北海道・東北六県山村振興ブロック会議開催

平成28年度北海道・東北六県山村振興ブロック会議が、7月28日(木)~ 29日(金)の2日間にわたり秋田県支部(支部長 佐々木哲男 東成瀬村長)の主催により、秋田県東成瀬村「防災センター」において、各道県の支部長、事務局長、来賓等24名が参加して開催された。

1.開会及び主催者代表挨拶

開会宣言の後、主催者である佐々木哲男 秋田県山村・過疎地域協議会会長の挨拶があった。

2.来賓紹介

来賓として次の者が紹介された。(敬称省略)
農林水産省農村振興局地域振興課課長補佐 三重野 信
国土交通省国土政策局地方振興課課長補佐 鶴見 伸司
総務省地域力創造グループ地域振興室課長補佐 北村 崇史
林野庁森林整備部森林利用課森林環境教育推進官 近藤 美由紀
東北農政局農村振興部農村計画課農村振興係長 小向 敦司
秋田県農林水産部農山村振興課長 伊藤 真人
秋田県農山村振興課調整・地域活性化班長 柴橋 和彰
全国山村振興連盟常務理事兼事務局長 岸 廣昭

3.来賓挨拶・山村振興施策行政説明・全国山村振興連盟活動状況報告

来賓から挨拶、山村振興施策、全国山村振興連盟活動状況について次のような説明 があった。

(1)農林水産省

新しく改正された山村振興法の概要と新たに制度化された山村活性化支援交付金と税制支援措置についての説明があった。税制支援措置については、山村振興計画に産業振興施策促進事項を記載する必要があり、それらの措置をした上で有利な税制が受けられるよう勧奨がなされた。

(2)国土交通省

道路整備、防災対策、豪雪地対策、二地域居住の推進等に触れた後、「小さな拠点」整備について詳細な説明があった。

(3)総務省

地方移住の推進等に触れた後、地域おこし協力隊等の外部人材の活用推進について詳しい説明がなされた。小学校区単位の地域課題の解決に取り組む地域運営組織の新たなしくみ作りについての紹介があった。

(4)林野庁

森林・林業行政についての全般的な説明があった。まず、森林資源の状況、木材需給の動向の説明の後、様々な木材需要の創出の施策・予算、森林法等の改正についての説明があった。特に新たに整備する必要がある林地台帳の作成については、市町村の協力が不可欠であり、詳細な説明がなされた。

(5)東北農政局

東北農政局管内の山村活性化支援交付金の取り組み状況について説明がなされた。

(6) 秋田県

秋田県における振興山村の状況の説明、主な振興施策として、交通政策、社会・生活環境施策、交流施策、産業基盤施策、国土保全対策、産業振興と担い手育成施策について説明があった後、人材育成対策としての「ふるさと水と土指導員」、「Akitaふるさと活力人」の制度、外部人材の活用、元気な中山間農業応援事業、「守りたい秋田の里地里山50」の認定制度、中山間ふるさと秋田づくり総合支援事業についての説明があった。また、県と市町村とが一体となって集落を支援する組織の紹介があった。

(7) 全国山村振興連盟

全国山村振興連盟からは事業概要が説明された。

4.山村振興の現状と諸課題についての情報交換

次のような質問・意見等が出された。
① 林地台帳整備について、国土調査との関係、終わっているところとこれからのと
ころの財政措置のバランスについての質問
② 公共団体以外の木造建築建造の助成措置はないのか
③ 道の駅の建設の協力のお願い
④ 国有林の面積を交付税算定の基準にすべき

5.次期開催地の選定

次期開催県として山形県が選定された。

6.現地研修

(1)椿台ウル井地区大規模畜産施設

東成瀬村は、農畜連携による循環型農業を推進し、「赤ベコの里」の再生と6次産業化に取り組んでいる。かって村内で飼育されていたものの現在では減少した赤ベコ(日本短角牛)の生産を復活させることを目指して、椿台のウル井地区に、大型の畜産施設を建設した。
施設内には、村が整備した繁殖牛舎、堆肥舎、管理棟、指定管理者の株式会社赤べこ仙人ファームが整備した肥育牛舎があり、繁殖牛と肥育牛を合わせて、約400頭(うち、繁殖170、肥育170、残りは子牛)を飼育している。
村が整備した施設は、民間のノウハウを活用した効率的で効果的な運営をするため、公募により株式会社赤べこ仙人ファームを指定管理者とし、自社が整備した肥育牛舎と470haの草地とを一体的に管理運営している。
飼育されている牛は、夏場の5月から10月までは放牧され、種付けも自然交配で行われており、コストの削減が図られている。
ここで飼育された赤べこは、近年の赤身志向と健康志向、味の良さから「幻の短角牛なるせ赤べこ」として好評を博している。
なおかつ、ここで生産される堆肥を活用した有機農業による付加価値の高い農産物の生産と飼料用米の消費拡大が行われている。

(2)なるせ加工研究会

なるせ加工研究会は、昭和62年地元の農家のお母さんたちが中心となり「手づくりのふるさとの味、おふくろの味、こだわりの味」というコンセプトの下、地元の完熟トマトで作った濃厚トマトケチャップ「完熟トマト桃太郎」などを作ることをメインに、農産物に付加価値をつけた様々な加工品の開発販売を行うとともに、野菜などの直売を行っている。
また、生ゴミから作ったペレット状の肥料、家庭の廃油から作った石鹸などのエコ商品や、米粉100%カステラなども販売している。
加工所直売所には、12人の農家の主婦が働いており、奥さん方の臨時収入にもなっている。

(3)食肉加工センター

東成瀬村は、本年4月、学校給食センターと併設して食肉加工センターを建設した。この施設は、畜産分野の6次産業化の拠点としてつくられたものであり、横手市に本社を置き、県内を中心に畜産業を行うとともにレストランを経営する株式会社「羽後の國ファーム」を指定管理者とし、畜産物加工品を、東京の百貨店の贈答品や、シェフの人材不足に悩むレストランチェーンなどにひと手間で高級料理として出せるような商品を指定管理者のレストラン経営者のノウハウを活用して作っている。
そのようなことから衛生環境は徹底しており、製品は加熱調理後直ちに真空密閉し、急速冷凍している。しかも、冷凍過程で組織破壊によるドリップの出ないようにするためマイナス30度の液体状態の冷凍液につけて冷凍する機械を独自で開発している。
将来は、アニサキスなどの寄生虫の恐れのない冷凍品を好む海外市場をも見据えている。

(4)佐藤養助漆蔵資料館

横手市増田町は、雄物川の支流である成瀬川と皆瀬川の合流地点にあり、古くから産業、交通、物流の要として栄えた場所であり、町の中心である中七日町通には古くから内蔵方式(屋敷の内側に蔵を作る方式)の立派な蔵が残されており、重要伝統的建築群保存地区に指定され、観光の拠点となっている。
佐藤養助漆蔵資料館は、増田の大地主であり、江戸時代から材木、味噌、醤油を商っていた小泉五兵衛の旧宅であり、現在は稲庭うどん店に併設する資料館として利用され  ている。屋敷内の蔵は、そのまま保存され、外側は黒漆、内側は赤漆の朱塗りで、蔵の中には資料が展示されている。
増田町には、当時の繁栄を今に伝える伝統的な町並みや内蔵が多く残っており、10月27日(日)の蔵の日には、主屋や内蔵23棟が特別一斉公開される。