地を守っていただきたい。
第3に、中山間地直接支払い制度第5期が令和6年で終了するが、引き続き堅持いただきたい。
また、林業については、CO₂の固定化に資する森林の役割が重要である。しかし、住宅着工数は、かつての100万戸から、今は60万戸を切っている。都市(まち)の木造化推進法によって、倉庫・店舗等非住宅への木造化を進めていただきたい。また、現状はどうなっているか。」
連盟からは、「山村振興法の改正に関する特別要望書」「令和7年度山村振興関連予算・施策に関する要望書」及び「山村振興法の改正方向と論点について」を配布し、実重事務局長から説明を行った。

その後、議員から意見が提出され、次のようなテーマについて質疑応答が行われた。
・山村における子ども・子育て支援について
・山村の有する多面的機能の保全について
・山村における施設・基盤整備について
・日本型直接支払いなど山村に着目した支援の拡充について
・山村活性化支援交付金の定着について
・二地域居住の推進について
・医療拠点にアクセスできる道路の整備ついて

◎2024年11月の農林水産行政

2024年11月の農林水産行政の主要な動向は以下の通りでした。

第1 江藤拓新農水大臣が就任
11月11日、第215 特別国会が招集され 衆参両院の本会議で石破茂 氏が首相に指名された。 与党過半数割れを受けて、衆議院の首相指名選挙は上位2人による決戦投票となり、石破氏 が221 票で立憲民主党の野田佳彦代表の160 票を上回った。石破首相は第2次石破内閣を発足させ、農相には江藤拓氏を起用した。 江藤農相は 自民党 衆議院 宮崎 2区。 成蹊大学 経済学部卒。 2003年 衆議院 議員 初当選 当選 8回。 農林水産大臣政務官、農林水産副大臣、内閣総理大臣補佐官を経て、 2019年 農林水産大臣を務め、農林水産大臣は2度目の就任。  自民党総合農林政策調査会会長などを務めた。 1960年生まれ 宮崎県出身。

第2 補正予算 13.9兆円 うち農林水産関係 8678億円で 閣議決定
11月29日、政府は2024年度補正予算案を閣議決定した。 ガソリンや電気・都市ガス料金の抑制、 住民税非課税所帯への3万円給付などを含む一般会計の追加歳出は 13兆9433億円となった。 このうち農林水産予算は、前年度比 6.1%、(496億円)増の8678億円で4年ぶりの増額となった。
農林水産予算の内訳は、
①新基本計画推進集中対策 3037億円。
うち 食料安保構造転換対策 2,537億円
うち 畑地化促進事業 450億円、輸出産地・事業者の育成・展開 295億円 スマート農業技術・サービス事業の導入加速化 100億円
その他
共同利用施設の再編集約・合理化 400億円
農地の大区画家など公共事業 760億円
②物価高騰影響緩和対策 905億円
うち 施設園芸等燃料価格高騰対策 29億円、 和牛肉需要拡大緊急対策 170億円
③TPP等関連対策 2449億円
うち 産地生産基盤パワーアップ事業 110億円、 畜産クラスター事業等371億円
このうち、老朽化した共同利用施設の再編集約・合理化の支援400億円については、補助率は国・都道府県の合計で6割になる見込み。既存施設の撤去費用も支援の対象となる。

第3 江藤新農相が能登半島被災地を視察
11月16日、江藤拓農相は、就任後に初めて石川県輪島市と能登町を訪問し、能登半島地震や 9月の記録的大雨で被害を受けた農地や港などを視察した。 地元農業者・漁業者等との意見交換を行ったほか、地震で海底隆起などの被害を受けた輪島市の輪島港や 豪雨で土砂流入の被害があった同市南志見地区の農地などを視察した。
関係者から被害の状況について説明を受けた江藤農相は、「 農水省として経済対策や補正予算などにしっかり反映していきたい 」と述べた。

第4 米の作況101、収穫量は4万トン下振れ
11月19日、 農林水産省は2024年産米の作況指数 が10月15日現在で 101の「平年並み」になったと発表した。 記録的な高温で九州を中心に作柄が低下し、 前回( 9月25日現在) 発表の102の「やや良」から低下した。予想収穫量は679万2000トンで、前回から4万1000トン 下方修正した。
来年6月末時点の民間在庫量は160万トンを割り込み、過去最小の今年に次ぐ 低水準となる見通しとなっている。
全回の作況指数公表から変動したのは、特に東海・近畿九州である。天候に恵まれ、粒の肥大が進んだ近畿で1ポイント上がった。一方、 台風で倒伏被害の出た東海と高温で当日が進まなかった九州は1ポイント下がった。 都道府県別では、上がったのが8府県、 横ばい が22道県、下がったのが17都府県だった。
11月19日、 農林水産省は2024年産米の10月の相対取引価格が 60kg 当たり 23,820円で過去最高だった前月を5%上回ったと 公表した。 前年同月比では57%高となった。

第5 鳥インフルエンザ 過去最多ペースで緊急会議を開催
11月21日、 農林水産省は各都道府県の担当者ら約500人を集めた高病原性 鳥インフルエンザに関する緊急会議を開催した。農場での抗病原性鳥インフルエンザが多発し、今季は千葉県や鹿児島県など 養鶏主産地を含む 8 道県で10事例が発生し、過去最多の発生となった2022年シーズンに匹敵するペースとなっている。最需要期を控える鶏卵は不足感が広がり、多発が続けば 価格の上昇に拍車がかかるとの見方がある。
今季は高病原性鳥インフルエンザの農場での発生は過去最も早い10月17日であり、その後も発生が続き、これまでに 約121万8000羽が殺処分の対象となった。 22年 シーズンは同時期 (11月20日) 時点で10道県 13 事例 発生し 殺処分対象波数は約272万羽、22年 シーズン全体では殺処分対象羽数が約1771 万羽に上り、鶏卵の価格上昇の一因となった。
農林水産省は緊急会議で、大規模農場や過去に同病が発生した地域や農場に対し、飼養衛生管理の再点検を呼びかけるよう要請した。
今期の鶏卵は、猛暑による生産減少や需給調整での供給量抑制により、 既に高値にあり、市場では不足感がすでに出ている。

第6 その他
(1) 会計検査院が 353億円の 不備を指摘
会計検査院は、国2023年度予算の使われ方を点検した報告書を公表した。 農林水産省所管で改善を求めたり不適切と指摘したのは、 計24件 総額353億 4500万円にのぼった。 この金額は省庁別で最多だった。
内訳は 「 意見表示・処置要求 」が5件で、351億8200万円。金額が最も大きかったのは、都道府県の農業信用基金協会が保証人になる事業で、国費 218億7400万円について「今後使用する見込みがない」と指摘した。
また、水田リノベーション事業については、「排水対策、団地化の推進、農業機械の共同利用など多くの農家が通常取り組んでいる内容もメニューに含まれており、生産コストの削減につながりにくい」と指摘した。
このほか予算の使われ方が不適切な不当事項は17件、計 1億2900万円に上った。

(2) 財政審議会が飼料用米を交付金対象から外すことなどを建議
11月29日財務省の諮問機関である財政制度等審議会は、国の来年度予算に対する建議(意見書)をまとめた。
農業分野では、①国の農林水産予算は高水準で推移しており、早期に是正すべきである、
②水田農業は 2027年度以降、飼料用米を水田活用の直接支払い交付金の対象から外すべきである、
③政府備蓄米については、現在の需要量を前提に備蓄量を見直すべきである 。 市場に影響を与えない範囲で MA米を活用するなどして、備蓄量を減らす検討をすべきである、
④食料自給率については、政策目標として過度に重視するのは不適当である、 などとした。

(3) 農林中金、半期の純損失 8939億円、通期の純損失は1兆5000億円を超える見通し
11月19日、農林中央金庫は2024年度上半期(4-9月)決算を発表した。連結の経常損失は8588億円、純損失は8939億円だった。自己資本比率は、20.17%だった。米欧の金利上昇で評価損が拡大した米欧国債の売却を進めており、通期の純損失は1兆5000億円を超える見通しだ。一方、新たな投資余力を確保するため、1兆3000億円規模の資本増強を進めている。
11月25日 農林水産省は、 農林中央金庫が 外国債券運用で損失を出したことを巡って有識者会議を開催し、今後議論する論点を示した。同省は「 資産価値が下がりきる前に保有債を手放していれば 損失を抑えられた」などと指摘している。

(4) 食料・農業・農村政策審議会企画部会を開催
11月6日、農林水産省は食料・農業・農村政策審議会企画部会を開催し、食料・農業・農村基本計画の策定に向けて、次期基本計画で取り組む横断的な施策の方向性を示した。
生産性向上に向けた取り組みとして、① 資金ニーズへの対応、②スマート農業技術の開発・普及、③スタートアップによる技術開発・実装、④品種開発等を掲げた。
また、 米・野菜・果樹など品目別の検討の進展、次期基本計画で取り組む施策の方向性を示し、①地域計画を核とする取組、②基盤整備、③規模拡大や事業の多角化を行うための基盤経営基盤の強化を掲げた。
11月20日に開いた食料・農業・農村政策審議会企画部会では、農畜産物の安定供給をテーマに、品目ごとの課題を議論し、農林水産省は米や牛肉など品目ごとに生産や消費面での課題や対応方針を示した。

◎「気候変動対策・生物多様性保全×パートナーシップ!これからの協働による森林づくりを考える」シンポジウムの開催について

「Forest Style ネットワーク」(事務局:林野庁 森林利用課 山村振興・緑化推進室)から、会員のイベントのお知らせがありました。
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「気候変動対策・生物多様性保全×パートナーシップ!これからの協働による森林づくりを考える」シンポジウム開催のお知らせ

私たちの社会を支え、豊かにする森林を適切に維持・管理していくためには、森林・林業関係者だけでなく、企業や一般の都市住民も、森林を守り・活かすアクションに参加していくことが大切です。
本シンポジウムでは「協働による森林づくり」をテーマに、一般の企業をはじとめした様々なセクターを森林へとつなぎ、森林づくり活動をコーディネートする組織・団体の取り組みや、企業による森づくりの事例などを交え、
「協働による森林づくり」のこれからについて考えます。
皆様のご参加をお待ちしております。
日時:2025年1月29日(水)13:00~16:00
場所:3×3 Lab Future サロン (東京都千代田区大手町1-1-2 大手門タワー・ENEOSビル1階)
主催:(公社)国土緑化推進機構、特定非営利活動法人森づくりフォーラム
参加費:無料
(※キャンセル料金は発生しませんが、資料の準備や他の参加希望者様の受け入れなどの対応が必要になりますので、
キャンセルされる場合には、お早めにご連絡をお願いします。)
内容:
<講演>長野 麻子さん(株式会社モリアゲ 代表)
<話題提供>
・株式会社ソマノベース
・公益社団法人京都モデルフォレスト協会 ほか
<コーディネーター> 山本 信次さん(岩手大学 農学部 教授)
申込方法:イベント参加の申し込みは、申込フォームより行ってください。【申込期限:令和7年1月28日(火)】
詳細・申込フォーム:https://kyodo-moridukuri2025.peatix.com/view