全国山村振興連盟メールマガジンNO321

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2025.5.2
全国山村振興連盟事務局

◎ 2025年4月の農林水産行政

2025年4月の農林水産行政の主な動向は 次の通りでした。

1 米国トランプ政権の相互関税に対し、赤澤担当相が交渉
4月2日、米国のトランプ大統領は、あらゆる国から輸入されるほぼすべての品目に、10%の追加関税と57カ国・地域に対して上乗せ分の追加関税を課す「相互関税」の措置を発表した。上乗せ分の追加関税は国ごとに異なっており、日本からの輸入品には24%の上乗せ分を課すとした。4月3日、自動車・鉄鋼・アルミに 25%の追加関税を発動。4月5日、その他の品目にもほぼ全ての国に一律10%の関税を発動。しかし、4月9日には56カ国・地域に対する上乗せ分の追加関税を90日間停止すると発表した。
トランプ米国大統領は4月2日に相互関税を発表した際に、「日本はコメに700%の関税をかけている」と発言。これに対し、米の関税はキロ当たりの従量制であるため、農林水産省は700%という主張は正しくないと反論している。米国政権は自動車のほか、農産品にも関心を示しているとされる。
4月8日、政府は総合対策本部を開催し、「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」を取りまとめた。対応案は、①相談体制の整備、②企業の資金繰り支援の強化、③雇用維持と人材育成、④国内の消費喚起、⑤産業構造の転換と競争力強化の5つの柱を据えている。首相が表明した 1 リットルあたり10円のガソリン価格引き下げも盛り込んだ。
日本の6年度の全品目の貿易収支は 5兆2,217億円の赤字である一方、対米国では 9兆53億円の黒字となっている。食料品については、対米国は輸出額 2256億円に対し、輸入額は1兆8572億円と大幅な赤字となっている。
4月16日(日本時間 4月18日)、日米両政府は、トランプ米国政権の追加関税を巡って、ワシントンで初の交渉を行った。交渉担当となったのは、赤澤亮正経済再生担当大臣。米側はベッセント財務長官、ラトニック商務長官、グリア米国通商代表。交渉では「早期に合意し両首脳による発表を目指すこと」で一致した。交渉に先立ち赤澤氏は、トランプ米大統領とも会談した。
第2回の交渉は5月1日とされ、赤澤経済再生担当相は4月30日から訪米した。

2 備蓄米を毎月放出する方針とし、4月下旬に3回目 10万トン
4月9日、石破茂首相と江藤拓農相は首相官邸で会談し、首相が政府備蓄米について追加放出など今後の対応につき指示を行った。江藤農相は会談後、新米が出回り始める前の7月まで政府備蓄米を毎月放出すると方針を明らかにした。 3月・4月に続き、5月から7月にも月に1度放出することとし、放出量は 状況を見て判断する。
3月に実施した入札では、1回目に14万1,796トン、2回目に初回の落札残を含む7万 336トンが落札されている。
4月23日から25日、農林水産省は第3回目の政府備蓄米の入札を行い、対象を10万 191トンとした。全量が古米の令和 5年産米であり、従来は認められなかった卸売り業者間での取引も認めることとした。3回目の入札では、放出対象10万トンの ほぼ全量が落札され、平均落札価格は 60kg あたり2万302円と初回(2万1217 円)から4%低下した。
4月30日、農林水産省は直近2週間(3月末から4月13日)の流通状況調査 を公表した。落札済みの備蓄米計約 21万トンのうち、集荷業者が引き取ったのは65%に当たる 13万7879トンだった。集荷業者から卸売業者への出荷は2万773 トンで全体の9%。 卸売業者から小売業者に販売された備蓄米は3005トン。 集荷業者から直接小売業者に届いた分が13トンだった。小売業者への出回り亮は、2回目までの合計放出分の1.4%、外食産業への出荷分を入れても2%近くにどどまっている。

3 食料・農業・農村基本計画などを閣議決定
4月11日、政府は改正食料・農業・農村基本法に基づく初の「食料・農業・農村基本計画 」を閣議決定した。 基本計画は 計画期間を5年間とし、 「初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進める 」としている。また計画基本計画の実効性を高めるため、食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標に加え、課題解決のための具体的施策及びその施策の有効性を示す KPI (重要業績評価指標)を設定する。今後、少なくとも年1回、その目標の達成状況の調査・公表、KPI の検証を行うとしている。
具体的には 食料自給率は①供給熱量ベースの総合食料自給率を令和5年度 38% から45%に引き上げる。②生産額ベースの総合食料自給率は、令和5年度の 61%から69%とする。③摂取熱量ベースの食料自給率は、令和5年度の 45%から53%とする。
このほか、④49歳以下の担い手の数は 現在の水準 (令和 5年 4万8千 )を維持する。 ⑤農地面積は令和6年の 427万ヘクタール から412万ヘクタールとする。⑥1 経営体あたりの生産量は、 令和 5年の 47トンから86トンと1.8倍にする、などである。
また4月11日、政府は 食料供給困難事態対策法に基づき、具体的な運用を定める基本方針を閣議決定した。同法では、食料危機の深刻度に応じ、政府が農業者へ増産要請や生産計画の作成指示を行うことができる。その対象品目である「特定食料」に ①農林水産物では、米、小麦、大豆、ナタネ・アブラヤシの実、てんさい・サトウキビ、生乳、牛肉・豚肉・鶏肉、鶏卵を指定した。②また、加工品では、小麦粉、植物油脂、砂糖、飲用牛乳・乳製品、液卵・粉卵を指定した。
品目の供給量が平年の2割以上減るか、その恐れがある場合、政府が増産等の要請を行う可能性がある。米については不測時に政府備蓄米を放出し、次に民間在庫で対応する方針としている。

4 農林水産大臣が岩手県下とインドネシアに出張
4月4日、江藤農林水産大臣、滝波農林水産副大臣、庄司農林水産大臣政務官は、大規模な火災被害を受けた岩手県大船渡市に出張し、合足地区の海岸防災林の森林被害の現地調査を行うとともに、綾里漁港の水産被害の現地調査を行い、現地の関係者との意見交換を行った。
また江藤農林水産大臣は、 4月27日から30日、インドネシアのジャカルタを訪問し、インドネシアのアムラン農業大臣、アリエフ国家食料庁長官と会談した。アムラン大臣との会談では、日本産牛乳・乳製品の輸出の早期解禁等を要請するとともに、「日ASEANみどり協力プラン」について、両国で行う新規プロジェクトを追加することを確認した。アリエフ長官との会談では、牛肉の輸入割当制度について、日本産牛肉を安定的に輸出できるよう見直しを要請した。
また、ASEAN事務局ではカオ・キムホン事務局事務総長と会談を行い、「日ASEANみどり協力プラン」に基づく協力を充実させるため、第2回日ASEAN農林大臣会合を本年秋開催し、プランを改定する方針を確認した。
4月28日には、インドネシアに海外展開して食品製造業等を行う日系事業者について工場等の視察を行うとともに、インドネシアの食品市場の現状や課題について意見交換を行った。

5地域計画の策定は18,633地区
令和5年の改正農業経営基盤強化促進法では、市町村は、農業者・農業委員会・農地バンク・JA・土地改良区等の関係者による話合いを踏まえ、本年 3月末までに「地域計画」を策定することとされている。地域計画では、①地域の農業の将来ビジョンを明確化するとともに、②農業者の減少下における10年後の農地利用を明確化すること(目標地図)を通じて、将来にわたる適正な土地利用を確保し、農地の集約化の推進により生産性向上を図ることを目的としている。
農林水産省によれば、本年 3月末時点で、地域計画は、全国1613 市町村の18,633地区で策定された。これによると、①地域計画区域内の農用地等の面積は424万ヘクタール、②うち農業振興地域の農用地区域の面積は380万ヘクタール、③目標地図に位置付けられた農業者の10年後の経営面積は284万ヘクタールとなっている。
目標地図に位置づけられた農業者については、担い手(認定農業者、認定新規就農者等)が約3割であった。なお、将来の受け手が位置付けられていない農地(地域計画区域内の農用地と面積から目標地図に位置付けられた農業者の10年後の経営面積を差し引いたもの)は、計画区域内の農用地等面積の32.8%となる139万ヘクタールにのぼった。
農林水産省では、今後分析・検証を行い、課題を把握してどのような施策が必要か議論していく必要があるとしている。

6 その他
(1) 農業・食料産業の国内生産額は8%増加
農林水産省は令和 5年の「農業・食料関連産業の経済計算」 を発表し、農業・ 食料関連産業の国内生産額(概算)が124兆6,926億円だったとした。統計開始後の1970年以降で最高となった。
前年からの増加率は7.9%で過去最大であり、このうち農業の生産額は4.5% 伸びた。分野別には、食料製造業 40.3兆円、関連流通業 38.9兆円、外食産業 26.6兆円、 農林漁業 13.3兆円だった。 農林漁業のうち農業は11.4兆円となり、米・野菜・鶏卵の価格上昇を受けて前年よりも 4.5% 増加した。政府は農業・食料関連産業の国内生産額を令和12年に150兆円にする目標を掲げている。

(2) 群馬県・宮崎県で豚熱が発生
4月4日、群馬県前橋市の養豚農場( 6800 頭飼養)で、家畜伝染病である豚熱の患畜が確認された。国内農場での発生は98例目となった。農林水産省は 「 豚熱・アフリカ豚熱防疫対策本部 」を持ち回りで開催し、対応方針を決定した。
また4月11日、宮崎県都城市において、野生イノシシが豚熱に感染した事例が確認された。農林水産省は、これらの県と連携しながら、①豚熱経口ワクチンの散布、②野生イノシシのサーベイランス及び捕獲の強化、③養豚農家に対するワクチンの適期接種と飼養衛生管理の再点検・早期通報の徹底を指導している。
◎ Forest Style ネットワーク」からのお知らせ

「Forest Style ネットワーク」(事務局:林野庁 森林利用課 山村振興・緑化推進室)から、以下のとおりお知らせがありました。

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1 日本医学大学付属病院 李卿教授らが研究した論文が日本衛生学会英文誌の最優秀論文賞と最優秀総説賞をダブル受賞しました!
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2024年度日本衛生学会英文誌Environmental Health and Preventive Medicine(EHPM)のAward of Excellence(最優秀論文賞)に李卿教授らが研究した「Effects of forest bathing (shinrin-yoku) on serotonin in serum, depressive symptoms and subjective sleep quality in middle-aged males(和訳:中年男性における森林浴が血清中のセロトニン、うつ症状、主観的睡眠の質に与える影響)」が受賞しました。
同時に、森林医学研究の総説(平成16~18年度農水省高度化事業研究-森林系環境要素がもたらす人の生理的効果の解明ーの助成研究で発表した英語論文の総説)は同誌The Editor-chief Award(最優秀総説賞)を受賞しました。

最優秀論文の詳細は、下記をご覧ください。(英文論文)
Effects of forest bathing (shinrin-yoku) on serotonin in serum, depressive symptoms and subjective sleep quality in middle-aged males
合わせて、本論文の元となった、李卿教授らが令和元年度に実施した「森林浴による健康増進等に関する調査研究」の報告書も併せてご紹介します。
詳しくは、下記をご覧ください。
令和元年度森林浴による健康増進等に関する調査研究報告書
最優秀総説賞の詳細は、下記をご覧ください。
The Editor-in-chief Award | 一般社団法人 日本衛生学会
林野庁ホームページ~注目情報~:森林サービス産業の創出・推進:林野庁

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2 令和6年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」を公表しました!
~勤務先における「運動・スポーツを活用した取組」の成果が明らかに!~
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スポーツ庁では、第3期スポーツ基本計画において、成人の週1回以上のスポーツ実施率が70%になることを目標として掲げており、毎年、「スポーツの実施状況等に関する世論調査」を実施しております。
このたび、「令和6年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」を実施し、調査結果について以下のとおり取りまとめましたので、公表いたします。
特に今回は、勤務先において「運動・スポーツを活用した取組」をするかどうかで、スポーツ実施率やWell-beingに差がつくことが明らかとなりました。

<主なポイント>
(1)性年代別のスポーツ実施率とスポーツ実施率の推移
(2)運動・スポーツを週1日以上実施したいと思う者の割合(スポーツ実施希望率)
(3)勤務先での運動・スポーツ実施環境と Well-being

<その他のポイント>
(1)女性のスポーツ実施の特徴
(2)都道府県別のスポーツ実施状況
(https://public.tableau.com/views/6_17419152921600/1?:language=ja-JP&:sid=&:redirect=auth&:display_count=n&:origin=viz_share_link)
(3)スポーツ参画状況(する・みる・ささえる)と幸福感

○令和6年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和6年11月調査)
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1415963_00013.htm
<報道発表資料>
https://www.mext.go.jp/sports/content/250313-spt_kensport01-000040805_01.pdf

○Sport in Life プロジェクト
https://sportinlife.go.jp/

◎「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォーム」からのお知らせ

「農山漁村」経済・生活環境創生プロジェクト(事務局:農林水産省農村計画課 農村活性化推進室)から、以下のお知らせがありました。

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5月21日(水)、22日(木)13:30~16:00に総務省主催の「地域力創造に関する施策説明会」が開催されますので、ご案内いたします。

本イベントでは、地方創生2.0の最近の動きや各府省庁の施策等、地方創生・地域活性化に関する最新状況が幅広く説明されます。
もちろん、「農山漁村」経済・生活環境創生プロジェクトに関しても説明いたします!

国の施策の最新状況を把握したい方や人事異動で新たに地方創生・地域活性化に関する事業の担当になった方、
地方公共団体との連携を検討している民間事業者の方等はぜひご参加ください!!

本イベントは、Web配信(YouTube Live)で開催されますので、視聴を御希望の場合は、5月15日(木)18時までに下記URLから申込みをお願いいたします。
5月16日(金)以降順次、御登録いただいたメールアドレスへ視聴に必要なURLをお届けします。
なお、配信終了後、アーカイブ配信(録画配信)を行います。アーカイブでの視聴を希望する場合も、申込期限までにお申込みをお願いいたします。

〇開催日時:令和7年5月21日(水)、22日(木)13:30~16:00(両日別内容、詳細はチラシ参照)
〇開催方法:WEB開催(YouTube Live)
○参加費:無料
○詳細・お申し込みはこちらから(5月15日(木)18時まで)↓
https://forms.office.com/r/uD3v5tNaw8

【チラシ】地域力創造に関する施策説明会の開催について

 

【ご案内】地域力創造に関する施策説明会の開催について

 

【総務省施策】農山漁村の課題解決につながる総務省の施策パッケージについて(R7.4)