全国山村振興連盟メールマガジンNO288

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                             2024.9.6

                         全国山村振興連盟事務局

 

〇2024年8月の農林水産行政

 

2024年8月の農林水産行政の主な動向は、以下のとおりでした。

 

1 令和7年度農林水産予算概算要求は 2兆6389億円で、前年度対比16.3%増

8月30日、農林水産省は令和7年度農林水産予算概算要求を財務省に提出した。総額は2兆6389億円で、前年度予算対比16.3%の増となった。

改正食料・農業・農村基本法に基づき、食料安全保障の強化、農業の持続的発展、農村の振興・活性化、環境対応・多面的機能の発揮、カーボンニュートラルの実現・花粉症解決に向けた森林・林業・木材産業総合対策などの柱を中心に要求している。

主な予算としては、

  • 水田活用の直接支払交付金等 3015億円(前年度3015億円)
  • 持続的生産強化対策事業 166億円(前年度148億円)
  • 強い農業づくり総合支援交付金 202億円(前年度121億円)
  • 畑作物産地生産体制確立・強化事業 53億円(新規)
  • 食料供給困難事態対策事業 3億円(新規)
  • 飼料生産基盤立脚型酪農・肉用牛産地支援 61億円(新規)
  • 合理的な価格の形成 4億円(前年度0.3億円)
  • 食品アクセス総合対策事業等 16億円(前年度3億円)
  • 農業と食品産業の連携強化 3億円(新規)
  • 地域計画実現総合対策 482億円
  • スマート農業技術活用促進集中支援プログラム 410億円の内数
  • 農業農村整備事業 3952億円(前年度3326億円)
  • 農地耕作条件改善事業 239億円(前年度198億円)
  • 農山漁村振興交付金(農泊、農村RMO、農村プロデューサーなど)104億円(前年度84億円)
  • 鳥獣被害防止対策等 123億円(前年度100億円)
  • みどりの食料システム戦略実現技術開発・社会実装促進事業31億円(前年度18億円)
  • 多面的機能支払交付金 512億円(前年度486億円)
  • 中山間地域等直接支払交付金 301億円(前年度261億円)
  • 環境保全型農業直接支払交付金 31億円(前年度26億円)
  • 森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策 156億円(前年度144億円)

㉑ 花粉症解決に向けた総合対策 35億円(新規)

などとなっている

 

2 食料・農業・農村基本計画の策定に向けて始動

8月27日 政府は首相官邸で食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の会合を開き、 食料・農業・農村基本計画の策定に向けた政策の方向性を決めた。 改正食料・農業・農村基本法に基づき、① 輸入に依存する 麦・大豆の増産など 水田政策の見直し、②輸出拡大に向けて農地の大区画化・ 有機農業の推進、③農業の環境負荷軽減として有機農業への移行支援のための交付金の創設 などを掲げた。

本部長である岸田文雄首相は、今後5年間で 農林水産・食品分野の 政策の再構築を進めていくとし、また、来年度予算で 地域計画を核とした農業用共同利用施設の新設・再編への支援などを調整するよう指示があった。

これを受けて 8月29日、 坂本哲志 農相は、 食料・農業・農村政策審議会に食料・農業・農村基本計画の見直しを諮問した。また、来年の通常国会に向けて、食料価格への適正なコスト転嫁などに向けた法案の提出を検討中である。

 

3 食料自給率は38%で横ばい

8月8日、 農林水産省は2023年度の食料自給率を公表し、カロリーベースで38.19% 生産額ベースで 60.98% だったと発表した。

カロリーベースでは、 前年度比0.43%増となったが、 これは小麦の10アール当たり収量が増えたこと、米の消費量が増加したこと、植物油の高騰により消費量が減ったことなどが押し上げ要因となった。一方、てんさいの糖度が低下し 国産を原料とした精糖量が減ったことにより、砂糖類の生産減少による自給率の引き下げ要因もあった。

生産額ベースは2.62%増となったが、これは特に輸入に頼る畜産物で米国産牛肉の高騰などにより輸入量が減少したこと、油脂類も輸入量が減少したこと、国産の米と野菜の単価が上がったことが、押し上げ要因となった。

 

4 坂本農林水産大臣が香港に海外出張

8月15日から17日、坂本農林水産大臣は香港に海外出張した。 農相は、香港特別行政区 チュック・ウィンヒン政務長官代理と会談し、日本産農林水産物・食品の輸出拡大に向けた我が国の取り組みを紹介するとともに、香港が現在実施しているALPS処理水の海洋放出に伴う日本産食品に対する輸入規制は 極めて遺憾であるとして、即時撤廃を求めた。

またアジア最大級の食の見本市フード・エクスPRO2024のジャパン・パビリオンのオープニング イベントに出席。日本産農林水産物・食品のトップセールスを行うとともに、国内事業者を激励した。

さらに①日本産食品を取り扱う現地小売店の視察、②現地料理学校における和食料理人の人材育成の現状の視察、③日本産米を使用しておにぎりを製造販売する現地企業で開催した香港の子供たちを対象とした日本産米の食育イベントへの参加を行った。

 

5 米の品薄に対し落ち着いた購買行動を呼びかけ、稲の作柄は良好

令和5年産米の需要が堅調に推移したことなどを背景として、 令和6年6月末の在庫量は近年では低い水準となっていたが、その中で、米の在庫が最も少なくなる端境期である 8月に、 南海トラフ地震臨時情報やその後の地震や台風 等により買い込み需要が発生したこと、輸送業者がお盆休みに入った影響もあり商品の搬入に停滞が生じたことなどにより、米が品薄となった店舗が生じた。

しかしながら、例年 新米は8月中には九州から千葉 茨城 等の産地の早期前が出回り始め、9月には1年の出荷量の4割程度まで本格的に出回る。本年の米の生育状況は順調であり、生育が例年に比べ 1週間程度 早まっている産地も見られることから、 出荷も 前倒しで行われる見込みである。

8月27日、 坂本農相は「米が品薄になっている状況は 今後 順次回復していくと見込んでいる」として、 消費者に対し 必要な量だけ米を購入するなど 落ち着いた 購買行動を呼びかけた。

8月30日、農水省は令和6年産米の8月15日現在の作柄概況を公表した。これによると、青森県が「良」となり、東北地方などの11道府県が「やや良」、新潟県など31都府県が「平年並み」となっており、本年の作柄はおおむね良好と見込まれている。

 

6 その他

(1) 農林水産品の輸出、上期は4年ぶりに減少

8月2日、農林水産省は2024年 上半期( 1月から6月)の農林水産物・食品の輸出実績を公表した。 前年同期比 1.8%( 132億円)減の7013億円となった。

これは中国・香港向けの輸出実績が昨年夏のALPS処理水放出以降、対前年同期比で減少となっており、本年1月から6月累計ではそれぞれ43.8%の減少 10.5%の減少となった。 一方で米国向けは、1156億円で 19.9%の増加と最も大きくなっているなど、中国・香港以外の国・地域を合計した場合 +14.3%の伸びとなっている。

このような状況を受けて、8月23日、 政府は「第20回 農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」を開催した。 坂本農相は輸出状況やこれまでの輸出促進の取り組み等を報告するとともに、 海外の規制やニーズに対応して継続的に輸出に取り組み、手本となる産地を認定する「 フラッグシップ輸出産地」が意欲的な目標を目指す取り組みに対し 各種支援措置を優先的に措置することなど今後の方針を説明した。

今後の取り組みとしては、①輸出拡大のための拠点整備と先行した取り組みの横展開、②認定品目団体とジェトロ等の連携による非日系市場など新たな市場開拓、③国内外一貫した戦略的サプライチェーンの構築などとなっている。

 

  • 中山間地域等直接支払いの次期対策方針を取りまとめ

8月2日 農林水産省は、 中山間地域等直接支払い制度について、来年度以降の次期対策の取り組み方針をまとめ、同制度のあり方を検証する第三者委員会において了承された。取りまとめでは、① 複数の集落間や外部組織との連携を推進すること、②スマート農業の導入など効率的な農業を継続できる環境を整備すること、③将来にわたり耕作すべき農地を明確化すること、④農地利用の将来像を描く地域計画との調和を取ること、⑤事務負担の軽減に向けて対策を行うこと 等が示されている。

 

  • APEC 食料安全保障担当大臣会合がペルーで開催

8月18日、 第9回 APEC 食料安全保障担当大臣会合 がペルーで開催され、 食品ロスの防止・削減、 持続可能で強靭なサプライチェーンの構築を通じた食料安全保障の確保等について、 閣僚声明及び関連文書が採択された。 会合には 日本・豪州・カナダ・中国・香港・ロシア・米国など19カ国・地域が参加した。

閣僚声明には、①食料安全保障と栄養を改善するために研究イノベーションを支援・奨励し、効率的な農業生産性を向上させること、②気候変動への適用と影響の緩和に向けた農業・食料システムの改善や生物多様性の保全、関連するデータ情報の考慮を目的とした戦略的な政策とアプローチを確保することなどが盛り込まれた。

 

◎マッチングイベント【INACOME BUSINESS MATCHING】のWEB開催について

 

農業農村情報通信環境整備準備会(事務局:農水省地域整備課、株式会社 インターネットイニシアティブ)から、以下の連絡がありました。

農村振興局都市農村交流課より、下記のとおり、イベント開催の案内がまいりましたのでお知らせいたします。

また、お知らせのうち、「第2回マッチング(自治体や地域団体からの地域課題発信)」にて発表(登壇)希望がございましたら、添付リーフレットに記載の事務局に直接御連絡いただくか、準備会事務局に御連絡いただければと存じます。

 

(↓イベント開催案内↓)

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農山漁村の課題解決、自治体と企業とのマッチングを図るWebプラットフォーム

INACOME(イナカム)※」

において、企業/起業者が有するノウハウやソリューションを活用し、農山漁村地域の課題の解決を目指すマッチングイベント【INACOME BUSINESS MATCHING】を、昨年に引き続き、2回に分けてオンライン開催します。

https://inacome.jp/matching2024

※INACOMEは農山漁村振興交付金 農山漁村発イノベーション対策の一事業です。

課題を有する自治体や地域団体の発表者(第2回)も募集中です。

詳しくは、リーフレットをご覧ください。

20240906INACOME_BUSINESS_MATCHING2024

 

************ <INACOME BUSINESS MATCHING 概要> ************

■詳細(企業リスト含む)・視聴/発表の申込みはこちら

https://inacome.jp/matching2024

 

■第1回:企業からのソリューション提案

○日時  :2024年9月11日(水) 13:30~16:30

○形式  :オンライン(ZOOMウェビナー)

○視聴対象:地域の発展に向けて共に取り組んでくれる企業を求めている

自治体や地域団体の方

○参加費 :無料

○登壇者 :地域課題の解決に役立つノウハウやソリューションを有する

企業/起業者(計24社予定)

 

■第2回:自治体や地域団体からの地域課題発信

○日時  :2024年10月30日(水) 13:30~16:30

○形式  :オンライン(ZOOMウェビナー)

○視聴対象:農山漁村で役立ちそうなアイデアや新技術がある企業/起業者、

自治体等と共に、地域に貢献したいと考える企業/起業者

○参加費 :無料

○登壇者 :地域課題を有する自治体や地域団体(計6地域予定)★募集中!★

 

◎森林総合研究所の公開講演会について

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所より、以下のとおり公開講演会を開催するとの連絡がありました。

 

テーマ:生物機能を活用した木材の利用

―酵素および微生物機能を活用した木材の新しい利用技術

日時:10月2日水曜日 13:00-16:30

場所:一橋大学一橋講堂

東京都千代田区一ツ橋2-1-2学術総合センター内

参加方法:事前登録不要、参加無料

 

詳しくは別添のリーフレットをご覧ください。

20240905森林総研