フュージョンで新しい活動が起こる 實重重実

常務理事兼事務局長 實重重実

昨年8月に常務理事兼事務局長に就任させていただいて以来、様々な山村地域を訪問し、地域ごとに異なる多彩な活動について話を伺いました。
各地域や都道府県で行われている活動や施策は、実に多様で創意工夫に富み、素晴らしいものばかりですが、その中で私が特に面白いと感じたものを2つ紹介させていただきます。
1つめは、静岡県川根本町のNPO法人かわね来風が実施している地域活動の一環なのですが、「ママ宅プロジェクト」という名前が付けられていました。これは、子育て中の女性が、高齢者のお宅に弁当の宅配を行うものです。主婦は外で働きたくても小さい幼児がいて手のかかる間は、なかなか働きにくいものです。この仕事では、自動車に幼児を一緒に乗せて、高齢者のお宅を回ることができます。
一方で高齢者は、一人暮らしの方も多くて、外部の人に接する機会も減ってくるのですが、この宅配サービスに頼めば、お母さんと一緒に可愛い幼児まで我が家にやってきてくれるわけです。幼児に声をかけて会話ができますし、自分が作った野菜をあげる人もいて、それが生き甲斐の一端ともなっているかもしれません。
これは、宅配と育児という2つのものを、上手に組み合わせることで、相乗効果を上げている事例だと思います。約10人の女性が、約40人の高齢者に宅配しているそうです。
2つめに紹介したいのは、岐阜県で取り組んでおられる「ぎふの田舎応援隊」という施策です。これは、「ボランティアもしたいし、観光もしたい」という外部者の2つのニーズを組み合わせたものです。外部の人に来てもらって、高齢化の進む地域のために役立ってもらうとともに、積極的にその地域のツーリズムも楽しんでもらおうというものです。
午前中は草刈り、耕作放棄地の解消といったボランティア活動を行い、午後には流しそうめんの器づくりなどツアー体験をしてもらいます。「午前中は苦しんでもらって、午後は楽しんでもらう」と県の担当者はユーモアを交えて言われていました。通常の観光よりも遥かに深くその地域のことが理解できそうです。年間10回実施し、150名程度の参加があるそうです。
この取組みも面白いと思うのは、ボランティアとツーリズムという2つのものを組み合わせて1つのものにしているところです。
ほかにも様々なことが組み合わせでできそうです。何かの活動と何かの活動を組み合わせる、つまりフュージョン(融合)することによって、新しい価値が出てくる。新しいものは、そういうことを通じて生まれてくるのでしょう。
山村振興にかかわる関係者の方々は、あらゆるものをフュージョンさせてみて、どんどん新しいアイディアに挑戦していただきたいと思います。