全国山村振興連盟メールマガジンNO66

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2020.3.6

全国山村振興連盟事務局

  • 2020年2月の農林水産行政の動向

2020年2月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。

 

1 農産物輸出額、1兆円に届かず(2月7日)

農林水産省は2月7日、2019年の食料・農産物輸出額が9121億円となり、前年に比べて0.6%増加したと発表した。輸出額は7年連続で過去最高となったものの、2019年に期待されていた目標1兆円には届かなかった。

品目別で見ると、ブリ、牛肉、かんしょの輸出額は伸びたものの、水産物、特にサバ、カツオ・マグロの漁獲減による輸出減少や、植木の減少が響いた。韓国との政治情勢が悪化し、韓国向け輸出が減少したことも影響した。

農産物5877億円(+3.8%)加工食品、緑茶、花き、畜産、穀物等

水産物2873億円(△5.2%)

林産物 371億円(△1.4%)

国・地域別 ① 香港2037億円(△3.7%)、

② 中国1537億円(+4.9%)、

③ 米国1238億円(+4.9%)

④ 台湾 904億円(+0.1%)

⑤ 韓国 501億円(△21.0%)

本年4月から農林水産省の中に輸出対策本部が設置される予定であり、農林水産省は食料・農業・農村基本計画の中で新たな輸出目標を定めたいとしている。

 

2 アフリカ豚熱(ASF)の改正法施行。豚熱(CSF)は引き続き沖縄で発生

国内で発生すると国内畜産業に深刻な打撃を与えるアフリカ豚熱(ASF)について、議員立法により家畜伝染病予防法が改正され、2月5日に公布・施行された。これは、指定地域で豚だけでなく野生イノシシも予防的殺処分の対象とするもの。知事から移動制限等も命ずることができる。

一方、豚熱(CSF)は、2月2日沖縄県で5例目(沖縄市)、2月25日6例目(うるま市)が発生し、殺処分・消毒等の防疫措置が行われている。

アフリカ豚熱、豚熱の感染予防・拡大防止のため、家畜伝染病予防法は政府提案によりもう1度改正されることとされ、2月25日に閣議決定・国会提出された。これは、①養豚業者の消毒義務、②防疫官による検査・廃棄命令などが可能となる。違反した場合の罰則も強化される。

 

3 基本計画で飼料を反映しない自給率設定へ

新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けて、食料・農業・農村基本政策審議会で議論が続けられている。そのポイントの1つである食料自給率目標について、農水省は、従来の①カロリーベース、②金額ベースに加えて、③飼料を反映しないカロリーベースでの食料自給率(産出食料自給率)の目標を設定する方向であることを明らかにした。

これは、畜産に供給する飼料は輸入飼料が多くを占めるため、国産の牛肉・豚肉等が増えても、カロリーベースでは自給率が低く出ることによる。

2018年のカロリーベース食料自給率は37%。牛肉の自給率11%、豚肉6%、鶏卵12%であるのに対し、飼料を反映しないカロリーベースにすると、食料自給率は46%、牛肉43%、豚肉48%、鶏卵96%になるとされる。

 

4 新型コロナウィルスにより中国からの野菜輸入が減少。農水省職員には、テレワーク・時差出勤を活用

ニンジン、ネギ、タマネギの輸入は、中国からが12~17%を占めており、このほかショウガ、ニンニクのシェアも高い。これらは我が国では外食・加工業務用に用いられる部分が大きい。新型コロナウィルスの感染拡大により、中国側の加工工場等で人手不足となり輸入が減少した品目も多く、輸入業者は他国からの調達を検討しているという。

新型コロナウィルスの感染拡大に伴う農林水産業への影響としては、輸出の減少や風評被害が懸念されているが、現在までのところ大きな影響は出ていないとされる。

一方、2月21日、江藤農相は職員のテレワークの拡大と時差出勤の活用を図ると発表した。テレワークは、疾病のある者、妊娠中の者、幼児・高齢者と同居の者、体調が万全でない者を対象とする。時差出勤は、勤務開始を10時又は10時半とし、本省では6分の1、約800人を対象とする。

 

5 A―FIVEの検証のための有識者検討会が発足(2月18日)

農林水産業成長産業化支援機構(A―FIVE)は、農林水産業者へ出資することを目的に、国が300億円、民間が19億円拠出してつくったファンドであるが、2019年3月末の累積赤字が92億円に達し、新規の出資を停止している。

A―FIVEの検証作業を行うため、2月18日、専門家による有識者検討会が設置された。投資分野、投資手法、出資手続き、組織体制等につき検証し、夏を目途に取りまとめを行う予定としている。

 

6 その他

(1) ASFで国際シンポジウムを開催(2月25日)

ASF(アフリカ豚熱)の感染拡大防止と国際協力を図るため、東京都港区において、10か国・地域から300人の専門家が集まり、シンポジウムが開催された。シンポジウムでは、早期発見のための監視、違法豚肉の持込み防止のほか、ワクチン開発について国際的協力が必要との議論が行われた。

 

(2) 諫早干拓をめぐる差し戻し審第1回が開催(2月21日)

諫早干拓で開門を命じた確定判決に対し、国が異議を申し立てた裁判(請求異議訴訟)について、最高裁から福岡高裁に差し戻された第1回目の口頭弁論が行われた。国は、①開門しない前提でのハザードマップがあることや、②関連訴訟で最高裁が開門しないことを確定していることなどを挙げ、事情の変更があったと主張した。一方、被告・漁業者側は、「開門して調査する」という和解案を提示している。

 

○上野村シンポジウムが中止となりました

メールマガジンNO62,63でご紹介していました群馬県上野村のシンポジウム「第2回 フォレスターズチャレンジ2020in上野村」及び「第12回新たな多数派の形成をめざす上野村シンポジウム」につきましては、新形コロナウィルスの感染が拡大している現状を踏まえて、中止することとなりました。

予定していただいた方々には大変恐縮ですが、ご理解をいただくようお願いします。