第1043号(平成28年12月15日発行)
平成28年度の全国山村振興連盟関東ブロック会議が、10月6日(木)~7日(金)の2日間にわたり茨城県支部(支部長 大久保 太一 常陸太田市長)の主催により、茨城県常陸太田市「里山ホテルときわ路」において、管内の会員、支部事務局、来賓等70名が参加して開催された。
会議は、茨木県支部(事務局:常陸太田市) 富田弘明 農政課農林振興係長の司会のもとで進められ、その概要は次のとおりとなっている。
1.挨拶
主催者挨拶が大久保太一 茨木県支部長から、来賓挨拶が齋藤 章 茨木県農林水産部次長からあった。
2.議事
(1)情勢報告 全国山村振興連盟 岸 廣昭 常務理事兼事務局長
山村振興関連予算・施策に関する要請活動等連盟の活動報告ががなされた。
(2)国の施策説明
農林水産省、林野庁、国土交通省及び総務省から説明があった。
①「山村振興対策について」
農林水産省地域振興課 三重野 信 課長補佐
今年度の第2次補正予算の中山間地域対策、平成29年度概算要求に係る山村活性
化支援交付金等についての説明の後、新しい税制特例の活用、山村計画作成につ
いての要請がなされた。
② 「森林・林業行政を取り巻く情勢について」
林野庁森林利用課 近藤美由紀
森林環境教育指導官林野関係の今年度の第2次補正予算の重点事項、、 平成29年度林業関係概算要求の重点事項の説明の後、森林吸収源対策の財源確保に係る平成29年度税制改正要望、森林吸収源対策等の推進のための地方財政措置(林地台帳整備等)についての説明があった。
③国土交通省の山村振興対策について」
国土交通省地方振興課 鶴見伸司 課長補佐
今後の人口動向、山村地域の人口1000人集落の趨勢将来推計人口とそれに伴う
様々な問題の説明後、「小さな拠点づくり」を中心にして国土交通省の山村振興施策の説明があった。
④「地域自立応援施策について」
総務省地域力創造グループ地域振興室 北村崇史 課長補佐
移住・交流情報ガーデン等の移住対策の推進、地域おこし協力隊、集落支援員制度、地域力創造アドバイザー制度、過疎法による過疎対策、小学校区を単位とする地域運営組織づくり等の説明があった。
(3)質疑
環境税について都道府県での独自の制度が出来つつある中での制度化の見込みの質
問、搬出間伐の問題点の指摘がなされ、それぞれ答弁がなされた。
4.事例発表
講師は、「合同会社 ポットラックフィールド里見」代表の長島由佳氏で、「地域と共に歩むシゴト」というテーマで発表がなされた。
平成26年3月まで3年間常陸太田市地域おこし協力隊員として里見地区で、地域資源を活用した地域外との交流、次世代へ地域を継承するための活動、地域資源を活用する為の情報発信活動等を他の2名の協力隊員とともに行ってきた。
活動を総括すると、「地域の方々が大切に守ってきたこの里美を未来に繋げていく為に、 地域にすでにある宝物(人・モノ・コト)を掘り起し、 価値の再認識を地域の方々と共有し、 その価値を守り、より多くの人に伝えて、 里美地区に住んでいてよかった!という想いを地域の中でじわじわと育むことを目指して、 様々な活動を通してカタチにしていく」ということであった。
具体的な活動の一つに「里見の水プロジェクト」がある。地域資源を活かして地域のメンバーでできる、継続性のある取組みはないかということで、珈琲という新しい切り口で里見の「水」をPRすることにつながる、アイスコーヒー『里見珈琲』を開発した。森林や水の大切さを伝える『ツタエル・マナブ・ハグクム」活動となっている。
また、家庭料理レシピ集の作製、食文化体験ツアー、四季毎の家庭料理レストラン等『食』に関する取り組みも行ってきた。
地域おこし協力隊の任期満了1年後の平成27年3月に、地域住民がそれぞれの得意を“持ち寄り”、活躍できるフィールド(場)を仕掛け、仕組みを整えるため、「合同会社 ポットラックフィールド里見」を地域の仲間とともに、設立した。
地域づくり事業(地域ディレクター、アドバイザー)、教育事業(地域資源を活用した教育研修事業)、情報発信事業(特産品開発・販売事業。『里見珈琲』の通信販売もその一つ)を行っている。
5.次期開催県あいさつ
次期開催県である、群馬県嬬恋村 熊川 栄 村長から挨拶があった。
6.現地視察
(1) 県北アートフェスティバル
風光明媚な海と山が織り成す豊かな自然に恵まれた茨城県北地域は、かつて岡倉天心や横山大観らが芸術創作活動の拠点とした五浦海岸、クリストのアンブレラ・プロジェクトで世界の注目を集めた里山をはじめ、独自の気候・風土や歴史、文化、食、地場産業など、多くの創造的な地域資源を有している。こうした資源の持つ潜在的な魅力をアートの力を介して引き出すことにより、新たな価値の発見と地域の活性化を図るため、日本最大規模となる広大な「KENPOKU」地域を舞台として、開催される国際的な芸術祭である。茨城県の主催で、県北6市町の豊かな自然を背景にして、アートと科学・技術の実験を通じて、新たな創造の息吹を吹き込む目的で、本年9月から11月まで開催された。
常陸太田市内の2箇所のアート作品群を視察した。
1箇所目の里山ホテルときわ路に隣接した旧自然休養村管理センターでは、ミツバチの行き来を目の当たりにするバイオアート、納豆樹脂で作られた3Dプリントの構造物、なぜだか特定の人の所でだけコロコロ動き出す苔玉、光と闇を意識したアニメーション等々の芸術性を持ったいろんな科学実験装置の展示がされていた。
2箇所目は、ART ZOO サファリパークプロジェクト。
広々とした田畑や丘の上を舞台に、大自然の中でゾウ、キリン、ゴリラ、サイ…様々な動物がのびのびしている光景が出現=実は、遠景からはそう見えるのだが、2~3メートルの近景からは、それがペタッとしたパネルであることに気づかされる。250枚のパネルだそうだ。あちらの高台、こちらの茂みという具合に250もの鳥や動物がおり、臨場感あふれるものであった。なんとも不可思議なリアリティに驚かされるアートであり、わくわくさせられる芸術であった。
(2) 竜神大吊橋
竜神峡に架かる本州一長い歩行者専用の橋(全長375m、ダム湖面よりの高さ100m)。大勢の観光客でにぎわっていたが、一時震災の影響で人手が落ちたのを回復させるためバンジージャンプを導入し、観光客が回復した。緑のパノラマの中、毎日誰かしら飛んでいるそうである。
(3) 「かなさ笑楽校」(廃校利用宿泊施設)
平成20年3月に閉校した旧金砂小学校を改修し、豊かな自然体験や生活体験ができる宿泊可能な体験交流施設。農作業・そば打ち・豆腐作り・ピザ石窯・かまど炊き・天体観測・ドラム缶風呂・川遊び、自然探索等の体験ができる。宿泊室が9室、約50人程度の宿泊が可能となっている。グラウンド・体育館を利用した合宿や素泊まりにも利用できる。食事のケータリングも可能であるが、旧給食室を使っての自炊も可能となっている。
(4) 「道の駅 ひたちおおた」
国道349号線に平成28年7月にオープンした。地域オリジナルの葡萄青龍を始め地域の新鮮農産物の直売所の他、バイキングレストラン、ラーメン、大人気のパン屋、そば等の店舗が豊富にある。また、美しく快適なトイレも見事でありました。