全国山村振興連盟メールマガジンNO119

全国山村振興連盟メールマガジンNO119
2021.4.2
全国山村振興連盟事務局

○ 2021年3月の農林水産行政
2021年3月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。

1 「みどりの食料システム戦略」中間とりまとめを公表
農林水産省は 3月29日、 有識者により検討してきた「みどりの食料システム戦略」の中間取りまとめを決定し、公表した。2050年政府の二酸化炭素排出実質ゼロを目指す方針を踏まえて、2050年を目標年次とするKPI(評価指標)として、①農林水産業のCO2ゼロエミッション化を目指すほか、②有機農業の耕地面積の25%(100万ヘクタール)への拡大、③化学農薬使用量50%低減、④化学肥料使用量30%低減、⑤化石燃料を使わない園芸施設への完全移行などを掲げている。
また「政策手法のグリーン化」として、2030年度までに持続可能な食料・農業に対して政策を集中することとし、補助金・投融資・税・制度などの施策や予算の対象を持続可能な農業経営等に集中していく方針としている。また、2030年度までに事業系食品ロスを1/2にすることなどを掲げている。
緑の食料システム戦略については、3月30日から4月12日までにパブリックコメントを実施し、意見を踏まえ5月に戦略を策定したいとしている。

2 規制改革推進会議で農協改革や生乳改革について議論を開始
3月5日、政府の規制改革推進会議農林水産業ワーキンググループは、農協改革についての議論を開始することとし、農林水産省からこれまでの農協改革の評価と課題について聴取した。農林水産省からは、①農業融資が増加していること、②准組合問題については組合員の判断によるべきことなどが説明された。
2015年に農業協同組合法の改正が行われた際の付則で、「准組合員のあり方について、5年後見直しの時期までにその利用状況や農協改革の実施状況の調査検討を行い、結論を得る」とされている。
また3月19日、同ワーキンググループは生乳改革についてのフォローアップも始めた。これは平成30年に施行された新たな加工原料乳補給金制度に基づき、生産者が生乳の販売先を選択できるとしたもので、ワーキンググループからは「進展はあるもののホクレンへの出荷が太宗を占め変化に乏しい」などの意見が出た。

3 新たな土地改良長期計画を策定
3月23日、2021年度から5年間についての土地改良事業の指針を示す「土地改良長期計画」が閣議決定された。土地改良事業は、農地・農業用水路・農道等の整備を行う公共事業であり、今回の計画では、①生産基盤の強化による農業の成長産業化、②多様な人が住み続けられる農村の振興、③農業・農村の強靭化が3つの政策課題として掲げられている。
具体的には数値目標(KPI)として、①スマート農業実装の加速化(基盤整備を着手した地区の8割以上において自動走行トラクターの作業ができるよう大区画化すること)、②農業用水を活用した小水力発電(土地改良施設の使用電力のうち4割以上を小水力発電などで賄うこと)、③農業用ため池に関する防災対策の推進(防災重点農業用ため池の8割以上について防災対策を着手すること)、などが掲げられている。

4 国家公務員倫理規程に関する調査を150人に対し実施
農林水産省は、吉川元農相・秋田アキタフーズ元代表の起訴を受け、養鶏・鶏卵行政の公正性に影響があるような会食がなかったかどうかより広く追加的に調査を行うこととした。すなわち吉川元大臣の在任中に限らず、歴代に遡って畜産部の室長級以上の者を対象とするとともに、特にアニマルウェルフェア(動物福祉)、日本政策金融公庫の融資、鶏卵生産経営安定対策事業に関するポストにいた課長補佐以上を含め150名を対象とし、期間を限らず過去に遡り調査を行う。
対象となる会食としては、養鶏・鶏卵の関係者以外の畜産事業者との会食も把握するとともに、政治家と同席した会食機会も併せて把握するとしている。
現在養鶏・鶏卵行政をめぐっては、公正性に問題がなかったか否かにつき有識者による検討が行われているが、これとは別に農林水産省として国家公務員倫理規程を踏まえた調査を行うものである。

5 米国産牛肉に対してセーフガードを発動
政府は、3月18日から4月16日までの30日間、米国産牛肉の関税についてセーフガード発動し、関税を25.8%から38.5%に引き上げた。これは昨年1月に発効した日米貿易協定に基づく措置であり、協定により「税率を引き下げる代わりに、輸入数量が急増した場合にはセーフガードを発動し、協定発効前の税率に戻すことができる」旨が定められているものである。協定ではセーフガード措置を取った後10日以内に両国で協議をしなければならないものとされており、3月25日日本政府と米国通商代表部の事務方が、オンラインにより協議を行った。
農林水産省は、①期間は30日間であること、②税率は2020年1月以前に戻るだけであることから国民生活に対する大きな影響はないのではないかとしている。

6 その他
(1) Go to キャンペーン再開は都道府県の状況に応じて
3月26日、農林水産省は34道県知事から飲食店等に対する支援を求める声があること等を受けて、ステージ1・2での実施を基本として、引き続き都道府県において、各地域の感染状況を踏まえた判断に基づき事業を実施することを発表した。食事券事業の追加予算は505億円が措置されており、地域の要望に応じて配分することとしている。
ポイント予約事業については、3月末までが使用期限となっていたが、最大6月末まで延長することとし、参加全事業者が3月25日までに、利用期限の延長等につきホームページで公表した。

(2) 令和元年(2019年)の農業総産出額と生産農業所得を公表
農林水産省は3月17日、令和元年の農業総産出額と生産農業所得を公表した。全国の農業総産出額は野菜・鶏卵などで生産量が増加し価格が低下したことなどにより、前年に比べ1620億円減少し、8兆8938円(対前年1.8%減)となった。これに伴い農業所得は1658億円減少し、3兆3215億円(4.8%減)となった。品目別の産出額については、米は4年連続で増加し1兆7426億円(0.1%増)、野菜は前年に比べ1697億円減の2兆1515億円(7.3%減)、果実は7億円減少し8399億円(0.1パーセント減)、生乳は154億円増加し7628億円(2.1%増)、肉用牛は261億円増加し7880億円(3.4%増)、豚は2億円増加し6064億円(前年並み)となった。
都道府県別には1位が北海道で1兆2558億円(0.3パーセント減)、2位は鹿児島県4890億円(0.6%増)、3位が茨城県4302億円(4.6%減)、4位千葉県3859億円(9.4%減)、5位宮崎県3396億円(1.0%減)となっている。

(3) JRA関係者の持続化給付金の不正受給に関する調査結果を公表
JRAは3月6日、JRA 厩舎関係者の持続化給付金の受給状況に関する調査結果を公表した。受給した者は165名、受給額は1.9億円であり、このうち163名、 1億8800万円が不適切なものとして返還済み又は手続き中となっている。JRA は、日本調教師会や日本騎手クラブが注意喚起していたにも関わらず受給し返還しなかった者や厩舎従業員への指導をしていなかった調教師に対して処分を行う方針である。

(4) 大阪堂島商品取引所の組織変更を認可
大阪堂島商品取引所においては、米の先物取引が試験上場という名目で実施されており、過去4回試験上場について2年ごとの延長を行ってきた。5回目の 延長をするかどうかについては本年8月に結論を出す予定である。これに先立って、大阪堂島商品取引所から株式会社への組織変更の認可申請があり、増資による財務基盤の強化やガバナンスの強化につながるものとして、3月19日に 組織変更についての認可を行った。