全国山村振興連盟メールマガジンNO94
2020.10.2
全国山村振興連盟事務局
○ 2020年9月の農林水産行政の動向
2020年9月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。
1 菅新内閣が発足し野上新農相が就任
菅義偉新内閣は 9月16日に発足し、野上浩太郎議員が農林水産大臣に就任した。野上新農相は参議院当選3回で、富山県出身の53歳。菅官房長官の下で内閣官房副長官を務めていた。就任に当たり菅総理から、①農林水産品の輸出拡大、②農林水産分野の改革の2点についてしっかり進めてほしいとの指示を受けたとのことである。
農水省の新たな大臣・副大臣・政務官の顔ぶれは以下の通り。
大臣 野上浩太郎 参議院 自民党 富山
副大臣 葉梨康弘 衆議院 自民党 茨城3区
副大臣 宮内秀樹 衆議院 自民党 福岡4区
政務官 池田道孝 衆議院 自民党 中国ブロック
政務官 熊野正士 参議院 公明党 比例
2 令和3年度概算要求は対前年度120%
9月30日農林水産省は、令和3年度予算概算要求を財務省に提出した。 要求額としては2兆7734億円と、前年度の2兆3109億円を大きく上回る対前年度120.0%の要求となった。 このうち公共事業費は8464億円( 対前年度121.1%) 、非公共事業費は1兆9270億円(同119.5% )となった
概算要求の主眼は、新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立に向けた対策であり、①2030年輸出5兆円目標の実現に向けた輸出力の強化、②農林水産業・農山漁村の維持・継承を確実とするための生産基盤の強化、③ 新型コロナウイルスに対応した新たな生活様式への転換等が重点とされている。
主要事項としては、
持続的生産強化対策事業 215億円 (令和2年度194億円)
強い農業・担い手づくり総合支援交付金 245億円(同200億円)
畜産生産力・生産体制強化対策事業 12億円( 同9億円)
スマート農業総合推進対策事業 55億円(同15億円)
農業支援サービス事業育成対策 10億円(新規)
グローバル産地づくりの強化 36億円 (同5億円)
などとなっている。
農山漁村の活性化対策としては
中山間地農業ルネッサンス事業 490億円( 同442億円)
鳥獣被害防止対策とジビエ利活用の推進 162億円(同102億円)
に力を入れたほか
新たな食料・農業・農村基本計画を踏まえて
食と農に対する理解の醸成のための国民運動の推進 16億円(同2億円)
を要求した。
また林野関係では、
林業成長産業化総合対策 173億円(同129億円)
森林・山村多面的機能発揮地域力支援対策 19億円(新規)
水産関係では 資源調査・評価の着実な実施 101億円(同57億円)
漁業経営安定対策 701億円(同254億円)などに力を入れている 。
3 組織を再編成し新たに3局を要求
農林水産省の令和3年度組織定員要求では、従来の組織を再編成し新たに次の3局を設置することを要求している。
輸出・国際局: 従来の食料産業局の輸出部門と国際部を統合。
農産局: 従来の政策統括官(米・麦・大豆等担当)、生産局農産部(野菜・畑作物など園芸部門を担当)を統合。
畜産局:従来の生産局畜産部を格上げ。
このほか、大臣官房に新事業・食品産業部を新設し、従来の食料産業局のうち輸出関連を除く食品産業政策部門を担当することとしている。
4 Go to eat 事業が10月からスタート
農林水産省が担当している Go to eat キャンペーンについては、新型コロナウイルス感染症対策分科会の意見を伺った上で、感染防止に十分な注意を払いながら、10月から事業を実施することとなった。
プレミアム食事券事業については8月25日に1次募集により選出された事業者を 発表した上で、9月25日まで2次公募を行った。 食事券の発給については都道府県等別に事業主体ができるため、地域によって準備状況が異なるが、10月中旬から逐次スタートすることが見込まれている。 具体的な開始時期としては、愛知10月16日、三重10月20日、富山10月26日、愛媛10月30日、香川11月7日等が想定されている。
一方農林水産省が慎重に対応を進めてきた オンライン飲食予約事業についても、9月15日から登録飲食店を募集しており、10月以降準備が整った業者から開始する。
5 日英経済連携協定が大筋合意
9月11日茂木敏充外相と英国トラス国際貿易相がテレビ会談し、日英経済連携協定(日英 EPA) の大筋合意を確認した。6月9日に交渉入りし、8月初旬には茂木大臣が英国に訪問するなどにより、3ヶ月という異例のスピードで大筋合意に達した。
合意の内容は日 EU EPA の優遇関税の内容をほぼ踏襲したものであり、農林水産品に関しては①日本への輸入については新たな低関税枠は設けない、②英国側の関税については牛肉・茶・水産物等関心品目について撤廃する、などとなっている。今後署名、国会での承認を経て 2011年1月1日の発効を目指している。
6 その他
(1)台風10号の農林水産被害額は53.5億円
大型の台風10号は、9月5日から7日にかけて沖縄・九州地方を通過し、農林水産業についても農業用ハウス、米、砂糖、果実、畜舎、林地、漁船などに被害をもたらした。9月14日現在判明している被害額は、農作物等15.6億円、農地・農業用施設2.4億円、林野関係6.2億円、水産29.2億円の合計53.5億円となっている。
(2) CSF が豚の主産地・群馬で発生(9月26日)
CSFは3月12日沖縄県うるま市での発生以来、養豚場での発生が見られなかったものの、9月26日群馬県高崎市の養豚場(飼養頭数5390頭)で発生が確認された。これで発生は、岐阜・愛知・長野・三重・福井・埼玉・山梨・沖縄・群馬の9県となる。群馬県はワクチン接種地域であるため、 搬出制限・移動制限区域は設定しない。一方 CSF に感染した野生イノシシは9月9日までに18都府県で見つかっており、農水省及び関係者は警戒を強めている
(3)G20農業・水大臣会合でコロナ禍下のサプライチェーンの強靭化を訴え
9月12日 G 20農業・水大臣会合がテレビ会議形式により開催され、「コロナ禍 下で各国が取り組むべき諸課題への対応」が話し合われた。我が国からは江藤農相と佐々木紀国交政務官が出席。農相は食料・農業のサプライチェーン強靭化のため、①農業基盤づくり、②イノベーション・デジタル化の活用、③輸出規制を行わないこと、などを 訴えた。
(4)北関東で家畜の盗難相次ぐ
本年6月栃木県足利市の2箇所で子牛6頭が盗難にあったことを皮切りに、8月にかけて群馬県前橋市・伊勢崎市・太田市・館林市で7箇所から子豚670頭が盗難にあった。 さらに9月10日には埼玉県行田市で子豚130頭が盗難にあっている。農林水産省は家畜疾病の侵入につながるおそれもあるとして、警察庁と連携の上畜産農家に注意を呼びかけている。