平成26年11月20日に開催された全国山村振興連盟通常総会において、保科郷雄 宮城県丸森町長及び山野通彦 岡山県矢掛町長両名から事例報告が行われた。 その報告の概要と配布資料を紹介します 1.保科郷雄 宮城県丸森町長 【丸森町の概要】(資料1) 宮城県の南端に位置し、南西は福島県に隣接。総面積は273.34km2、その内、山林が、148.6km2と半分を占め、総面積は宮城県の約3.8%に当たる。町の北部は阿武隈川が流れ、その流域と支流河川の一帯が平坦地を形成している。一方、南東部は500m内外、北西部は300m前後の阿武隈山脈の支脈に囲まれた盆地状の町です。 【『豊かで元気な丸森』づくり】(資料2) まちづくりの基本としては、『豊かで元気な丸森』づくりを基本理念とし、企業誘致、若者定住、子育て支援日本一のまちづくり、高齢者や支援を必要とする人にやさしいまちづくり、産業振興の五つの方針を掲げ、全力で取り組み、確実に実施しています。 具体的な取り組みとしては、企業誘致による新工場建設や、子育て支援策として第2子以降の児童の保育料無料化、若者定住促進町営住宅の建設などがあります。 【事例紹介】 ○ 丸森型グリーン・ツーリズム(資料3) 観光の事例として、丸森型グリーン・ツーリズムを紹介します。丸森町の観光はイコール丸森型グリーン・ツーリズムであり、豊かな自然や歴史、風土、食、施設そして人まで、ありとあらゆる資源を財産としてとらえ、コーディネイトし、活かすことによって、交流人口の増加を目指しています。資料には、阿武隈渓谷県立自然公園にある自然あふれる不動尊キャンプ場など一部ではありますが、写真で紹介しています。 ○ 滞在型市民農園(クラインガルテン)(資料4) 都市との交流を通じて活力ある地域づくりを進めるため、東北初の市民農園として不動尊クラインガルテンが平成12年に、筆甫クラインガルテンが平成17年に開設されています。地域に根ざした継続的な交流を推進するため、交流人口の掘り起し、段階的な定住促進、併設する直売場を通じた地域への経済的効果などを促すことを目的としています。その施設の運営については、指定管理者制度を導入し、地域住民が管理者となることにより、それぞれの地域で季節にあったイベントを地域住民が自由に企画することができ、入園者からは交流を楽しみながら農業体験と豊かな自然を満喫できたとの声をいただくなど、大変好評をいただいています。 ○ いきいき交流センター大内(資料5) ふるさとの味や地域農産物等を提供する「いきいき交流センター大内」は、出資金を募り発足した管理組合を指定管理者とし、地域一体となって運営されています。施設は県営中山間総合施設整備事業を活用して建設。施設には地元農産物を販売する直売場、加工品の製造や体験もできる加工施設、自然薯等の地域農産物を食材にした農村レストランと大きく三つに分かれています。さらに敷地内には民間の業者が入居し、販売できる「鹿狼山いちば」が併設され、大変活気のある地域のシンボル的施設となっています。平成18年オープン以降は年々利用者が増え、平成22年度には9万人弱まで増加し、年間売り上げ金で7,600万円になりましたが、原発事故を境に利用者がかなり減少しました。しかし、地域住民の努力により、平成25年度には前年度を上回り、現在でも復調傾向が続いており、あらためて、地域に活力を生む施設であることを実感しています。 ○ 中山間地域等直接支払制度の有効活用(資料6) 町内全域に点在する農地や農業者の高齢化等の問題により農地の維持も困難になってきている状態にあることから、中山間地域等直接支払制度を活用し、26の協定を締結しています。対象農用地は面積は宮城県内で一番となっています。また、当町では共同活動に重点を置いているため、農地の確保と里山環境を守るとともに、地域コミュニィティにも貢献する重要な制度となっています。 具体的な例としては、平成25年度から二つの集落協定で農繁期に援農ボランティアを募り、それぞれ、ヒマワリの刈り取りと種の収穫、柿の収穫と干柿づくりのお手伝いをいただく活動を行っています。参加者には大学生も多く、参加した皆さんからは、また来たい、とても楽しかったなど好意的な感想をいただいています。 本町としても、都市住民が農山村に対し理解をいただくとともに、交流により集落の活性化にもつながっていると感じており、今後の拡がりを期待しています。 ○ 定住促進における住環境(ICT基盤)の整備(資料7) 都市部との情報通信格差を是正し、住民がICTの恩恵を得られる環境を構築するため、平成21年11月に基本計画を作成し、翌年には総務省の補助事業を活用して、町内全域に光ファイバー網125kmを整備しました。その整備した光ファイバー網をIRU契約によりNTT東日本に貸出し、町内全域で光ブロードバンドサービスを利用できるようになりました。利用件数は伸び続けており、現在は2,370件の利用となっています。また、ブロードバンドサービスを活用して町内の公共施設等を結ぶネットワークを構築し、情報発信・防災面でも活用しています。主な活用方法としては、IP告知システムによる音声放送、防災カメラによる災害対応など資料に記載のとおりです。 ○ 企業誘致による雇用促進と税収確保(資料8) 『豊かで元気な丸森』づくりを実現するためには、多くの若者が町内に定住してしっかり定職に就いて豊かな暮らしをしていただくのが重要だと考えています。 私が町長に就任後最初に行ったのが、工場建設等への奨励金制度の拡大であります。厳しい財政状況ではありますが、1,000万円であった限度額を最大2億円にまで拡大しました。また、町職員を県庁の企業誘致部署に派遣し、町・県連携した企業誘致活動の体制づくりを行いました。企業訪問においては、担当者のみならず私自身も機会をとらえて積極的に訪問活動を行ってきました。その取組みの効果が徐々に現れ、昨年度は北九州に本社を持つ企業が町内の空き工場を活用して操業を開始した他、本年4月には自動車関連企業が新工場を建設し、現在30名が働いています。 また、企業誘致には、税収確保の目的もあります。資料に記載してある太陽光発電所は大きな雇用にはつながらないものの、税収面では固定資産税だけでも数千万円になるものと考えています。さらに、大手企業の現地子会社ではありますが、本社を本町に置いていただいたことから、法人税でも税収が見込まれると期待しています。 |