令和元年度北海道・東北六県山村振興ブロック会議が、8月5日(月)~6日(火)の2日間にわたり全国山村振興連盟北海道支部(支部長梶谷恵造森町長)の主催により、北海道森町「グリーンピア大沼」において、各道県の支部長、事務局、来賓等27名が参加して開催された。
1 開会及び主催者代表挨拶
開会に当たり、主催者代表として梶谷恵造森町長から挨拶があった。その概要は、以下のとおり。
「暑い中参集いただき感謝申し上げる。山村振興に対する日頃の皆様の尽力・支援に感謝する。山村は厳しい状況下にあるが、国土保全等の役割を果たしているほか、再生可能エネルギーに期待が高まっており、これを活用し地域の活性化につなげていく必要がある。本年から導入された森林環境税・森林環境譲与税は欠かせない財源であり、使い易いものとして行くことが必要と考える。また、過疎地域自立促進特別措置法の期限が迫っているが、引き続き必要な法律であることを訴えて行かなければならない。課題は山積しているが、緊密な連携の下、山村地域の役割を持続していけるよう努めたい。」
2 来賓紹介
来賓として次の者が紹介された。
農林水産省農村振興局地域振興課課長補佐 伊藤香里
国土交通省国土政策局地方振興課課長補佐 渡辺英樹
総務省自治行政局地域創造グループ地域振興室課長補佐 髙沢賢一
林野庁森林整備部森林利用課山村振興・緑化推進室課長補佐 日下部浩
北海道渡島総合振興局地域創生部長 青山大介
北海道渡島総合振興局地域創生部地域政策課長 天野宗一郎
全国山村振興連盟常務理事兼事務局長 實重重実
全国山村振興連盟事務局次長 千葉善行
梶谷森町長の司会のもとで議事が進められた。
3 来賓挨拶・山村振興施策行政説明・全国山村振興連盟活動状況報告
来賓から挨拶、山村振興施策、全国山村振興連盟活動状況について、次のような説明があった。
(1) 農林水産省(伊藤地域振興課課長補佐)
平成27年の山村振興法延長によってできた山村活性化支援交付金は、地域資源を活用するためのソフト事業の定額助成である。山村地域には、自己主張が必要だと考える。地域資源に対し税制も優遇しており、2年後に期限が来るが継続できればと考えている。
山村活性化支援交付金は、既に100地区を終了した。本交付金では、計画を明確にし効果を明らかにする必要がある。ブランド化や加工に努めていても、身の丈に合ったやり方でないと地域にお金が落ちない。本交付金で事業規模を見極めた上で、ハードの補助金を入れるといった形で将来につながっていくことが望ましい。なお、「山の恵みマッチング」を本年は4月のほかに、12月、2月と予定しているので、参加をお願いしたい。
(2) 国土交通省(渡辺地方振興課課長補佐)
国土交通省は、交通政策では道路整備のほか、デマンドタクシー、コミュニティバスなどを支援しており、また、社会資本・生活環境施策として、緑地整備、下水道事業等を推進している。また、「小さな拠点」の整備を総務省と一緒に推進しているとともに、定住のための賃貸住宅整備も支援している。このほか治山対策等を行っている。「小さな拠点」については、平成28年に集落の課題を調査し、国土形成計画やまちひとしごと創生総合戦略の中で位置づけた。昨年に目標であった1000か所を超えたが、今後は質的な向上が課題である。「小さな拠点」において交通体系を一緒に整備していきたい。
(3) 総務省(髙沢地域振興室課長補佐)
関係人口創出事業を平成30年度からモデル事業として実施しており、平成31年度からは都市住民の関心向上や訪日外国人の増加に対する取組みを対象として加えた。
「地域おこし協力隊」は、施策開始から10年を経過し、昨年OBを含めた意見交換会を開催するなどして課題の把握に努めている。
「地域おこし企業人交流プログラム」は、市町村で企業社員を受け入れる制度であり、56市町村で70名が活躍中である。受け入れに要する経費の特別交付税上限額を560万円に引き上げた。
地域運営組織は、711市町村で4,787組織となり、高齢者の声かけ・見守り、高齢運転者の事故防止などが最近注目されている。地域運営組織の形成に要する経費につき特別交付税で措置しており、今年度から収益事業の起業も対象とすることにした。
また、過疎地域自立促進特別措置法の改正については、議論に資するよう過疎問題懇談会の中間的整理を行った。
(4) 林野庁(日下部山村振興・緑化推進室課長補佐)
森林は主伐期を迎え毎年7,000万立方メートルずつ増加しており、資源の循環を作ることが重要な時期となっている。木材自給率は36%に回復し、林業従事者数も増え、明るい兆しが見えている一方で、小規模経営が多いこと、流通コストが高いこと等から木材産業の競争力強化が課題である。
林業の成長産業化に向け、川上では路網・高性能機械の整備、川中では生産性の向上、川下では需要拡大に取り組んでいる。仙台でCLT床材を使った10階建てハイブリット建築ができており、また、学校・駅舎・銀行の木材化をした事例もある。
森林経営管理法では市町村がプレイヤーに加わり、森林の仲介や管理ができるようになった。国有林野の伐採権を民間企業に与える法改正も成立した。森林環境譲与税も実施しつつある。その中で地域林政アドバイザーを市町村が導入する場合、上限350万円の特別交付税措置ができるようにした。
また、森林空間を活用した新産業創出に向けて、森林の場で学び・遊び・スポーツ・健康・癒やし等を行うことにつき「森林サービス産業」として育成していきたい。
(5) 北海道(青山渡島総合振興局地域創生部長)
山村地域は共通の課題を抱えており、多岐にわたる施策を着実に進めていく必要がある。この会議は、こうした共通認識の下での意見交換の場であり、意義深いと考える。
(6) 全国山村振興連盟(實重常務理事)
政府への予算・税制要望については、7月の理事会で連盟としての要望事項を決定して要請活動を行ったことを皮切りとして、年末に向けて累次の会議等で要請していく。
昨年は、予算要望に加えて、山村振興のための税制特例措置の延長や、森林環境税・森林環境譲与税の円滑な導入といった課題があった。税制特例措置は利用例が少ないと次期延長の際に難航するおそれがあるので、積極的な活用をお願いしたい。
なお、昨年10月から原則として毎週、各支部あてにメールマガジン(山村振興通信)を送っているが、近くホームページでも閲覧できるようにしたいと考えている。
4 山村振興の現状と課題についての情報交換
次のような質問・意見等が出された。
- 山村活性化支援交付金は良い制度だが、申請手続きの簡素化を検討してほしい。
- ジビエに対する補助事業についても、弾力的に運用できるように願いたい。
- 森林環境税について、人口割基準によって都市への配分が大きくなっているの
で、見直しを行ってほしい。 - 移住に関する施策の充実が必要であり、移住対策も一律でなく、山村への移住はより手厚いものとして良いのではないか。
- 山村地域の定義(林野率・人口密度)について、旧市町村単位でなく合併後の
市町村全域で適用することとしてはどうか。
5 次期開催地の選定
次期開催地として、青森県が選定された。
6 現地視察
8月6日(火)、「道南地域の木材資源と利用拡大に向けた取り組み」として、道内最大の製材工場である株式会社ハルキと、道の駅「つど~る・プラザ・さわら」の現地視察を行った。
株式会社ハルキは、①製材業、②集成材の製造、③住宅プレカットの製造を行っており、この3つを一貫して行っている民間企業は、我が国で2社だけである。
製材は、年間3.8万立方メートルの丸太を消費し、主にトドマツ、道南スギ、カラマツを使用している。同社の八雲工場では、集成材を加工し、家の構造材・家具材・壁材等に利用されている。住宅プレカットは、家を建てる際の骨組であり、年間800軒分の加工をして、ハウスメーカーや地域の大工に供給している。
また、同社では、太陽光発電、バイオマス発電を行い売電しているほか、小学校児童に対する木育活動、大学生のインターンシップ受け入れを行っている。小学生の木育活動としては、机に用いる板(天板)を同社から寄贈し、子供が自ら机にはめ込んだり、古くなったものにヤスリをかけて補修するなどの活動が行われている。「病院木質プロジェクト」も行っており、病室を利用したままの状態で半日で部屋を木質化することができ、患者にとって自宅にいる雰囲気を出すことができる。