全国山村振興連盟メールマガジンNO140

全国山村振興連盟メールマガジンNO140

2021.9.3

全国山村振興連盟事務局

 

○今年度の実務研修会は中止としました

6月4日(金)に予定されていました山村振興実務研修会につきましては、東京での新型コロナウィルス感染拡大に伴い、延期とさせていただいておりました。その際、「秋に開催可能な場合には、日程について9月上旬頃に通知させていただく」としていましたが、全国的に感染拡大が続いている状況に鑑みまして、今年度は中止させていただくことと致しました。会場を準備し、また講師予定者の方に依頼をしておりましたこともあり、大変残念ですが、やむを得ないものと判断しました。

会員の方には、9月1日付けでこの旨通知させていただいたところです。

来年度(令和4年6月頃)については、できる限り実施したいと考えておりますので、会員市町村の皆様におかれましては、よろしくお願い致します。

 

○2021年8月の農林水産行政

2021年8月の農林水産行政の動向は、以下のとおりでした。

 

1 農林水産予算概算要求、総額2兆6842億円を要求へ

農林水産省は、 8月31日令和4年度農林水産予算概算要求を決定し、提出した。要求・要望総額は2兆6842億円に上り、対前年度 116.4%となっている。このうち公共事業は8226億円(117.6%)。うち、農業農村整備 3946億円、(118.4%)、林野公共2211 億円(118.4%)、農山漁村地域整備交付金 940 億円(116.5 %)。非公共事業は、1兆8613億円(115.9%)となっている。

従来から進めてきた生産基盤の強化・輸出拡大のほか、脱炭素、経営体育成等の課題への対応に重点が置かれており、農業関係の新規事業としては、

  • 持続的畑作生産体系確立事業 21億円
  • 新事業創出・食品産業課題解決に向けた支援 6億円
  • みどりの食料システム戦略実現技術開発実証事業65億円
  • みどりの食料システム戦略推進交付金 みどりの食料システム戦略推進総合対策 30億円の内数
  • 将来の農地利用ビジョンを含む人・農地プランの策定 11億円
  • 持続的経営体支援交付金120億円
  • 集落営農活性化プロジェクト促進事業30億円
  • 農業現場における労働力の確保 25億円

などとなっている。

(詳細については、前号メールマガジンNO139の添付資料をご覧ください。)

 

2 食料自給率は過去最低の37%に

農林水産省は2020年度の食料自給率を発表し、カロリーベースの自給率で前年度より1%低下して、過去最低の37%になったと発表した。小数点以下を含めると、過去最低は、1993年度の37.37%、それに次ぐのが2018年度の37.42%だったが、20年度はそれも下回る37.17%だった。

一方、生産額ベースの自給率は67%で、こちらは前年度を1ポイント上回った。

カロリーベースの自給率が低下した主な要因は、①コメの需要量が長期的に低下していること、②小麦の作柄が良かった前年に比べ単収が減少したことなどがある。自給率上昇の要因としては、①輸入額の減少、②国産ニーズに対応した豚肉・鶏肉の増産などがあったものの、自給率を押し上げるには至らなかった。

また、昨年から公表した飼料自給率を反映しない「食料国産率」を見ると、カロリーベースでは昨年と同じ46%、生産額ベースでは前年度より1ポイント高い71%だった。

このほか農林水産省は、「自給力指標」として、潜在生産力をフル活用した場合の最大供給熱量を平成27年度から公表しているが、こちらも前年度から低下した。(米などを中心に作付けした場合1759キロカロリーで、前年度より2キロカロリー減、イモ類を中心に作付けした場合2500キロカロリーで、前年度より62キロカロリー減)

農林水産省は、今後、①小麦・大豆等国産農産物の増産、②加工食品、外食等向けの原材料の国産への切り替え、③畜産、果実等の輸出の増加などを通じて、自給率向上のための生産基盤の強化に努めたいとしている。

 

3 新規就農者の減少に対して検討会を開催

令和2年新規就農者調査結果が8月11日公表され、令和2年の新規就農者が 5万 3740人と3.8%減少したことが分かった。うち49歳以下の若い就農者は 1万8380人と、0.9%の減少。新規自営農業就農者(親元就農した者)は4万100人と6.2%の減少 となっている。

一方で、農業法人などに新規に雇用され就農した者は 1万50人と1.1パーセントの増加、うち49歳までが7360人と 3.8%の増加となっている。

このように全体として新規就農者が減少傾向にあることから、政策の見直しのために「農業人材の確保に向けた検討会」が立ち上げられ、幅広い層からヒアリングを行った上で、令和4年度要求に予算要求に反映されたところである。

 

4 米先物市場の本上場を不認可

農林水産省は8月6日、大阪堂島商品取引所が 7月16日に本上場への移行を申請していた米の先物市場について、不認可とする判断を行った。米の先物市場は2011年に試験上場という形でスタートし、以降2年ごとに4度延長されていた。5回目の試験上場は8月7日が期限となっており、大阪堂島商品取引所からは、恒久的な本上場への移行が申請されていた。

認可に当たっての要件は、①十分な取引量があること、②生産・流通を円滑にするため必要かつ適当であることが求められており、このうち②が該当していないと判断された。具体的には、業者数が横這いであり、利用意向が低く、また上場されている米の9割が新潟産コシヒカリであることなどが、理由とされた。大阪堂島商品取引所はコメの先物取引から完全に撤退し、今後試験上場を含めて申請しないという意向である。

一方、自民党農林部会からは、米の価格指標として、先物市場とは別に現物市場を作るべきだとの要請が寄せられており、農林水産省は JA グループなど関係者を含めた検討会を速やかに設置して、制度設計をしていきたいとしている。

 

5 農産物・食品輸出が上半期5773億円と過去最高

農林水産省は 2021年上半期の農産物・食品輸出額を8月3日公表し、上半期5773億円で、対前年同期比 31.6%の増、1385億円の増額と、過去最大となったと発表した。輸出額は、初めて 5000億円を上回った。 6月だけを見ても 946億円と、対前年同期比24.9%の増加であり、12ヶ月連続の増加となっている。

これは新型コロナウイルス禍の中で、家庭需要が回復し昨年下半期から輸出が増加してきたものであり、外食による日本食材需要も回復してきている。

コロナ禍下におけるニーズとしては、牛肉・日本酒など家庭向けの海外需要が旺盛であるとともに、中国・アメリカなどの経済回復によって林産物・水産物の需要も増加している。

農林水産省は、各国への規制対応を強化するとともに、マーケットインを強め た国内産地や品目別団体を育成し、加工・流通施設を整備することとしているほか、輸出促進法の見直しにも着手するとの意向を示している。

 

6 その他

(1) 大雨で37都府県に386億円の被害

8月11日からの大雨により、西日本を中心に 37都府県で被害があり、8月27日までに報告された被害額は、386億円となっておる。被害内容は、①防災重点ため池の損傷、②農地・農業用施設の法面の崩れ、③農作物の被害、④林地・林道の崩壊、⑤土砂による漁港泊地の埋塞などとなっている。農林水産省では、被災地に対して 延べ145名の技術職員を派遣して現地調査や技術支援に当たっている。広島県等の一部被災地では国の応急排水ポンプを出動させて、農水省職員が排水作業に当たった。

 

(2)原発処理水の風評被害対策に基金を造成

政府は8月24日関係閣僚会議を開催し、東京電力福島第一原子力発電所敷地内で保管する処理水の処分に伴う当面の風評被害対策を発表した。風評被害による需要減退に対応し、生産物を一時的に監督するための基金を醸成する。風評被害に対する賠償の仕組みはあるものの、被害額確定までに時間がかかるので、需要減に機動的に対応するためのものである。

具体的には、①冷凍できる水産物については、買い取って市場が回復するのを待ってから販売する、② 冷凍できない水産物については、飲食業者と引き合わせる支援を行う、とするものである。

また処理水を用いた魚類の飼育など安全性に関する情報を発信することとしている。

 

(3)APEC食料安全担当閣僚会合がオンラインで開催

アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、8月19日オンライン形式で閣僚会合を開催し、新形コロナウィルス禍を踏まえ、域内の食料安全保障の確立を目指す共同声明と2030年までの行動計画を採択した。我が国からは、葉梨康弘農林水産副大臣が出席し、「みどりの食料システム戦略」について紹介するとともに、各国・地域の連携や技術革新の重要性について訴えた。