全国山村振興連盟メールマガジンNO206

全国山村振興連盟メールマガジンNO206

 

2023.1.6

全国山村振興連盟事務局

 

皆様、新年明けましておめでとうございます。

平成6年度からの森林環境税の本格導入、また平成7年度末の山村振興法の法律期限を控え、本年は重要な年になると考えられますので、従来以上に会員の皆様への情報提供、皆様との意見交換に努め、皆様のご意見を施策に反映すべく尽力したいと考えておりますので、本年もどうぞよろしくお願いします。

皆様のご健康と山村地域の発展を祈念しております。

 

  • 2022年12月の農林水産行政の動向

 

2022年12月の農林水産行政の主な動向は、以下のとおりでした。

 

1 令和5年度農林水産予算2兆2683億円決定、補正予算と合わせ3兆円超

政府は12月23日、歳出総額114兆3800億円となる令和5年度の予算案を閣議決定した。このうち農林水産予算は2兆2683億円と前年度より微減(94億円の減)となった。一方、先に成立した補正予算は8206億円となり、令和5年度予算と合わせると、3兆円を超える。

概算決定額のうち、公共事業費は6983億円と対前年度比微増、非公共事業費は1兆5700億円と微減となった。公共事業費のうち農業農村整備は 3323億円で0.1%増、林野公共は1875億円で 0.4%の増となった。

令和5年度当初予算・令和4年度補正予算の主な項目は、次のとおりである。

・畑作物の本作化対策172億円(前年度141億円)、補正予算1144億円の内数

・肥料の国産化・安定供給確保対策 1億円、補正予算270億円

・飼料の生産・利用拡大、安定供給確保対策 22億円(前年度23億円)、補正予算120億円

・生産資材の使用低減対策 56億円(50億円)、補正予算40億円

・持続的生産強化対策事業 160億円(前年度174億円)

・水田活用の直接支払交付金3050億円(前年度 3050億円)補正予算250億円

・国産小麦・大豆供給力強化総合対策 1億円、補正予算 64億円

・マーケットインによる海外での販売力の強化 23億円(前年度24億円)、補正予算 76億円

・みどりの食料システム戦略の実現に向けた政策の推進 76億円 (前年度85億円)

・スマート農業技術の開発・実証・実装(補正予算) 61億円

・地域計画の策定の推進 8億円(新規)

・新規就農者の育成・確保に向けた総合的な支援 192億円(前年度207億円)                    補正予算26億円

・農山漁村振興交付金 91億円 (前年度98億円)、補正予算14億円

・中山間地農業ルネッサンス事業 407億円(前年度407億円)

・森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策等103億円 (前年度116億円)、

・国産森林資源活用・木材産業国際競争力強化対策(補正予算) 499億円の内数

・漁業経営安定対策の着実な実施220億円(前年度220億円)、補正予算710億円

 

なお、農林水産関係予算の詳細につきましては、以下のリンク先をご覧ください。

令和5年度農林水産予算概算決定の概要:農林水産省 (maff.go.jp)

 

2 食料安全保障強化に向けた政策大綱を決定

12月27日、 政府は 食料安定供給・農林水産業基盤強化本部(本部長:岸田文雄首相)を開催し、食料安全保障強化に向けた政策大綱を決定した。大綱の主な点は、

  • 輸入依存の脱却に向けた構造転換策として、肥料・下水汚泥の利用肥料利用の拡大、肥料原料の備蓄、耕畜連携、水田の畑地

化、米粉の利用拡大

② 生産資材高騰の影響緩和策として、肥料・配合飼料燃料高騰対策、適正な価格形成、

  • 関連予算の確保について、毎年の予算編成の過程で責任を持って確保すること、
  • 食料・農業・農村基本法について、改正案を2023年年度中の国会提出を目指すこと、基本法の検証結果を踏まえ大綱の施策を見直すこと、

を掲げている。

堆肥や下水汚泥肥料の利用については、新たな数値目標(KPI)として 2030年までに 倍増し、肥料使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を21年の25%から40%に増やすこととしている。

また、同本部で岸田首相から、「来年6月をめどに食料・農業・農村政策の新たな展開方向を取りまとめて欲しい」との指示があった。

 

3 鳥インフルエンザ関係閣僚会議を開催

12月22日、政府は首相官邸で鳥インフルエンザ 関係閣僚会議を開催した。鳥インフルエンザは、今季は過去最も早い10月に農場で発生し、12月22日までに 22道県で47事例が確認された。殺処分の対象となる 鶏などの数は、合計714万羽となった。鶏舎周辺の敷地など農場の緊急消毒を全国的に実施することとし、緊急消毒は発生県から順次行うこととなる。農林水産省は都道府県に対して、消毒を求める通知を発出した。(なお、年内に51事例が発生)

 

4 デジタル田園都市国家構想実現に向けた目標を策定

12月16日、政府はデジタル田園都市国家構想実現会議(議長:岸田文雄首相)を開催し、2027年度までの数値目標(KPI)を示した。

具体的には、

  • スマート農業や情報通信技術(ICT)を活用した活性化に取り組む「デジ活中山間地域」を150地域創出すること、

(これはスマート農業や ICT を活用した生活支援などに取り組む地域であり、国の補助事業を活用した取組み地域を登録し、関係省庁が連携して支援する。)

  • 東京圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)から地方への移住者数を年間1万人にすること、
  • 都市部の企業が活用できるサテライトオフィスを1200の県市町村で整備すること、

(22年8月の654から 27年度に1200に増加させる。)

  • 1200の県・市町村で関係人口を拡大すること、

(関係人口の拡大に取り組む県市町村の数を、20年度の893から27年度に1200にする。)

を掲げた。

 

5 農林水産物食品輸出促進団体に農産品3団体を認定

12月5日、政府は 一般社団法人 全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会、 一般社団法人全国花き輸出拡大協議会、 一般社団法人日本青果物輸出促進協議会の農産品3団体を輸出促進法に基づく品目団体に認定した。また同時に日本酒造組合中央会も品目団体として認定した。

10月にはすでに菓子・木材・真珠の3団体が認定を受けており、農産品での認定は今回が初となった。

12月5日開催した「農林水産物・食品の輸出拡大に向けた関係閣僚会議」において報告した。

品目団体は輸出先の市場調査や商談会への参加、広報宣伝、物流効率化の実証、産地間の出荷調整、規格策定に取り組むこととなる。

また、12月5日発表した2022年1月から10月の農林水産物食品の輸出額は、前年同期比15%増の1兆1218億円となった。10月単月では前年比19%増の1251億円となった。農産物では、牛乳・乳製品、米、ブドウ、イチゴなどが順調に増加している。

 

6その他

  • 畜産・酪農対策で交付金単価などを引き上げ

12月13日、政府・与党は2023年度の畜産・酪農対策を決定し、焦点だった加工原料乳生産者補給金は1 kg 当たり43銭上げの8円69銭となった。指定生乳生産者団体に支払われている集送乳調整金との合計で、 1 kg 当たり 49銭 上げの11円34銭となる。 配合飼料価格の高騰などを受けての引き上げとなった。 一方、交付対象数量は15万トン減らし330万 トンとした。 乳製品在庫の積み上がりなど需給関係を踏まえたものである。

 

  • 飼料用米助成について一般品種への助成を段階的に引き下げ

12月7日、水田活用の直接支払交付金の飼料用米助成について、政府・与党は、一般品種への助成を段階的に引き下げる方針を決定した。2024年産から10 a当たり8万円の標準単価を1年ごとに5000円ずつ減らし、26年産は10a当たり6万5000円とする。上限単価も10万5000円から1万円ずつ減らし、26年産に7万5000円とする。

2023年産は 従来通りであり、 10a当たり8万円を基準に収量に応じて5万5000円から10万5000円とすることとなった。 急激な制度変更が懸念されるという生産現場からの意見を踏まえて再来年産から3年かけて徐々に助成額を減らすこととしたものである。

 

  • 2021年の 農業総産出額1%の減少

12月27日、農林水産省は2021年の農業総産出額を発表し、前年比986億円(1.1%)減の8兆8384億円だったとした。 畜産は3兆4048億円で 前年を1676億円(5.2%)上回り過去最高だったのに対し、米は16.6%減と落ち込み、1兆3699億円となった。野菜は2兆1467億円で 4.7%減、 果実は9159億円で4.8%増、花きは3306億円で7.3%増、茶は495億円で21%増となった。

生産農業所得は3兆3479億円で0.1%増となった。

 

  • 養老市の企業農地特例を構造改革特区へ移行

12月22日、政府は国家戦略特区諮問会議を開催し、兵庫県養父市に限って認めている企業による農地取得の特例を全国展開することはせず、自治体が提案し国が認定する構造改革特区に基づく制度に移行することを決めた。 構造改革 特区は自治体が計画を申請するものであり、養老市以外でも活用が可能となる。

特例が活用できる場合は農業の担い手が著しく不足していること、遊休農地が著しく増えるおそれがあることといった地域に限ることとしており、自治体が農地を買い取って企業に転売し、問題が生じた場合には自治体が買い戻す 制度を維持することとなった。

 

  • 肥料原料を3ヶ月分備蓄

12月20日、政府は経済安全保障推進法に基づく特定重要物資に肥料原料など11分野を指定した。 肥料原料では年間需要料の3ヶ月分相当の民間備蓄を今後5年以内にできるだけ早期に整える方針としている。

11分野は肥料原料のほかに半導体・重要鉱物・天然ガスなどが指定された。 今後備蓄や設備投資などの取り組みを順次開始し、所管省庁が目標や企業への支援内容などを盛り込んだ安定供給確保取り組み方針を取りまとめる。

農林水産省は、肥料に関する取組方針を取りまとめ、中国に大きく依存するリン安とロシア・ベラルーシからの輸入が停滞する塩化カリを備蓄対象とした。 備蓄は肥料メーカーや販売業者など民間が担い、 農林水産省は基金を創設し 輸送費や保管施設の整備費などに助成を行うこととしている。

 

  • 水産流通適正化法が施行

12月1日、 水産流通適正化法(特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律)が施行され、対象水産物への適用が始まった。 違法に漁獲された水産物の流通を排除するのが目的で、国産水産物では密猟の多いアワビ・ナマコ・シラスウナギ、輸入水産物ではイカ・サンマ・サバ・マイワシを指定した。

施行日後に採捕された水産物を対象に、漁獲や取引を行う業者の届出、記録の保存、証明書添付などの義務が課される。

 

  • カツオの漁獲制御で合意

12月3日、ベトナム・ダナンで開催されていた 中西部太平洋まぐろ類委員会 (WCPFC) 第19回年次会合が終了し、 カツオの資源量減少に歯止めをかけるための漁獲制御ルールに合意した。 漁業がなかったときに期待される親漁量に対し、40%を下回ると漁獲努力量を削減することができることとなった。 漁業種類ごとに基準値が設定され、まき網漁業は2012年の漁獲努力量、一本釣りは2001年から2004年の平均漁獲努力量、インドネシア及びフィリピン周辺海域の漁業は2016年から2018年の平均漁獲量が基準となることとなった。 現状(2021)年の親魚資源量は54%であり、来年も従来通りの操業が可能となる。

また北太平洋メカジキ・北太平洋ビンナガについても、一定の管理方式が合意された。