全国山村振興連盟メールマガジンNO243

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2023.10.6

全国山村振興連盟事務局

 

○2023年9月の農林水産行政

 

2023年9月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした。

 

1 農林水産大臣に宮下一郎先生が就任

9月13日 岸田文雄首相は内閣改造を行い、 農林水産大臣に宮下一郎衆議院議員( 長野5区 当選 6回 )が就任した。

宮下農相は 1958年生まれ。 1983年東大経済卒、 住友銀行入行、1991年退社。 宮下創平氏の秘書官として 防衛庁長官、環境庁長官、厚生大臣の秘書官を務め、2003年 衆議院議員初当選。 財務大臣政務官、財務副大臣、内閣府副大臣を務めた。 自民党では、中山間地農業を元気にする委員会委員長、 野菜・果樹・畑作物等対策委員会委員長、 農林部会長などを務めた。

(なお、宮下一郎先生は、当連盟の理事を務めていただいていましたが、大臣規範に基づき辞任されています。)

また農林水産副大臣には、鈴木憲和 衆議院議員( 当選4回、 山形2区、41歳、 自民党 )、武村展英 衆議院議員(当選 4回、 滋賀3区、51歳、自民党 )。農林水産政務官には、高橋光雄 参議院議員( 当選 1回、 兵庫、 46歳、 公明党)、舞立昇治 参議院議員( 当選 2回、 鳥取・島根、48歳、自民党)が就任した。

 

2 食料・農業・農村政策審議会が基本法の検証で答申

9月11日、食料・ 農業・農村政策審議会は基本法検証部会との合同会議を開き、基本法の見直し・検討に関する最終取りまとめを行い、 野村哲郎農相に答申を提出した。 基本法検証部会は2022年10月から2023年5月の8ヶ月間で合計16回開催し、5月29日に中間取りまとめを公表した。 その後、全国11ブロックでの地方意見交換会、Web サイト等を通じた国民からの意見募集を行い、中間取りまとめを修正して最終取りまとめとしたもの。

答申には4つの基本理念が掲げられており、①国民一人一人の食料安全保障の確立、②環境等に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換、③食料の安定供給を担う生産性の高い農業経営の育成・ 確保、④農村への移住・関係人口の増加、地域コミュニティの維持、 農業インフラ機能の確保、とされている。

具体的には、① 食料分野では、平時から 国民一人一人の食品安全保障の確立、 適正な価格形成の仕組みの構築、 フードバンクへの支援、 輸出について国内生産維持に不可欠との位置づけ、②農業分野では、多様な農業人材の取り組みを含む持続的な農業生産、 スマート農業の普及、 農地の集積・集約、③ 農村分野では、インフラ管理作業の省力化、 共同活動への農業者以外の参画、移住促進・関係人口の拡大、④環境分野では、持続可能な農業の主流化などが掲げられている。

これを受けて農林水産省では、 来年の通常国会に食料・農業・農村基本法の改正案及び関連法案を提出する方針としている。

(基本法検証部会資料)

基本法検証部会(令和5年9月11日)配布資料:農林水産省 (maff.go.jp)

(食料・農業・農村基本法)

http://www.maff.go.jp/j/basiclaw/index.html

3 処理水放出に伴う水産業支援総額1007億円に

9月4日、政府は中国による日本産水産物の全面禁輸を受けて、 輸出先転換や国内加工体制の強化を盛り込んだ水産業支援の政策パッケージを発表した。 予備費 207億円を財源に、特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業を創設し、 既に発表していた300億円と500億円の基金にプラスし、 総額1007億円となった。

このうち、①輸出先の転換には、約160億円。 輸出減が顕著なホタテなどの品目を重点支援特定品目とし、 一時買取・保管支援、 海外も含めた新規販路開拓の支援、 ビジネスマッチング・飲食店フェアによる海外市場開拓、 ブランディング支援を行う。また、② 国内加工体制の強化に約50億円。 既存の加工場のフル活用に向けた人材活用、 加工・流通機器の導入の支援を行う。

政策パッケージは全部で5本柱があり、 輸出先転換、 国内加工体制の強化のほか、③ 国内消費拡大・生産持続対策、④風評影響に対する内外での対応、 ⑤迅速かつ丁寧な賠償、が柱となっている。

9月28日、財務省が発表した8月の貿易統計の確報によると、日本から中国に輸出した加工品を除く魚介類の総額は、中国の全面禁輸を受けて、前年同月比75.5%減少し、21億8014万円となった。魚介類を含む食料品の中国向け輸出は、43.0%減の137億6200万円、中国向けの輸出総額は、11.0%減の1兆4348億200万円となった。

 

4 九州で豚 熱 ワクチンの接種を決定

9月5日、 農林水産省は九州7県を対象に飼養豚への豚熱ワクチンを接種することを決定した。 9月5日に開催された「農林水産省豚熱・アフリカ豚熱防疫対策本部」において、九州7県をワクチン接種が可能となる接種推奨地域として設定した。 豚熱が発生した佐賀県内の2農場はウイルス感染から長時間が経っており、野生イノシシが既に感染している可能性もあるとしている。

豚熱は国内では2018年9月に岐阜県の農場で再発生し、各地に拡大。 九州では 8月30日に佐賀県唐津市の農場で初めて確認され、 31日に唐津市の別の農場で発生した。 今回の決定により、北海道を除く全都府県が接種推奨地域となった。

 

5 企業の農地取得が全国で可能に。国籍の報告も義務づけ

9月1日、改正構造改革特別法が施行され、一般企業が農地を所有できる特例により全国の希望する自治体が特例を利用できるようになった。 地域の農地利用の構想「地域計画」に当該企業を位置付けることなどが要件とされている。

これまでは 国家戦略特区法で 兵庫県養父市に限り特例を認めていたが、 今後は全国の自治体が国に計画を申請し、認められれば利用できることとなる。

農地の不適正利用があった場合に自治体が農地を買い戻す契約を結ぶなど 国家戦略特区法で設けていた仕組みは維持する。 認定後に問題が生じた場合に対応できるよう農相が現場から報告を求める手続きも定められ、 農業委員会は毎年、企業から農地の利用状況の報告を受け農相に上げることとされた。

また9月1日、農林水産省令が改正され、農地を新たに所有する際に国籍の報告を義務付ける規定が施行された。 農業委員会に所有の許可を申請する書類において、個人は本人の国籍、法人は役員や主要株主らの国籍を記載することとされる。 国籍の情報は農地台帳に記録することとなるが、 プライバシー保護の観点から公表はしない。

 

6 その他

  • 不測時における食料安全保障に関する検討会を開催

9月4日、 農林水産省は 「不測時における食料安全保障に関する検討会」( 座長 渡辺研二 名古屋工業大学 教授) を開催し、 日本や諸外国の法制度における「不測の事態」の定義・判断基準となる要素などを説明するとともに、論点整理を示した。 同検討会は政府が6月に策定した「食料・ 農業・ 農村政策の新たな展開方向」 において、不測時の食料安全保障に関わる記述が盛り込まれたことを踏まえ、不測時の基本的な対処方針、法令で新たに措置すべき事項、 関係省庁の役割分担等を検討・整理するためのもの。8月に初会合を開催し、 月1回から2回程度のペースで計6回程度開催し、取りまとめを行う方針となっている。

不測の事態の検討方針としては、① 国民生活・国民経済への影響を重視すること、② 米・ 小麦 ・大豆( 食用・油糧用)、その他植物油脂原料、畜産物 (鶏卵など)、 砂糖を対象品目に施策のあり方を検討すること、③2割の供給源を目安に関連産業の規模・長期保存の可否などを踏まえて柔軟に判断すること、④生命維持が懸念される深刻な事態は供給熱量が1900kcal/人日を下回ることを目安とすること、⑤ 国民経済に及ぼす影響の早期予測を高度化する仕組みを検討することなどとしている。

 

  • 新規就農が過去最少

農林水産省の調査によると、2022年の新規就農者数は4万5840 人となり、 前年から12%減少した。 統計データのある2006年以来最小となった。 雇用が他産業に流れるなどしたためとしている。

新規自営農業就農者(親元就農者)は3万1400人で前年比15%減。 男女別では女性が8830人で10%の増となった一方、 男性は2万2570人で22%の減少。 49歳以下は全体の21%に当たる 6500人で10%の減となった。 新規雇用就農者は、1万570人で 9%の減少となった。

 

  • 農作物の作付面積が過去最低を更新

農林水産省がまとめた調査によると、 2022年の農作物の作付けの面積は 394万7000ha となり、前年比 1%減( 3万ha 減)で過去最低を更新した。耕地面積に占める割合も過去最低だった 2020年と並ぶ 91.3% (0.1ポイント減)となった。

作物別では米の需要減少で水稲の作付けが減った一方、 麦や大豆、飼料作物の増産が進んだ。子実用水稲の面積は 3%減( 4万8000ha 減)の135万5000haとなった。 麦類(子実用)は 3%増( 7600ha 増)の29万600ha、 大豆(乾燥子実)は 4%増 (5400mha増)の15万 1600haとなった。

田畑別の作付延べ面積は、田が 218万7000ha、畑が176万ha となり、 いずれも1%減 となった。

 

 

○長野県主催「地域コーディネーター育成講座」「森林の癒しガイド育成講座」について

「Forest Style ネットワーク」(事務局:林野庁森林利用課山村振興・緑化推進室)から、長野県主催「地域コーディネーター育成講座」「森林の癒しガイド育成講座」についてのご案内がありました。

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長野県では、森林サービス産業の中核を担う「地域コーディネーター」及び森林の健康利用効果を引き出す「森林の癒しガイド」の育成講座を開催します。

  • 地域コーディネーターの育成

長野県内の森林を活用した「森林サービス産業」をさらに推進するため、関係者との連携や地域の魅力の磨き上げ等の中核を担う地域コーディネーターを育成する講座を開催します。

(日程)前期:令和5年10月20日(金)、後期:令和5年10月24日(火)

(参加費)無料

(参加対象)

・長野県内で「森林サービス産業」に取り組まれている方

・これまでに長野県内で開催された森林セラピーガイド等の研修を受講されている方

・長野県内の自治体職員や地域おこし協力隊などで「森林サービス産業」に関心のある方

※長野県内で活動されている、又は、活動を考えている方のご参加をお受けします

■場所等の詳細は下記サイトをご覧ください。(長野県HP)

https://www.pref.nagano.lg.jp/ringyo/happyou/230926press.html

②森林の癒しガイドの育成

長野県内の森林の癒し効果を利用者に伝え、その効果をさらに引き出す「森林の癒しガイド」について、新たな人材の育成やスキルアップを図るための講座を開催します。

(日程)初級:令和5年11月2日(木)、中級:令和5年10月23日(月)

(参加費)無料

(参加対象)

・初級:長野県内の森林セラピー基地などでのガイド活動に関心のある長野県内在住の方、ガイド活動を始めてまだ経験の浅い方 など

・中級:長野県内で開催された森林セラピーガイドの研修などを受講された方、既にガイド活動をしている方で学び直しをしたい方 など

※長野県内で活動されている、又は、活動を考えている方のご参加をお受けします

■場所等の詳細は下記サイトをご覧ください。(長野県HP)

https://www.pref.nagano.lg.jp/ringyo/happyou/230927-2press.html

■問い合わせ先

株式会社さとゆめ(長野県委託事業者) 担当:安藤

E-mail / ando@satoyume.com  TEL / 03-5275-510