山村振興通信NO7(全国山村振興連盟都道府県支部・会員の皆様へ)
2018.11.28
Ⅰ 1月29日(木)の予定
前号でもお伝えしましたが、11月29日(木)の全国山村振興連盟関係の日程は、次のようになりますので、よろしくお願いします。
11月29日(木)
8:00 自民党山村振興特別委員会 自民党本部リバティ2・3
会長、会長代行、副会長、事務局長が出席
10:30全国山村振興連盟通常総会
各都道府県の会員市町村長が出席
総会後 国会・官庁に要請活動
会長代行、副会長、事務局、代行・副会長の各県支部が、3班に分か
れて、要望書を持参し要請活動。
Ⅱ 山村振興全国連絡協議会九州ブロック会議の概要
山村振興全国連絡協議会九州ブロック会議の概要は、以下のとおりです。
山村振興全国連絡協議会九州ブロック会議開催される
山村振興全国連絡協議会の平成30年度の九州ブロック会議が、11月5日(月)~6日(火)、宮崎県宮崎市若草HUTTE&co-ba Miyazakiで開催された。
会議には、九州ブロックの県、農林水産本省、九州農政局及び全国山村振興連盟から担当者が参加した。
開会に当たり開催県である宮崎県総合政策局中山間・地域政策課 日高正勝課長から「現在、山村地域は人口減少・高齢化の進展、担い手不足等の問題が生じており、厳しい状況である。こうした中、宮崎県としては、山村地域、過疎地域を含めた中山間地域振興条例を定め、その一環として3カ年の振興計画を策定して取り組んでいるところであるが、現在、その改定作業を進めている。本日会場となったこの施設は、渡川地区(人口350人)へUターンした若者が町おこしのため郷里と宮崎市をつなごうとカフェ、コワーキングスペース(共有オフィス)を開業したものである。県はこういった取組みを支援している。本日は、山村振興について活発な議論をお願いしたい」旨の挨拶があった。
次いで、来賓の紹介があった。
会議の内容は、次のとおりとなっている。
1 中央情勢報告
地域振興課 永田係長から「平成31年度山村振興関連農林水産省予算概算要求額」
「同関係資料」「山村振興に基づく支援措置等」の資料に基づき説明があった。特に山村における税制優遇措置についての税制当局との折衝状況につき説明があり、税制等の山村施策を守るためにも山村振興計画や産業振興施策促進事項の幅広い策定をお願いしたいとの依頼があった。また、山村活性化対策交付金の活用状況の紹介があり、その一環として「山の恵みマッチング」への参加の呼びかけがあった。
2 全国山村振興連盟 活動状況報告
全国山村振興連盟 千葉事務局次長から連盟の活動状況について説明があった。特に10月から道府県支部あてに「山村振興通信」をメールにて送付していることの紹介があった。
3 各県の事例報告
各県から次のような報告があった。
【佐賀県】
佐賀県では、中山間地域の農業・農村の振興をより強く推進するため、今年度から新たに「それぞれの中山間チャレンジプロジェクト」を展開している。具体的には、農業者をはじめ、関係機関が一体となって中山間地域の農業・農地の維持や農業所得の向上を目指す「それぞれの中山間チャレンジ事業」を実施している。
【福岡県】
農山村と企業等からなる協働組織がお互いの強みを活かし、荒廃農地を再生・活用することで、中山間地域の農地を維持するとともに中山間地域の活性化を図る「企業等活用型中山間地域活性化事業」を進めている。
【熊本県】
中山間地域において持続可能な農村を目指すモデル地区を設定し、その地域自らが作成する「モデル地区農業ビジョン」づくりを支援し、そのビジョンに基づき作物の作付拡大・導入、そのための基盤整備、生産・販売力強化等を総合的に支援する「中山間農業モデル地区支援事業」を推進している。
【大分県】
農業農村振興公社に「おおいた世界農業遺産次世代継承ファンド」を設置し、運用益により世界農業遺産認定地域を次世代に継承・発展させるため、保全活動の活性化や情報発信など次世代への継承等の取組みを支援する「世界農業遺産ファンド推進事業」を推進している。
【宮崎県】
中山間地域の営農集団等を対象に100万円以上の年収向上を目標とする年収アップ実践プラン策定及びその実現のための支援を行う「中山間地域年収アップ支援事業」に取り組んでいる。また、中山間地域果樹産地を維持発展させるため、高齢化・担い手不足に対応した共同及び受託作業組織の育成等さらなる果樹版集落営農の取組みを推進する「集落で繋ぐ中山間地域果樹産地支援事業」を実施している。
【鹿児島県】
中山間地農業ルネッサンス推進事業を活用して、市町村等がかかえる課題(地域資源を活かした商品開発、6次産業化等)に対してアドバイザーの派遣やセミナーを開催している。
【九州農政局】
九州農政局担当官から九州地区における山村活性化支援交付金事業実施地区の取組事
例の紹介があった。
4 次回幹事県の選出
次回の幹事県として、大分県が選出された。
なお、山村振興全国連絡協議会次期会長は西日本からの選出となっており福岡県が選出された。
5 現地研修
翌日は、綾町にある今年4月に整備(病院施設をリニューアル)された綾ユネスコエコパークセンターにおいて綾町の概要及び施設の説明があった。
【綾町】
面積9,519㏊、うち80%が森林、国内最大級の照葉自然林を有しており、人口は、約7,200人の町で「人と自然と共有した町づくり」を推進している。そんな中で平成24年7月にユネスコエコパークに登録(世界120カ国、669地域、うち日本9地域)された。
【ユネスコエコパーク】
ユネスコエコパークとは、ユネスコ「人間と生物圏計画の枠組み」に基づいて、ユネスコによって国際的に認定された地域をいい、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的とする取組み。
(なお、この会議概要は、従来どおり山村振興情報に掲載する予定です。)
参考 全国山村振興連盟事務局長の記事
土地改良新聞(土地改良新聞社)11月15日付け「案山子のタクト」というコーナーに事務局長(實重重実)の記事が掲載されましたので、ご参考までに添付させていただきます。なお、各県支部の皆様にメールでお送りすることについては、土地改良新聞社の了解を得ています。
2018.11.15土地改良新聞記事山村は先端技術の実験場 -未来に向けた協働に期待する
全国山村振興連盟常務理事・事務局長 實重重実
あちこちの山村に出かけて、市町村の取組をつぶさに見せていただいている。また、山村の市町村長さんたちと親しくお話しし、現地の状況を聞かせていただいている。
それで分かってきたのだが、山村は現在、未来社会に向けての実験場となっている。ありがたいことに、日本国民には「山村はいらない」などと言う人はいない。山村はわずか3%の人で、国土の半分の面積を管理し守っている。上流にある土地や森林が、水源を涵養し、洪水や土砂崩壊を防止していくれている。そこに人が住んで、林業や農業が営まれ、自然の生態系が穏やかに健全に循環していることが、国土にとって必要だ。そのことを皆分かってくれている。
特に近年の豪雨・台風などの異常気象や地震による自然災害の頻発には、国民全体が不安を強めている。今や日本のどこにいても、従来には考えられなかったような自然災害に遭遇するおそれがある。そしてそれは、地球温暖化やプレートの移動などによって、今後も更に激化する可能性がある。
そうしたときに上流の山村がきちんと管理されていなければ、災害の防止どころか倒木・流木や土砂崩れによって、却って災害の元となるおそれさえある。
国土保全・災害防止や二酸化炭素吸収など、森林の持つ公益的な役割が評価されて、来年度から森林環境税(当面は森林環境譲与税)が導入されることとなった。
このように山村の存在は必要だと、誰からも認められているにもかかわらず、高齢化・人口減少が進み、存続の危機にある集落も多い。そこで国や地方自治体は、様々な手段によって山村での暮らしや産業振興を支援する。中には10割補助(定額支援)となっている「山村活性化支援交付金」のようなありがたい補助事業もある。
様々な行政分野からの多彩な支援により、山村では先端的な実験が可能となる。広大な土地や森林、光や水などの豊富な資源があるのだから、これを用いて太陽光発電、木質チップによるバイオマス発電など再生可能エネルギーの産業振興を図っている市町村は多い。
先般訪問した群馬県上野村では、森林の伐採に村が助成し、バイオマス発電によって生じた電力はあえてFITによる売電に回さず、キノコ栽培に振り向けていた。北海道苫前町では、日本海の強い風を利用して、日本有数の大規模な風力発電が行われているという。
再生可能エネルギーばかりではない。農泊、古民家レストラン、インターネットによる産地直送などあらゆる多彩な努力が払われている。先般、新潟県村上市の高根地区を訪問した。高齢化が進んでいるのは他の山村と同様だが、古い別荘を利用した宿泊施設や農家民宿を営んで外来客を誘致しているのは40代以下の若い世代だった。フェイスブックなどITによって発信することが有効だとのことだった。ITによって人の輪が広がり、都市の若者にとって山村がかつてよりも身近なものになっているという。
また、未来型の取組で目を引くのは、車の自動運転の走行実験だ。山村では、日本社会全体に先行する形で高齢化・人口減少が進んでいる。そうした中で、自動運転が実用化されていけば、無人タクシー、無人バス、無人トラックなどによって、人に移動と物の流通が可能となり、地域社会を大きく変貌させるだろう。
近い将来、お年寄りがデイサービスや病院に行くときも、子供が学校に行くときも、無人走行車に乗っていくことになるだろう。また、家に宅配サービスを依頼すれば食事や生活用品を無人自動車やドローンが運んで来てくれるだろう。これは、夢物語ではない。
国は、2020年代の半ばまでにその第1段階を実用化することを目標に掲げている。そして山村など全国の市町村で、現に様々なタイプの走行実験を行っており、農山村の自治体や住民が実験に参加し、大いに協力している。
2020年代半ばと言えば、もう7年程度後のことにすぎない。過去を振り返ってみると、ビデオ、パソコン、携帯電話などの技術革新も、7年間程度のうちに一般家庭に広く浸透したという。自動車メーカーやIT企業が、世界的な競争にしのぎを削っている現状からすれば、自動運転の社会が訪れるのも意外に早いかもしれない。
自動車の世界では、ほかにもインターネットとの接続(コネクト)、カーシェアリング、電気自動車といった技術革新が重層的に相互作用し合いながら、100年に1度と言われる変革が急速に進行している。アメリカでは近々グーグル系企業による無人タクシーの第1号が登場すると言われているし、既に試験的に無人自動車で食品の宅配を始めた流通企業もある。
社会全体の将来の問題を先取りする形で困難に直面している山村は、未来技術の実験場である。もちろん技術の中には、いかがわしいものが混じっている可能性があるし、そうでなくてもスタートアップ企業には存続できずに姿を消していくものも多い。山村の自治体など責任者には、その見極めが求められる。
しかし同時に、日本全体、あるいは地球社会全体の未来を先取りしているという、ある種の使命のようなものがあると言ってもおおげさではないと思う。その使命は当然のことながら、土地・水といった資源を守っている土地改良の関係者が協働して担っていることになると言えるだろう。