全国山村振興連盟メールマガジンNO398
2026.11.6
全国山村振興連盟事務局
◎2026年10月の農林水産行政
2026年10月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした
1 簗和生農相が辞任し、武部新農相が就任
10月14日、簗和生農相は、首相官邸で高市早苗首相と会い、辞表を提出した。 農相就任から1ヶ月足らずでの交代となった。簗氏は2月の衆議院選挙で自分を支持しなかった首長がいる地方自治体の道路予算を「 カットした 」などと発言して大きな批判を浴び、発言を撤回して謝罪した。 その後も新たな発言や衆議院選挙を巡る疑惑などが相次いで報じられた。批判を強める野党側は、簗氏が辞任しなければ問責決議案を参議院に提出することで一致していた。
10月15日、高市早苗首相は簗和生農相の後任に、自民党の武部新元農林水産副大臣を起用した。武部氏は初入閣。北海道 12区選出で当選6回。旧二階派に属していた。直近では、自民党政務調査会副会長や水産総合調査会会長を務めていた。武部氏は、56歳。米 シカゴ大学院卒。早稲田大学卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入り、6年ほど勤めた。 第1次岸田内閣と第2次岸田内閣時代に、農林水産副大臣を務めた経験がある。自民党幹事長を務めた父・勤氏と、親子 2代で農相となる。剣道 2段の腕前。
2 簗農相・武部農相が 国内各地の被災地を視察
7月から9月にかけて、熊本地震をはじめ全国各地で豪雨・台風等の自然災害が相次いだことなどを踏まえ、簗・武部両農相は各地に出張して現地視察を行った。
まず、簗和生農相は 9月30日、福島県を訪れ、東日本大震災からの復興状況を視察した。楢葉町の震災後に新築されたパックご飯工場を訪問するとともに、米穀店の相馬屋(いわき市)が新設したパックご飯工場を視察した。また10月3日、熊本地震の被災地を視察し、建物が損壊した芦北町にあるJAあしきたの 選果場や、農舎の倒壊などが発生したJAやつしろ管内のい草農家などを訪問した。
また4日には、石川県で令和6年に発生した能登半島地震と、その後の豪雨災害による被災地を視察した。現地視察は、山地の土砂が豪雨で大量に流入した 珠洲市上戸地区の水田地帯と、地震で 20名、豪雨で2人が亡くなった同市大谷地区の山腹崩壊地を訪問するとともに、輪島市の白米千枚田、JAのと本店 を訪問した。
10月25日、武部新農相は千葉県を訪問し、長南町の山腹崩壊による被害、 印旛沼周辺の広範な浸水による農地、農業用排水機場、うなぎ養殖施設の被害などを視察した。武部農相は、「 来年の営農の作付けに間に合うよう農地や用排水機場の復旧を急いで欲しいという切実な声を伺った。」とし、熊谷知事からは、 「大きな被害を受けた印旛沼周辺の用排水機場について、防災・減災の観点も踏まえて、国による直轄災害復旧事業を実施してほしい。」との要望があった。
3 令和7年産米の需給緩和基調が続く中、本年の米収量は741万トン
10月13日、農林水産省は令和8年産の主食用米の収穫量が、前年より1% ( 6万2千トン )少ない 740万 6000トンとなる見通しを公表した。収穫量は、全国で6割の収穫を終えた9月25日時点の見通しである。需給バランスの目安となる来年6月末の民間在庫量は、政府備蓄米への買い戻しが決まっている 21万トンを差し引いても、最大で 270万トンになる見込みとなった。
10月16日、農林水産省は令和8年産米の出回り始めとなる9月の相対取引価格( 集荷業者と卸売業者間の取引価格 )が60kg 当たり21,293円だったと公表した。前年同月と比べ 42% 下落した。
10月30日、農林水産省は10月23日から25日時点の米の平均店頭価格を発表し、5kg当たり前週比33円(0.6%)安い 2788円だったと発表した。 調査開始後最長となる11週連続での値下がりであり、3000円を下回るのは7週連続となった。新潟県産コシヒカリといった銘柄米は、前週比 61円 (2.7%)安い2811
円だった。
こうした状況を受けて、農林水産省は、30日に開いた食料・農業・農村政策審議会食糧部会において、主食用米の令和9産の生産量の目安を693万トンとする方針とすることが承認された。この目安の達成には、令和8年産の生産実績から6%(約48万トン)の生産減少が必要となる。
4 副首都の要件を決定し、4道府県が該当
10月27日、政府は 副首都構想関連法に基づく指定要件を定める政令を閣議決定した。要件は主に、① 東京圏との同時被災の可能性が低いこと、②国の地方部局のうち半数以上が立地していること、③人口や経済が集積していること、④必要な機能を発揮する地方行政体制があることの 4つとなっている。このうち③の要件は「 国内総人口に対する割合が1.2%以上の政令指定都市 」、「 国内総生産 GDP に対する割合が2.1%以上の道府県 」といった数値を示した。また④の「必要な地方行政体制」については、大阪府・市が目指している特別区制度、 道府県と政令指定都市による連携協定の2つの選択肢を示した。
人口・経済規模などに当てはめると、大阪・愛知・福岡・北海道の4道府県が該当する。今後は高市首相を本部長とする「副首都整備推進本部」において、 11月にも副首都指定に関する基本的考え方を取りまとめる予定となっている。
5 生乳出荷抑制のため、年末年始に1キロ40円の奨励金を交付
10月20日、武部農相は、生乳の需要が落ち込む年末年始に出荷量を抑える 酪農家に対して、奨励金を交付することを発表した。出荷量を減らした量に応じ、 1kg当たり40円を支払う。出荷調整を促す期間は12月19日から翌年1月7日までで、この期間の前に出荷していた量を基準とし、減らした量に応じて奨励金を交付する。1%以上減らすことが条件となる。指定生乳生産者団体などの流通事業者を通じて交付する。
生乳は、年末年始に学校給食がなくなることなどから需給が緩和しやすく、通常は保存がきく脱脂粉乳などへの加工を増やして対応している。しかし、脱脂粉乳は製造量が増え、過剰在庫が積み上がる状況となっている。
6 その他
(1) クマ対策で 関係省庁局長級会議
10月2日、 政府はクマ被害の対策強化に向けて、環境省や農林水産省など 9つの関係省庁の局長級が出席する連携会議を立ち上げた。「クマ被害対策ロードマップ」の実践を加速させる。環境省で初回の会議を開き、笹川博義環境大臣が議長を務め、関係省庁はロードマップの進捗状況などを共有した。
環境省をはじめ関係省庁は、本年度中に東北や新潟県の一部で個体数調査を進めることとしている。個体数調査に向け対象地域で800台のカメラの設置が完了しており、10月から回収を始め分析していく予定である。出没数の要因となるどんぐりについては、東日本を中心に凶作だった昨年より実のなりは良いが、近畿や中国地方で凶作傾向が見られるとのことである。
(2) 財政制度等審議会が備蓄米と耕作放棄地について提言
10月16日、財務省は財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)の分科会を開催し、政府備蓄米放出後の在庫量回復に、輸入米であるミニマムアクセス米を活用するよう提起した。ミニマムアクセス米で一時的に穴埋めすることで、特定の年産の国産米が備蓄に多く仕向けられ需給に影響するのを防ぐのを狙いとしている。
また同時に、耕作放棄地を新たに「 耕作困難地 」と捉え直す必要性を提唱した。耕作されていない農地が耕作条件を改善するなどすれば、農業経営が成り立つようになるかどうかを整理し、経営を成り立たせるのが難しい場合は、林地にするなど、農地として活用しないことを検討するよう求めている。
(3) 国際会議でミナミマグロ、サバとも増枠
10月8日 ベルギーのブリュッセルで開催されていた「みなみまぐろ保存委員会」(CCSBT)の第33回年次会合が閉幕し、水産庁が9日に結果を公表した。 2027年から3年間のミナミマグロ総漁獲可能量は、科学委員会の勧告を受け、現行(22~26年)の2万 647トンから3000トン増加し、2万 3647トンとすることに合意された。 日本は1002トン増の8297トンとなる。
また 9月30日、国際海洋探査委員会は2027年における北東大西洋海域のタイセイヨウサバ漁獲量を「35万 2938トン以下」とする勧告を公表した。依然として低水準だが、2歳親魚の増加に伴い、近年最低となっていた 26年勧告の約2倍に増え、回復の兆しを見せた。
(4) ビアカツヤカミキリの被害調査を予備費で支援
10月6日、 政府は桃や梅などを枯らすクビアカツヤカミキリの被害対策のため、令和8年度の予備費から約32億円を充てることを決定した。都道府県が進める緊急調査に加え、JA 生産部会や市町村などが独自で進める調査も支援する。 また、木の幹に巻きつけるネットの設置や農薬散布といった防除費用も支援する。
クビアカツヤカミキリは、幼虫が樹木を内側から食い荒らして枯死させる。 本来は中国やベトナムなどに分布していた外来種だが、繁殖力が強く、樹木内に潜む幼虫の駆除が難しい。奈良の桜、和歌山の梅、福島・山梨・岡山の桃など、主要な観光資源や農産物の産地に甚大な被害を及ぼすおそれがあることから、 分布拡大の食い止めが急務となっている。
(5) 作付け延べ面積が過去最小、耕地利用率も最低
農林水産省は、令和7年の国内の農作物の先付け延べ面積を発表した。作付け延べ面積は382万1000ヘクタールとなり、データのある1955年以降で過去最小となった。前年を1%(4万ヘクタール)下回り、41年連続で前年を下回った。
耕地利用率も過去最低で、同 0.3ポイント減少し 90.1%となった。一方、作付け延べ面積に占める水稲の割合は37.3%で、3年連続で上昇した。
