全国山村振興連盟メールマガジンNO48
2019.10.18ze
全国山村振興連盟事務局
- 台風19号の被災地にお見舞い申し上げます
台風19号により被災された方々、被災された地域の関係者の皆様にお見舞い申し上げます。
台風19号は、10月12日から13日にかけて日本列島に上陸し、広範囲にわたる地域で記録的な強風と豪雨をもたらし、各地で河川の氾濫・決壊、土砂崩れ等の災害を起こしました。
政府の非常対策本部の発表によると、10月17日5時00分現在で判明している人的・物的被害の状況は、死者65人、行方不明者14人、負傷者349人、住家被害35376棟、非住家被害302棟等となっており、今後調査が進むにつれて、被害状況が拡大するおそれがあります。(18日正午のNHK報道では死者78人、行方不明9人)
内閣府の「令和元年台風19号に係る被害状況等について」のサイトは次のとおりです。
令和元年台風第19号に係る被害状況等について
http://www.bousai.go.jp/updates/r1typhoon19/r1typhoon19/index.html
被災地の早期の復旧復興と、防災・減災・国土強靱化の促進に向けて、当連盟としても政府に対する要請活動を強化していきたいと考えています。
- ホームページを刷新しました
10月16日、全国山村振興連盟のホームページを刷新しました。
「連盟の概要」の冒頭に、中谷元会長からのご挨拶をいただいています。
このほか、当連盟の活動状況や山村振興情報、会員市町村へのリンクなどにつきましては従来どおりですが、全体として項目を整理しましたので閲覧しやすくなっていると思います。
メールマガジンは、今号から「全国山村振興連盟メールマガジン」と名称を変更しますが、従来からの通し番号は踏襲させていただきます。これからも原則として毎週、情報をお届けしたいと考えています。
今後ともよろしくお願いします。
- ドローン、無人トラクターの開発・利用状況
最先端技術として今後の普及・応用が期待されているドローンと無人トラクターに関しまして、各種公表資料等から現在の開発・利用状況をまとめてみましたので、以下に掲載します。
1 世界のドローン市場等
- 世界市場
ドローン(プロペラ式の小さな無人航空機)の出荷台数は、2017年340万台。2020年に650万台と予測。
世界の市場規模(2015年)1.2兆円。うち軍事用8068億円。商用4053億円。軍事用は米国・イスラエルがリード。商用は諸国あり、検査・撮影・ホビー・測量が主な用途。日本では農薬散布用が多い。
- 商用ドローンのメーカー
世界に約450社。主なメーカーは、以下の通り。
・中国:DJI(市場の70%を占める)、ゼロゼロロボティクス、ユニーク、ハブサンなど
・米国:3Dロボティクス(GPS機能搭載のAI自走型)、プレションホーク
・フランス:パロット
米国では2016年に規制緩和され、機体が25kg以下で目視できる範囲では、FAAのライセンスのみで良いとされた。
- 軍事兵器としての使用
・本年9月14日、サウジアラビアの石油生産施設攻撃には、18機が用いられた。価格が安くレーダーに写りにくいため、攻撃側のリスクが小さいとされる。
・中国は、AI搭載無人機の編隊飛行技術を開発中。2018年、200機同時飛行に成功。
・クローン攻撃からの防衛のため、①レーザー(熱)、②妨害電波、③侵入探知などが研究されている。
2 日本のドローン市場
- 日本での市場は2015年に104億円。8割は農業分野の利用であり、
残り2割は撮影用。農業用では、農薬散布が主だが、カメラやセンサーにより作物生育状況や病害虫発生状況の調査にも用いられる。
散布用では①農薬のほか、②肥料、③播種、④受粉といった用途が考えられる。また今後は、⑤運搬、⑥センシング、⑦鳥獣害対策でも期待されている。
- 登録されているドローンは約5000機、オペレータは約1500人。
- 価格は、100万円前後から、AI搭載の自動飛行タイプ(ナイルワークス社製)では1機500万円。佐賀のメーカー・オプティムも自動飛行タイプを発売。
- 農水省はスマート農業推進のためドローンや農業ソフト開発の事業を農業競争力強化促進法に基づく金融支援の対象に追加する方針。追加されると、①農林漁業成長産業化支援機構(AFIVE)の出資、②日本政策金融公庫の債務保証が受けられる。
3 日本での規制
- 2015年6月の改正航空法
・①空港等の周辺、②人口密集地区、③150m以上の高さの空域で飛行させるには、国土交通大臣の許可が必要。
・それ以外の空域では飛行可能。
ただし、①日中であること、②常時監視すること、③第3者との距離が30cm以上であること、④催し場所の上空でないこと、⑤危険物を輸送しないこと、⑥物件投下しないことが条件となっている。
・農薬散布については、危険物・物件投下に該当する等の理由により、国土交通大臣の許可が必要。また、農薬散布のため操作するには、「産業用マルチオペレーター技能認定証」の取得が必要。農林水産航空協会の教習を受ける。
- 本年6月の改正航空法
ドローン飛行について、①操縦者が飲酒していた場合、②急降下など危険な飛行をした場合等に、1年以下の懲役を課す等とした。飛行前の機体点検、気象状況の確認が義務づけられ、事故があった場合は、国土交通省が立入り検査等をできるものとした。
- 検討中の事項
・現在は飛行の都度許可申請が必要。目的・日時・経路・製造者・名称・重量・設計図を添えて、申請する。
・これに対して登録制が検討されており、所有者・使用者・購入時のID(製品番号)を登録することにより、一定期間飛行できるようにする。
・既に登録制を導入済みの国は、アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・オーストラリア・中国がある。
・内閣官房の「小型無人機活用等推進室」が担当し、官民の有識者検討会での2019年度末までの検討を受けて法改正を行い、2022年度に施行することを目指している。
・①登録制度のほか、②機体の安全基準、③使用者の技能証明制度を作る予定。
4 今後の活用
- 荷物の搬送2018年改正により、離島・山間地等の無人地帯では、カメラの搭載などの条件に適合していれば補助者なしでも飛行できるものとされた。
- 従来は飛行経路を見渡す補助者が必要とされ、人の所在・ヘリコプター等の接近・気象状況等を監視していた。
- 我が国での実証実験等の実例
- 2018年度国土交通省は、全国5カ所で実証実験。中間報告で今後の課題等を取りまとめた。
- 長野県白馬村、福島県南相馬市・浪江町、福岡県福岡市、岡山県和気町、埼玉県秩父市
- ANAホールディングス:長崎県五島市で実証実験。赤島・黄島の住民が弁当などを注文し、福江島から届けた。(2019年9月16日)
- 日本郵便:福島県南相馬市小高郵便局・浪江村浪江郵便局の間(約9km)、郵便物を輸送。目視外で完全自動飛行。(2018年11月7日から)
- 楽天:東京湾の無人島猿島に、西友LIVIN横須賀支店から配送。観光客が約400品目の商品からスマホで注文。配送料500円、積載量5kgまで。木・金・土曜日限定。1日最大8便。(2019年7月4日から)
- 千葉県千葉市:千葉市ドローン宅配等分科会を設置。人口集中地区でのドローン宅配を2020年までに実現させることを目標。アマゾン・イオン・NTTドコモ・佐川急便・日本電気・三井物産・ヤマトロジスティクスなどが参加。
- 島根県美郷町:町全体をドローン飛行区域にする方針。公民館・役場を充電用の拠点とし、ドローンが荷物を載せて拠点間を運ぶ。運んだ荷物は拠点まで住民に取りに来てもらう。2020年度にも実証実験。
- その他の研究開発
- NEDO:山岳遭難者救助の実証実験を鳥取県の大山で実施。
- 農業研究機構:圃場の正確なマップ作りの研究開発。
- 東北大学:老朽化した建築物の検査の研究開発。
- KDDIと東北大学:ドローンによる5G通信の研究開発。
5 無人トラクターについて
- クボタ
・無人によるロボットトラクターの開発・販売を我が国で先行した。
・2016年に直進キープ機能の田植え機、オートステアリング対応のトラクターを発売。
・2017年6月、自動運転可能なアグロロボトラクターを発売。有人監視下で自動走行する。RTK基地局(GPS位置特定を2カ所で行い精度を高める)付きのモデルで1100万円。RTK基地局なし(既存の基地局を利用)のモデルで970万円。
・2018年には、トラクターに加え、田植え機、コンバイン(収穫機)の3機種でGPS搭載機を製品化した。
・完全自動運転化については、コンバインで2019年、田植え機で2020年を目標に開発中。
- ヤンマー
・2018年10月、無人で自動運転のロボットトラクターを発売した。
・①タブレット操作による無人での自動運転ができるほか、②運転手の乗ったトラクターと無人トラクターの2台が同時作業するモード(タブレットで無人トラクターを操作)も備えている。
・無人運転についても、①直進モード(直進のみ自動で旋回は手動)と、②オートモード(直進・旋回・作業機昇降を自動で行う)の切り替えができる。
- その他のメーカー
・井関農機・三菱マヒンドラ農機も2018年に自動運転トラクターを発売した。
・海外のメーカーでは、ディア&カンパニー(米)、ニューホランド(米)、ケースIH(米)、オートノマス・トラクター(米)、フェント(独)、マヒンドラ・グループ(印)が我が国での展示・販売を行っている。
- 農林水産省の方針
・準天頂衛星「みちびき」(これまでの衛星より2桁以上精度が高い)を活用し、メーカーと共同して、
-
- 自動運転の田植え機、コンバイン、除草機を開発するとともに、
- 走行台数も2台より多く、3台以上が走行可能となるようにしたい
としている。
(参考)次のバックナンバーもご参照ください。
○「自動運転をめぐる最近の状況」山村振興通信NO33(2019年6月28日)
○「Maasとは何か。次世代の移動サービスが山村を変える」山村振興通信NO27(2019年5月17日)