山村振興全国連絡協議会関東ブロック会議開催される(H30.8)

山村振興全国連絡協議会(都道府県の山村振興担当課長で組織)の平成30年度の関東ブロック会議が、8月27日(月)~28日(火)、群馬県上野村 やまびこ荘で開催された。
会議には、関東ブロックの都県、農林水産省、関東農政局及び全国山村振興連盟から担当者が参加した。

群馬県企画部地域政策課 勝見洋介係長の開会宣言の後、最初に開催県である群馬県企画部地域政策課 田中序生課長から、「当県は3分の2が森林であり、山村地域の人口減少が進む状況の中で、地域の活性化に取り組んでいく必要がある。上野村は様々な先進的取組を行っているところであり、活発な意見交換を期待したい。」旨の挨拶があった。

また、開催地である上野村の黒澤八郎村長から、「自分は村長になる以前の職員時代から、元村長の黒澤丈夫氏の下で山村振興施策に取り組んできた。元村長は、就任直後から山村振興法に基づく政策の展開に努め、昭和46年から34年間全国山村振興連盟の副会長を務めた。上野村では村づくりの様々な取組を行っており、山村振興政策のおかげで村が自立し成り立っている。国民から意義を認められた上での山村振興とする必要がある。」旨の挨拶があった。

次いで、農林水産省地域振興課 永田浩章係長、関東農政局農村計画課 佐々木愛子係長、全国山村振興連盟 實重重実事務局長、千葉善行事務局次長から来賓挨拶があった。

会議の内容は、次のとおりとなっている。

1 中央情勢報告

地域振興課 永田浩章係長から、「山村振興対策について」の資料に基づき、山村における税制優遇措置とその取組事例、山村活性化支援交付金等について説明があった。
また、関東農政局農村計画課 佐々木愛子係長から、「山村振興計画市町村および山村活性化支援交付金実施地区等一覧表」に基づき説明があった。

2 全国山村振興連盟 活動状況報告

全国山村振興連盟 實重重実事務局長から連盟の活動状況の説明があった。

3 各都県の事例報告

各都県から次のような報告があった。

【茨城県】

高萩市大能地区では食用ほおずきの産地づくりが行われ、生産者組織「花貫フルーツほおずき倶楽部」19名の体制づくり、ブランド化と販売促進、アイスクリームとジャムの加工品製造などを行っている。

【栃木県】

「小さな拠点づくり支援事業」に関して那須町田中地区における取組が紹介され、小学校の廃校を利用して那須町が実施主体となり、中小企業等支援、子育て支援、高齢者支援及び健康増進支援のための小さな拠点が運営されていることについて、説明があった。

【東京都】

檜原村人里地域において、事貫自治会21世帯による「人里(へんぼり)もみじの里」が取り組まれ、広葉樹の植樹、ライトアップ等が行われ、都市住民との交流や住民同士の交流が活発化するとともに、じゃがいもなど特産品の販売が行われている。

【山梨県】

身延町曙地区において、伝統のある「あけぼの大豆」を振興するため「あけぼの大豆振興協議会」が設立され、ブランド化の推進、地域おこし協力隊と連携したジャンボシュウマイ及びソイコティーの開発、収穫イベント等が行われている。

【長野県】

飯田市千代地区(1693人、594世帯)において、2つの保育園を存続させるため住民自ら社会福祉法人を設立し、延長保育や0歳児保育なども取り入れて、これまで以上に充実した保育園運営が叶うようになった。

【静岡県】

川根本町において、NPO法人「かわね来風」(16人、全50人雇用)が活動しており、農産物を集荷しファーマーズマーケットに届ける「川根農産物直送便」、女性がこんにゃく、ゆずポン酢、ゆず味噌などの商品開発を行い販売する「食と遊びの三ツ星村」、幼い子供を持つ女性が子連れで高齢者の家へ弁当の宅配を行う「ママ宅プロジェクト」などを実施している。

4 群馬県上野村の取組の説明

上野村 黒澤旨志 振興課長から「上野村 挑戦と自立の村」の資料に基づき、説明があった。その内容は次のとおり。

上野村は、人口1,283人(平成28年)、村の総面積の約95%を森林が占める農山村であり、耕作地の少ない厳しい条件下で自然豊かなふるさとの姿を守ってきたが、過疎化の進展により、存続が危ぶまれる地域が発生するなど窮地に陥った。

このため若い力の結集を求めて平成元年度から定住対策に力を入れ、雇用の場の創出、村営住宅の整備、生活支援策の提供などにより、Iターン者は260人と村の総人口の約20%を占めるに至った。具体的には雇用創出のため村が主体となって各種施設を整備し、また合同会社「ゆーぱる上野」を運営して郷土保全のための事業を行っている。

また、平成28年までに143世帯分の村営住宅を整備し、分散して配置し限界集落化の解消につなげた。更に生活補給金などの生活支援策、養育手当などの子育て支援も充実している。
このほか、自然散策路・天空回廊エリアなど観光業の推進、新エネルギーの利用対策、バイオマスの有効活用をはじめとする様々な独自政策を講じている。

5 次回幹事県の選出

次回の幹事県として栃木県が選出された。

6 現地視察

翌日は、上野村の施設を視察した。

(1)木質ペレット製造工場
平成22年度から、搬出間伐に対して補助率の嵩上げ等の支援を実施し、搬出された間伐材を有効利用するため、木質ペレット製造工場を建設した。
工場は平成23年7月から稼働しており、村に3か所ある温浴施設等に供給している。木材生産が増加するとともに、雇用の場が創出され定住者が増加した。

(2)バイオマス発電所
平成27年度から木質ペレット工場のペレットをガス化して発電する木質バイオマス発電事業を行っている。
ドイツ・ブルクハルト社製の施設であり、発電量は180kwhである。広葉樹のペレットも用いるので、稼働率は60%程度になる。電力はFITで売却せず、きのこセンターに供給している。

(3)きのこセンター
上野村100%出資の株式会社「上野村きのこセンター」でしいたけの栽培・出荷を行っている。
平成11年度に開業し、平成24年度に施設を新設・規模拡大した。
昨年から菌床を使い捨てにしたところ、病害虫が発生しなくなった。収支は黒字であり、村の補助金は受けていない。

(4)道の駅上野・ウッディー上野村銘木工芸館
道の駅は拡充建設中で、来年に全面オープンする予定。銘木工芸館では、地元の木材を用いた家具や木製品が展示販売されている。レストランには特産品いのぶたを用いたメニューがある。