全国山村振興連盟メールマガジンNO190

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2022.9.1

全国山村振興連盟事務局

 

  • 2022年8月の 農林水産行政

 

2022年8月の農林水産行政の主な動向は、以下の通りでした

 

1 農相に野村哲郎氏が就任

8月10日、岸田文雄首相による内閣改造が行われ、農林水産大臣に自民党参議院議員の野村哲郎氏(78歳)が就任した。初入閣となった。野村氏は参議院鹿児島選挙区で当選4回、茂木派。JA 鹿児島県中央会出身で2004年の参議院選挙に出馬し初当選した。その後、農林水産政務官、参議院農林水産委員長、決算委員長を歴任した。自民党農政の幹部会合(農林インナー)の一角を占め、農林部会長を3期連続務めた。

また農林水産副大臣には勝俣孝明氏(衆議院静岡6区、46歳、当選4回、二階派)、野中厚氏(衆議院比例北関東、45歳、当選4回、茂木派)の2人が就任、 農林水産政務官には角田秀穂氏(公明党)、藤木真也氏(自民党・岸田派)の2人が就任した。

 

2 令和5年度農林水産予算概算要求は 2兆6808億円で、前年度対比17.7%増

8月31日、農林水産省は令和5年度農林水産予算概算要求を財務省に提出した。総額は2兆6808億円で、前年度予算対比17.7%の増となった。

議論となっていた食料安全保障の強化に向けた予算については、概算要求時には具体的な額を示さない「事項要求」とし、今後予算編成過程で第2次補正予算での確保も視野に置きながら検討することとなった。

前年度よりも大幅に増額した主な予算としては、

  • 持続的生産強化対策事業 201億円(前年度174億円)
  • 水田活用の直接支払交付金3460億円(前年度3050億円)
  • 収入保険制度の実施334億円(前年度184億円)
  • 海外での販売力の強化42億円(前年度31億円)
  • みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業80億円(前年度35億円)
  • ムーンショット型農林水産研究開発事業 22億円(前年度2億円)
  • みどりの食料システム構築へ地域の活動支援 30億円の内数(前年度8億円の内数)
  • スマート農業の推進39億円(前年度14億円)
  • 地域計画の策定推進 24億円(新規)
  • 農地利用効率化等支援交付金 25億円(前年度21億円)
  • 農地中間管理機構による農地集約化の推進 104億円(前年度51億円)
  • 新規就農者の育成・確保に向けた総合支援 224億円(前年度207億円)
  • 農業農村整備事業 3933億円(前年度3322億円)
  • 農山漁村振興交付金(中山間地域でデジタル技術導入、粗放的な土地利用、農村型地域運営組織形成など)138億円(前年度98億円)

などとなっている

 

3 2021年度の食料自給率が38%に上昇

8月5日、農林水産省は2021年度の食料自給率がカロリーベースで38%だったと公表した。37%で過去最低だった前年度から1ポイント上昇した。カロリーベースの自給率の上昇要因としては、小麦と大豆の増産が挙げられる。小麦は面積が前年比4%増で、10アール当たりの収量は 同12%増の499kgとなり過去最高だった。大豆の面積は3%増、10アール当たり収量は10%増えた。米はほぼ自給しているが、コロナ禍に伴い外食需要が低迷していたのが回復したことに加え、 20年度の需要の落ち込みに対する反動もあって、自給率向上に貢献した。

「生産額ベースの自給率」は前年度を4ポイント下回り、過去最低の63%となった。国産の米や野菜の値下がりに加えて、飼料や肉類などの輸入額が国際価格や海上運賃の上昇などにより増加したことが原因とされる。

飼料自給率を反映しない「食料国産率」については、カロリーベースで1ポイント増の47%だった。これは小麦や大豆の作付増加などが寄与した。生産額ベースでは2ポイント減の69%となった。

また「国内生産だけで供給できる食料熱量」を示す食料自給率指標の2021年度の数値は、①米・小麦中心に作付けした場合は1人1日当たり1755キロカロリー で前年から変動がない。②芋類を中心に作付けた場合は72キロカロリー減少し2418キロカロリーとなった。体重を保つのに必要な熱量は2169キロカロリーとされる。農林水産省は、生産資材が十分に確保されている前提で試算しており、肥料の調達不安定化などのリスクに対応していないとしている。

 

4 上半期の輸出実績額最高額へ

農林水産省は8月5日、2022年上半期の農林水産物・食品の輸出実績を発表した。輸出額は6525億円で前年同期から13.1%、金額で754億円の増加となり、上半期の実績としては過去最高額となった。

輸出額が増加した背景としては、欧米を中心に外食需要が回復したことや小売店向けやイーコマース等の新たな販売が堅調だったこと等の要因とともに、輸出に関する関係者の努力の成果であるとしている。

政府は、2025年に2兆円、2030年に5兆円とする目標を掲げており、官民一体となった取り組みをさらに進めることしている。

 

5 APEC食料安全保障担当閣僚会合を開催、共同声明に合意できず

8月26日、日本や米国・中国など21カ国・地域が加盟する「アジア太平洋経済協力会議」(APEC)は、食料安全保障担当閣僚会合を開催した。タイを議長国とし、オンライン形式での開催となった。日本からは野村哲郎農相が参加し、就任後初の国際会議への出席となった。

農相からは生産基盤強化の重要性を訴え、「各国・各地域の資源を活かし、農業の生産基盤をさらに強化することが重要だ」と主張した。

会合にはロシアも参加していること等により意見がまとまらず、共同声明に合意することはできなかった。

昨年8月に開催された前回会合では、域内の食料安全保障の確立を目指す共同声明と2030年までの行動計画を採択したところであり、今回の会合では 2030年までの行動計画についての工程表に合意した。

 

6 アフリカ開発会議で、食料生産強化に3億ドルの支援を表明

日本政府が主導する「第8回アフリカ開発会議」(TICAD8)は、8月27日・28日チュニジアの首都チュニスで開催され、日本からは岸田文雄首相がオンラインで出席、現地には林芳正外相が訪問した。アフリカからは48カ国が参加した。

会議では2日間の議論の成果をまとめた「チュニス宣言」が採択された。

ロシアのウクライナ侵攻などを踏まえ、アフリカの食料安全保障の強化に貢献することとし、①輸入に替わる農業生産の増加を支援すること、②農産物の付加価値向上に向けて輸送インフラやコールドチェーン(低温流通)の整備に投資すること、③穀物や農産物・肥料の世界市場への輸出を再開すべきことなどを盛り込んだ。

また日本からアフリカ諸国への農業支援としては、①今後3年間で計20万人の農業分野の人材を育成するとともに、②食料生産強化に3億ドルを支援する方針を表明した。