全国山村振興連盟メールマガジンNO251

全国山村振興連盟メールマガジンNO251

 

2023.12.1

全国山村振興連盟事務局

 

○森林環境譲与税の基準見直しを自民党総合農林政策調査会が提言

 

11月22日、自民党総合農林政策調査会(江藤拓会長)は、森林環境譲与税について、森林面積に基づく配分割合を現行の50%から60%に引き上げるべきとする提言をまとめました。現行の地方自治体への配分額は、50%が私有人工林面積、30%が人口、20%が林業就業者数に応じて算定しています。調査会の提言では、人工林面積を60%に引き上げて、人口と林業就業者の基準はそれぞれ20%ずつとすべきとしました。

提言では、森林整備への活用ニーズが高いとして、花粉症対策としての杉の伐採・植え替えを加速化する政府方針も踏まえ、人工林面積への配分を手厚くするとしました。

今後、自民党の税制調査会での議論を経て、2024年度税制改正への反映を目指しています。

なお、自民党農林部会では班編制により税制改正勉強会を行っており、森林環境譲与税等を担当するC班(班長:小寺裕雄農林副部会長)では、11月30日(木)に勉強会を開催し、当連盟から実重常務理事・事務局長が出席しました。

 

 

○ 2023年11月の農林水産行政

2023年11月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした。

 

1 令和5年度補正予算で農林水産関係は8182億円

11月2日、政府は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定し、農業分野に関しては、①農林水産品・食品や中小企業の輸出振興、②産業立地円滑化のための土地利用転換の迅速化等を盛り込んだ。

11月10日、これを受けて政府は、総額13兆1992億円となる令和5年度補正予算案を閣議決定した。このうち農林水産関係は総額8182億円となり、①食料安保構造転換対策に2113億円、②物価高騰影響緩和対策に1001億円、③TPP等関連対策に2527億円が計上された。

具体的には、①食料安全保障の強化に向けた構造転換対策では、畑地化促進事業 750億円、米粉の利用拡大支援対策 20億円、食品事業者における原材料の調達安定化対策 45億円、飼料自給率向上緊急対策 130億円、担い手確保・経営強化支援事業 23億円、省力化に対応した基盤の整備保全 260億円の内数、

食料・生産資材等安定的なサプライチェーンの確保 1億円、適正な価格形成と国民理解の情勢 5億円 等

②物価高騰等の影響緩和対策では、施設園芸等燃料価格高騰対策 45億円、和牛肉需要拡大緊急対策 50億円、

③ 総合的なTPP等関連政策大綱に基づく施策の実施としては、輸出促進対策 360億円、産地生産基盤パワーアップ事業 310億円、鳥獣被害防止対策とジビエ 利活用の推進 50億円、林業・木材産業国際競争力強化総合対策 458億円、 水産業競争力強化緊急事業 205億円等、

④持続可能な成長に向けた農林水産施策の推進としては、持続的畑作生産体制確立緊急支援事業 32億円、新たな花粉症対策の展開 60億円 等

⑤防災・減災、国土強靱化と災害復旧等の推進では、 農業水利施設・ため池等の対策(公共事業)に857億円 等となっている。

このほか経産省関連では、ALPS処理水の放出に伴う対応強化策として、総額約90億円の補正予算を計上した。輸出減が顕著な水産品目を対象に一時買取・保管や海外を含む新規需要開拓、学校給食など国内の販路拡大等を支援する。

この補正予算は11月24日、衆議院本会議で賛成多数で可決され衆議院を通過、11月29日 参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。

 

2 食料品輸出12%減少し、中国向けは半減

11月16日、財務省が発表した 10月の貿易統計速報(通関ベース)によると、 食料品輸出額は前年同月比 12.1%減の940億円となった。3ヶ月連続のマイナスとなる。 中国による日本の水産物輸入規制の影響で、中国向けは55.0%減の106億円となった。

そのほかの国・地域別で見ると①東南アジア諸国連合(ASEAN)は 7.8%減の174億円、②米国が22.4%増の168億円、③欧州連合は 10.2%減の46億円 だった。食料品輸入額は、7.3%減の7956億円となった。

貿易全体で見ると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6625億円の赤字となっている。

 

3 カタクチイワシとウルメイワシに漁獲可能量(TAC)を設定

11月2日 水産政策審議会の管理資源管理分科会が開催され、新たに対馬暖流 系群のカタクチイワシとウルメイワシの2魚種を漁獲可能量(TAC)の管理の対象に追加した。TAC魚種が増えるのは2018年のクロマグロ 以降 6年ぶりであり、対象魚種は10種類となった。

TACによる管理の段階的導入(ステップアップ)に基づき、2024年管理年度(1月から12月)から、漁獲量の情報収集の体制の確立と課題を整理するステップ1を開始する。ステップアップ方式はTACによる資源管理に初めて取り組む人が一定数いることから、段階的に導入・実施していく考え方だ。

ステップ2では、漁獲可能量を試行的に配分し適切な配分数量を算出・提示する。ステップ 1・2で十分な進展があった場合、採捕停止命令を伴うステップ3へ移行する。ステップ1開始後、遅くとも3年後にステップ3への移行を目指すこととしている。

 

4 佐賀・茨城で鳥インフルエンザが発生

11月25日、農林水産省は佐賀県鹿島市の採卵養鶏場で高病原性インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。国内の農場での発生は今季初めてとなった。佐賀県は、この農場で飼養する 約4万羽の殺処分を始めた。

また11月27日、農林水産省は茨城県笠間市の採卵養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。今季2例目となる。茨城県は、この農場で使用する約7万2000羽の殺処分を始めた。

農林水産省は25日、各都道府県に防疫対策の徹底を求める 通知を発出した。 また同日、政府は首相官邸で「鳥インフルエンザ関係閣僚会議」を開催した。松野博一官房長官は、①防疫措置の迅速な実施、②情報収集、③予防措置の指導・支援、④国民への正確な情報発信を指示した。

昨季は農場での発生が過去最多となり、26道県84 事例、殺処分羽数は約1771万羽にのぼった。世界的に流行が続いており、国内でも今季、野鳥では同病ウイルスが確認されていた。

 

5 財政審議会が水田活用交付金の単価見直し等を提言

11月20日、財務省の財政制度等審議会は、令和6年度予算編成に関する建議(意見書)を鈴木俊一財務相に提出した。

その中で、補助金に依存する農業の構造転換を求め、

  • 水田活用の直接支払い交付金について、水田の畑地化を進め交付金単価を見直すこと、生産性向上へ小麦や大豆に単収基準を設けること、
  • セーフティネット対策について、収入保険と他の制度の重複を見直すこと、 将来的には収入保険制度に一元化すること、米や野菜は過剰生産が支払い 発生の要因であること、収入保険の積立方式は保険方式に移行すること、
  • 就農支援などについて、親元就農や零細自営農家ではなく、法人経営体の増加や規模拡大が重要であること、小さな個人経営体は労災保険や雇用保険の加入義務がなく課題であること、スマート農業は大規模法人経営中心に実装すべきこと

などを提言した。

 

6 その他

  • 日中首脳会談で輸入規制の撤廃を要求

11月17日、岸田文雄総理は訪問先の米国で、習近平中国国家主席と日中首脳会談を行った。その中で岸田総理からは、日本産食品輸入規制の即時撤廃を強く求めた。また、建設的な態度をもって協議と対話を通じて問題を解決する方法を見いだしていくことで双方が一致した。今後は専門家のレベルでの議論が行われることとなった。

 

  • 漁港活用について基本方針策定を答申

11月21日、水産政策審議会の漁港漁場整備分科会が開催され、「漁港施設等活用基本方針の策定について」を答申した。「海業」による漁村の活性化を進めることを目的とする改正漁港漁場整備法が来年4月に施行されるが、その準備の一環である。

新しく創設される「漁港施設等活用事業」は、空域などを活用して価値や魅力を発信し水産業・漁村の活性化を図る制度であり、水産物の消費増進や交流促進に向けた事業を計画的に実施することなどが条件となっている。

基本方針については、近く農林水産大臣が策定し、それを受けて地方公共団体が活用基本方針を定め、この計画に対し漁港の活用を図りたい民間企業などの事業者が事業計画を申請することとなっている。

 

  • 諫早湾干拓の「非開門」について全漁協が同意

11月22日、国営諫早湾干拓事業をめぐって、JF 佐賀有明海が潮受堤防の排水門を開門せずに有明海の再生を進める国の提案を受け入れることを決定した。 全支所の代表者による会合が開かれ、全会一致で決定した。有明海沿岸の福岡県・熊本県の漁業団体はすでに同意をする方針を示しており、国が賛同を求めていた全漁協が非開門に応じる形となった。

諫早湾干拓事業をめぐっては、海の環境変化による漁業被害を訴え、開門して調査を求める開門派と、干拓農地に海水が入ることで塩害を懸念する営農者らの非開門派が対立していた。開門の是非について長年裁判で争ってきたが、今年3月に最高裁が「開門せず」との司法判断を示したことで、事実上決着した。国側は訴訟の中で、非開門を前提に漁業支援や有明海再生を進める100億円規模の基金創設を提案していた。

 

○「中山間地域フォーラム2023年度第1回研究会」の開催について

中山間地域フォーラムから、以下のとおり、第1回研究会を開催するとの連絡がありました。

 

■中山間地域フォーラム2023年度第1回研究会■

【日 時】 12月14日(木)  19:30〜21:30

【テーマ】 食料・農業・農村政策の行方と現場の動き

【趣 旨】

〇食料・農業・農村基本法と政策の見直しが行われようとしている。

9月11日の食料・農業・農村政策審議会の答申については様々な評価がある。今後の食料・農業・農村政策はどうあるべきか。

農林水産省OBで中山間地域フォーラム野中和雄副会長が政策の行方、あるべき方向性について提起する。

〇一方、農業・農村の現場では新たな動きが続いている。

有機農産物の6次産業化+地域流通改革を通じて里山の再生を追求する「マルチタスク農蜂家」、日本の農業の未来を照らして担い手不足を解消する「フリーランス農家」。

それぞれの取組みを聴いたあと、クロストークや参加者との意見交換を通じ、今後の農業・農村政策の姿をも見据え議論する。

 

【形 式】Zoomミーティング 【参加費】無料

【定員】100名(先着順・定員に達し次第締め切ります)

【プログラム】

1.主催者挨拶

◆第1部

2.食料・農業・農村政策の見直し議論を考える

(1)基調スピーチ:中山間地域フォーラム副会長 野中和雄 氏【15分】

(2)意見交換【15分】

◆第2部

3.いま農業・農村現場で起きていること(進行:小林和彦・中山間地域フォーラム

運営委員)

(1)取組紹介

① ㈱ONE DROP FARM 豊増 洋右氏【30分】

・参考情報:https://onedropfarm.jp/ 千葉の国産はちみつ はちみつのワンド

ロップファーム

② フリーランス農家 小葉松 真里氏【30分】

・参考情報:https://www.kobamatsu.site/ フリーランス農家 小葉松真理

(2)意見交換

①クロストーク(進行 小林+豊増氏+小葉松氏)【15分】

②意見交換:参加者(視聴者)からの質問や意見交換【15分】

 

【申込方法】

 

以下の要領でメールにてお申し込みください。

 

〇件名:研究会申込

 

〇本文:①お名前 ②ご所属またはご職業 ③連絡先メールアドレス

 

【送信先・問合せ先】 tebento-staff@chusankan-f.org

<mailto:tebento-staff@chusankan-f.org>

 

【締切】12月11日(月)

 

【視聴用アドレス】

 

お申込み受付後、開催2日前までにご視聴用のZoomミーティングアドレスをメールにてお知らせします。