全国山村振興連盟メールマガジンNO183
2022.7.8
全国山村振興連盟事務局
- 令和4年度第1回理事会を開催
7月8日金曜日 10時30分から11時30分、全国町村会館2階ホールにおいて、令和4年度全国山村振興連盟 第1回理事会を開催しました。会議においては、①令和3年度事業報告、②令和3年度収支決算、③特別会費の費目の改定案について了承され、④「令和5年度山村振興関連予算・政策に関する要望」が決定されました。
会議の後7人の副会長及び事務局により、国会及び関係省庁に対して要請活動を行いました。
なお、これに先立ち7月7日木曜16時から17時に、山村振興連盟副会長会議を連盟事務局で行いました。
「令和5年度山村振興関連予算・政策に関する要望」は、別添のとおりです。
○2022年5月の農林水産行政
2022年5月の 農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした
1 食料安全保障を政策の柱として位置づけ
6月7日 政府は今後の予算編成や政策の指針となる「骨太方針」を閣議決定し、食料安全保障について外交・経済・エネルギーと並ぶ4本柱の一つとして位置づけた。骨太方針では、①外交・安全保障の強化、②経済安全保障の強化、③ エネルギー安全保障の強化と並ぶ形で、④「食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進」を掲げた。具体的には、①生産資材の安定確保や国産の飼料・小麦・米粉などの生産拡大、②価格が急騰する肥料対策の構築の検討を掲げるとともに、③食料自給率向上へ今後のリスクを検証し将来にわたる総合対策の構築にも着手することとした。
また同じ6月7日、政府は「新しい資本主義」のグランドデザイン及び実行計画を閣議決定した。グランドデザインでは、「デジタル田園都市国家」に係る項目の中で、食料安全保障の確立に向けた「みどりの食料システム戦略」など、農林水産業の振興が盛り込まれた。
更に6月21日、政府は農林水産業・地域の活力創造本部を開催し、「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改定し、①スマート農業、②輸出促進、③グリーン化に加えて、④食料安全保障を全面に打ち出した。また本部の名称を「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」に変更した。
2 事務次官ほか10人の局長級以上幹部が異動
農林水産省は 6月28日付けで枝元真徹農林水産事務次官が退職し、後任に横山紳大臣官房長を充てる人事異動を発令した。また農林水産審議官に小川良介前消費安全局長、林野庁長官に織田央前林野庁次長、大臣官房長に渡辺毅前水産庁漁政部長、消費・安全局長に森健前畜産局長、輸出・国際局長に水野政義前総括審議官、畜産局長に渡邊洋一前輸出・国際局長、経営局長に村井正親前政策立案総括審議官、農村振興局長に青山豊久前農林水産技術会議事務局長が就任した。また、新井ゆたか前農林水産審議官は、消費者庁長官に就任した。
3 WTO ・G 7など国際会議で食料安全保障が主要議題に
6月12日から17日、世界貿易機関(WTO)は閣僚会議を開催し、6年半ぶりに閣僚宣言を採択した。ウクライナ情勢によって懸念される食料安全保障の確保に向けて WTOルールに沿わない輸出規制は行わないことなどについて合意した。日本からは武部新農林水産副大臣、細田健一経済産業副大臣が出席した。輸出規制に関しては、国内の食料逼迫などでやむを得ない場合に限るとし、事前に加盟国に通報するなどのルール遵守を求めた。現在も20以上の国が食料の輸出規制を行っている。また、乱獲につながる漁業補助金について規制することにつき合意した。会期を1日延長して閉幕した。
また 6月26日~28日、主要7カ国首脳会議(G 7サミット)がドイツ南部エルマウで開催され、首脳宣言を採択した。ロシアへの制裁強化とウクライナへの支援拡大で合意するとともに、途上国への食料の安定供給のため40億ドル(約6000億円)を追加拠出することを決めた。同時に「食料危機対応に関する共同声明」を発表し、食料や肥料価格の高騰、生産や供給網の混乱について、「ロシアは重大な責任を負っている」と指摘した。2022年に世界で最大3.2億人が深刻な食料不足に陥るとの国連の指摘を踏まえ、ウクライナの食料生産・輸出を妨げる全ての行為を無条件に終えることを改めて求めた。岸田文雄首相は、G 7サミットに初の出席となった。
それに先立つ6月24日、先進7カ国(G 7)や アフリカ諸国など世界約30カ国・地域の外相・農相等は、ウクライナ情勢を受けた世界の食料安全保障の確保への対応を議論する閣僚会合を開いた。日本からは林芳正外務大臣と武部新農林水産副大臣がオンラインで参加した。ロシアによる黒海封鎖の解除に向けた 圧力の強化や貯蔵庫の増設などとともに、ウクライナからの穀物輸出の支援に結束して取り組むことを確認した。また、食料や肥料の輸出禁止など不当な措置を避けることの重要性についても認識を共有した。
4 ロシア、日本との漁業協定を停止
6月7日、ロシア外務省は、北方領土周辺海域の日本漁船の安全操業に関する政府間協定の履行を停止すると発表した。日本とロシアは、毎年協定に基づいて政府間協議と民間交渉を行い、北方領土周辺での日本漁船の漁期や漁獲量などの具体的な操業で条件を決めてきた。ロシア側は日本が協定に基づく支払いを凍結していることによるものと説明している。2022年分は漁獲枠がホッケやスケソウなど計2177トン、ロシア側に支払う協力金2130万円などの条件で妥結している。ホッケ漁の漁期は9月から、スケソウも来年1月からのため、協定 停止の影響も現時点では限定的とみられる。
一方、6月3日に北海道水産会が交渉して妥結した貝殻島周辺の昆布漁については、今回の措置の対象外であるとしている。
5 「みどりの食料システム戦略」2030年の中間目標を設定
6月21日、「第8回みどりの食料システム戦略本部」が持ち回り開催され、戦略に掲げる2050年の目指す姿の実現に向けて、化学肥料の使用量の低減などについて新たに中間目標として、2030年目標を決定し公表した。
具体的には、① 2050年に化学燃料を使用しない園芸施設に完全移行することを目標としているが、2030年の中間目標としてヒートポンプ等の導入により省エネルギーのハイブリッド型園芸施設を50%にまで拡大することとした。②化学農薬の使用量(リスク換算)については2050年に50%低減する目標としているが、中間目標として 2030年に10%低減することとした。これは新規農薬の開発には10年以上を要することから、当面の間、病害虫の総合防除の推進や有機農業の面積拡大などを推進することとしている。③化学肥料の使用量については、2050年目標を30%低減としているが、中間目標として2030年に10%低減することを掲げた。土壌診断などやデータを活用した省力・適正施肥といった施肥の効率化、スマート化、家畜排泄物等の利用拡大を推進することとしている。
6その他
(1)食料の安定供給に関するリスク検証について
6月21日、農林水産省に設置された食料安全保障に関する省内検討チーム(チーム長:武部新副大臣)は、食料の安定供給に関するリスク検証の報告を行った。このリスク検証は、現在の我が国の食料安全保障をめぐる様々なリスクを洗い出し、網羅的・包括的な検証を品目ごとに行ったものである。具体的には、①輸入については、飼料穀物や小麦などの価格高騰のリスクを重要なリスクと評価し、②生産資材については、肥料や原油の価格高騰などのリスクを重要なリスクと評価し、③国内生産については、労働力・後継者不足のリスクを重要なリスクと、温暖化や高温化のリスクを注意すべきリスクとそれぞれ評価した。今回のリスク検証の結果を踏まえ、現行の政策全般について検証を進め、食料安全保障の強化に向け取り組んでいきたいとしている。
(2)令和3年度水産白書を閣議決定
6月3日、政府は令和3年度の水産白書「令和3年度の水産の動向及び令和4年度水産政策」を閣議決定した。今回の特集は、①「新たな水産基本計画」、②「新型コロナウイルス感染症による水産業への影響と対応」としており、水産物の需要や供給の変化、緊急経済対策の実施などについて記述している。
(3)令和2年度の食品産業による食品ロス 11%減少
6月10日、農林水産省は令和2年度の食品ロスについて発表し、食品ロス量は522万トンであったが、このうち食品産業からの発生量は275万トンだったと報告した。前年度と比べて 34万トン・11%減少し平成24年度の推計開始以来最大の減少幅となった。食品業者事業者からの聞き取りによれば、新型コロナによる需要減が大きく影響しているものの、値引き販売や需要予測の精緻化といった食品ロス削減に向けた企業側の努力も相当程度貢献しているとのことである。
(4)全農の役員がインサイダー取引で辞任
伊藤忠商事によるファミリーマート株式会社の公開買い付けに関して、証券取引等監視員会は、インサイダー取引を行った法人役員に対する課徴金納付命令を発出するよう内閣総理大臣及び金融庁長官に勧告を行った。またJA全農は、本件は元役員による取引に対するものであるとして謝罪のプレスリリースを行った。インサイダー取引を行った男性は、JA 全農の元役員であり、これを受けて辞任した。インサイダー取引の当時、JAグループの出版社である家の光協会の会長及びJAならけんの会長も兼ねていた。
(5)スシローに対して消費者庁から「おとり広告」であるとして措置命令
6月9日消費者庁は、回転寿司チェーン「スシロー」を運営する事業会社あきんどスシローの景品表示法違反(おとり広告)を認定し、再発防止を求める措置命令を出した。スシローは「新もの濃厚うに包み・税込110円」などとしてテレビコマーシャルなどで宣伝していたものの、実際は宣伝を続けている間、店舗の9割超で提供されない時期があった。同社は「措置命令を真摯に受け止め、再発防止に努める」としている。
(6)農業経営体の数が100万を割り込む
6月28日、農林水産省は農業構造動態調査(2月1日現在)を公表し、全国の農業経営体の数が2022年に97万5100となり、初めて100万経営体を割り込んだと発表した。調査を始めた2005年の200万9380から 20年足らずで半減した。
2022年の97万5100経営体は、前年に比べて 5.4%の減少。このうち個人経営体は5.7%減少し93万5000。団体経営体は1.5%増加し4万100。うち法人経営体は1.9%増加し 3万2200だった。