全国山村振興連盟メールマガジンNO275

全国山村振興連盟メールマガジンNO275

 

2024.6.7

全国山村振興連盟事務局

◎山村振興法改正に関する意見交換会を開催します

既に理事の皆様にはご案内をさせていただいていますが、7月3日(水)10:30~の山村振興連盟理事会の後、12時から、全国町村会会議室において、「山村振興法に関する意見交換会」を開催します。

会議は2時間程度を予定しており、前半には明治大学小田切徳美教授など有識者に参加いただいて話を伺い、後半には理事有志による意見交換を行いたいと考えております。関係省庁の担当課長、担当補佐等も出席していただける予定です。

詳しくは案内文をご覧いただき、出席していただける理事の方は、事務局までお伝えいただくとともに、省庁への質問がある場合は質問事項をお届けいただくようお願いします。

 

山村振興法改正に関する意見交換会の予定

( 7月3日水曜12:00-14:00 )

 

第1部12:00~13:00有識者からの講演と質疑応答

明治大学小田切徳美教授から、30分程度講演をいただき、その後、質疑応答。

 

第2部 13:00~14:00 理事による意見交換

冒頭、農林水産省から、法改正に向けての状況などにつき簡単に紹介をいただき、その後は、自由な意見交換。

 

 

 

◎2024年5月の農林水産行政

2024年5月の主な農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした。

 

1 食料・農業・農村基本法改正法案が成立

食料・農業・農村基本法改正案は、5月28日の参議院農林水産委員会の決議を経て、5月29日 参議院本会議において自民党・公明党両党と日本維新の会の賛成多数で可決成立した。 日本維新の会を除く野党は、改正案に反対した。これに先立つ28日の参議院農林水産委員会では岸田文雄首相が出席し、審議を行った。

立憲民主党と国民民主党は、「農業所得の確保」を明記することなどを求めて 修正案を共同提出したが、否決された。共産党は政府案・野党提出の修正案ともに賛同できないとした。

付帯決議は全会一致で採択され、①食料安全保障の確保、②食料の安定的な供給、③食料価格形成、④農業の持続的な発展、⑤障害者と農業者の連携、⑥食料消費、⑦食料備蓄、⑧望ましい農業構造の確立、⑨農地の確保、⑩農業生産活動と自然環境の保全、⑪種子の供給などにつき記載されている。

農村については、付帯決議第13号として、「農村は食料の安定的な供給を行う基盤であり かつ 国土の保全 自然環境の保全等の多面的機能が発揮されるとともに多様な産業を生み出す地域資源を有する場であり、農村における地域社会の維持が農業の持続的な発展に不可欠であることにかんがみ、食品産業の振興その他の地域社会の維持に必要な施策を講じ、農村の総合的な振興を図ること」などとされている。

 

2 食料・農業・農村基本法関連3法案が衆院を通過

5月21日、衆議院農林水産委員会は、食料・農業・農村基本法の関連3法案を与党などの賛成多数で可決した。 3法案は 5月23日に衆議院本会議で可決され、参議院に送付された。

3法案は一括で審議されており、このうち食料供給困難事態対策法案については、日本維新の会を除く野党が反対した。 本法案については、農家への罰則を盛り込むか否かが議論となり、5月21日の衆議院農林水産委員会では、罰則の見直しなどを求める立憲民主党などの修正案が否決された。 付帯決議では「 適切かつ慎重な運用に努める 」とされている。

2番目の農地関連法案 については、共産党と令和新選組が反対したが、これら2党を除く与野党が賛成した。 付帯決議では関連施策の充実強化を図ることとされ、出資規制の緩和特例に関しては、「投機目的の出資を排除するなど厳格に審査する」こととされた。

3番目のスマート農業法案については、全会一致で可決した。 付帯決議では 「 中小家族経営や中山間地域等の条件不利地を含めた農業者の生産性の向上に寄与するものとなるよう考慮すること 」とされた。

 

3 坂本農相がタイに出張し大臣と会談

5月3日、坂本農相は タイ・バンコクで、タマナット・プロムパオ農業・協同組合大臣と会談を行い、坂本農相から日本産水産物等の輸出促進に向けた タイ政府の協力を依頼したほか、「日ASEANみどり協力プラン」に基づき、タイで実施するプロジェクトの推進に向けて両政府間で協力していくことを確認した。

また、坂本農相は、日本産水産物のPRイベントに参加し、現地の食料品等向けにホタテ等のトップセールを行うとともに、タイ輸出支援プラットフォーム 総会に出席し、水産物の販売網を構築する方策を現地の事業者と議論した。

なお、5月2日 マレーシアでは、輸出 支援プラットフォームの立ち上げ式が行われ、高橋大臣政務官がマレーシアの現地を訪問した。

 

4 坂本農相が熊本県・佐賀県・長崎県に出張

5月11日及び5月12日に、坂本農林水産大臣は、熊本県・佐賀県・長崎県へ出張した。

5月11日には、平成28年4月に発生した熊本地震による農地や土地改良施設の甚大な被害から創造的復興を遂げた熊本県の秋津地区を訪問し、話を聞いた。

5月12日には、佐賀県の有明水産振興センターを訪問し、農水省と有明海沿岸4県が協調して進めている有明海再生に向けた取り組みを視察した。

その場で佐賀県の山口知事、佐賀・福岡・熊本・長崎4県の漁業団体と面会し、有明海再生に向けた思いを改めて聞いた。

次に長崎県の諫早湾干拓堤防や干拓農地を視察し、長崎県の大石知事をはじめ関係者から、干拓事業の防災効果や営農効果について話を聞いた。

なお、6月1日には、長崎県雲仙市において請求異議訴訟の相手方当事者やその弁護団を対象とした説明会が開催され、事務方が対応した。

 

5 令和5年度食料・農業・農村白書を閣議決定

5月31日、政府は令和5年度の食料・農業・農村白書を閣議決定した。

特集では、「食料・農業・農村基本法の検証・見直し」を掲げ、現行の基本法の制定経緯を踏まえながら、改正に至る背景や課題を記述した。

また、トピックスとしては、①構造転換対策・地域計画の策定、②物流2024年問題、③農林水産物・食品の輸出促進、④脱炭素、⑤スマート農業、⑥農福連携、⑦能登半島地震への対応を取り上げた。

本編は、第1章食料安全保障の確保、第2章環境と調和のとれた食料システムの確立(新設)、第3章農業の持続的な発展、第4章農村の振興、第5章災害からの復旧・復興や防災・減災、国土強靭化等という構成となっている。

新設された環境調和の章では、SDGsなど社会的要請に対処し、「みどりの食料システム戦略」などの政策を展開していくとしている。

 

6 その他

  • 日中韓サミットで日中韓FTA交渉の加速を合意

5月27日、韓国ソウルで第9回日中韓サミットが開催され、岸田文雄首相、 韓国のユン・ソンニョル大統領、中国の李強首相による首脳会談が行われた。

特に経済と経済協力と貿易の分野では、「3か国間の経済貿易分野における共同の取り組みが地域および世界経済の繁栄・安定にとって重要な役割を果たすとの認識を共有する 」とした上で、「 自由で公正で包括的で質の高い互恵的な FTAの実現に向け、交渉を加速していくための議論を続ける 」として、日中韓FTA(自由貿易協定)の締結交渉の加速が明記された。

日中韓サミットと閣僚級会合を定期的に開催することも共同宣言に明記されており、次回第10回は日本で開催される予定となっている。

また、前日の5月26日にはそれぞれ2国間の首脳会談も行われた。日中首脳会談では、日本は日本産水産物の輸入停止措置の撤廃を求めたところであり、ALPS処理水の海洋放出について日中両首脳は、「昨年11月の首脳会談以降専門家を含む両国間の事務レベルの意思疎通が進展していることを評価した上で事務レベルでの協議のプロセスを加速していく」ことで一致した。

 

(2)水産庁の漁業補助金の算出ミス474億円に

5月29日、会計検査院は、漁業者に船をリースしこれに対して助成する水産庁の事業について調査したところ、計774億円の不適切な運用が見つかったと した。 事業は水産庁がNPO 法人水産業・漁村活性化推進機構を通じて漁連などがリース用の漁船を取得する費用の半額までを国費で助成する。

リースを受けた漁業者が漁業所得の詳細を報告することとされているが、漁業所得の中に警戒に漁船を使ったり海底を清掃したりした際に得た収入や共済金を含めているものが多く見られた。

これは水産庁が漁業所得に含めないことを具体的に明示していなかったため とされ、会計検査院は漁業所得としてとして取り扱うべき収入や支出の項目を具体的に示すなどの改善を求めた。

 

(3) 捕鯨船関鯨丸が出港

5月21日、我が国の母船式捕鯨業者である共同船舶株式会社が所有する関鯨丸が下関を出航し、東北・北海道沖での操業を開始した。 今回の出航について農林水産省は、「今後の捕鯨業の持続的な発展の観点から非常に意義深い」とし、 科学的根拠に基づくクジラ類の持続的な利用を確保し商業捕鯨が持続的かつ 自律的に痛まれるようにしたい としている。

 

(4) 有明海のノリ 販売について公正取引委員会が排除措置命令

5月15日公正取引委員会は、有明海で養殖されるノリ販売について組合員に全量出荷を強制したとして、独占禁止法違反で熊本県漁連と佐賀県有明海漁協に対し、行政処分で最も重い排除措置命令を発出した。

これに対し両漁連は、全量出荷は強制でないとして、命令の取り消し訴訟を提起する考えを示すとともに、公正取引委員会の一連の審査手続きが違法であるとして国に損害賠償を求める訴訟を熊本地裁・佐賀地裁へそれぞれ提起した。

 

(5) 農林中金、1.2兆円の資本増強方針を発表

5月22日、農林中央金庫は、2023年度決算を発表し、経常収支は対前年度39%増の3兆180億円、経常利益は35%増の2兆8837億円となったとした。しかし米国の高金利等により外貨調達費用が増加し、資金調達費用は92%増の2兆6016億円となり、米国債など有価証券の評価損は、1兆9000億円に上る。

こうした状況の下で、2024年度は5000億円を超える赤字が見込まれるとし、1兆2000億円規模の資本再構築を進める方針を表明