全国山村振興連盟メールマガジンNO373
2026.5.8
全国山村振興連盟事務局
◎2026年4月の農林水産行政
2026年4月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした。
1 中東情勢に伴う食料の安定供給・確保のための対応チームを設置
4月10日、「 第3回中東情勢に関する関係閣僚会議 」 が開催され、高市総理から中東情勢について緊張感とスピード感を持って対応にあたるよう指示があった。 これを受けて農林水産省では、 資材の流通構造などの実態を把握し、機動的・効率的に対処するため、 同日「中東情勢に伴う食料の安定供給・確保のための対応チーム 」 を設置した。
これは燃料をはじめとして、ナフサ由来の食品トレイ、包装用の資材、農業用資材のビニールマルチなど様々な石油代の製品について、 在庫の状況、 流通の見通し、 輸入の状況等につき検証し、食料供給に万全を期すという観点で検討を進めるためのものである。前日の4月9日までに寄せられた農林水産省の相談窓口への相談件数は241件に達していた。
4月24日に開催された関係閣僚会議では、高市総理から素材ごとにきめ細かくサプライチェーンを確認するように指示があったことを踏まえ、農林水産省のチームは、 57項目の調査項目を大枠で整理し、順次調査を進めている。 また、スーパーマーケットの棚に並ぶ容器包装も念頭において、消費者に食品を届けるための資材も幅広く把握することとした。 高い優先度で調査しているのは、①食卓に主食を届けるために不可欠な米袋やパンの袋、②食肉流通包装用のフィルム、③植物油の抽出に必要な溶剤であるヘキサン、④野菜などの安定生産に欠かせない農業用マルチフィルム、⑤水産物の供給に必要な代表的な資材である発泡スチロールなどである。4月30日の関係閣僚会合では、農水省から資材の確保に向けた取組状況について報告した。
また閣僚懇談会で高市総理から、海外出張する際には日本産食品の PR とともに、原油・石油製品の安定調達や新たな供給源の開拓などについても対応するよう指示があったことを踏まえ、 鈴木農林水産大臣は 4月28日から5月1日までバングラデシュとマレーシアに出張した。
バングラデシュでは、タレク・ラーマン首相への表敬など政府要人と会談を行うとともに、日本からの農林水産物・食品の輸出拡大に向け、現地資本の食品事業者と日本産品の販売可能性などについて意見交換を行った。またマレーシアでは、中東情勢の不安定化を踏まえ、肥料原料である尿素に加え、ナフサ及び原油を我が国へ供給している企業との意見交換などを行った。
2 食料システム法が全面施行し、米のコスト指標を発表
4月1日、農産物の生産コストを下回る価格での取引を防ぐ「食料システム法 」が全面施行された。 同法は食料全般を対象に、取引条件の協議の申し出に誠実に応じることを努力義務とする。交渉が適切に行われているかどうかを判断するための基準としては、① 速やかに協議に応じること、②公表資料を費用の根拠として尊重すること、③一方的に取引条件を決めないこと、④ 商習慣の見直し提案に速やかに検討・協力すること、⑤協議の申し出を理由に不利益となる扱いをしないこと、⑥検討結果の理由などの必要な説明を行うこと、の6つの基準が定められている。
4月7日、米穀機構は、米の価格交渉で生産者らが活用できる「コスト指標」を正式に公表し、 生産にかかる費用は 玄米 60kg 当たり 20,535円 ( 税込 ) であるとした。 販売までのコストを積み上げると、 精米 5kg で2816円(同) となった。 指標ができたのは米が初めてで、 同機構が作成団体として認定されている。 生産にかかる費用は、国の統計をもとに算出した。 指標は費用を積み上げたものであって、利益を含まない。指標は毎年改定し、来年以降は原則として 3月に公表することとしている。
米以外の指定品目では、北海道では飲料牛乳について 3月26日付けでコスト指標作成団体の認定申請があり、4月17日に認定された。毎年10月に指標を公表することとしている。また野菜、豆腐・納豆については、関係者間でコスト指標作成団体の設立に向けて議論が行われている。
3 食糧法改正案など3法案を国会提出
4月3日、①主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(食糧法)の一部を改正する法律案、②種苗品目の育成・種苗の生産の振興に関する法律案(気候変動等対応品種法案)、③種苗法の一部を改正する法律案が閣議決定され、国会に提出された。
食糧法改正法案は、昨今の米価高騰の要因及び政府備蓄の売り渡しの対応を検証する中で、農林水産省が多様化する流通実態を的確に把握できていなかったことや政府備蓄の売り渡し手続きに時間を要し、機動性を書いたことなどの課題があったことに対応して、外食・中食を含む流通業者の取引実態を幅広く把握するとともに、官民を挙げた備蓄体制を構築し、備蓄米の機動的放出を可能とすることとするものである。また米の需要を拡大し、これに応じた生産を推進するため、 従来の米の需要の減少を前提とした生産調整に関する規定を見直すこととした。
大規模な集荷業者や卸売業者にも備蓄米の保有を義務付ける「民間備蓄」制度を創設することとし、令和10年度に導入し、 備蓄量は20万トン程度を想定している。令和8年度には5万トン程度で実証試験を行うこととしている。
②の気候変動等対応品種法案は、温暖化などの気候変動や農業者の減少などの情勢変化に対応するため、高温や病害虫に強く、多収などの特徴を有する重要品種の育成と迅速な生産現場への普及を図るための計画認定制度を創設する。
③の種苗法の一部を改正する法律案では、わが国で育成された新品種について、育成者権の保護強化のため、存続期間を10年延長するとともに、品種登録前の種苗の輸出に関する差止請求制度を創設するなどの措置を行うものである。
3月までに提出済みの法案に関しては、4月24日、 改正農業近代化資金融通法及び改正農林中央金庫法が、参議院本会議で与野党の賛成多数で可決・成立した。また家畜伝染病予防法の改正案は、4月22日、衆議院農林水産委員会で全会一致で可決し、23日の衆議院本会議を経て、参議院に送付された。
4 新たな水田政策の基本的考え方案を与党に提示
4月8日、自民党で開催された農業構造転換推進委員会において、農林水産省は、水田活用の直接支払交付金の見直しの方向性の案として、
- 非主食用米や麦・大豆・飼料作物については、生産性向上に向け10アール当たりの収量に応じた単価で支援をすること
- 主食用米のうち業務用米については、当面、単収向上等の支援を検討すること、などを示した。
水田政策については、昨年4月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画において、農業構造の変化が見込まれる中で国民に対する食料安定供給を果たすため、令和9年度から見直すこととなっている。
今後作物ごとの生産性向上をはじめ、付加価値向上、ひいては食料安定供給に資する対策へと転換する方向で、6月までの取りまとめに向けて引き続き議論を深めていくこととしている。
4月24日、農林水産省は、米の生産量を把握する統計の調査手法の見直しに向けた有識者検討会を立ち上げた。令和6年からの米不足では、国の生産量統計と生産実態にずれがあった可能性が指摘されていた。従来は、農林水産省が全国から抽出した 約8000筆( 約2000ヘクタール)で部分的に刈り取った結果から収量を推計していたが、令和9年産からは、生産者が実際にコンバインで収穫した量のデータをもとに推計する手法を導入する。 約13万ヘクタールに相当する約2万1000経営体からデータを集めることとした。
4月 24日農林水産省は、米の4月13日から16日時点の米の平均店頭価格を発表し、前週比 10円 ( 0.3% ) 高い 5kg当たり3883円 だったとした。値上がりは10週 ぶりとなった。余剰感を背景にした下落基調が一時小休止となった。 前年同期比では337円( 8.0% )の低下となった。
5 中山間地域直接支払等直接支払制度の見直しの方向性を提示
4月10日、農林水産省は自民党の農業構造転換推進委員会において、平地との生産コストの差を埋める中山間地域等直接支払いについて、令和9年度からの見直しの方向性を示した。
市町村が認めた条件不利地であれば、傾斜がなくとも支援できる仕組みに転換することとした。見直し案では、① 地方自治体が営農や共同活動の継続に必要と認めれば、傾斜地でなくても支援対象になること、② 制度を利用していない集落に利用を促すため、都道府県や市町村による支援体制を強化すること、③農家の減少で地域の共同活動が難しい集落には、「 個別協定 」を推進すること、④交付申請の事務局を多面的機能支払いとの一元化が可能になるようにすること、とした。
また、多面的機能直接支払いについては、共同活動の継続に向けて、外部人材の確保や先進技術の活用により作業の効率化を図る取り組みを推進することとした。なお、地域全体で長期中干し、冬季湛水などの取り組みを拡大させる観点から、活動組織にインセンティブが働くよう現状の支援を見直すこととした。
更に、環境保全型農業直接支払いについては、支援の単位を地域から個人へ移し、環境負荷低減への転換・拡大時への支援を重点にするとともに、支援の期間を限定することとした。
6 その他
(1) 岩手県大槌町で 山林火災、1633 ヘクタールが消失
4月22日、岩手県大槌町で山林火災が発生し、自衛隊や消防が消化活動を行ったが火災は鎮火せず、 4月27日までに 1633ha の山林が焼失した。 4月26日時点で町の人口の3割に当たる 1558 世帯、3257人 に避難指示が出された。 4月27日から3日間続いた降雨により、火災は沈静化に向かったが、 消火活動は継続された。(5月2日に鎮圧が宣言されたものの、6日にまた新たな山林火災が発生している。)
4月26日には福島県喜多方市、新潟県魚沼市でも山林火災が発生した。
(2) クマの出没が相次ぎ、注意を呼びかけ
昨年度大きな問題となったクマ被害について、 本年も 4月に入って、北日本の各地でクマの出没が相次いだ。1~2月の目撃件数だけでも、731件と、昨年同期の1.9倍に達した。秋田、青森、岩手、宮城の各県は、過去最速で「警戒情報」を出した。4月21日には、岩手県紫波町で、クマに襲われた女性の遺体が見つかった。
昨年出没が多かった地域では、春の農作業が本格化し、農地周辺でクマに遭遇する危険性が高まることから、農林水産省は、① 1人での作業は避けること、②ラジオなど音の出るものを携帯して自分の存在をアピールすること、③ 早朝・夕方の作業時は特に気をつけること、④クマの痕跡を見つけた場合には、すぐに市町村へ連絡することを呼びかけている。
昨年度においては、人身被害人数が238人、うち農地での被害人数が36人、 そのうち死亡者が1名となっている。
(3) サンマ漁獲枠 5%減で合意
4月14日から17日まで 「北太平洋漁業委員会(NPFC)」の年次会合が大阪市内で開催された。 ロシア・中国・韓国など計9カ国・地域が参加した。同委員会は、 北太平洋での水産資源の管理を議論する国際会議である。4月17日、サンマの漁獲枠について、2026年には、前年比で5%減少し、19万 2375トンとすることで合意した。
専門家が資源状況を話し合う 2025年 12月 の科学委員会では、「資源維持と漁業を両立できる持続可能な水準と比べ、資源量は依然として少ない」とするデータが示されていたことを踏まえ、日本は1割削減を求めていた。
討議の結果、2026年は日本の主張の半分となる5%減と決定したが、2027年については、急激な資源回復が見られない限り、 2026年比で10%減らすこととなった。
日本の2025年のサンマ漁獲量は前年の1.7倍の6万4831トンだった。 資源は回復傾向にあるものの、2000年以降でピークだった2008年の35万トン超と比べると 2割弱にとどまっている。
同会合では、サバについては、現状の約7万トンから2026年は5万1000トン、 2027年には4万5000トンに減らすこととされた。イワシについては、22025年の漁獲実績内に制限することで合意した。
(4) 宮城県都城市で豚熱が発生
4月9日、宮城県は都城市の養豚場で豚熱に感染した疑いのある事例を確認したと発表し、翌10日、農林水産省は、豚熱の患畜と確定したと発表した。発生 農場は約5500 頭を飼養しており、同日から殺処分が行われた。
2018年の国内再発生以降 103例目にあたり、宮崎県を含めて南九州での農場での発生は、初めてとなる。南九州は豚の主産地であり、宮崎県は豚の飼養頭数が都道府県別で全国第3位(2024年)となっている。農林水産省は感染拡大防止のため、改めて農場の感染対策の徹底を呼びかけた。
