芦北町の取組み
                                 熊本県葦北郡芦北町長 竹ア一成

項   目

説       明
芦北町の概要 3回の合併を経験した町
  昭和30年 吉尾村、大野村
  昭和45年 湯浦町
  平成17年 田浦町
人口 20200人 高齢化率35.1%
  面積234平方キロ
地勢 東部は日本三大急流「球磨川」、西部は
  「不知火海」 約8割が山林
特産品
  農産物 甘夏、デコポン、太秋柿、
      サラダタマネギ、あしきた牛
  林産物 竹の子 シイタケ
  海産物< クルマエビ、タチウオ
特産品の開発
  芦北の米と水を原料とした焼酎(宮内庁に献上)
  ミネラルウォーター「真っ清水」
  ナトリウム温泉を使った食用塩(開発中)











山村の問題点 高齢化、少子化、耕作放棄地、鳥獣害など全国の山村が抱える問題がすべてある
芦北町が目指す方向性 基本理念
「個性の光る活力あるまちづくり」
テーマ
「すべては21世紀を担う子供達のために」
農林水産業の振興策 「未来につなげる芦北町農林水産振興条例」を制定
農林漁業者の意欲向上とともに農林水産業に対する町民の理解を深めることを目的としている
振興の理念 わが町の山村振興のテーマは川上から川下へである
 間伐の促進や林道整備などの川上対策だけでは活性化しない
山村振興の具体的施策 1) 木造住宅支援事業
 町産材を町内で製材し、町内の工務店に発注して個人住宅を新築又は改築する者に対して25,000円/坪(上限200万円)を助成する
 年間予算 2000万円


2) 公共施設の木造化推進
 佐敷小学校
 地域資源活用総合交流促進施設(農山漁村活性化プロジェクト支援事業活用施設)
 湯浦中学校体育館
大野温泉センター
 佐敷宿交流館「枡屋」

などの大型施設を木造化している
(熊本県木材利用大型施設コンクール最優秀賞や木材利用中央協議会会長賞などを複数回受賞)


3) 町外者の定住と交流
 地域づくりグループの活動を紹介する

○ 緑創会(古石地区)
 山間部の廃校を交流施設に
 写真家、機織作家、炭焼職人などが外部から定住した(更なる定住の動きがある)

○ 告棚田保全組合(告地区)
 条件が不利な棚田を逆手にとって、都市部の人たちと田植えや稲刈りなどを通した交流を継続している

○ 和紙の復活(大岩地区)
 大河内紙と呼ばれる和紙を復活。先に紹介した焼酎のラベルなどに活用されている
 この地区は、山村地域の存続モデルとして熊本大学の研究テーマとなり、教授・学生と集落民の交流が続いている

最後に  山村を取り巻く情勢は、担い手不足や生産物価格の低迷など厳しいことばかりである。あわせてTPPへの参加の動きがある中で、限界集落化を飛び越して山村自体が消滅する恐れさえある。

 このような状況だからこそ、知恵を出し合い住民と一体となったきめ細やかな「まちづくり」を行っていきたい。

 魅力的な山村を創り存続させていくことは、きれいな空気、水などを提供するかけがえの無い自然を守ることと同意義である。

 今後の山村連盟の存在意義はこの一点にあると思っている

 山村連盟のますますの発展を期待して、わが町の取組み紹介を終わりたい




○未来につなげる芦北町農林漁業振興基本条例
平成17年1月1日
条例第121号

 本町の農業・林業・漁業(以下「農林漁業」という。)は、「葦北の野坂の浦ゆ船出して水島に行かむ波立つなゆめ」と万葉集に詠まれている景勝の地で、緑豊かな山々と美しい川や海に囲まれた豊かな自然の恵みを受け、紺碧の不知火海に浮かぶうたせ船のように、自然に逆らわずその特性を活かしながら営まれてきた。
 また、農林漁業は、私たちの生活に不可欠な食べ物などの生産のほかに、おいしい空気や水の確保・災害の防止・美しい景観の創出・伝統文化の継承など多くの役割(以下「多様な役割」という。)を果たしながら私たちの日々のくらしを支えてきた。
 しかし、現在の農林漁業は、産業構造、生活様式が変化する中で、従事者の高齢化や担い手の減少が進み、輸入産物との競合等による価格低迷もあって、経営基盤が悪化し、農地・山林・漁場の荒廃が進むなど今まで果たしてきた様々な機能が低下しつつある。このことは、本町にとっても大きな損失になることが懸念される。
 このような状況の中、本町としても町民総意の理解を得ながら、農林漁業が今まで果たしてきた多様な役割を再認識するとともに、水俣病という公害を経験したことを踏まえ、豊かな自然環境に特別な配慮をしながら農林漁業を維持、振興していくため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、本町の農林漁業の振興に関する施策について、基本理念及びその実現のための必要な事項を定めることにより、農林漁業者の意欲の向上と農林漁業に対する町民の理解を深め、本町農林漁業の持続的な発展を図り、もって町民が健康で豊かな住みやすいまちづくりに寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 町長は、次に掲げる基本理念に基づいて、本町の基幹産業としての農林漁業の振興を図るものとする。
(1) 自然条件等、地域の特性を活かした収益性の高い安定した農林漁業経営を持続的に発展させる。
(2) 町民の健康を確保する上で、町民への安全で安心かつ良質で安定的な農林水産物の供給を図る。
(3) 農林漁業の多様な役割を十分認識し、生産の基となる豊かな自然環境の再生と保全の取組みを進
   める。
(町の役割)
第3条 町は、国及び県との適切な役割分担の下に関係団体等と連携を図りながら農林漁業の振興に関する総合的な施策を推進することにより、安心して続けられる農林漁業及び豊かな農村・山村・漁村(以下「農山漁村」という。)づくりを支援していくものとする。
(農林漁業者の役割)
第4条 農林漁業者は、町民の生活に不可欠な安全で安心かつ良質な農林水産物を安定的に供給する主体であること、農林漁業が多様な役割を果たしていることを自ら認識し、その機能を発揮するとともに、自然生態系に配慮しながら収益性の高い安定した自立できる経営を目指して、その実現に向けて積極的に取り組むものとする。また、同時に地域社会の担い手として、町が実施する施策に協力するものとする。
(町民及び事業者の役割)
第5条 町民及び事業者は、食の重要性と農林漁業、農山漁村の果たしている多様な役割に対する理解を深め、その根底にある豊かな自然環境の保全に努めなければならない。また、地場農林水産物の消費及び利活用に努め、農林漁業の振興施策に理解と協力をするものとする。
(基本的な施策)
第6条 町長は、第2条に定める基本理念にのっとり、次に掲げる各種施策を関係団体等と連携を図りながら総合的に実施するものとする。
(1) 農林漁業の多種多様な担い手の確保及び育成
(2) 安全・安心・良質な売れる農林水産物の生産、供給体制の確立及び地場消費体制の整備
(3) 地域の特性に応じた農林漁業生産基盤の整備及び資源の適正な利活用と保全
(4) 地域資源を生かした農山漁村と都市及び生産者と消費者の交流促進
(5) 自然環境に配慮した農山漁村の快適な生活環境の整備
(6) 農林漁業を機軸とした新たな事業の展開と雇用の創出
(7) 次の世代を担う子供たちへの食教育・自然環境保全教育の実施
(8) 町民参加型の自然環境保全活動の実施
(助成措置)
第7条 町長は、前条の施策を実施するため、助成することが適当であると認めるときは、補助、融資、利子補給及びその他必要な助成措置を講ずるものとする。
(基本計画の策定)
第8条 町長は、第6条に掲げる施策を計画的に推進するため、基本計画を策定するものとする。
2 町長は、基本計画を策定するときは、芦北町農林漁業振興懇話会(以下「懇話会」という。)の意見を
 聴かなければならない。
3 町長は、農林漁業を取り巻く情勢の変化及び施策の評価等を勘案し、おおむね5年ごとに、基本計画
 を見直すものとする。
(懇話会)
第9条 町長は、この条例の目的達成と円滑な運営を期するため、調査機関として懇話会を置く。
2 懇話会は、前条第2項に規定する事項を処理するほか、町長の諮問に応じ、農林漁業の振興に関す
 る事項について調査検討し、その結果を町長に答申する。
3 前2項に定めるもののほか、懇話会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。
 附 則
  この条例は、平成17年1月1日から施行する。



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