全国山村振興連盟メールマガジンNO58
2020.1.10
全国山村振興連盟事務局
皆様、新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
昨年の令和元年は、台風15号・19号等が全国の広範な地域に被害をもたらしました。被災された皆様方に改めてお見舞い申し上げます。
一方で、昨年末には、人口急減地域対策法が成立するとともに、森林環境譲与税について大幅な前倒し増額が決定されたところです。
これらを受けて、当連盟としても、新年において災害復旧・防災対策が充実するとともに、新しい政策の運用が円滑になされていくよう要望活動を続けて参ります。
また、2021年3月末に期限を迎える過疎地域自立促進特別措置法の見直し論議が本年には大きく盛り上がると見込まれますので、当連盟としても友好団体として注視して参ります。
さらに、2021年3月末には、山村振興法の振興山村に関する税制特例(機械・施設の割増償却等)の期限が到来します。本年中には、税制特例の延長に向けて、税制当局との間で「利用程度の低い税制特例は廃止する」といった観点から、厳しい議論が行われることが想定されます。これに対処するためにも、広範な市町村で山村振興計画や産業振興施策促進事項が策定されていることが必要です。
各市町村におかれましては、この税制特例を積極的に活用していただき、そのための産業振興施策促進事項の策定をお願いします。なお、「産業振興施策促進事項」という用語は覚えにくく、言いにくいので、私(事務局長)は、「さしすせそ」と言って覚えています。「さ=産業」「し=振興」「せ=施策」「そ=促進事項」です。どうぞよろしくお願いいたします。
○2019年12月の農林水産行政の動向
2019年12月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。
1 日米貿易協定が承認され、1月1日発行へ(12月4日)
日米貿易協定の承認案は、12月4日、参議院本会議において賛成多数で承認された。これにより牛肉の関税引き下げ(38.5%→9%)、豚肉の関税引き下げ(高価格の部位4.3%→0、低価格の部位482円/kg→50円)などが行われる。他方、コメの無関税枠は設けなかった。自動車・部品の関税撤廃は継続協議となった。
これを受けて、12月5日、総理を本部長とするTPP等総合対策本部は「TPP等関連政策大綱」を改定し、①中小・家族経営・条件不利地域を含めた支援、②家畜の増産、③スマート農業の推進などを盛り込み、補正予算等に反映することとした。
日米貿易協定は、1月1日に発効した。
2 農林水産関係補正予算5849億円、うち日米貿易対策3250億円(12月13日)
令和元年度補正予算が12月13日、閣議決定され、政府全体の追加歳出額が4.5兆円にのぼる中、農林水産関係は5849億円となった。このうち、日米貿易等の対策に3250億円、災害復旧・復興に2144億円を計上した。
日米等対策としては、①和牛等の増産対策に243億円。これは、和牛繁殖農家等が増頭する場合、1頭当たり17.5~24.6万円を支給する。②畜産クラスター事業409億円。産地の機械・施設の導入を補助する。このほか、棚田・中山間地域対策に282億円。CSF等の家畜衛生対策に59億円等となっている。
それに先立つ12月10日、総理を本部長とする農林水産業・地域の活力創造本部が開催され、「農林水産業・地域の活力創造プラン」が改訂された。これは、農林水産行政の政策目標を掲げたプランであり、11の柱からなる「農業生産基盤強化プログラム」(NO54に既報)が盛り込まれた。これを受けて、補正予算・令和2年度予算の内容に反映させることとなった。
3 令和2年度農林水産予算2.3兆円、前年度を上回る(12月20日)
令和2年度の通常予算が12月20日に概算決定され、政府全体で102兆6600億円と過去最大の規模を更新する中で、農林水産予算は2兆3109億円と、前年度を1億円上回った。
主な内容としては、大臣折衝によって獲得したのが、①農林水産物・食品輸出対策45億円、②スマート農業の推進15億円である。
農業農村基盤整備(農業の公共事業)は、3264億円となり前年度を4億円上回った。関係予算を含め4434億円、更に臨時・特別の対策や補正予算を含め6515億円となる。
このほかの主なものとしては、①水田活用直接支払い交付金(麦・大豆・飼料用米など)3050億円(対前年度85億円増)、②家畜衛生等総合対策101億円(53億円増)、③担い手への農地集積・集約化212億円。④強い農業・担い手づくり交付金(機械・施設等の補助金)230億円となっている。
中山間地域対策では、①中山間地農業ルネッサンス事業(補助金の優先枠)442億円(2億円増)、②中山間地域直接支払い261億円(同額)、③山村活性化支援交付金(10割補助ソフト事業)7.8億円(同額)などとなっている。
4 CSFのワクチン接種地域に新たに8府県を追加(12月20日)、ASFの予防的殺処分など法改正へ
CSF(豚コレラ)のワクチン接種が進められている従来の12県に加え、その周辺地域である未発生の8都府県(茨城・栃木・千葉・東京・神奈川・新潟・京都・奈良)をワクチン接種推奨地域に加えることが決定した。周辺県からの要望に応える形で推奨地域を広げたものであり、実際の実施は知事が決定する。野生イノシシ対策としては、11月に続いて12月20日には、栃木県日光市の国有林で自衛隊ヘリコプターにおる経口ワクチンの空中散布が行われた。12月から2月にかけて、17都府県で20万個を散布・設置する。
これに先立つ12月6日、農水省に設置した有識者検討会「我が国の家畜防疫のあり方検討会」は、提言を公表した。提言では国内で蔓延するCSFやアジアで猛威を振るうASF(アフリカ豚コレラ)の現状を踏まえ、①入国者が肉製品を持ち込んだ場合の罰則の強化、②ASFが発生した場合、周辺農場を含む予防的殺処分(疾病が発生していない家畜も殺処分できる権限)、③疾病発生時の国・県の権限強化が盛り込まれている。
自由民主党畜産酪農対策委員会のプロジェクトチームからも同様の提言が行われており、これを受けて農水省は、次期通常国会に家畜伝染病予防法の改正法案を提出する予定としている。
5 税制・組織改正も課題に対応
令和2年度税制改正は、12月11日に自民党税制調査会で取りまとめられ、12月20日に閣議決定された。農林水産関係の税制では、①新規就農者にリースで利用させるため、JA等が機械等を取得した場合の固定資産税の減免、②農業資材の卸売・小売業者が事業再編する場合の機械等の割増償却が認められた。このほか、①農地流動化の交付金、②農業用A重油、③肉用牛売却所得に関する減免措置が延長された。
農林水産省の組織定員に関しては、農林水産業・食品輸出本部を設置するほか、輸出先国規制対策課、家畜遺伝資源管理保護室を新設する。このほか、空港等に配置する家畜防疫官を181人増員、国内で家畜伝染病に対処する担当官を45人増員することとした。
6 その他
(1) 酪農家への価格支持と関連対策が増額(12月12日)
北海道の酪農家に支払われる「加工原料乳生産者補給金」は前年同額(1kg当たり78.31円)とされたが、「集乳調整金」についてはコストアップを背景に1kg当たり2.54円と0.05円の増額とされた。肉用子牛の生産者への補給金も前年同額。牛肉輸入差益等を原資とする農畜産業振興機構からの畜産関連対策は320億円と、前年に比べ25億円の増額となった。
(2) 沖縄で植樹祭が開催(12月14~15日)
第43回全国植樹祭が沖縄県糸満市で、秋篠宮皇嗣・同妃両殿下のご臨席の下、開催された。本植樹祭では、「うけつごう豊かな森とみんなの笑顔」のテーマが掲げられた。
(3) A-FIVE解散へ(12月20日)
農業法人・企業等へ出資してきたA-FIVE(農林漁業成長産業化支援機構)は、2019年度の出資目標110億円に対し出資実行額が16億円となり、21年度には出資を行わず、可能な限り速やかに解散する方針となった。
(4) 根室の漁船5隻がロシア警備当局に拿捕(12月17日)
根室市の漁船5隻(乗組員24名)は、歯舞群島周辺の海域でロシアの国境警備局による検査を受け、国後島へ連行され、拿捕された。ロシアの漁獲規制違反があったとして1100万円余りの罰金支払いが命じられ、12月24日、乗組員は罰金を支払って解放された。