全国山村振興連盟メールマガジンNO115

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2021.3.5

全国山村振興連盟事務局

 

 

  • 2021年2月の農林水産行政の動向

 

2021年2月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。

 

1 食品・農産物輸出 2020年は9200億円で過去最高

食品・農林水産物の輸出は、2019年の9121億円に対し、 2020年は新型コロナウイルスの世界的拡大があった中で9223億円と、1.1%の拡大を達成し、過去最高となった。年の前半は 1月から6月までで対前年8.2%減と減少していたものの、年後半に中国・東南アジアへの輸出が回復し、7月から12月は10.1%増となった。また12月は対前年同期比13.7%増の1800億円、21年1月は 40%増の758億円と、増加が続いている。

2020年の輸出の内訳としては、加工食品を含む農産物が 6565億円、林産物が381億円、水産物が2277億円となった。新型コロナウイルスの蔓延はあったものの、需要が外食から家庭にシフトし、家庭向け輸出が好調であった。特に鶏卵・米が増加し、また上半期低迷した牛肉・日本酒が小売や E コマース向けで回復。カツオ・マグロ・ウイスキー・乳製品も増加した。

国別には、中国・ベトナム・台湾が増加した一方で、韓国・米国・シンガポール向けの輸出が減少した。

2 鳥インフルエンザで千葉に現地対策本部を設置

2月4日から15日にかけて千葉県下(匝瑳市、旭市、多古町)の7農場で鳥インフルエンザが連続して発生する中、2月8日 野上農相と森田千葉県知事が会談。同日付けで千葉県下に農林水産省鳥インフルエンザ現地対策本部を設置した。千葉県からは、マンパワーに関し要望があったため、獣医師を含め職員を動員し、8日間で290名の職員が 現地に派遣された。また、2月10日 現地対策本部は県庁で、防衛省・千葉県の担当者と意見交換を行った。

飼養衛生管理基準の遵守状況について一斉自主点検を行ったところ、100羽以上の飼養している農場での遵守率は97%と上昇し、手指消毒などは99%となっていた。

今シーズンは、北海道から鹿児島にかけて14道県で51事例が発生しており、今後5月の連休まで発生する可能性があるとして、農林水産省は飼養衛生管理の徹底を呼びかけている。

 

3 新型コロナウイルスで影響を受けた者に対し支援を実施

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出自粛や時間短縮によって特に影響を受けたのは、メロン、大葉・わさびなどのつまもの、すだち・かぼすなどであり、需要が減少し価格が低下している。一方、主要な野菜や果実については、巣ごもり消費や寒波による生育の遅れの影響で、需要は平年並みである。

花きについては、結婚式やイベントの中止で需要が減退し、特に輪ギクなどの減少が目立っている。水産物ではクロマグロ・キンメダイなど高級魚介類の需要が減少する一方で、マイワシ・マダラなど大衆魚については堅調である。

また、外国人技能実習生の来日が後ろ倒しになることから、農業の労働力不足が懸念されており、在留の延長や他産業からの雇用が必要となっている。

こうした状況を受けて、需要や価格に影響を受けた生産者・卸小売・飲食店などに対し、①学校給食・こども食堂への食材提供、②インターネット・デリバリー販売、③地域の創意工夫による新たな販売促進などにつき、農林水産省が支援を行っている。また、在庫が滞留している米・乳製品・牛肉・水産物などの生産・加工・流通に対し、保管経費・在庫の軽減措置を行っている。更に、一時的に大幅な減収が生じた生産者に対しては、経営安定対策・資金繰り資金の融通を行っている。

なお、輸出基盤の強化に取り組む生産・流通関係者に対しては、海外とのオンライン商談、輸入原料から国産品への切り替え、経営体質の強化などの支援を行っている。

Go to eatキャンペーンについては、5月中旬が食事券発行の期限とされ、また6月末が食事券の利用期限であるが、これらを延長するか否かについては「現時点では予断できない」としている。

 

4 東日本大震災から10年。福島県沖で地震が発生

東日本大震災の発生から10年が経過するが、1月下旬、日本からの食料品の輸入規制を行っていたイスラエルが規制を撤廃した。震災当時54カ国・地域 が行っていた輸入規制は、39カ国・地域で撤廃され、まだ解除されてない地域は15カ国・地域となっている。

被災地に対しては、除染後の農地保全・管理、作付実証、機械施設の導入に対し支援している。また、昨年改訂された福島特措法に基づき被災12市町村に知事が代理で計画を策定することができることとされており、農地集積を促進する特例措置が4月に施行されることとなっているほか、農地バンク、現地コーディネーターに対し、新規の予算を計上している。更に、被災地に食品メーカーを呼び込んだ場合、広域施設整備に対し支援をする予算なども措置することとなっている。

一方、2月13日土曜日、福島県沖で震度6強の地震が発生し、2月18日時点での発表では、農林水産関係では防災重点ため池22か所(宮城7か所、福島15か所)で法面崩壊など被害を確認した。また水産関係では、相馬市漁港の道路沿いの崖が崩落したほか、16の岸壁で沈下・亀裂が確認されている。このほか、林野関係の林道の亀裂、農業水利施設の舗装部分の沈下などが発生しており、被害状況を調査中である。

 

5 鶏卵行政の公正性を検証する第三者委員会を開催、農林事務次官らは懲戒処分

2月3日、有識者による「鶏卵行政の公正性を検証する第三者委員会」が初会合を開催し、検討が開始された。これは収賄罪で在宅勤務された吉川元農相の在任中の政策決定過程に問題がなかったかどうかを検証するもので、①アニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理の国際基準)、②日本政策金融公庫の養鶏業者への融資方針の決定過程等について問題がなかったかどうかを検討するものである。審議は非公開で行われ、弁護士の井上宏氏が座長に選出された。会議の後、井上座長は、「国民の視点を大事にする」とコメントしている。

また農林水産省は、2月25日、吉川元農相、鶏卵大手アキタフーズ元代表との会食に同席し、国家公務員倫理規定に違反したとして、幹部6人に対し懲戒処分を行った。内訳は、枝元真徹事務次官・水田正和生産局長・伏見啓二大臣官房審議官に対し減給1か月10分の1、渡辺毅畜産部長・望月健司農地政策課長に対し戒告、犬飼史郎畜産振興課長に対し訓告となっている。

 

6 その他

 

(1)コロナ禍の影響で収入保険の加入が5割アップ

農業収入が基準収入の9割を下回った場合に一定額を補填する収入保険制度については、災害だけでなくコロナ禍による収入減少にも対応することができるため、加入申請が増加してきている。

昨年12月末時点で5万5335経営体が申請を行っており、加入者は青色申経営体35万3000 の15.7% に及ぶとみられる。内訳は個人5万2187、法人3148である。2019年に2万2812経営体だったものが20年には3万6142経営体となり、更に21年には加入が5割増加する見通しとなった。農林水産省は 23年に10万経営体とする目標を掲げており、更に推進したいとしている。

収入保険の支払い実績を見ると、令和元年6793件 9.8パーセントで161億5800万円の支払いとなっている。このうち、新型コロナ関係では39件 4.4億円 となっている。

 

(2)     NPFC年次会合でサンマの漁獲枠縮減を合意

2月23日から25日、テレビ会議方式により日本・中国・ロシアなど近隣8か国がサンマなどの資源管理について話し合う北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次会合が開催され、サンマの総漁獲枠33万3750トン、公海での漁獲枠19万8000トン(ともに従来の40%減)とすることで合意された。日本のサンマの漁獲量は昨年 2万9566トンと過去最低となっており、資源管理の強化が望まれていた。

2019年の会合で初めてサンマの総漁獲枠55万6250トン、公海での漁獲枠33万トンを導入したところであるが、最新の資源評価を踏まえてさらなる強化について農林水産省から提案を行った。

 

(3)     TPP への参加を英国政府が申請

2月1日、英国は TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加を申請した。 TPP 11カ国のほかで申請があったのは初めてであり、他の参加国全体が了承すれば、春頃から本格的な交渉に入ることとなる。英国が加盟した場合、世界のGDPに占めるTPP 加盟国の割合は、13%から 16%に高まることが見込まれる。