全国山村振興連盟事務局長 實重重実
8月5~6日に北海道・東北六県山村振興ブロック会議が開催され、北海道ブロック梶谷恵造副会長の地元・北海道森町を訪問しました。
森町は噴火によって山頂が吹き飛ばされたという駒ヶ岳の雄大な景観と、ホタテ貝の養殖など漁業の盛んな海に挟まれた町で、大沼湖という湖も観光資源となり、美しい森林に包まれていました。
2日目の現地視察では、北海道で最大の製材企業である株式会社ハルキを訪問して、工場などの現場を視察させていただきました。
株式会社ハルキは、製材所として木材を必要な形にカットすることはもちろん、家具・建具・壁材にするための集成材を製造することもできます。さらに、「住宅プレカット」と言って、建材を組み合わせて家屋の枠組みを製造して、ハウスメーカーなどに供給する事業も行っています。製材・集成材の製造・住宅プレカットの製造といった3つを一貫して行うことができる民間企業は、我が国では2社しかないのだそうです。
「自分の所有する山の木で、自分の家を造りたい」と思っても現在ではなかなかできることではないのですが、一貫生産の(株)ハルキなら、それができるのだそうです。
そうした話を伺う中で、社会貢献活動として、印象的な話を聞きました。
同社では、町の小学校に机の天板を寄贈しているのですが、ただ寄贈するのではなく、それを木育の活動につなげました。小学生の机は、スチールの脚の上に木の天板が乗っているのですが、スチールにネジで天板を固定するのを小学生に作業してもらいます。それぞれの机の持ち主が、同社のスタッフに手伝ってもらいながら、天板をはめ込みます。机そのものを組み立てるわけです。
その後、机を使っていると傷をつけたり穴を開けたりしてしまいますが、その補修も木育活動として小学生が行います。ヤスリをかけてきれいに補修します。
このようにして、机を組み立てたり、補修したりすることによって、児童は普通の場合よりも遙かに机に愛着を持つことでしょう。
この木育活動を始めてから5年になると言いますが、町長は「卒業するときに天板を子供にプレゼントしてはどうかと思う」とおっしゃっていました。6年間小学校で使った机の天板をもらえたら、まさに一生の宝物になるかもしれませんね。
地元の木材を利用するだけでなく、こんな風に工夫することによって、地域の樹木や森林と一層親密になれるのだと、感心することしきりでした。