全国山村振興連盟メールマガジンNO203

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2022.12.9

全国山村振興連盟事務局

  • 2022年 11月の 農林水産行政について

 

2022年11月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした。

 

1 第2次補正予算 農林水産関係は8206億円に

11月8日政府は2022年度第2次補正予算案を決め、国会に提出した。 電気代やガス代の抑制策などを中心に一般会計の追加歳出は 28兆9222億円に上る。このうち農林水産関係は総額8206億円となり、焦点だった食料安全保障の強化に向けた予算は1642億円を計上した。

主な概要は ①食糧安全保障の強化 計 1642億円

うち・肥料の国産化安定供給確保対策(原料の備蓄保管施設の整備)270億円

・飼料自給率向上総合緊急対策 (耕畜連携)120億円

・米粉の利用拡大支援対策 (機械施設導入)140億円

・畑地化促進事業(水田畑地化・畑作物の定着)250億円

②物価高騰の影響緩和 計1127億円

・施設園芸等燃料価格高騰対策(価格高騰の補填金)85億円

・配合飼料価格高騰緊急対策(価格高騰の補填金)103億円

③ TPP 等関連対策 計 2704億円

・産地生産基盤パワーアップ事業( 輸出拠点施設、麦大豆など国産シェア拡大)306億円

・畜産クラスター事業(輸出拡大、飼料増産、経営継承)555億円

④その他

・水田活用の直接支払交付金 190億円

・畑作物産地形成促進事業300億円

・生乳需給改善対策57億円

 

2 高病原性鳥インフルエンザが頻発

高病原性鳥インフルエンザについては、10月末の岡山県倉敷市、北海道厚真町での発生に続き、11月には13道県19例の発生となり、過去に例のない頻発状況となった。 11月に発生したのは、香川県観音寺市3例、茨城県かすみがうら市、 岡山県倉敷市2例、北海道伊達市、和歌山県白浜町・和歌山市、兵庫県たつの市、鹿児島県出水市3例、新潟県阿賀町、宮崎県新富町、青森県横浜町、宮城県気仙沼市、千葉県香取市、福島県伊達市となっている。

こうした状況を受けて農林水産省は11月28日、専門家による家きん疾病小委員会を開き、緊急提言をまとめた。その内容は①農場敷地内や鶏舎周囲の消毒の徹底、長靴の消毒・交換、 野生動物の侵入防止、②ため池周辺等の消毒 、ため池の水抜きなどとなっている。農林水産省は28日、この提言をもとに都道府県に向けて通知を発出した。

 

3 OECD 農相会合で共同声明を採択

経済協力開発機構(OECD)は、11月4日、農相会合の共同声明を採択し、閉幕した。日本からは会議に野中厚農林水産副大臣が出席し、野村哲郎農林水産大臣も3日に行われた各国閣僚等による昼食会にビデオメッセージ送った。

OECD 農相会合の共同声明は、①ロシアのウクライナ侵攻を最大限の強い言葉で非難するとして、インフラや作物の破壊などを招き世界の食糧安全保障や必要な食料を得られる権利に深刻なリスクをもたらしていること、②世界人口の増加を見据えた食料安全保障と栄養の確保として、不当な輸出禁止や制限などの貿易措置を行わないこと、③農業の環境負荷低減として、農業食料分野の温室効果ガス排出削減・貯留を増大させること、④生産から販売まで食料供給に関わる全ての人の生計確保として、食料システムの変革や気候変動の影響を受ける人々の生計を維持すること、などを盛り込んだ。

 

4 1月から9月の農林水産物・食品の輸出額が9966億円と過去最高

農林水産省は11月4日、2022年1月から9月の農林水産物・食品の輸出額を取りまとめ、輸出総額は9966億円と、前年同期より1290億円(14.9%)増え、過去最高を更新したと発表した。歴史的な円安により日本産品の輸出が後押しされている状況にある。

9月の農林水産物・食品の合計は1141億円と対前年同月比17%増となっており、このうち輸出額から加工食品を除いた1次農産品の輸出額は323億円と、対前年同期比13%増となった。

その内訳は、畜産品118億円(11%増)、穀物53億円(10%増)、野菜・果実52億円(0.6%減)、その他農産物101億円(25%増)となっている。牛肉や粉ミルクなどの乳製品が堅調で、国内の生乳需給緩和で脱脂粉乳の在庫が高水準となっていることを受け、脱脂粉乳の輸出が伸びた。牛乳・乳製品は27%増の28円となった。米・緑茶の輸出も増加した。

 

5 財政制度等審議会が従来政策の見直しによる財源捻出を提言

11月29日、財務省の諮問機関・財政制度等審議会は2023年度予算編成に関する建議(意見書)を鈴木俊一財務大臣に提出した。その中で食料安全保障の強化に向けた財源については、米政策を中心に非効率な従来の施策を見直して捻出すべきだとした。

建議の内容は、①食料安全保障については非効率な従来政策を見直し、財源とセットで検討すること。国内生産の増大は経済合理性などを無視してまで必要か十分考慮すること、

②米政策については、水田活用の直接支払交付金の単価見直しが必要であること。特に飼料用米は、専用品種に交付金配分を限定すべきこと。水田で転作し続けるのは持続可能ではなく、畑地化が必要であること、

③農地集積・集約については、農地の集約化の指標を早急に設定する必要があること。 株式会社の一層の参入も課題であること、

などを盛り込んだ。

 

6その他

  • 「さかなの日」アンバサダーにさかなクンが就任

11月27日、水産庁はFish-1グランプリで「さかなの日」アンバサダーにさかなクンを任命した。毎月3日から7日までの「さかなの日」の取組を推進するための起用となった。

認定式は「さかなの日」キックオフイベントで行われ、さかなクンが登壇し、水産庁加工流通課五十嵐麻衣子課長とのトークイベントで、資源管理型漁業によるさかなの日のコンセプト「さかな×サステナ」を解説した。

 

  • 処理水放出で漁業のための基金を創設

経済産業省は2022年度第2次補正予算において、東京電力福島第一原発事故に伴う多核種除去設備等処理水(ALPS処理水)の海洋放出に伴う500億円の新規金を創設することとした。21年度補正で措置した300億円の基金とは別の大型基金であり、漁業者自身の創意工夫を条件に、高騰する燃料費などの補助に当てられる。

21年度補正で措置した300億円の基金は、実際に風評被害が起こった際に活用するものであり、魚価が下がった場合の一時保管や冷凍設備などの整備が対象となっていた。今回の新基金は処理水放出の影響を乗り超えるためとして、福島周辺だけでなく対象地域を限定しない。直接的な調達への補助ではなく、船底の清掃・再塗装、漁場探査や燃料費削減につながる効率的な運用などを対象とするとしている。

 

  • ワシントン条約でヨシキリザメが絶滅保護動物として採択

11月14日から25日にかけてパナマで開催されたワシントン条約の第19回締約国会議において、ヨシキリザメを含むメジロザメが一括して附属書に掲載する提案が可決された。日本に影響があるのはヨシキリザメであって、かまぼこなどの原料になるものであり、日本としてはこれを除いてほしいと関係国に働きかけ、本提案に反対したが、会議では採択される結果となった。

ただし日本の漁船が漁獲するヨシキリザメについては漁獲量などの制限はなく、日本の加工業者に対する影響はない。仮に輸入又は輸出をする際には手続き面で煩雑さが出てくるという程度だという。