山村振興通信NO46(全国山村振興連盟都道府県支部・会員の皆様へ)

 

 

2019.10.4

全国山村振興連盟事務局

2019年9月の農林水産行政の概要は、以下の通りでした。

 

  • 2019年9月の農林水産行政

1 新農相に江藤拓氏が就任(9月11日)

第4次安倍再改造内閣が9月11日に成立し、農相には吉川貴盛氏の後任として、江藤拓氏が就任した。江藤新農相は、宮崎2区、当選6回、無所属で、1960年生まれ。自民党農林部会長、農林水産省副大臣、衆議院農林水産委員長を務めた農政通で、「TPP交渉における国益を守り抜く会会長」も務めた。直前には首相補佐官に任じられ、「ふるさとづくりの推進、農水産物の輸出拡充」を担当した。江藤新農相は、就任時の記者会見で「1被災地の復旧復興、2食料自給率の向上、3輸出振興、4豚コレラ対策」などを課題として挙げた。

 

2 豚コレラが埼玉にも飛び火し、ワクチン接種を認める方針に転換(9月20日)

発生から1年を過ぎてなお拡大を続ける豚コレラは、9月13日・17日に埼玉県下(秩父市・小鹿野町)で発生が確認され、9月20日岐阜県下(恵那市)の発生で45例目となった。関東地方にも飛び火し、これで発生は出荷先だった府県(大阪・滋賀・山梨)を含めると9府県となった。

9月20日、農林水産省は予防ワクチンの接種を認める方針に転換した。専門家の検討などの手続きを経て施行され、県下での具体的な接種の判断は知事が行うこととなる。ワクチンを接種すると豚の流通が地域内に制限されることとなる。豚肉の流通は制限されない。また我が国が非清浄国となるため、清浄国(欧米を中心とする34か国)への輸出はできなくなるおそれがある。

 

3 日米貿易交渉の最終合意を日米首脳が確認(9月25日)

日米貿易交渉の閣僚級協議を行っていた茂木外務大臣とライトハイザー米通商代表は、9月23日最終合意に達した。9月25日、安倍首相とトランプ大統領は、この最終合意を確認し、共同声明に署名した。

農産物については、段階的に牛肉関税38.5%を5%に、豚肉(低品質品)関税482円/kgを50円/kgにすることなどとなっている。コメの無関税枠は設けない。米国の自動車輸入については、関税撤廃方針を記載するものの時期は明示せず、事実上の先送りとされる。

今後、政府による協定案への署名、国会の批准を経て、来年の発効を目指している。

 

4 食料・農業・農村基本計画の見直しを審議会に諮問(9月6日)

吉川(前)農林水産大臣は、9月6日、食料・農業・農村基本計画の変更について、食料・農業・農村基本政策審議会(会長・高野克己東京農業大学長)に諮問した。基本計画は、2000年に制定された食料・農業・農村基本法に基づき定められ、5年に1度見直しをするもの。今後10年間程度の見通しと政策の体系を計画化する。来年の3月に答申を得た上で、閣議決定する予定であり、年内に6回の会合が予定されている。

 

5 収入保険の保険料を最大4割安く(1月から)

来年1月から、収入保険の保証収入に下限を設定し、保険料を最大で4割低くする制度が導入されることとなった。収入保険は、「実際の収入が基準収入(過去5年平均)の9割を下回った場合」に、「その下回った額の最大9割」を上限に補てんする制度。現行では「収入がゼロになった場合」でも補てんされるが、実際に収入がゼロになるケースはあまり想定されない。

そこで、補てんされる下限を「5割/4割/3割減まで」というように選択できるようにする。この場合、選択に応じて、「保険料は1割/2割/4割減」となる。(3割減までの場合、44%減)

 

6 その他

① 第39回全国豊かな海づくり大会・あきた大会が天皇陛下臨席の下で開催(9月7日・8日)

豊かな海づくり大会は、漁業資源の維持培養と海の環境保全を目的とする行事。秋田市で行われた今大会は、天皇陛下御即位記念の慶賀行事とされ、「海づくりつながる未来豊かな地域」をテーマに掲げた。

② 台風15号により千葉・茨城を中心に農林水産業に被害(9月9日)

台風15号は千葉市で最大瞬間風速57.5mを記録し、福島・茨城・群馬・千葉・東京・神奈川・山梨・静岡の8都県で農林水産被害をもたらした。9月30日現在で判明した被害額は、442.9億円。うち農作物等398.8億円、農地等8.2億円、林野14.9億円、水産21.0億円。

③ 諫早湾干拓訴訟を最高裁が差し戻し(9月13日)

最高裁は、「開門しなくてよい」とした福岡高裁の2審判決を審議不十分として差し戻した。佐賀県の漁業者は開門を求め、長崎県の農業者等は開門に反対。従来の司法判断も「開門命令」と「開門禁止」に分かれている。農水省は、訴訟を継続しながら和解を求めていく方針。

④ 令和元年産の水稲作況は101(9月30日)

農林水産省は、9月15日現在の作況について101と発表した。10アール当たり収量は536㎏(対前年産+7kg)。北海道105、東北104、近畿・中四国99、九州96。作付面積158.4万ha。