山形県最上町のまちづくり 町長 髙橋 重美

髙橋重美 山形県最上町長

最上町は、山形県の東北部に位置しており、県境が宮城県の大崎市で分水嶺のまちです。人口は9,000人、面積は330?、山林は84%、高齢化率は35.5%となっています。 地方創生が叫ばれていますが、町民にいつも「地方創生にとって基本として一番大事なことは、ここに住む町民一人一人がこの地に自信と誇りを持つこと。まちづくりの主役は、行政ではなく町民であって、町づくりの一つ一つに町民の皆さんがどういう位置に立っているのかイメージして下さい。この部分は誰にも負けない、でもこの部分は一人ではできないからあの人とあの人に仲間に入ってもらおう、そういうつなぎ方をしていけばやっていける。」 といった話しをしています。町民が主役のまちづくりということで、それぞれの集落で集落ビジョンをきちんと作成して地域づくりをしてもらうということで、集落活性化応援交付金を交付するなどして将来のまちづくりを皆で分かちあうように進めています。
地方創生戦略ビジョンでは、「子育て大国最上町」、「生涯現役で頑張れる健康と福祉のまちづくり」、「産業振興 雇用創出」」、「環境に優しいまちづくりのバイオマス産業都市」の4本の柱を立てています。

1.子育て大国最上町

医療費の中学校3年までの無償化については、私の前任の中村町長が健康と福祉のまちづくりを築き、どこよりも早く実施しました。山形県ではほとんどほ足並みがそろい、高校3年までの市町村も出てきました。保育料無償化については、平成27年度から実施しています。1市4町3村で広域圏を形成していますが、その中で大いに勉強し大学に行ってそれからいずれ戻ってきて地域に貢献してもらえる学生を対象に新たな給付型の奨学金を支給することにしています。子どもの成長のための教育は学校だけではない、1年の半分は地域の人と接して子どもが成長するということで、食べ物を通した「食育」、地域で遊ぶ「遊育」、対話による「知育」、広大な森と親しむ「森育」、健康づくり「健育」、将来の職業選択についての子供へ助言など「職育」の「六育」に取り組んでいます。

2.健康と福祉のまちづくり

高齢化を悲観する必要はない、高齢者はまちづくりの財産であり、「光齢者」と書き、志の高い「志民」と呼ぶようにしています。病院長をはじめとして働いている職員が生き生き輝いていなければ地域福祉、地域医療は成り立ちません。地域包括ケア保健・医療・福祉の充実は勿論ですが、プラス雪対策も必要です。
在宅医療・介護といわれてもそれを実行できる家庭は少なく、地域で支え合う居住空間がきちんと補完されて仕組みが成り立つわけで、そういったことについてもきめ細かい施策について全国山村振興連盟の活動の中で関係省庁連携して対応していただきたいと思います。

3.産業振興(農観商工連携)

インバウンド需要を取り込む仕組み作りをしていこうという中で、担い手さえしっかりしていれば、そこに働ける仕組みを作ることによって、これからの集落営農、地域営農の推進は可能だと思います。農林水産省の施策の中には農地の中間管理機構の制度もあり、集落営農、地域営農のグランドデザインを示せば基盤整備もやれるようになっています。体験交流、教育旅行も重要だと思っています。

4.バイオマス産業都市(地方創生の願いは里山再生)

最上町は、バイオマス産業都市の指定を受けています。平成17年度から、メトロ実験事業を通して、間伐材を燃料にして病院等の冷暖房を供給していますが、この実質事業効果は、4,500万円になっています。
また、若者定住環境モデルタウンを23区画整備しました。融雪設備で除雪の心配がなく、バイオマスボイラーで暖房を供給します。価格も1,600万円から1,700万円くらいです。
その他、バイオマスのチップ工場、バイオマスペレット工場、バイオマス発電工場、バイオマス園芸ハウス、木の駅プロジェクト(間伐材を地域通貨に交換して、温泉、買い物等に利用する。)を整備、実行しています。
資料の写真は、大学連携キャンパスの中で、女学生が間伐した材で製作したテーブルで食事をしている光景ですが、東京では見られない絶景のレストランです。一人の女学生から「高性能林業機械を操作している青年、格好いいね」との手紙がきました。東京の板橋区との間で防災協定、産直、修学旅行を行っていますが、板橋区の独身女性とわが町の独身男性を婚活しましたら、3組まとまりました。山登りは婚活に最高です。
地方創生のチャンスは里山再生だと思います。川上から川下までの仕組みを作り、都市と農村の連携を図り、観光までつなげるということが大事だと思います。
山を荒らすと災害が起こる、災害を大きくするのは流木です。森林環境税の狙いは国土の保全、安心・安全を担保するものです。山のない東京の皆さんにも負担をしていただいて、我々はきちんと山を守っていく、それが森林環境税だと思います。

(最上町資料)

H29mogamicyo