全国山村振興連盟メールマガジンNO99
2020.11.6
全国山村振興連盟事務局
1 自民党農林合同会議で特例税制の延長を要望
11月5日(木)、 自民党農林・食料戦略調査会、農林部会、農林水産関係団体委員会、農政推進協議会の合同会議において税制改正に関する団体要望の聴取が行われ、山村振興連盟からは常務理事・事務局長が出席して、来年3月末が期限となっている山村特例税制の延長を要望しました。
宮下一郎農林部会長(当連盟理事)の司会進行の下で、塩谷立農林・食料戦略調査会長、小野寺五典組織運動本部長、谷公一団体総局長(当連盟理事)、加藤寛治農林水産関係団体委員長の挨拶があり、その後、農林・食品関係団体から税制改正についての要望を行いました。
当連盟の税制要望事項は、以下のとおりです。なお、本要望は、公明党にも提出しています。
「振興山村における地域資源を活用する製造業及び農林水産物等販売業に供する機械・施設の取得に係る割増償却制度等について、適用期限を延長すること。」
2 山村特例税制に関し、産業振興施策促進事項の作成をお願いします(10月30日)
現在、1の山村特例税制の延長を巡っては農林水産省と財務省税制当局との間で折衝が行われていますが、税制を活用した市町村が少ないこと、特に山村振興計画の山村振興施策促進事項を策定した市町村が少ないことが問題として指摘されています。
山村振興計画及び山村振興施策促進事項の策定については、かねてから連盟としてもお願いしてきたところですが、改めて各市町村において山村振興施策促進事項の策定を推進して頂くことをお願いします。
今回と次回で関連資料を送付させていただきますが、今回は「山村振興に基づく支援措置等」(別添)という資料であり、山村振興法の改正の経緯とこれに基づく税制支援措置やその優遇内容等が記載されています。
過疎地域自立促進特別措置法に基づく税制特例は1000万円以上の機械・施設等が対象とされていますが、山村振興法では500万円以上の小規模で多様な機械・施設等についても税制特例が受けられることとなっています。
地域資源を活用して山村活性化を図るため、ご活用を検討いただければ幸いです。
20201104-5【資料5】山村税制説明資料 詳細版R21030
3 2020年10月の農林水産行政
2020年10月の農林水産行政の主な動向は、以下のとおりでした。
(1) 米の2021年産適正生産量を700万トン割れに設定、交付金の要件をめぐり紛糾
2020年産米の作柄は101と見込まれ(9月15日現在)、作付面積137万ヘクタールで予想収穫量は735万トンと前年より8.5万トン増える見込みとなった。
これを受けて農林水産省は、食料・農業・農村政策審議会食料部会の意見を聴いて、2021年産米の適正生産量を679万トンと設定した。需要量を704万トンと見込み(5~11万トンの減)、予想収穫量を735万として算出したもの。700万を下回るのは初めてのことであり、作付面積にして10万ヘクタールの減少となる。
本年の作柄と需要の減少を受けて米の需給は緩みぎみとなっており、米価格が低下した場合の補填としては、農林水産省は、収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)や収入保険により対処してほしいとしている。
また補正予算で措置された「高収益作物次期作支援交付金」の要件について、農林水産省は10月12日、「新型コロナウイルス により減収した金額の範囲内を事実上の上限とする」旨の通知を発出した。この予算では、野菜・花き・果実・茶など次期作に前向きな取組みを支援するとしており、10a当たり5万円(施設栽培の場合25万円~80万円等)を交付するとされていたものであり、この要件変更に対し批判が殺到した。これを受けて政府・与党の協議により、10月30日、「既に投資した金額がある場合は、その額の範囲内」と更に変更を加えることとなった。
(2) Go to eat キャンペーンは食事券17県、ポイント付与1535万人でスタート
10月から開始された Go to eat キャンペーンは、食事券事業について10月21日現在17都道府県で236億円(給付額換算47億円)が販売されており、11月にはすべての都道府県で販売・利用が開始される見込みである。
オンライン飲食予約事業については、10月5日時点で参加している飲食店は7万7000店、10月1日から23日までの間に1535万人分の予約が行われ、予算額で137億円が支出される見込みとなっている。
オンライン飲食予約事業については10月1日と2日で115万人分の予約があるなど勢いよくスタートしたものの、「一部の利用者が居酒屋チェーンなどで 300円程度の商品一点だけを注文しポイント付与を受ける」という事例が生じ、 農林水産省はポイント未満の利用を抑制するよう飲食店に対して要請を行った。
(3) 野上新農相が精力的に現地視察・国際会議参加
9月に就任した野上浩太郎農相は、10月に4回の国内現地視察と2度の国際会議(テレビ会議)への参加を行った。
10月3日には 福島県下を訪問し、営農・水産業・森林の再生の状況を視察するとともに関係者との意見交換を行った。10月12日には茨城県下の JA や農業・食料産業研究機構を訪問し、ロボット・トラクター・ドローンを用いたスマート農業を視察するとともに、行方市農協においてサツマイモの輸出の取り組みを視察した。10月15日には静岡県に出張し静岡市・焼津市において漁協・市場・漁業者との意見交換を行った。10月19日には北海道十勝地方を訪問し、枝豆の輸出に取り組む中札内村 JA、 長芋の輸出に取り組む帯広市川西 JA を視察したほか、株式会社の行う搾乳ロボットや食肉の輸出について視察し、意見交換を行った。
また諸外国とのテレビ会議としては、10月21日にASEAN+3農林大臣会合が開催され、「コロナ禍を踏まえた食料安全保障の強化に向けた取り組み」について話合いが行われた。10月27日には「WTO 非公式関係閣僚会合」が開催され、我が国からは野上農相のほか茂木外相、梶山経産相が出席した。会議では「コロナ終息後の経済回復に向けた WTO の貢献のあり方 」について話し合われ、野上農相からは「安定した農産物貿易の維持のため不要な輸出規制を行わないことが必要である」等の主張を行った。
(4) 規制改革等について農政への提言が相次ぐ
菅新政権において規制改革の実施が大きな目玉とされている中にあって、政府の「規制改革会議農林水産ワーキンググループ」は 10月19日、①牛乳乳製品に関する規制改革、②森林経営管理制度の運用などについてフォローアップ等を行うとの方針が示された。また同じ10月19日に財務省の「財政審議会」からは米の転作と農産物輸出の増加に向けて高収益を見込める作物に支援を行い、従来の飼料用米・麦・大豆 などの支援については見直す必要がある旨の見解が示された。
更に10月22日「国家戦略特区諮問会議」においては特区で認めている特例措置の全国展開に向けて検討を加速することが提案された。民間委員からは、「一般企業の農地取得を認める兵庫県養父市の特例の全国展開を求める」との意見が出されている。
(5) コロナ後の社会経済の再設計に向けて農林水産省と環境省が連携を合意
10月26日に行われた総理の所信表明演説において「温室効果ガスを2050年までにゼロにする」ものとされたが、こうした動きを踏まえ農林水産省と環境省はコロナ後の社会経済の再設計に関し両省の施策を連携させていくことについて合意した。小泉環境大臣と野上農相が10月23日、共同で記者会見を行った。
農林水産省は、野上農相の指示により「緑の食料システム戦略」を今後検討し、 来年3月に中間とりまとめ、5月に策定することを予定している。一方環境省は、地域資源に着目した自律分散型社会を構築するため、「地域循環共生圏」という考え方を打ち出している。
今後両省では、①脱炭素社会への移行、②循環経済への移行、③分散型社会への移行に向けて、各種の政策を連携して取り組むこととしている。
(6)その他
① 輸出関係閣僚会議を開催 (10月1日)
10月1日、農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」第8回会合が行われ、2030年に 農産物等の輸出5兆円とすることを目標に、個別品目の輸出目標や課題 について話し合われた。管総理から「農林水産物・食品輸出産地の確立に向けて、関係閣僚が一体となって本年末までに具体的な戦略を策定すること」との指示があった。
② 大和碓において北朝鮮の公船を確認、日本漁船が入域自粛
9月29日大和碓西方の我が国の排他的経済水域内で、船籍不明の船舶が水産庁取締船により発見され、その後北朝鮮公船であると特定された。水産庁は我が国漁船に対して一時的に周辺海域からの移動を要請しているところであり、海上保安庁と連携し警戒に当たっている。北朝鮮公船に武器所持は確認されていない。
③ クマ被害等に関する連絡会議を設置
10月26日、農林水産省・環境省・林野庁・警察庁は「クマ被害等に関する関係方面連絡会議」を開催した。クマによる人身事故が相次ぎ、秋田県・新潟県では死亡事故も生じている状況を踏まえ、「クマ類の地域個体数存続と人間との軋轢減少の両立」を目指して、クマ類の保護・管理に関係する省庁が情報共有し、意見交換を行ったもの。クマの目撃情報は4月から9月までに1万3670件にのぼり、 被害は80件、捕獲数は4457頭となっている。
④ 水産物の流通規制に関する法案を提出
10月30日、「特定水産動植物等の国内流通の適正化に関する法律案」が閣議決定され、国会に提出された。本法律案は、違法に採集された水産動植物の流通を防止するため、特定の水産動植物等について、取扱事業者による情報伝達、取引記録の作成・保管、輸出入証明書の添付等の措置を講ずるもの。
臨時国会に提出された農水省関係の法律案は、本法律案と継続審議中の種苗法改正案の2本となる。