全国山村振興連盟メールマガジンNO235

全国山村振興連盟メールマガジンNO235

 

2023.8.4

全国山村振興連盟事務局

  • 2023年 7月の農林水産行政

 

2023年7月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした

 

1 国連食料システムサミットをローマで開催

7月24日から26日、国連とイタリア政府は、ローマで食料の生産・供給について議論する「国連食料システムサミット」を開催し、160か国以上から政府や民間の代表が出席した。サミットは、2021年9月に国連グテレス事務総長の呼びかけで始まった。2022年には世界の最大7億8300万人が栄養失調状態だったと推定されており、飢餓や貧困の撲滅のため各国に対して食料システムの変革に向けた行動を訴えている。

7月26日、グテレス事務総長は、食料システムの変革の加速化に向けた行動を呼びかける文書を発出した。新型コロナウィルスやウクライナ危機などが食料システムに打撃を与えているとしたうえで、イノベーションへの投資や官民連携の強化といった6分野に優先して取り組むよう促した。

会議に参加した勝俣農林水産副大臣は、7月25日の全体会合で、「みどりの食料システム戦略」を挙げつつ、環境負荷低減などに向けた日本の取り組みについて紹介した。

 

2 EUが福島産など日本食品の規制を撤廃

7月13日、欧州連合(EU)は日本産食品に対する輸入規制を撤廃すると発表した。EUは2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に、日本産食品向けの規制を導入していた。現在は福島県産の魚や野生のきのこ類など計10県でそれぞれ規制品目を定め、その他の都道府県の産品にも「規制地域以外で生産したことを示す証明書」を要求している。今回EUに加盟する27カ国は、こうした食品規制を8月目途に撤廃することを決めた。

ベルギーを訪問中だった岸田文雄首相が、7月13日、EUのミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と会談して方針を確認した。

これに続き、8月3日にノルウェー、アイスランド、8月15日にスイス、リヒテンシュタインも規制を撤廃する方針となった。

 

3 西村経産大臣が全漁連に処理水の安全性を説明、中国・香港は規制を強化

東京電力福島第一原発事故の多核種除去設備等処理水(ALPS処理水)について、政府はこの夏にも海洋放出する方針であるが、7月14日、西村康稔経済産業大臣は、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の事務所を訪問し、①6月26日に放出に必要な設備工事が完了したこと、②原子力規制委員会が 7月7日に関連設備の使用前検査に合格したことを示す終了証を東京電力に交付したこと、③ 国際原子力機関(IAEA)が処理水の安全性について「国際的な安全基準に合致している」と結論付けた包括報告書を公表したことを説明し、理解を求めた。全漁連の坂本正信会長は、「海洋放出反対の立場は変わっていない」との立場を改めて表明した。

一方、中国は日本からの輸入水産物への放射性物質検査を全量検査に切り替えた。これは多核種除去設備等処理水(ALPS処理水)をこの夏にも海洋放出する方針を日本政府が打ち出していることを踏まえたものとみられ、既に通関に遅れが生じている。また、香港政府は海洋放出後には日本産食品の輸入禁止措置を講ずることを公表している。

 

4 TPPに英国の加盟を承認

7月16日、環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟11か国は、ニュージーランド・オークランドで開いた閣僚会合で、英国の加入を正式に承認した。参加各国の国内手続きを経て1年以内の発効を目指す。日本からは、TPP担当の後藤茂之 経済財政再生相が出席した。英国が参加すれば2018年12月のTPP協定発行後で初の新規参加国となる。TPPの経済圏は、アジア・太平洋から欧州に拡大することとなる。

TPPは高い割合での関税撤廃、投資や電子商取引などでの自由度の高いルールを特徴とし、99%の品目で関税を段階的に廃止する。また工業製品では99.9%の品目で関税がなくなる。またデータ流通の透明性確保、強制労働の禁止規定、国有企業の優遇策の縮小・撤廃などを盛り込んでいる。

英国の参加によってTPP加盟国の国内総生産(GDP)の合計は、11.7兆ドルから14.8兆ドルに増加。世界全体のGDPに占める割合は、12%から15%に拡大する。貿易総額は6.6兆ドルから7.8兆ドルに増加し、総人口は 5億1000万人から5億8000万人ほどになる。

農林水産省は、英国からの輸入では現行のTPP以上の譲歩を回避したとして、 国内農林水産物への影響はないとしている。他方、英国への輸出では、新たに短粒種・中粒種の精米の関税撤廃を獲得。またパックご飯や米粉玄米でも撤廃を獲得した。

 

5 令和5年梅雨前線による大雨被害が発生

7月上旬から下旬にかけて、本州付近に停滞した梅雨前線が、暖かい湿った空気の流入で活発化して線状降水帯を生じ、九州、中国、北陸を中心に大雨をもたらした。7月10日に特別警報が出た福岡・大分両県では、野菜畑・果樹園に土砂が流入した。8月1日時点の農林水産業の被害額は、30道府県で667億円に及んだ。

農林水産省は、7月14日被災地の状況を確認するため、勝俣農林水産副大臣を福岡県久留米市に派遣し、現地調査を実施した。また農林水産省では、農林水産省サポートアドバイスチーム(MAFF-SAT)として、7月15日から秋田県等へ延べ22人の職員を派遣した。また九州北部地域等で大雨となった7月10日以降延べ123人の職員を被災地 11県(福岡県・大分県・佐賀県・山口県・秋田県 ほか)に派遣するなど支援を行った。

 

6 鳥インフルエンザの報告書と対策の提言を取りまとめ

7月25日、農水省の高病原性鳥インフルエンザ疫学調査チームは、「2022年から23年のシーズンに同病の発生が過去最大となった」などとする報告書と対策の提言をまとめた。

2022から23年シーズンの発生の特徴は、①農場での発生が過去最も早い10月28日だったこと、②3年連続の発生は初であったこと、③進入経路としては 渡り鳥から野鳥に広がり、農場への侵入リスクになっていること、④農場間の伝播の可能性もあることなどであった。

対策の提言としては、①9月中に防疫体制を整え発生の早期化に対応すべきであること、②11月から1月を重点対策機関とすること、③衛生対策は十分という農場でも不十分な事例が多いため、従業員などの対策を徹底すること、④フィルター設置など入気口対策、こぼれ餌の片付けなど野鳥対策を行うこと、⑤農場周辺の水域の水抜き、死亡野鳥の回収を行うことなどとなっている。

今期の発生 農場では、18種類のウイルスが確認された。平均死亡日数は 2日が多かったものの、6日かかるウイルスもあった。日数が長い場合、感染に気づかないまま 蔓延する可能性もある。

鳥インフルエンザは昨年10月から今年4月までに26度県で84事例発生し、 1771万羽が殺処分となった。殺処分の死骸は埋却か焼却で処理し、埋却だけで処理したのは 56 事例で7割を占めた。

 

7 その他

(1)世界農業遺産に2地区が認定

7月6日 国連の食料・農業・機関(FAO)は、世界農業遺産として①埼玉県武蔵野地域の落ち葉堆肥農法と②兵庫県美作地域の伝統的輪島牛飼育システムの2地区を新たに認定したと発表した。これにより日本国内の認定数は、14件15地域となった。

埼玉県武蔵野地域(川越市・所沢市・ふじみ野市・三芳町の地)では、痩せた土地で堆肥もない中で、落ち葉を拾って堆肥にして肥沃な畑地に変えて行った。この結果、現在は多種多様な農産物が作られている。落ち葉を中心とした堆肥づくりを100年以上行ってきたという土づくりが評価された。

兵庫県美作地域は、神戸牛の元祖とも言うべき但馬牛の履歴などについて「牛籍簿」を作ってきた。牛籍簿は、人で言えば 戸籍にあたり、100年も前から作成され続け、どの血統の牛かということが一目瞭然で分かることが評価されたという。

 

(2)JA 全中の次期会長に山野徹氏が内定

JA全中(全国農業協同組合中央会)は、7月 4日に開いた役員推薦会議で、新任投票の結果を受けて、次期会長に JA 鹿児島中央会会長の山野徹氏を推薦することを決定した。会長選挙は現在の中家徹氏の任期満了に伴うもので、山野氏は初めての立候補であったが他に立候補者はいなかった。

全中は7月内に副会長ら役員候補者を内定し、総会提出議案を決定。8月18日の通常総会で新体制が正式に発足する。九州からの会長の選出は、初めてとなる。

 

(3) 食料・農業・農村基本法の地方意見交換会を開催

7月14日から食料・農業・農村基本法検証部会の地方意見交換会が開始された。まず九州地区(第Ⅰ回は熊本市)から開始し、基本法検証部会のメンバーも最低3人ずつ各ブロックに入り、農林水産省の幹部も入って現地での意見交換を行っている。全国で11か所開催することとなっており、意見交換会での意見がまとまり次第、整理をしながら、基本法検証部会として最終的な答申を取りまとめることとしている。

 

(4)食品 2.9万 品目で値上げ

7月30日、帝国データバンクは、2023年に値上げしたか又は値上げする予定の食品が10月までに2万9106品目に達しており、22年の2万5768品目を超える見通しとなったと発表した。5月末時点の調査では、23年の値上げ品目数は2万5106の見通しだった。品目数は11月以降も増加する見込みで、23年の値上げ品目数は最終的に 3万5000品目前後に達すると想定されている。

原材料価格の上昇分を価格転嫁する動きが拡大しており、家計の負担感が一段と強まっている。

 

○「長野県木曽町」からのモニターツアー参加者募集

「Forest Style ネットワーク」事務局(林野庁森林利用課 山村振興・緑化推進室)から、森林サービス産業推進地域※である「長野県木曽町」からのモニターツアー参加者募集について案内がありました。

 

※森林サービス産業推進地域:https://www.rinya.maff.go.jp/j/sanson/kassei/sangyou.html

+++(以下、推進地域からのご案内)++++++++++++

――――――――――――――――――――――――――――――――

\長野県木曽町/

森林や郷土食すんきなどの地域資源を活かしたbeauty&wellness program

美と健康の発酵ツアー モニター参加者募集

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

木曽町では、令和4年度に林野庁事業により企業の健康経営のニーズに沿ったモデルツアーを実施するなど、

開田高原や木曽馬といった地域資源を活かしたウェルネスプログラムの開発・提供を行っています。

今年度は既存コンテンツを更にアップグレードさせ、普段は公開していない「ドイツトウヒの森」での森林ウォークや、

更に木曽町の郷土食である発酵食すんきを活かした食事や講座を新たに提供する「美と健康の発酵ツアー」の開発実証を、観光庁事業を活用して行います。

この度、本ツアーのモニター参加者を募集します。

木曽町・開田高原で心も体も美しく、健康になる1泊2日のプログラムへのご参加、お待ちしています。

下記のURLより募集案内をご覧いただき、ご参加をご希望の皆様は、是非お申し込みいただければ幸いです。

 

-美と健康の発酵ツアー

「日本で最も美しい村」に認定されている長野県木曽町。標高千メートルを超える大自然や木曽馬との触れ合い、郷土食の発酵食品を通して内面から美を磨く、特別な二日間。

  • 日程: 2023/9/3(土) – 4(日)
    ● 会場: 木曽おんたけ健康ラボ 他
    ● 費用: 5,000 円
    ● 最小催行人数: 3名 ※ 定員8名
    ● 締め切り: 8月20日(日)17時まで ※ 応募多数の場合抽選となります。
  • 詳細・申込み: 【URL】 https://ontakelabo.jp/

※グループでの参加をご希望の場合、お一人ずつ参加申込みいただいた上で、同行者欄に同行者のお名前をご記入ください。