全国山村振興連盟メールマガジンNO279

全国山村振興連盟メールマガジンNO279

 

2024.7.5

全国山村振興連盟事務局

 

  • 令和6年度第1回理事会を開催しました

7月3日水曜日 10時30分から11時40分、全国町村会館2階ホールにおいて、令和6年度全国山村振興連盟 第1回理事会を開催しました。会議においては、金子恭之会長(衆議院議員)の挨拶の後、国会議員副会長である宮下一郎衆議院議員から挨拶がありました。また、関係省庁からの来賓として、農林水産省山本惠太地域振興課長、国土交通省谷山拓也地域振興課長、総務省大田圭地域振興室長、林野庁福田淳森林利用課長からの挨拶がありました。

議案のうち、①令和5年度事業報告、②令和5年度収支決算について了承され、③「令和7年度山村振興関連予算・政策に関する要望」、④「山村振興法の改正に関する特別要望書」が決定されました。

また、従来提起された意見・要望等を取りまとめた「山村振興法改正についての論点整理(案)」について議論を行い、引き続き検討することとなりました。

会議の後、7人の副会長及び事務局により、農林水産省鈴木憲和副大臣、国会の関係議員及び関係省庁幹部に対して要請活動を行いました。

なお、これに先立ち7月2日月曜日16時から17時に、山村振興連盟副会長会議を連盟事務局において行いました。

副会長会議の後、17時から18時15分にかけて、副会長をメンバーとする「第4回山村振興法改正問題検討会」を開催し、林野庁諏訪幹夫山村振興・緑化推進室長、農林水産省地域振興課石飛法子課長補佐にも出席いただき、「山村振興法改正についての論点整理(案)」に関し、議論を行いました。

「山村振興法の改正に関する特別要望書」、「令和7年度山村振興関連予算・政策に関する要望」、「山村振興法改正についての論点整理(案)」は、以下のとおりです。

20240703特別要望

20240703要望書

20240703論点整理案

 

○山村振興法改正に関する意見交換会を開催しました

7月3日の理事会の後、12時から全国町村会館第2会議室において、副会長、有志理事による山村振興法改正に関する意見交換会を開催しました。出席理事等20名のほか、関係省庁(農林水産省、林野庁、国土交通省、総務省)からも、担当課室長等8名に参加いただきました。

この会議は、以下のとおりの2部構成で行いました。

 

第1部12:00~13:00 有識者からの講演と質疑応答

明治大学小田切徳美教授から、「農山村再生の道」と題して講演をいただき、その後、質疑応答を行いました。

また、全国町村会小野文明経済農林部長にも出席いただき、全国町村会としてのコメントをいただきました。

 

第2部 13:00~14:00 理事による意見交換

冒頭、農林水産省山本惠太地域振興課長から、法改正に向けての状況などにつき簡単に紹介をいただき、その後は、自由な意見交換を行いました。

活発なご意見をありがとうございました。意見は今後の連盟の活動や論点整理案、秋の要望書などに反映したいと考えています。

 

○2024年 6月の農林水産行政

 

202 4年6月の農林水産行政の 主な動向は以下の通りでした。

 

1 食料・農業・農村基本法関連の3法が成立

6月14日、改正食料・農業・農村基本法の関連3法が、参議院本会議において与党などの賛成多数により可決・成立した。これに先立ち6月13日参議院農林水産委員会では、同3法案を与党などの賛成多数で可決している。

食料確保困難事態対策法案については、日本維新の会を除く野党が、生産者にを罰則を課すのは疑問との立場から反対した。

農地関連法案には、共産党を除く野党が賛成した。共産党は農地所有適格法人への出資規制を緩和する特例に対し反対した。

スマート農業法案は、全会一致で可決した。

これを受けて農林水産省は、5月に成立した改正食料・農業・農村基本法と合わせて、7月以降、全国11ブロックで説明会を開くこととしている。

 

2 食料・農業・農村基本計画は今年度内に改定

6月12日、政府は食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の会合を首相官邸で開き、①食料・農業・農村基本計画を2024年度内に改定すること、②食品・農産品の価格転嫁を促すための仕組みを法制化すること(持続的な食料供給に要する合理的なコストを考慮する仕組み)、③先進的な環境負荷低減の取り組みを実践する農家に交付金を支払う仕組みの2027年度導入、④食料供給困難事態対策法案における「食料供給が困難な事態」の定義を定める基本方針2025年中に策定することなどを決めた。

また岸田文雄首相は、①農業用インフラの保全管理の見直し、②森林組合や伐採業者といった森林・林業経営体の集約の促進についても、それぞれ25年の通常国会で法制化を目指すよう指示した。

このほか 「農産漁村活力再生パッケージ 」をまとめ、過疎地域で市町村などが自家用車で住民らを運ぶ「自家用有償旅客運送」の事例創出などに関係省庁連携で取り組むこととした。

 

3 森林・林業白書は「花粉と森林」を特集

6月4日、政府は令和5年度の森林・林業白書を閣議決定した。今回の白書では特集を「花粉と森林」として、粉症対策を取り上げている。

特集「花粉と森林」では、① 森林資源の利用と造成の歴史、②スギ等による花粉症の顕在化と対応、③花粉発生源対策の加速化と課題、④人と森林のより調和した関係を目指して、として、森林資源造成の歴史や今後の対策などを紹介した。

次の伐採・植え替えの加速化や木材需要の拡大、苗木生産の拡大等によって、将来的にスギ花粉を減らしていく方向について記述し、花粉の発生源となるスギ人工林を10年後に2割減らす目標の達成に向けた道筋を示した。

また白書では、5つのトピックスを設定している。トピックスは、①国民一人一人が森を支える:森林環境税~森林環境税の課税開始と森林環境譲与税の取り組み状況、②合法伐採木材等をさらに広げるクリーンウッド法の改正、③地域一帯で取り組むデジタル林業戦略拠点がスタート、④G7 広島サミットにおいて持続可能な森林経営・木材利用に言及、⑤令和6年能登半島地震による山地災害等への対応、を取り上げている。

このほかの各章は、第1章 森林の整備・保全、第2章 林業と山村(中山間地域)、3章 木材需給・利用と木材産業、第4章 国有林野の管理経営、第5章 東日本大震災からの復興、によって構成されている。

 

4 九州で初イノシシ豚熱を確認、経口ワクチンの散布へ

6月6日 佐賀県唐津市 において、九州で初となる野生イノシシの豚熱の感染が確認された。九州は我が国の豚生産の約1/3を占める養豚産地であり、飼養 する豚へのワクチン接種などにより豚熱の発生防止に努めてきたが、昨年8月に豚熱の発生が養豚農場で確認され、警戒を強めていた。今回豚熱の感染が確認された野生イノシシは、同発生農場付近において発見されたものである。

6月7日、農林水産省は 豚熱・アフリカ豚熱対策本部を開催し、九州の野生イノシシに関する今後の豚熱対策を決定した。九州全県に対し野生イノシシの 検査と捕獲を強化し、一部地域においては 経口ワクチンの散布を実施することとした。ワクチンについては 九州各県で母豚・肥育豚にも接種しているところである。農林水産省は 野生イノシシの活動が活発化している時期であることを踏まえ、「 できるだけ早く佐賀県内の経口ワクチンの散布を進めていきたい 」としている。

 

5 米先物取引の本上場を認可

6月21日、政府は堂島取引所(大阪市)が申請していた米の指数先物の本上場を認可した。 同社は2月21日に政府に本上場を申請しており、政府は①十分な取引量が見込まれること、②生産・流通を円滑にするために必要かつ適当であることという基準に基づき判断し、同社に通知した。取引開始は 8月13日 となる予定である。

今回の先物は、農林水産省が毎月発表する集荷卸売業者らの相対取引の平均価格から算出する指数を取引対象とする。過去の先物は、特定の産地品種銘柄を対象としていたものであり、今回とは異なっている。米の現物市場が昨年秋に創設されたことも踏まえた。

農林水産省は、「 現物取引と先物取引の組み合わせで、価格変動リスクを抑制することが可能 」と見ている。

 

6 その他

(1) 食品 輸出 4ヶ月連続で減少

6月19日財務省が「5月の貿易統計速報」を発表し、食料品輸出額は前年同月比 4.9%減の890億円となり、4ヶ月連続の減少となった。

日本産水産物の輸入規制で中国の輸入減が続くことが大きく、中国は55.8%減の104億円となった。一方東南アジア諸国連合(ASEAN)と米国向けは 2桁増を維持しており、ASEANが12.3%増の174億円、米国が26.5%増の171億円となった。 またEUも、41.3%増の58億円となった。

他方、食料品輸入額は14.3%増の9212億円だった。貿易全体での赤字は1兆2,213億円で2ヶ月連続の赤字となった。

 

(2) 漁獲量は3年連続で最低を更新

5月31日農林水産省は、「2023年の漁業・養殖業生産統計(速報)」を公表した。生産量は前年比4.9%減の372万4300トンとなり、 2年連続で400万トンを割った。 現在の統計手法になった 1951年以降3年連続で過去最低を更新している。魚種別では、スルメイカとスケソウの漁獲量が過去最低を更新した一方で、マイワシ、サンマは増加している。

 

(3) 担い手農地集積が 6割となり、8割目標に届かず

6月12日、農林水産省は認定農業者など担い手の農地集積率が前年度を 0.9 ポイント上回る 60.4%になったと発表した。2013年の 閣議決定 「日本の再興戦略 」の中で、「 今後10年で担い手に農地の8割を集める」との目標を掲げており、この政府目標は達成できなかったことになる。

23年度の集積率は目標を設定した13年度を11.7 ポイント上回ったが、目標には19.6 ポイント 届かなかった。23年度末時点で 担い手が利用している農地は 259万3300ヘクタールであり、13年度から38万5000ヘクタール増えたが、このうち都道府県の農地中間管理機構(農地バンク)を介したものは 52%を占めている。

 

(4) 食品ロス削減目標は達成

6月21日 農林水産省は、2022年度の食品ロス量が推計で472万トンとなり、 30年度までに489万トンまで減らす政府目標を達成したと発表した。前年度から 51万トン( 9.8% )減り、12年度の推計開始以来初めて500万トンを切った。

食品ロスには事業系と家庭系があり、前年度からそれぞれ43.3万トン (15.4%)と 8万トン( 3.3% )減少した。 事業系については、新型 コロナの影響による市場の縮小等の影響があると同時に、食品事業者の努力によるところが大きいとされた。一方 家庭系は、30年度に216万トンまで減らす目標に対して20万トン届いていない。

廃棄される食品の価値の合計を経済損失として算出すると、22年度は4兆円に上るという。

 

(5)鳥獣交付金について財務省が改善を要求

6月28日、財務省は予算執行調査の結果を発表し、その中で「鳥獣被害防止総合対策交付金」(24年度148億円)について、①侵入防止柵と地面の間に隙間があるなどで管理に不備がある箇所が多数見られた、②捕獲頭数と農業被害の減少に明確なつながりがない、などとして、予算の削減を含め抜本的に見直すべきだと指摘した。

柵などの管理が適切でない市町村には柵の設置費用を払わないこと、取組の効果を検証しない市町村への交付を見直すことなどを求めている。