全国山村振興連盟メールマガジンNO54
2019.12.6
全国山村振興連盟事務局
○人口急減地域対策法が成立
・前号でお伝えしたとおり、11月27日、「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」が参議院本会議において可決・成立しました。本法案は、細田博之議員・当連盟会長中谷元委員等が提出者となっていた超党派の議員提出法案であり、両議員が中心となって設立された人口急減地域対策議員連盟において検討・立案されてきたものです。
・法案の概要は、次のとおりです。
- 人口急減地域において「特定地域づくり事業協同組合」を作り、知事に申請して認定を受ける(第3条)。人口急減地域とは、地域社会の維持が著しく困難となるおそれがあるほど人口が急減した地域を言う(第2条)。
- 特定地域づくり協同組合は、地域づくり人材が組合員(1~3次産業の事業者、関係団体)の事業に従事する機会を提供する(第10条)。労働者派遣法の特例として、厚生労働大臣に届け出をすれば、雇用する職員を派遣することができる(第18条)。地方公務員も組合の事業に従事することができる(第17条)。
- 国・地方公共団体は、特定地域づくり事業の運営に関し、情報提供、指導助言等の援助を行う(第15条)とともに、必要な財政上の措置等を講ずる(第16条・第21条)。
・本法律案のイメージ図(別添)では、特定地域づくり事業協同組合は、「地域づくり人材のベースキャンプ」という位置づけとされており、①組合員又はその従業者等、②地域内の若者等、③地域外の若者等を雇用して、給与を支給します。そしてその人材は、特定地域づくり事業として、①企画立案を行ったり、②組合員の事業に従事したりして、組合員から料金を得ます。
国・地方公共団体は、法律本文にあるとおり、①情報提供・助言指導等の援助、②必要な財政上の措置を行うものとされています。
法律案の立法趣旨については、人口急減地域対策議員連盟で作成された文書がありますので、添付します。
20190710人口急減地域対策法案イメージ
20191206人口急減地域対策法立法趣旨
file:///C:/Users/sanes/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/BE9NZTGJ/rippou-shushi20190920.pdf
法律及び要綱については、次のアドレスをご覧ください。
地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律案
要綱
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/youkou/g19805033.htm
本文
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19805033.htm
○中山間地域フォーラムが食料・農業・農村基本計画の改定に関し提言
研究者・有識者等で構成するNPO中山間地域フォーラム(生源寺真一会長)は、11月19日、「総合的な農村政策の再構築を!食料・農業・農村基本計画の改定に関する緊急提言」を農水省に提出しました。
この提言の概要は、以下のとおりです。
- 基本法施行20年の成否を十分検証し、国民全体の視点で農村政策を再構築するとともに、法改正も視野に入れること
- 「総合的な農村振興政策の企画・立案・推進」に使命感を持って取り組むこと
- 政策の前提として若者がここで就農したいと思える中山間地域の農村ビジョンを明示すること
- 新しい価値観やライフスタイルを実現できる農山村の位置づけを明確にし、柔軟な支援を行うこと
- 自治体農政による農村振興を積極的に支援するとともに、地域の内発的発展を高める政策を推進すること
- 日本型直接支払制度が効果的に活用されるよう改善すること
- 美しい農村景観の維持や小規模農地等の有効活用の政策を強化すること
なお、この提言の本体について、別添します。
20191119 中山間フォーラム農村政策に関する緊急提言(最終版)
○2019年11月の農林水産行政
2019年11月の主な農林水産行政の動向は、以下の通りでした。
1 台風15・19号等の農林水産被害3500億円超、予備費・補正予算で復旧対策へ
台風15号・19号等による農林水産被害は、台風15号が509億円、台風19号等が3082億円(12月2日現在)に上り、合計すると判明した被害額は3500億円を超えた。
政府は11月8日、予備費から1300億円の支出を閣議決定したほか、補正予算でも災害対策が検討されている。
農作物で特に被害の大きかったのは、収穫後のコメの浸水や果樹の樹体の被害であり、コメの浸水に対しては10アール当たり7万円を交付して営農再開を支援する。リンゴの改植に対しては、早期成長化などを要件に10アール当たり75万円を補助するなどの措置が講じられることとなった。
2 日米貿易協定が衆議院を通過。国内農業対策に補正予算を検討。
日米貿易協定の承認案は、11月19日、衆議院本会議で可決され、11月20日、参議院で審議入りした。協定の影響による国内農業生産の減少は、600~1100億円と試算されており、特に牛肉・豚肉・乳製品など畜産分野への影響が大きいと見込まれる。
その影響を緩和するため、補正予算で国内対策が検討されており、12月上旬に「TPP等関連政策大綱」の改定と補正予算の取りまとめが見込まれている。
農林水産省は11月22日、自民党農林合同会議に「農業生産基盤強化プログラム」を提出し、①輸出拡大、②牛肉・乳製品の生産拡大、③園芸の生産体制強化、④水田での高付加価値作物への転換、⑤スマート農業の推進、⑥新規就農者の拡大、⑦棚田を含む中山間地域の活性化、⑧食品産業との連携強化、⑨食品流通の合理化、⑩自然災害への対応強化、⑪家畜疾病対策の強化という11の柱を打ち出し、補正予算と2020年度予算に反映する方針である。
3 豚コレラの呼び名をCSFと改定。ワクチン接種豚の流通が開始。
11月12日、今後の呼称を豚コレラからCSF(クラシカル・スワイン・フィーバー)とすることにつき発表があった。アフリカ豚コレラは、ASF(アフリカン・スワイン・フィーバー)とする。この呼称変更は、豚コレラについて風評被害を抑えることが狙いだとされる。
11月18日から、ワクチンを接種した豚の流通が岐阜県などの市場で開始された。農水省は、「健康に影響はなく安全である」とアピールしている。「ワクチン接種地域の豚肉ではない」などの表示は不適切だとし、食品Gメンなどによる監視を強めることとしている。
CSFは、11月16日、山梨県下で46例目が発生し、これは山梨県の養豚場では初めての発生となった。11月28日、群馬県の畜産試験場において、自衛隊ヘリコプターを用いたイノシシ用経口ワクチンの空中散布が行われた。これは実証実験であり、農水省は今後12月から本格的な空中散布を始めたいとしている。
4 農林水産物・食品輸出促進法が成立(11月20日)
臨時国会に提出されていた「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案」が11月20日、衆議院本会議において賛成多数で可決・成立した。共産党は反対した。
本法は、国内で生産された農林水産物・食品の輸出促進を目的として、①農林水産物・食品輸出本部の設置、②基本方針・実施計画の策定、③大臣・知事による輸出証明書の発行、④HACCP施設の認定等の措置を定めており、来年4月1日に施行される。
2001年日本でのBSE(牛海綿状脳症)の発生以来、中国は日本からの牛肉輸入を禁止してきた。しかし11月25日、日中が動物衛生・検疫分野の協定が合意され、対中輸出再開に向けて準備が進みつつある。
5 その他
(1) A―FIVE(農林水産業成長産業化支援機構)の累損が増加。抜本的見直しへ
農林水産関係ベンチャーへ出資するA―FIVEの累損が115億円となる見通しとなり、「廃止を含むあらゆる選択肢」で見直しを行い、年内に結論を得る方針となっている。
(2) コメの作況指数を99と修正(10月31日)
コメの作況指数は、台風の襲来等により9月15日現在の予想よりも2ポイント下がって99(平年並み)となり、収量の予想は727万トンとなった。
(3) 果樹・野菜の品種保護につき有識者検討会が提言(11月15日)
改良した果樹・野菜の品種保護を強化するため、①今後は海外持出しの禁止・利用条件付けができるようにするとともに、②自家増殖についても許諾を必要とするようにすべきと提言された。