大名行列とピクリスで町おこし   實重重実

昨年11月11日のことになりますが、山村振興全国連絡協議会中国・四国ブロック会議で、岡山県矢掛町を訪問しました。

矢掛町では、この日の前日(11月10日)、町の歴史イベントである「大名行列」が行われていました。

江戸時代には矢掛町は山陽道の宿場町として栄えた歴史があり、参勤交代する大名らが宿泊した格式の高い宿があります。大名やお姫様が宿泊する本陣、随行者らが宿泊する脇本陣の両方が現存している街並みは、現在では我が国で矢掛町だけだとのことです。この街並みを観光名物として数十年前から大名行列を現代に甦らせるイベントが行われているとのことです。

大名行列をする通りには、「やかげ町屋交流館」という町の施設があり、ここを中心に左右に歴史的な趣きのある新しい店が色々と進出してきていて、以前よりも賑わいをみせるようになってきたということでした。

こうした地域の歴史を活かした街並みづくり、イベントづくりも功を奏していたようですが、それに加えて町としての新しい挑戦も見られます。

私たちが会議をした「みかわてらす」という町の施設は、古民家を改装して作った食堂で、瓦屋根の家屋の周りには、青空で光の溢れる和風の庭や、それを囲む白い石塀があります。この施設で集会をしたり、食事をしたり、カフェとして使ったりできますが、もう一つ、同時にここには加工施設が併設されていて、ピクルスを用いたおしゃれな加工食品を製造しているのでした。

ピクルスはもともと町の一部に栽培していた人がいたのですが、特産品だったわけではありません。外部の専門家を入れて、特産品づくりについて話し合う中で、広告代理店から提案があったものでした。この代理店では、都会の30代、40代の女性に受けていて、かつ手に入りにくい野菜を調査して、ピクルスが良いという結論に至ったというのです。

これが矢掛町の新たな特産品となり、「陽気なピクルス」という名前をつけて、様々な種類の瓶詰め製品を作っています。瓶・外装材・パンフレットも女性にアピールするように美しく目を引くものに仕上がりました。これらピクルス加工品は、都市のデパートなどで販売されています。

そして、こうした商品開発のプロセスにおいて、「山村活性化支援交付金」が使われているとのことでした。この交付金は、皆様ご承知のとおり、平成27年の改正山村振興法を根拠にして作られた100%助成のソフト事業です。

山野通彦 矢掛町長は、当時、当連盟の副会長をしておられ、「100%助成の事業がほしいと自分が要望したものの、実際にそれが実現したので驚いた」とおっしゃっていました。

山村活性化支援交付金は、最大年間1000万円の100%助成を3年間受けることのできる農林水産省の事業です。この事業によって商品開発・資源開発した後のハード事業としては、中山間地農業ルネッサンス事業(442億円)などを活用することができ、また山村地域であれば土地・家屋・機械等について税制特例も受けられます。こうした制度を活用して、矢掛町のように地域を再発見し、活性化につなげていただければありがたいと思います。