全国山村振興連盟メールマガジンNO165

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2022.3.4

全国山村振興連盟事務局

 

  • 2022年2月の農林水産行政

2022年2月の農林水産行政の主な動向は、以下のとおりでした。

 

1 2021年の農林水産物・食品の輸出が1兆2385億円に

2月に発表された2021年の農林水産物・食品の輸出は1兆2385億円 となり、 前年より2525億円の増加、25.6%の増となった。これは、①コロナ禍下で小売店・通販などによる新たな販路の販売が堅調であったこと、②中国・米国の経済活動が回復傾向にあること、③外食需要も回復してきたこと、④日本政府一体で進めてきた取組み(輸出証明書、輸出施設の整備、規制交渉など)が効を奏してきたことなどによるものとみられる。品目別にはリンゴや牛肉が増加した一方で、37%は加工食品であるが、そのうちの7割は国産品を活用しているという。

また2月8日、台湾はきのこ類など一部の食品を除き、福島県など5県の食品について輸入停止措置を解除すると発表した。

政府は2025年に2兆円、2030年に5兆円という目標を目指して、今国会で輸出促進法を改正することとし、①ジャパン・ブランドの確立、②産地間連携を推進する品目団体の認定、③輸出先国の規制対応に必要な設備投資に対する金融・税制支援などを制度化することとしている。

 

2 ウクライナ情勢を踏まえ穀物相場等が上昇、農水省は食料安全保障チームを設置

ロシアは2月24日、ウクライナへの軍事侵攻を始めたが、日本との食料貿易の関係で見ると、日本とウクライナの間では農林水産物の貿易がほとんどなく、 直接的な影響はあまりないと考えられている。またロシアとの関係では、木材や魚介をロシアから輸入しており、金額は2000億円程度、農林水産物の輸入全体の2%程度となっている。ロシアからの輸入の内訳をみると、製材20% 、カニ19%、 サケ・マス12% となっている。

一方、原油・穀物価格の国際相場が上昇しており、間接的な農林水産業への影響が懸念される。ロシア・ウクライナの主要輸出食品である小麦・トウモロコシの国際相場は昨年来高水準で推移しているが、直近で更に上昇した。農林水産省は、国内の食料価格への影響を含め、情報の収集・分析・発信に努めたいとしている。

2月25日、農林水産省は武部副大臣をチーム長とする「食料安全保障に関する省内検討チーム」を立ち上げた。生産資材価格の高騰、頻発する自然災害や地球温暖化など、我が国の食料安全保障をめぐる状況は変化しており、こうした状況を踏まえて、食料安全保障に関する施策全般について検証・検討していくこととしている。

 

3 熊本県産あさりの9割以上が産地偽装と判明

農林水産省があさりについて、829店から 50点を購入しDNA 分析を行ったところ、熊本県産と表示される31点中 30点で、中国や韓国からの輸入あさりが販売されている可能性があることが判明した。

これを受けて熊本県は2ヶ月間あさりの出荷を停止することとし、蒲島知事は政府に対して原産地表示規制の強化を要請した。一部のスーパーでは熊本県産と表示されたあさりの取扱いを見送る動きも出てきた。

農林水産省では食品表示法に基づき立入検査を強化し、違反事業者への是正措置や氏名公表を行うとともに、県や警察庁・消費者庁との連携を強化していきたいとしている。

 

4 環境負荷低減活動促進法案を国会提出

2月22日、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減 事業活動の促進等に関する法律案」及び「植物防疫法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出された。これらは昨年農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」の実現に向けて、基本理念の法定化や環境負荷低減の取組みを支援する計画認定制度の創設、化学農薬のみに依存しない総合的な防除を推進するための仕組みの導入等の措置を講じるものである。

環境負荷低減の具体的な施策としては、①農林水産大臣が基本方針、県・市町村が共同して基本計画を作る、②農業者が計画認定を受けると農業改良資金等の償還期間の延長が受けられる、③特定区域内では農地転用、補助金の目的外使用などの手続きをワンストップ化できる、④特定区域内では所有者等の全員合意で協定を結ぶことができ、新たに参入した者にもその効力が及ぶ、⑤新技術の 開発を行う事業者は計画認定を受けると出願料・登録料の減免や資金・目的外使用の手続きのワンストップ化が受けられる、といった内容となっている。

 

5 生産資材価格の高騰に対して価格補填措置を実施

政府は2月10日、「第3回原油価格高騰等に関する閣僚会合」を開催し、原油先物価格が一時90ドルを突破するなど価格が高止まりで長期化する可能性があることを受けて、対応を協議した。農林水産大臣からは、施設園芸・漁業に対し燃油の価格上昇があった場合に、経営への影響を抑えるため補填金を交付する制度を着実に実施したいと述べた。官房長官からは、今後とも価格の動向を注視し対策の効果を検証するよう指示があった。

農林関係の生産資材については、2021年に価格指数で4.8%の上昇となり、配合飼料・肥料・A 重油などの調達コストが上昇している。これに対して農林水産省は、補填金交付制度や自然資材の節減に資する取組みに対する支援措置によって対応しているところである。

 

6その他

(1) ベルリン農相会合に農林水産審議官が出席

1月28日、ベルリン農業大臣会合が開催され、80カ国・機関の閣僚級がテレビ会議で参加した。この会議は毎年1月にドイツの食料農業省の主催で開催されるものである。今回のテーマは、世界の食料安全保障・気候変動への対応のための土壌の持続的な利用管理とされた。

日本からは新井ゆたか農林水産審議官が出席し、水田農業の持つ持続可能性や「みどりの食料システム戦略」の内容について訴えた。

農相会合が発出した宣言では、「グローバルな課題に取り組む上で健康な土壌が鍵であり、持続可能な土作り・土壌保護はSDG‘sへの貢献に重要である」として、①パリ協定の遵守、②土壌診断、③技術イノベーション、④研究開発、⑤サプライチェーンの発展の必要性を掲げた。

 

(2) 三幸製菓の火災で6人死亡

2月11日深夜、新潟県村上市にある三幸製菓の工場で火災が発生し、6人が死亡。三幸製菓のすべての工場が3ヶ月生産を停止した。警察庁では業務上過失致死の疑いで家宅捜索を行うとともに、消防署が原因究明を行っている。農林水産省は、労働災害の防止、作業安全確保など法令の遵守を徹底するよう改めて食品業界に対して呼びかけた。

 

(3) 林野庁が埋設除草剤の掘削処理を開始

昭和40年代に国有林野で使用されていた除草剤 2.4.5-T は、ダイオキシンを含み人体に影響がある可能性があるとして昭和46年4月に使用を中止し、 未使用のものは全国の国有林野に埋設された。環境基準値を超えるダイオキシンが検出された事例はないものの、昨今の災害リスクの高まりを踏まえて撤去を求める自治体が出てきた。これを受けて、林野庁では掘削処理を行うこととし、そのための委託事業を発注した。委託事業の中では、技術的な調査も行うとしている。

 

(4) 外国人技能実習生に対する規制を3月から緩和

コロナ禍に伴い外国人技能実習生の入国が停止されていたが、3月から観光目的以外の新規入国者に限り入国を認めることとされた。1日当たりの入国者数に制限はあるものの、生産現場における人材の確保に前進があるものと期待されている。農林水産省は入国状況を注視するとともに労働力の状態を把握し、人材募集・マッチングの取組みや掛かり増し経費への支援を行うこととしている。